63 / 83
第五章 サザンポール亜大陸にて
5ー15 噴火?
しおりを挟む 襲撃が落ち着いてひと段落つきーー
戻ってきたアンナと3人で、長老様の家でお茶をご馳走になっていた。
ワイバーンは私の収納魔法と、アンナさんの収納袋を使って回収をしておいた。
もちろん、長老様からのお願いである。
街が何事もなかった様に、生活を始めた頃。
お茶を頂いていた長老様の家に慌てて入ってくる足音がした。
「長老!ワイバーンは!どうなりまし‥‥た?」
焦って走ってきたのだろう。肩で息をし、目を赤くしながら叫んでいる。
金色の長い髪がフワッと揺れる。まだ若そうに見える男性だ。
だが、私たちの朗らかな様子に疑問を持ったのだろう。その勢いも長くは続かない
。
「おお、副ギルド長。もしかして送った者と入れ違いになったかのう?ワイバーンは倒されたよ」
はっはっは、と笑う長老様とポカン、と口を開けた副ギルド長が対照的だ。
だが、この村のために副ギルド長自らが駆けつけるなんて、なんとも勇ましい。
「どういう事か説明してもらえますか?」
「だから言った通りじゃ。このお2人がワイバーンを殲滅してくれた」
「‥‥2人で?」
私たちは副ギルド長に背を向けて座っていたので、今ここにいたことに気が付いたらしい。
ロランの顔を見た後、私の顔を見て驚いている。
「ああ、お前さんたちが来る前にと思ってギルドには他の者を報告に行かせたんじゃ。お2人さんは怪我はなかったとはいえ、疲れていると思ってな」
「‥‥で、ここでお茶していたと」
「そうだ。助けてもらったのにお礼の一つも出来ないなんて、嫌だからのう」
副ギルド長は呑気な長老様の様子に頭を抱えている。
「状況は分かりました‥‥では、長老。この2人に詳しい話を聞きますので、街に向かいたいと思いますが‥‥」
「しょうがないのう。また皆さんこの村に来て下さいな、その時は歓迎しますぞ!」
その言葉で私たちは次の街に向かうことになったのだった。
ロランがアンナさんの事情を話してくれたので、アンナさんも着いていくことになった。
急いで来て欲しい、ということで村の馬を借りて行くことになる。
アンナさんもロランも私も、乗馬は問題ないようだ。
私たちが街に行くことを嫌がる村人を副ギルド長は宥め、また来ると約束して村を出る。
村人総出で見送ってくれたことは忘れないだろう。
今は先頭に副ギルド長、私、アンナさん、ロランの順で馬を走らせていた。
女性は危ないから、と気を使ってくれた様だ。
副ギルド長は気さくな方の様で、私に色々と声をかけてくれる。
今も質問されたので、答えている最中だ。
「ああ、シャルモンの街ご出身なのですね?」
「はい」
「シャルモンの街のギルド長には私もお世話になりました。すごく優しい方でしたね」
「そうですね」
先程から、「はい」「いいえ」「そうですね」しか言っていない気がする。
でも副ギルド長はペラペラと話しかけてくる。よく話が持つな、と1人で感心していただけだったが。
ーー実は副ギルド長が私に好意を寄せているから話しかけていることに、私は気づくことはなかった。
私が、変なところで感心している時。
後ろで馬を走らせていたロランは、眉間にシワを寄せて前を伺っていた。
私と副ギルド長が楽しげに(?)話している(様に見える)ので、余計にシワが寄っている。
アンナさんはそのことに気づいたらしく、危なくない程度に後ろを振り向いた。
「ロラン、シワが寄っているわよ?」
アンナさんは眉間を人差し指でトントン、と叩く。
それでロランは顔のことに気づいたらしい。眉間のシワはなくなった。
「何、嫉妬してるのよ」
「嫉妬って‥‥」
「あら?してないとでも?」
その言葉に黙るしか無いロラン。どこからどう見ても嫉妬してる様にしか見えないだろう。
そこで色々とロランから話を聞いていたアンナさんは思い至った様だ。
「そっか、セリーちゃんが男性と2人で話すところを見たことがなかった?だから嫉妬しちゃったのか」
図星である。下を向いてはいるが、耳まで赤くなっていることは確かだ。
「セリーちゃんは可愛いから、射止めておかないと攫われちゃうよ?」
「‥‥分かってる」
「ロランは本当にセリーちゃんのことが好きよね~羨ましい!」
「そりゃ、一目‥‥あ」
思わず突いて出てきた言葉に気づき、途中で止めるも、アンナさんには分かってしまったようだ。
「あらまぁ、ロランも隅に置けないね」
「‥‥ちっ」
「まあ、今嫉妬しているからって、セリーちゃんに当たるのだけはやめてよね?」
「‥‥分かってる」
アンナさんはロランを弄って楽しかったようだ。顔を前に戻している。
そこにはまだ話し続ける副ギルド長と、話だけ聞いている私の姿が。
「‥‥ちゃんと攫われない様に守ってよね?」
とアンナさんが呟いた声は誰の耳にも届くことは無かったのだった。
戻ってきたアンナと3人で、長老様の家でお茶をご馳走になっていた。
ワイバーンは私の収納魔法と、アンナさんの収納袋を使って回収をしておいた。
もちろん、長老様からのお願いである。
街が何事もなかった様に、生活を始めた頃。
お茶を頂いていた長老様の家に慌てて入ってくる足音がした。
「長老!ワイバーンは!どうなりまし‥‥た?」
焦って走ってきたのだろう。肩で息をし、目を赤くしながら叫んでいる。
金色の長い髪がフワッと揺れる。まだ若そうに見える男性だ。
だが、私たちの朗らかな様子に疑問を持ったのだろう。その勢いも長くは続かない
。
「おお、副ギルド長。もしかして送った者と入れ違いになったかのう?ワイバーンは倒されたよ」
はっはっは、と笑う長老様とポカン、と口を開けた副ギルド長が対照的だ。
だが、この村のために副ギルド長自らが駆けつけるなんて、なんとも勇ましい。
「どういう事か説明してもらえますか?」
「だから言った通りじゃ。このお2人がワイバーンを殲滅してくれた」
「‥‥2人で?」
私たちは副ギルド長に背を向けて座っていたので、今ここにいたことに気が付いたらしい。
ロランの顔を見た後、私の顔を見て驚いている。
「ああ、お前さんたちが来る前にと思ってギルドには他の者を報告に行かせたんじゃ。お2人さんは怪我はなかったとはいえ、疲れていると思ってな」
「‥‥で、ここでお茶していたと」
「そうだ。助けてもらったのにお礼の一つも出来ないなんて、嫌だからのう」
副ギルド長は呑気な長老様の様子に頭を抱えている。
「状況は分かりました‥‥では、長老。この2人に詳しい話を聞きますので、街に向かいたいと思いますが‥‥」
「しょうがないのう。また皆さんこの村に来て下さいな、その時は歓迎しますぞ!」
その言葉で私たちは次の街に向かうことになったのだった。
ロランがアンナさんの事情を話してくれたので、アンナさんも着いていくことになった。
急いで来て欲しい、ということで村の馬を借りて行くことになる。
アンナさんもロランも私も、乗馬は問題ないようだ。
私たちが街に行くことを嫌がる村人を副ギルド長は宥め、また来ると約束して村を出る。
村人総出で見送ってくれたことは忘れないだろう。
今は先頭に副ギルド長、私、アンナさん、ロランの順で馬を走らせていた。
女性は危ないから、と気を使ってくれた様だ。
副ギルド長は気さくな方の様で、私に色々と声をかけてくれる。
今も質問されたので、答えている最中だ。
「ああ、シャルモンの街ご出身なのですね?」
「はい」
「シャルモンの街のギルド長には私もお世話になりました。すごく優しい方でしたね」
「そうですね」
先程から、「はい」「いいえ」「そうですね」しか言っていない気がする。
でも副ギルド長はペラペラと話しかけてくる。よく話が持つな、と1人で感心していただけだったが。
ーー実は副ギルド長が私に好意を寄せているから話しかけていることに、私は気づくことはなかった。
私が、変なところで感心している時。
後ろで馬を走らせていたロランは、眉間にシワを寄せて前を伺っていた。
私と副ギルド長が楽しげに(?)話している(様に見える)ので、余計にシワが寄っている。
アンナさんはそのことに気づいたらしく、危なくない程度に後ろを振り向いた。
「ロラン、シワが寄っているわよ?」
アンナさんは眉間を人差し指でトントン、と叩く。
それでロランは顔のことに気づいたらしい。眉間のシワはなくなった。
「何、嫉妬してるのよ」
「嫉妬って‥‥」
「あら?してないとでも?」
その言葉に黙るしか無いロラン。どこからどう見ても嫉妬してる様にしか見えないだろう。
そこで色々とロランから話を聞いていたアンナさんは思い至った様だ。
「そっか、セリーちゃんが男性と2人で話すところを見たことがなかった?だから嫉妬しちゃったのか」
図星である。下を向いてはいるが、耳まで赤くなっていることは確かだ。
「セリーちゃんは可愛いから、射止めておかないと攫われちゃうよ?」
「‥‥分かってる」
「ロランは本当にセリーちゃんのことが好きよね~羨ましい!」
「そりゃ、一目‥‥あ」
思わず突いて出てきた言葉に気づき、途中で止めるも、アンナさんには分かってしまったようだ。
「あらまぁ、ロランも隅に置けないね」
「‥‥ちっ」
「まあ、今嫉妬しているからって、セリーちゃんに当たるのだけはやめてよね?」
「‥‥分かってる」
アンナさんはロランを弄って楽しかったようだ。顔を前に戻している。
そこにはまだ話し続ける副ギルド長と、話だけ聞いている私の姿が。
「‥‥ちゃんと攫われない様に守ってよね?」
とアンナさんが呟いた声は誰の耳にも届くことは無かったのだった。
57
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

私のアレに値が付いた!?
ネコヅキ
ファンタジー
もしも、金のタマゴを産み落としたなら――
鮎沢佳奈は二十歳の大学生。ある日突然死んでしまった彼女は、神様の代行者を名乗る青年に異世界へと転生。という形で異世界への移住を提案され、移住を快諾した佳奈は喫茶店の看板娘である人物に助けてもらって新たな生活を始めた。
しかしその一週間後。借りたアパートの一室で、白磁の器を揺るがす事件が勃発する。振り返って見てみれば器の中で灰色の物体が鎮座し、その物体の正体を知るべく質屋に持ち込んだ事から彼女の順風満帆の歯車が狂い始める。
自身を金のタマゴを産むガチョウになぞらえ、絶対に知られてはならない秘密を一人抱え込む佳奈の運命はいかに――
・産むのはタマゴではありません! お食事中の方はご注意下さいませ。
・小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
・小説家になろう様にて三十七万PVを突破。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる