82 / 83
第六章 故郷の村へ
6-7 祖父との折り合い
しおりを挟む
マルコが、ハレニシアの故郷に辿り着き、家族と暮らし始めて二日後、マルコはホレイシアに行き、冒険者ギルドと商業ギルドに赴き、拠点をホレイシアにすることを届けてきました。
冒険者としての資格の猶予期限は、まだ3カ月ほどありますから急ぎません。
もう一つ、ホレイシアには小さいですけれど錬金術師のギルドと薬師のギルドがありますので、そちらの登録についても申し込みをしました。
この両方のギルドは、いずれも申し込み当日に簡単な実技の試験があります。
どちらのギルドも支部長の目の前で実技を行い課題をこなします。
錬金術の場合は、与えられた素材から生活に役立つ魔道具を造れば良いのです。
マルコは、光の照明装置を造りました。
小さな魔石を使用してその魔力を光に変える魔道具なのです。
素材とそこに描く魔方陣を間違わなければ、前世の錬金術師では初級者でも作成可能な品です。
でも、ここでは違った様で、支部長からこれをたくさん作ってはくれまいかと定期納入の依頼を受けてしまいました。
一応、定期的となればホレイシアにたびたびこなけれならないことから、一旦家に戻って相談すると言って十日ほど保留してもらいました。
この後、薬師の実技試験でも似たようなことが起きてしまいました。
初級のMPポーションを造ったのですけれど、ここでは初級でも一等から三等までの等級があり、マルコの造ったポーションは一等級なのだそうです。
うん、まぁ、マルコの場合、これ以下のポーションを造るのはかえって大変なのですけれどね。
いずれにしろ、薬師ギルドの支部長からも定期的な納品依頼をされてしまいました。
こちらも取り敢えず十日後まで返事を保留しました。
ホレイシアはさほど遠くは無いのですけれど、馬車でも丸々1日はかかる場所なので、余裕を見て十日としたわけです。
いずれにしろ、即日二つのギルドの会員証を貰いました。
多分、この錬金術と薬師の定期依頼だけでも十分に金が稼げることがわかりました。
当座生活に必要なお金は母に渡していますけれど、マルコも何か仕事をしなければなりませんから、当座は錬金術師と薬師で大丈夫なようです。
因みに兄のグエンは、木工の工芸士見習いで、とある店に勤めています。
ここの親方は、グエンがハーフエルフであろうと差別をしない人なのはマルコも上空から監視中に確認しています。
但し、エルフ至上主義に凝り固まった人が多いのもエルフ17氏族の特徴なのです。
ですから、マルコとしては妹二人の行く末が心配です。
ホレイシアからマルコが戻った翌日、随分昔に見知った人物がマルコを訪ねてきました。
マルコは正直なところ、この人物が嫌いです。
その人物は、母方の祖父であるヤロスラフです。
幼い頃の記憶でもこの人物はマルコの家族を蔑視して、辛く当たっていました。
マルコが最後に見てから9年以上も経つのに、ヤロスラフの見た目は変わっていません。
母と同じように精々二十代にしか見えないのですが、おそらくは百歳ははるかに超えているはずです。
エルフは、不老ではないのですけれど老化がとても遅いのです。
多分、魔力の多寡と体質が老化に影響しているのではないかとマルコは考えています。
マルコの前世でも、魔法師プラトーンを始め魔力の多い者は、寿命がかなり長かったのです。
それはさておき、マルコが訪問者に対面して黙っていると、相手が言いました。
「年長者に対して礼を為すのが年少者の務めで有ろう。
お前はそんなことも知らぬのか?」
「ほとんど見知らぬ人物であるあなたから教えを乞う謂れはありません。
そもそも私はあなたが嫌いですから、あなたに礼を払う必要はありません。」
「ほう、何故、儂が嫌いじゃ。」
「エルフ至上主義に凝り固まった老害は、ハーフエルフである私が嫌いではないのですか?」
「エルフ至上主義の何が悪い。
優れた種族を上位と見做すのは世界の理じゃぞ。」
「では、あなたは何をもって優れた種族と言うのか。
能力のことを言うならば、エルフにも多数の能力ある者もいるけれど、同様に他の種族にもたくさんの有能な人がいる。
にもかかわらずエルフと言う種族にこだわるのは老害のなせる業であって、世界の理ではありません。」
「うぬぬ、小童がほざきおって。・・・。
まぁ、良い。
お前は、錬金術の能力を貴族に知られてヒト族の国から逃げて来たそうだな。
儂にその能力を見せてみよ。」
どうやら祖父のヤロスラフは、先日の衛士の報告を聞き付け、他国の貴族が目をつけるほどの錬金術の技量に興味を覚え、可能ならばそれを利用しようと考えているのだった。
彼ら長老の下に張り付いている虫型ゴーレムで、ヤロスラフが『ワシの孫のようだから、そ奴に言って魔道具なるものを造らせれば我らの利益になるであろう。』とほざいていた様子を知っているマルコだった。
「お断りします。
錬金術師でもないあなたに私の能力を披露する必要などない。」
「このガキが。
云わせておけば、調子に乗りおって。」
怒鳴るようにそう云うと、いきなりヤロスラフは威圧をかけて来た。
エルフの大きな魔力を目的とする対象に押し付けるように放つのがエルフの威圧だ。
マルコの背後にいた妹たちはすくみ上っているし、母も若干おろおろしている。
幸いにして、父と兄は不在だった。
だが、生憎とそんなものには一向に動じないマルコだった。
マルコは、ヤロスラフに上には上がいることを教えることにした。
ヤロスラフの倍の威圧を返してやったのだった。
当然に加減はしているのだが、ヤロスラフは威圧をまともに受けて、その場で腰を抜かした。
もしかすると若干強すぎたかもしれない。
どうやらヤロスラフは失禁までしたようだ。
「あなたにも力の差というものが分かったでしょう。
もうお帰りいただけますか。
これ以上、我が家の者に負担を強いるならば、血を分けた祖父と言えども容赦をしません。
それを覚悟の上で以後の言動を慎まれよ。
その際には、是非とも、上には上がいるということをお忘れなく。」
震える声でヤロスラフが言った。
「お前は、お前は、いったい何者だ?」
「ブエンとイラリスの次男、マルコですよ。
9年前に海賊に攫われていくつもの大陸を渡り歩きました。
そうして往復二十万里に及ぶ旅を終えて、この生まれ故郷に戻って来た12歳です。
真に遺憾ながら、あなたの孫でもある。」
「馬鹿な、ハーフエルフが斯様に大きな魔力を持っているはずがない。」
「ご不審とあれば、もう一度お試ししましょうか?」
それを聞いてヤロスラフは慌てて這いずるように逃げて行った。
背後に居た母が言った。
「マルコ、父はあれでもハレニシアの長老の一人なのよ。
長老に逆らっても良いことはない。
力で潰されるわよ。」
「母様は、魔物が現れて家族の命が危うい場合に、何もせずに見過ごしますか?
僕の知っていた母様ならば、命を懸けてでも家族を守るために抗うはずです。
このハレニシアのエルフ至上主義は度を越しています。
エルフである母様にでさえヒト族と結婚したことで冷たい仕打ちをしている。
ましてヒト族である父様やハーフエルフである子供たちへの仕打ちは尋常ではありません。
その元凶の一つが遺憾ながら祖父のヤロスラフです。
母様は知っていますよね。
父様が採って来た魚を市場では安値でしか買わないことを・・・。
あれはヤロスラフが市場の幹部たちに裏から指示しているからです。
アニカとミアも学校では陰で虐められていました。
今は私が半強制的にいじめをなくしましたけれど・・・。
兄グエンが幼い頃にどうだったのかわかりませんけれど、少なくとも兄が見習いに入っているカシュバル工房へも裏で色々小細工をしているのがヤロスラフを含めた長老たちです。
カシュバル親方もそんな圧力に抗して頑張っていますけれど、いつまで頑張っていられるかは分かりません。
どうも彼らはヒト族とハーフエルフを村から追い出したいようです。
母様はこれに対してどうしたいですか?」
「マルコ、お前はよほど苦労をしてきたみたいだね。
12歳は確かに成人ではあるけれど、とても12歳の子が言う言葉じゃない。
そうね、・・・。
この村では色々と生きにくいのは確かよね。
でも、此処から離れてどこで暮らせばよいの?
私も昔は冒険者としてこの近辺を歩いたわ。
で、同じ冒険者仲間のブエンと知り合って、ここに居を構えた。
子供を育てるには家が必要だからね。
冒険者をやめて、私は主婦になった。
グエンは、冒険者稼業が危険だからと漁師になった。
ある意味、生まれてくる子供たちのために選んだ土地であり職業だったのだけれど・・・。
それが間違いだったのかしら?」
「いいえ、多分その時点では間違いではなかったのだと思いますよ。
但し、周囲が悪かった。
僕は四つの大陸を渡り歩いてきましたけれど、世界には色々なところがあります。
それこそ人族至上主義を唱えて他の種族を隷属化している地域もありますし、宗教国家が政治を牛耳っている国もあります。
でもその中で人々は工夫をしながら生きています。
ヤロスラフが唱えるように能力のある者が上を統べるべきだと言うなら、いつでも僕が力づくで王様になれますよ。
それだけの力があります。
でも人の営みというものは、力がある者のやりたい放題で強制してはダメなんです。
この問題は、家族全体の問題ですから、僕の一存で決めることはできません。
必要とあれば、僕がハレニシアを牛耳ることができますからそれが一つの方法。
但し、正直なところ力づくというのが嫌なので、この方法はあまりお勧めはしません。
次は、何もせず、長老たちの言うがままを受け入れる。
それが二つ目の方法ですが、その場合、僕はこのハレニシアから出て、ホレイシアに行きます。
あそこはヒト族も交流できる比較的自由な土地柄のようですから。
まぁそこもダメなら別天地に行きますけれどね。
そうして家族全員でこのハレニシアを出て別のところで生活をすることが三つ目の方法。
最後の方法が、色々やってハレニシアを変えてみること、これが四つ目でしょうか。
他にも何か方策があるかも知れませんが、正直なところ現状維持は一番よくないと思っています。
僕が心配するのは妹二人の将来です。
父様や母様は辛抱もできるでしょうが、妹たちは下手をすると心が壊れます。
今晩、その件で皆を交えて話をしませんか。
妹たちの意見も大事です。
友達と離れたりしたくないかもしれませんからね。」
冒険者としての資格の猶予期限は、まだ3カ月ほどありますから急ぎません。
もう一つ、ホレイシアには小さいですけれど錬金術師のギルドと薬師のギルドがありますので、そちらの登録についても申し込みをしました。
この両方のギルドは、いずれも申し込み当日に簡単な実技の試験があります。
どちらのギルドも支部長の目の前で実技を行い課題をこなします。
錬金術の場合は、与えられた素材から生活に役立つ魔道具を造れば良いのです。
マルコは、光の照明装置を造りました。
小さな魔石を使用してその魔力を光に変える魔道具なのです。
素材とそこに描く魔方陣を間違わなければ、前世の錬金術師では初級者でも作成可能な品です。
でも、ここでは違った様で、支部長からこれをたくさん作ってはくれまいかと定期納入の依頼を受けてしまいました。
一応、定期的となればホレイシアにたびたびこなけれならないことから、一旦家に戻って相談すると言って十日ほど保留してもらいました。
この後、薬師の実技試験でも似たようなことが起きてしまいました。
初級のMPポーションを造ったのですけれど、ここでは初級でも一等から三等までの等級があり、マルコの造ったポーションは一等級なのだそうです。
うん、まぁ、マルコの場合、これ以下のポーションを造るのはかえって大変なのですけれどね。
いずれにしろ、薬師ギルドの支部長からも定期的な納品依頼をされてしまいました。
こちらも取り敢えず十日後まで返事を保留しました。
ホレイシアはさほど遠くは無いのですけれど、馬車でも丸々1日はかかる場所なので、余裕を見て十日としたわけです。
いずれにしろ、即日二つのギルドの会員証を貰いました。
多分、この錬金術と薬師の定期依頼だけでも十分に金が稼げることがわかりました。
当座生活に必要なお金は母に渡していますけれど、マルコも何か仕事をしなければなりませんから、当座は錬金術師と薬師で大丈夫なようです。
因みに兄のグエンは、木工の工芸士見習いで、とある店に勤めています。
ここの親方は、グエンがハーフエルフであろうと差別をしない人なのはマルコも上空から監視中に確認しています。
但し、エルフ至上主義に凝り固まった人が多いのもエルフ17氏族の特徴なのです。
ですから、マルコとしては妹二人の行く末が心配です。
ホレイシアからマルコが戻った翌日、随分昔に見知った人物がマルコを訪ねてきました。
マルコは正直なところ、この人物が嫌いです。
その人物は、母方の祖父であるヤロスラフです。
幼い頃の記憶でもこの人物はマルコの家族を蔑視して、辛く当たっていました。
マルコが最後に見てから9年以上も経つのに、ヤロスラフの見た目は変わっていません。
母と同じように精々二十代にしか見えないのですが、おそらくは百歳ははるかに超えているはずです。
エルフは、不老ではないのですけれど老化がとても遅いのです。
多分、魔力の多寡と体質が老化に影響しているのではないかとマルコは考えています。
マルコの前世でも、魔法師プラトーンを始め魔力の多い者は、寿命がかなり長かったのです。
それはさておき、マルコが訪問者に対面して黙っていると、相手が言いました。
「年長者に対して礼を為すのが年少者の務めで有ろう。
お前はそんなことも知らぬのか?」
「ほとんど見知らぬ人物であるあなたから教えを乞う謂れはありません。
そもそも私はあなたが嫌いですから、あなたに礼を払う必要はありません。」
「ほう、何故、儂が嫌いじゃ。」
「エルフ至上主義に凝り固まった老害は、ハーフエルフである私が嫌いではないのですか?」
「エルフ至上主義の何が悪い。
優れた種族を上位と見做すのは世界の理じゃぞ。」
「では、あなたは何をもって優れた種族と言うのか。
能力のことを言うならば、エルフにも多数の能力ある者もいるけれど、同様に他の種族にもたくさんの有能な人がいる。
にもかかわらずエルフと言う種族にこだわるのは老害のなせる業であって、世界の理ではありません。」
「うぬぬ、小童がほざきおって。・・・。
まぁ、良い。
お前は、錬金術の能力を貴族に知られてヒト族の国から逃げて来たそうだな。
儂にその能力を見せてみよ。」
どうやら祖父のヤロスラフは、先日の衛士の報告を聞き付け、他国の貴族が目をつけるほどの錬金術の技量に興味を覚え、可能ならばそれを利用しようと考えているのだった。
彼ら長老の下に張り付いている虫型ゴーレムで、ヤロスラフが『ワシの孫のようだから、そ奴に言って魔道具なるものを造らせれば我らの利益になるであろう。』とほざいていた様子を知っているマルコだった。
「お断りします。
錬金術師でもないあなたに私の能力を披露する必要などない。」
「このガキが。
云わせておけば、調子に乗りおって。」
怒鳴るようにそう云うと、いきなりヤロスラフは威圧をかけて来た。
エルフの大きな魔力を目的とする対象に押し付けるように放つのがエルフの威圧だ。
マルコの背後にいた妹たちはすくみ上っているし、母も若干おろおろしている。
幸いにして、父と兄は不在だった。
だが、生憎とそんなものには一向に動じないマルコだった。
マルコは、ヤロスラフに上には上がいることを教えることにした。
ヤロスラフの倍の威圧を返してやったのだった。
当然に加減はしているのだが、ヤロスラフは威圧をまともに受けて、その場で腰を抜かした。
もしかすると若干強すぎたかもしれない。
どうやらヤロスラフは失禁までしたようだ。
「あなたにも力の差というものが分かったでしょう。
もうお帰りいただけますか。
これ以上、我が家の者に負担を強いるならば、血を分けた祖父と言えども容赦をしません。
それを覚悟の上で以後の言動を慎まれよ。
その際には、是非とも、上には上がいるということをお忘れなく。」
震える声でヤロスラフが言った。
「お前は、お前は、いったい何者だ?」
「ブエンとイラリスの次男、マルコですよ。
9年前に海賊に攫われていくつもの大陸を渡り歩きました。
そうして往復二十万里に及ぶ旅を終えて、この生まれ故郷に戻って来た12歳です。
真に遺憾ながら、あなたの孫でもある。」
「馬鹿な、ハーフエルフが斯様に大きな魔力を持っているはずがない。」
「ご不審とあれば、もう一度お試ししましょうか?」
それを聞いてヤロスラフは慌てて這いずるように逃げて行った。
背後に居た母が言った。
「マルコ、父はあれでもハレニシアの長老の一人なのよ。
長老に逆らっても良いことはない。
力で潰されるわよ。」
「母様は、魔物が現れて家族の命が危うい場合に、何もせずに見過ごしますか?
僕の知っていた母様ならば、命を懸けてでも家族を守るために抗うはずです。
このハレニシアのエルフ至上主義は度を越しています。
エルフである母様にでさえヒト族と結婚したことで冷たい仕打ちをしている。
ましてヒト族である父様やハーフエルフである子供たちへの仕打ちは尋常ではありません。
その元凶の一つが遺憾ながら祖父のヤロスラフです。
母様は知っていますよね。
父様が採って来た魚を市場では安値でしか買わないことを・・・。
あれはヤロスラフが市場の幹部たちに裏から指示しているからです。
アニカとミアも学校では陰で虐められていました。
今は私が半強制的にいじめをなくしましたけれど・・・。
兄グエンが幼い頃にどうだったのかわかりませんけれど、少なくとも兄が見習いに入っているカシュバル工房へも裏で色々小細工をしているのがヤロスラフを含めた長老たちです。
カシュバル親方もそんな圧力に抗して頑張っていますけれど、いつまで頑張っていられるかは分かりません。
どうも彼らはヒト族とハーフエルフを村から追い出したいようです。
母様はこれに対してどうしたいですか?」
「マルコ、お前はよほど苦労をしてきたみたいだね。
12歳は確かに成人ではあるけれど、とても12歳の子が言う言葉じゃない。
そうね、・・・。
この村では色々と生きにくいのは確かよね。
でも、此処から離れてどこで暮らせばよいの?
私も昔は冒険者としてこの近辺を歩いたわ。
で、同じ冒険者仲間のブエンと知り合って、ここに居を構えた。
子供を育てるには家が必要だからね。
冒険者をやめて、私は主婦になった。
グエンは、冒険者稼業が危険だからと漁師になった。
ある意味、生まれてくる子供たちのために選んだ土地であり職業だったのだけれど・・・。
それが間違いだったのかしら?」
「いいえ、多分その時点では間違いではなかったのだと思いますよ。
但し、周囲が悪かった。
僕は四つの大陸を渡り歩いてきましたけれど、世界には色々なところがあります。
それこそ人族至上主義を唱えて他の種族を隷属化している地域もありますし、宗教国家が政治を牛耳っている国もあります。
でもその中で人々は工夫をしながら生きています。
ヤロスラフが唱えるように能力のある者が上を統べるべきだと言うなら、いつでも僕が力づくで王様になれますよ。
それだけの力があります。
でも人の営みというものは、力がある者のやりたい放題で強制してはダメなんです。
この問題は、家族全体の問題ですから、僕の一存で決めることはできません。
必要とあれば、僕がハレニシアを牛耳ることができますからそれが一つの方法。
但し、正直なところ力づくというのが嫌なので、この方法はあまりお勧めはしません。
次は、何もせず、長老たちの言うがままを受け入れる。
それが二つ目の方法ですが、その場合、僕はこのハレニシアから出て、ホレイシアに行きます。
あそこはヒト族も交流できる比較的自由な土地柄のようですから。
まぁそこもダメなら別天地に行きますけれどね。
そうして家族全員でこのハレニシアを出て別のところで生活をすることが三つ目の方法。
最後の方法が、色々やってハレニシアを変えてみること、これが四つ目でしょうか。
他にも何か方策があるかも知れませんが、正直なところ現状維持は一番よくないと思っています。
僕が心配するのは妹二人の将来です。
父様や母様は辛抱もできるでしょうが、妹たちは下手をすると心が壊れます。
今晩、その件で皆を交えて話をしませんか。
妹たちの意見も大事です。
友達と離れたりしたくないかもしれませんからね。」
46
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい
うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。
ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。
ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。
時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。
だから――。
「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」
異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ!
============
小説家になろうにも上げています。
一気に更新させて頂きました。
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜
青空ばらみ
ファンタジー
一歳で両親を亡くし母方の伯父マークがいる辺境伯領に連れて来られたパール。 伯父と一緒に暮らすお許しを辺境伯様に乞うため訪れていた辺境伯邸で、たまたま出くわした侯爵令嬢の無知な善意により 六歳で見習い冒険者になることが決定してしまった! 運良く? 『前世の記憶』を思い出し『スマッホ』のチェリーちゃんにも協力してもらいながら 立派な冒険者になるために 前世使えなかった魔法も喜んで覚え、なんだか百年に一人現れるかどうかの伝説の国に迷いこんだ『迷い人』にもなってしまって、その恩恵を受けようとする『当たり人』と呼ばれる人たちに貢がれたり…… ぜんぜん理想の田舎でまったりスローライフは送れないけど、しょうがないから伝説の国の魔道具を駆使して 気ままに快適冒険者を目指しながら 周りのみんなを無自覚でハッピーライフに巻き込んで? 楽しく生きていこうかな! ゆる〜いスローペースのご都合ファンタジーです。
小説家になろう様でも投稿をしております。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる