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第五章 サザンポール亜大陸にて
5ー9 湖畔にて その一
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タンパル子爵領を超えて、マンスフェルト伯爵領に入ったのはヴェルコフを発ってから8日目のことでした。
マルコ達の馬車が一日に進む距離は、概ね140里(≒101㎞)を超えるぐらいでしたので、時には宿場町を二つ飛ばしたり、野営をしたりした日もあります。
道が広い場合には、先行する馬車を追い抜いたりもできるのですけれど、山道の場合、往々にして曲がりくねっていて追い越しを掛けられない場所が多かったりするために、どうしても一日の走行距離は落ちるのです。
仮にそういった障害が無い場合は、1日で300里を踏破することも可能なのですけれど、流石に馬車を模している以上、余り過大な速度で突っ走るとまた目立ちます。
従って、今回の急ぎの旅でも、普通の馬車よりも少し早い程度に抑えているのです。
マンスフェルト伯爵領の南方600里にこの国の王都があるのですけれど、今回は王都には寄りません。
当初の予定では王都を経由して東へ向かう予定でしたが、バウマン男爵とマッセリング伯爵の確執から派生したトラブルで、マルコ達のこともなにがしか王都に報告されているのは間違いのない話なので、面倒ごとが起きそうな王都は避けたのです。
現在マルコ達が居る王国は、エルクダルト王国ですが、隣国のベナレス王国まではまだ800里ほどもありそうです。
但し、マンスフェルト伯爵領を過ぎたなら徐々に南下して、東へ向かう主要な街道であるシナジル往還に戻る予定なのです。
そうして、ベナレス王国に入る少し手前の山地にベランドル温泉郷があるので、そこには立ち寄る予定にしているのです。
マンスフェルト伯爵領でも特段のことは起きてはいませんけれど、例によって盗賊やら魔物が時折襲撃してきますので、アンドロイド型ゴーレムのウィツ、ワル、エィワ、テカウの四人が簡単に討伐して行きます。
討伐した魔物については、マルコが保管庫に収納して行きますけれど、盗賊たちはアンデッドにならないよう浄化魔法の「葬送の火」でその都度焼却処分しています。
盗賊のアジトなどについては街道から近い場所に在れば殲滅しますけれど、そうでなければベランドル温泉郷までは1日の踏破距離が100里ほどと少し急ぎ旅なので、今回は放置してきました。
その意味では幸運にも命を長らえた盗賊も居たはずですね。
マンスフェルト伯爵領を越えて東南に向かう道に入り、8日程でシナジル往還に戻ることができました。
シナジル往還に入って二つ目の宿場町ハンプティは、エーリッヒ伯爵領の中でも比較的大きな街であり、冒険者ギルドの支部もありましたので、念のために、マルコはここで依頼を受けることにしました。
ケサンドラスを発ってからもう一月ほどになるために、ここらへんで依頼を受けて実績をあげておくことで登録の延長を行うことにしたのです。
最初の依頼達成期限が一月だけで、以後は三ヶ月が登録の延長期限になるので余裕はあるのですけれど、いつ何があるかわからないので、念のために一月に一度程度若しくは長逗留する場所でギルド支部がある場合には依頼を受けて達成することにしているのです。
今のところ見習いである魔木クラスのマルコが受注できる依頼は、雑用か薬草採取に限られますけれど、今回は薬草採取にするつもりでいます。
そのためにハンプティでは二泊することにしているのです。
ハンプティは、町の名前の由来であるハンプティ湖の湖畔の街で、とても景色の良い場所なんです。
宿は、比較的裕福な人達等が使うような程々に高級な宿にしました。
以前にシナジル往還を旅したことのあるカラガンダ翁も、ここを通過する時にハンプティにも一泊したそうですが隊商を引き連れていましたので、もっと安い宿に泊まったそうです。
カラガンダ翁曰く、湖の景観は当時とあまり変わっていないそうですが、さすがに数十年も経っているので宿とか街並みの方は色々と変化しているそうです。
宿で一泊目の夕食に出されたのはマスの一種なんでしょうか?体側に赤い斑点のあるマルコの身長ほどもある大きな淡水魚ハンプティ・ターレイの料理でした。
おそらくは寄生虫の問題もあるのでしょうか?生食は忌避されているようです。
この魚の場合、焼いたり煮たりする料理が主なのですけれど、ここでの名物料理は岩塩で包んで蒸し焼きにした「パル・ス・ソーリ」という高級料理があるようです。
前世の記憶では、システム・エンジニア(SE)であった金谷正司の地球世界では「塩釜焼き」、錬金術師ユーリアのザルドブル世界では「イヨム・クォカー」と呼ばれる料理のようですが、フラブール世界、ワルバーニ世界、クロジア世界、エストルド世界では、このような料理技法は無かったと記憶しています。
この宿で頼んだパル・ス・ソーリは、塩によって風味を閉じ込められたハーブと魚の旨味が絶妙な味と香りを生み出していました。
高級宿ならではのお料理でしょうね。
早速、ウチのコックであるアッシュにも、この料理を教え込むことにしました。
宿のコックさんのスキルを内緒でコピーするだけでマルコが覚えられますので、それをアッシュに伝えるだけのお仕事です。
アッシュの料理のレシピがまた一つ増えましたね。
◇◇◇◇
翌日、マルコは冒険者ギルドにお仕事へ、カラガンダ夫妻は湖畔に設置された木製のテラス式の遊歩道を散歩することになっています。
その日の昼食は宿に頼んで弁当にしてもらっています。
カラガンダ夫妻に同伴するのは、メインにセバスとエマですが、念のために陰伴でウィツとワルが少し距離を開けてついて行きます。
余程のことが無い限り、カラガンダ夫妻の安全は万全の筈です。
マルコの方には、同じく陰伴で、エィワとテカウについてきてもらいますが、彼らが表に立つのは、マルコが手を出しにくい場合に限られます。
概ねマルコから70プーツほども離れた場所にいますけれど、必要な場合には瞬時に駆け付けられる距離なのです。
彼らアンドロイド型ゴーレムの場合、最高速度では毎秒100ブーツ(時速にすると260㎞?)ほどの速度が出せます。
但し、動き出した瞬間に地面がえぐれたりしちゃいますので、必要が無い限りそんな速度は出しません。
おまけにゴーレムのボディは、これ以上ないほどの強靭な素材でできていますから、対人戦にしろ、対魔物戦にしろ、無敵を誇る性能なんです。
マルコについている護衛は左程必要があるわけではありません。
但し、人が大勢いる中で実力行使を行わねばならない場合、マルコの場合は往々にして内緒で対応もできるはずですけれど、内緒の対応がしにくいような場合には、護衛二人に対応してもらう方が良いわけです。
そんなことでやってきました冒険者ギルドです。
依頼の張り出してあるボードの前に立って、マルコは依頼の一覧を見ています。
マルコの場合魔木クラスですから、選べるのは常設依頼の区画か雑用依頼の区画だけです。
幸いにして常設依頼に初級ポーション用の薬草採取がありました。
雑用依頼の方も一応眺めてみましたけれど、左程切実な依頼は無さそうなので、今回はパスです。
薬草採取も所変われば品変わるで、薬草名が異なりますけれど概ねHPポーション用とMPポーション用で用途は変わりはありません。
但し、飽くまで初級ポーション用の薬草であり、中級以上のポーションは魔物の色が濃い奥地でないと採取できないとされていますので、常設依頼ではなく薬師ギルド等からの依頼で少なくとも重鉄以上のランクでなければ受注できないのです。
中には初級(重鉄と軽鉄)は除外されて、中級以上でなければ受注できないクエストもあるようです。
今回マルコが採取しようと思っているのは、初級ポーション用のフリドル(HPポーション用薬草)とサブレック(MPポーション用薬草)です。
以前受けたクエストでは、マイジロン大陸やリーベンでも薬草採取を受けていますけれど、薬草の名前が違います。
風土気候により薬草も植生が違うようですね。
ですから採取に出かける前にギルド内で植物図鑑やサンプルを見せてもらってから出発です。
冒険者ギルドは、北東から南西に向けて伸びる街並みの北側の街道に通じる門の脇に在って、すぐに町の外に出られる場所なんです。
この門からおよそ20ケブーツ程度の範囲の草原が比較的安全な場所とされているようです。
マルコは少しの間ドローンを隠蔽したまま上空に飛ばし、そこから思念で周辺の探索を行いました。
草原の中ではどうやら数グループ二十人程の魔木クラスの少年達が薬草採取をしているようです。
彼らの邪魔にならないよう、敢えて人がいない場所を選んでマルコは採取を始めます。
クエストは、薬草五本を一束にして6束以上が達成基準です。
マルコは午前中にもフリドルとサブレックの両方の採取基準に達していましたので、以後は様子見ですね。
万が一、魔木クラスの子供たちに危難が迫った場合には、陰伴についているエィワかテカウに介入してもらうつもりです。
幸いにして、ここでは特段介入しなければならない様な事態も発生しないようでした。
宿で作ってくれたお弁当を食べてからはもっぱら周囲の魔物等の探索を上空からしていましたが、陽が傾き始めたて子供達も引き上げ始めたので、その安全を確認してからマルコは市内に引き上げることにしました。
マルコ達の馬車が一日に進む距離は、概ね140里(≒101㎞)を超えるぐらいでしたので、時には宿場町を二つ飛ばしたり、野営をしたりした日もあります。
道が広い場合には、先行する馬車を追い抜いたりもできるのですけれど、山道の場合、往々にして曲がりくねっていて追い越しを掛けられない場所が多かったりするために、どうしても一日の走行距離は落ちるのです。
仮にそういった障害が無い場合は、1日で300里を踏破することも可能なのですけれど、流石に馬車を模している以上、余り過大な速度で突っ走るとまた目立ちます。
従って、今回の急ぎの旅でも、普通の馬車よりも少し早い程度に抑えているのです。
マンスフェルト伯爵領の南方600里にこの国の王都があるのですけれど、今回は王都には寄りません。
当初の予定では王都を経由して東へ向かう予定でしたが、バウマン男爵とマッセリング伯爵の確執から派生したトラブルで、マルコ達のこともなにがしか王都に報告されているのは間違いのない話なので、面倒ごとが起きそうな王都は避けたのです。
現在マルコ達が居る王国は、エルクダルト王国ですが、隣国のベナレス王国まではまだ800里ほどもありそうです。
但し、マンスフェルト伯爵領を過ぎたなら徐々に南下して、東へ向かう主要な街道であるシナジル往還に戻る予定なのです。
そうして、ベナレス王国に入る少し手前の山地にベランドル温泉郷があるので、そこには立ち寄る予定にしているのです。
マンスフェルト伯爵領でも特段のことは起きてはいませんけれど、例によって盗賊やら魔物が時折襲撃してきますので、アンドロイド型ゴーレムのウィツ、ワル、エィワ、テカウの四人が簡単に討伐して行きます。
討伐した魔物については、マルコが保管庫に収納して行きますけれど、盗賊たちはアンデッドにならないよう浄化魔法の「葬送の火」でその都度焼却処分しています。
盗賊のアジトなどについては街道から近い場所に在れば殲滅しますけれど、そうでなければベランドル温泉郷までは1日の踏破距離が100里ほどと少し急ぎ旅なので、今回は放置してきました。
その意味では幸運にも命を長らえた盗賊も居たはずですね。
マンスフェルト伯爵領を越えて東南に向かう道に入り、8日程でシナジル往還に戻ることができました。
シナジル往還に入って二つ目の宿場町ハンプティは、エーリッヒ伯爵領の中でも比較的大きな街であり、冒険者ギルドの支部もありましたので、念のために、マルコはここで依頼を受けることにしました。
ケサンドラスを発ってからもう一月ほどになるために、ここらへんで依頼を受けて実績をあげておくことで登録の延長を行うことにしたのです。
最初の依頼達成期限が一月だけで、以後は三ヶ月が登録の延長期限になるので余裕はあるのですけれど、いつ何があるかわからないので、念のために一月に一度程度若しくは長逗留する場所でギルド支部がある場合には依頼を受けて達成することにしているのです。
今のところ見習いである魔木クラスのマルコが受注できる依頼は、雑用か薬草採取に限られますけれど、今回は薬草採取にするつもりでいます。
そのためにハンプティでは二泊することにしているのです。
ハンプティは、町の名前の由来であるハンプティ湖の湖畔の街で、とても景色の良い場所なんです。
宿は、比較的裕福な人達等が使うような程々に高級な宿にしました。
以前にシナジル往還を旅したことのあるカラガンダ翁も、ここを通過する時にハンプティにも一泊したそうですが隊商を引き連れていましたので、もっと安い宿に泊まったそうです。
カラガンダ翁曰く、湖の景観は当時とあまり変わっていないそうですが、さすがに数十年も経っているので宿とか街並みの方は色々と変化しているそうです。
宿で一泊目の夕食に出されたのはマスの一種なんでしょうか?体側に赤い斑点のあるマルコの身長ほどもある大きな淡水魚ハンプティ・ターレイの料理でした。
おそらくは寄生虫の問題もあるのでしょうか?生食は忌避されているようです。
この魚の場合、焼いたり煮たりする料理が主なのですけれど、ここでの名物料理は岩塩で包んで蒸し焼きにした「パル・ス・ソーリ」という高級料理があるようです。
前世の記憶では、システム・エンジニア(SE)であった金谷正司の地球世界では「塩釜焼き」、錬金術師ユーリアのザルドブル世界では「イヨム・クォカー」と呼ばれる料理のようですが、フラブール世界、ワルバーニ世界、クロジア世界、エストルド世界では、このような料理技法は無かったと記憶しています。
この宿で頼んだパル・ス・ソーリは、塩によって風味を閉じ込められたハーブと魚の旨味が絶妙な味と香りを生み出していました。
高級宿ならではのお料理でしょうね。
早速、ウチのコックであるアッシュにも、この料理を教え込むことにしました。
宿のコックさんのスキルを内緒でコピーするだけでマルコが覚えられますので、それをアッシュに伝えるだけのお仕事です。
アッシュの料理のレシピがまた一つ増えましたね。
◇◇◇◇
翌日、マルコは冒険者ギルドにお仕事へ、カラガンダ夫妻は湖畔に設置された木製のテラス式の遊歩道を散歩することになっています。
その日の昼食は宿に頼んで弁当にしてもらっています。
カラガンダ夫妻に同伴するのは、メインにセバスとエマですが、念のために陰伴でウィツとワルが少し距離を開けてついて行きます。
余程のことが無い限り、カラガンダ夫妻の安全は万全の筈です。
マルコの方には、同じく陰伴で、エィワとテカウについてきてもらいますが、彼らが表に立つのは、マルコが手を出しにくい場合に限られます。
概ねマルコから70プーツほども離れた場所にいますけれど、必要な場合には瞬時に駆け付けられる距離なのです。
彼らアンドロイド型ゴーレムの場合、最高速度では毎秒100ブーツ(時速にすると260㎞?)ほどの速度が出せます。
但し、動き出した瞬間に地面がえぐれたりしちゃいますので、必要が無い限りそんな速度は出しません。
おまけにゴーレムのボディは、これ以上ないほどの強靭な素材でできていますから、対人戦にしろ、対魔物戦にしろ、無敵を誇る性能なんです。
マルコについている護衛は左程必要があるわけではありません。
但し、人が大勢いる中で実力行使を行わねばならない場合、マルコの場合は往々にして内緒で対応もできるはずですけれど、内緒の対応がしにくいような場合には、護衛二人に対応してもらう方が良いわけです。
そんなことでやってきました冒険者ギルドです。
依頼の張り出してあるボードの前に立って、マルコは依頼の一覧を見ています。
マルコの場合魔木クラスですから、選べるのは常設依頼の区画か雑用依頼の区画だけです。
幸いにして常設依頼に初級ポーション用の薬草採取がありました。
雑用依頼の方も一応眺めてみましたけれど、左程切実な依頼は無さそうなので、今回はパスです。
薬草採取も所変われば品変わるで、薬草名が異なりますけれど概ねHPポーション用とMPポーション用で用途は変わりはありません。
但し、飽くまで初級ポーション用の薬草であり、中級以上のポーションは魔物の色が濃い奥地でないと採取できないとされていますので、常設依頼ではなく薬師ギルド等からの依頼で少なくとも重鉄以上のランクでなければ受注できないのです。
中には初級(重鉄と軽鉄)は除外されて、中級以上でなければ受注できないクエストもあるようです。
今回マルコが採取しようと思っているのは、初級ポーション用のフリドル(HPポーション用薬草)とサブレック(MPポーション用薬草)です。
以前受けたクエストでは、マイジロン大陸やリーベンでも薬草採取を受けていますけれど、薬草の名前が違います。
風土気候により薬草も植生が違うようですね。
ですから採取に出かける前にギルド内で植物図鑑やサンプルを見せてもらってから出発です。
冒険者ギルドは、北東から南西に向けて伸びる街並みの北側の街道に通じる門の脇に在って、すぐに町の外に出られる場所なんです。
この門からおよそ20ケブーツ程度の範囲の草原が比較的安全な場所とされているようです。
マルコは少しの間ドローンを隠蔽したまま上空に飛ばし、そこから思念で周辺の探索を行いました。
草原の中ではどうやら数グループ二十人程の魔木クラスの少年達が薬草採取をしているようです。
彼らの邪魔にならないよう、敢えて人がいない場所を選んでマルコは採取を始めます。
クエストは、薬草五本を一束にして6束以上が達成基準です。
マルコは午前中にもフリドルとサブレックの両方の採取基準に達していましたので、以後は様子見ですね。
万が一、魔木クラスの子供たちに危難が迫った場合には、陰伴についているエィワかテカウに介入してもらうつもりです。
幸いにして、ここでは特段介入しなければならない様な事態も発生しないようでした。
宿で作ってくれたお弁当を食べてからはもっぱら周囲の魔物等の探索を上空からしていましたが、陽が傾き始めたて子供達も引き上げ始めたので、その安全を確認してからマルコは市内に引き上げることにしました。
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