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第一章 与えられし異能
1ー18 夏休みの自由研究 その二
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S市への染色工房見学中、試験的な亜空間収納に関する実験は、特段の支障が無く終わったな。
多少の疲労は残ったけれど、亜空間収納を解除しなければならないほどの疲労は無かったな。
今後とも、鋭意訓練を続けて耐性というか耐力をつけたいと思っているよ。
もしかすると、収納量の増大があるかも知れないからな。
収納量が増えれば、外に出して持つ手荷物が減って、いろいろ便利になるだろうと思っているんだ。
◇◇◇◇
7月28日、JRのF駅近傍、東北東の十字路にあるE映画館の前が今日の待ち合わせ場所だ。
飲料水だけは用意して、弁当は無し。
D古墳近くの国道沿いにファミレスがあるんで、お昼はそこで食べる予定なんだ。
D古墳から徒歩で10分圏内、自転車だと5分もかからないだろう。
待ち合わせ場所からD古墳までは、東へ直線距離でおよそ4キロ、道なりでおそらく5キロ近くはあるけれど、自転車なら20分程度で到着できる場所だ。
俺の荷物は結構な量になったよ。
実のところ、この古墳調査では穴掘りとかの発掘作業はできないから、測定用の簡易装置を色々と試行錯誤して造ってみたんだ。
単純に言うと、地中レーダーを造ってみたわけだ。
多分、俺の能力なしにはできなかったと思う。
何せ俺の能力で地中の様子がかなりわかるようになっているからね。
家の近くの道路等で排水溝やら水道管をサーチし、その上で俺の把握したデータから逆算して数値化するんだ。
次いで、それに見合う数値が得られるよう様々な方法でデータを入手してみる。
音波や振動もその一つだったんだが、一番精度が高かったのは重力変化だった。
俺の能力で重量物(例えば鉛の錘等)に対して水平方向にベクトルを与えると、地表面での重力値が微妙に変化する。
その変化を数値化すると、水道管の埋没位置や排水溝の深さや構造などが非破壊検査のように確認できるんだ。
古墳の調査というよりは「新たな非破壊検査装置の製作」と自由研究の表題を変えた方が良いかもしれないが、まぁ、初志貫徹という奴で一応はD古墳調査を名目にする。
手法としては、東西方向若しくは南北方向の弱い横向き重力波を、地上1mの高度に生み出すことで垂直方向の重力の変化を地表面で計測、距離の二乗に比例する原点値から地中の深さごとによる密度変化を数値化するんだ。
元々俺の能力でかなり詳細な地中の3Dマップが作れるので、測定値を元データに合わせるだけでパラメーターが推測できる。
このために試行錯誤の実験を50回ほども繰り返したから、概ね精度が8割程度まで上がっている。
但し、事前に俺の能力でわかっていることや、水平方向に重力異常を起こさせるようなことはレポートに書けないよね。
だから、それに代わるものとして振り子を使うんだ。
重さが10グラムの鉛の錘と、1キログラムの鉛の錘を使って脚の長さが調節可能な四脚に釣り下げた振り子二種類を造る。
この振り子を東西方向若しくは南北方向に振らすことで、振り子の重量と加速度変化による重力変化をレーザーポインターとその反射をとらえる照度計でデジタル化し、俺の知っているデータと突き合わせて数値化するわけだ。
このため地表近くの重力変化を調べる振り子装置一式と、より高い位置で振り子を動かす振り子装置一式の二組が要るんだ。
俺の小遣いで何とか出来る範囲での工作だから左程の精度は期待できないけれど、少なくとも大掛かりな装置よりは簡単な仕掛けで大枠の地中構造が見られるはずだ。
これまで行った近所での事前調査では、風なんかの外力の影響がない状態では、ほぼ俺の観測データに近い数値が得られている。
但し、地中内部に均一に金属等がばらまかれているような状態では良いデータが取れないこともわかっている。
飽くまで同じような岩とか土とかの中に異分子である金属とかが存在する場合に、比較的高い精度でその位置を特定できるだけだ。
因みにお墓を使ってやってみたら、石の墓に収まっている陶器製の骨壺が確認できたからかなりの精度があると思うよ。
ここに至るまでには、地球の自転による横ブレ変化や慣性モーメントも考慮する必要があるなど、結構数値照合に手間暇がかかった。
夏休みに入る前から少しずつ準備しておいてよかったよ。
さもなければ測定装置の作成だけで夏休みの自由研究は終わっていただろう。
そうしてノートパソコンとアナログ・デジタル変換装置を組み合わせることで、PCに粗いけれど地中の3D画像を映し出すことに成功したのは、D古墳に出かける前々日だった。
でかいリュックを背負い、自転車のフレームに二つの四脚を固縛して、荷台にもバッグ一つが括り付けられている。
重量は20キロまではいかないけれど、結構な荷物だな。
待ち合わせ場所で梓ちゃんと落ち合い、午前10時にはD古墳に到着した。
最初に俺の能力で古墳の上をあちらこちらと歩いて地中内部の概況把握をしてみる。
無論、地中に埋まっているものの探索なんだが、予め場所を確定してからじゃないと俺の簡易地中レーダーは使えない。
無駄にあちらこちらを探して、いたずらに梓ちゃんを待たせても仕方がないだろう?
歩いてみて表面は草木が沢山あるんだけれど、ちゃんと前方後円墳が知覚できるってのは凄いよな。
そうして俺の探査距離も伸びているからね。
今では俺を中心に40m程度までの範囲は分かるんだ。
で、円墳と方墳の境にあたる「くびれ」部分の西側にかなりの埋蔵物があるのが分かった。
一応市役所の資料では、D古墳は5世紀前半の頃の古墳とされているんだけれど、埋蔵物によっては年代特定が可能になる場合もあるらしい。
円墳と方墳の頂部から2m内外のところには埴輪らしきものが多数埋まっていそうだ。
中学生の時に近隣の町のG古墳に見学に行ったことがあるが、G古墳は古の古墳の姿を現代に再現したもので、方墳と円墳の斜面には無数の丸石が並べてあった。
また、円墳と方墳の頂部には埴輪が多数並べてあったことを覚えている。
そうして、D古墳も同様に斜面に無数の丸石が敷き詰められているようだ。
G古墳のようにきれいに成形されてはおらず、あちらこちらで崩れてはいるが、元の形は概ね推測できる。
そうしてその上に土砂が2mほど堆積しているような状況だ。
因みに、仁徳天皇陵と呼ばれる大仙陵古墳の場合には、周囲に結構大きな掘割があるんだが、D古墳には無い。
但し、地形的にあるいは堀があったのかもと思われる草っぱらがあるんで、そこを丹念に調べると、やはり石で築いた堀の護岸と思われる個所が地下にいくつかあった。
尤も、こっちの方は、方墳や円墳以上に形が崩れまくっている。
これも土砂が堆積して、堀ではなくなったものと推測できる。
二基の振り子の設置場所を変えて移動しながら、色々な方角からの計測をすることで俺のPCに墳墓及びその近辺の等高線を描き、地中の様子を3Dで再現させる。
当然その中に埴輪の破片だとか、よくわからん金属製の品も浮き出てくる。
単純に金属、石、土、草木は、密度の関係だろうが、3D画面上の色合いでぼんやりと区別できている。
最初に堀の跡と思われる部分の測定を行い。
次いで方墳を調査した。
方墳には特段の発見は無いんだが、簡易センサーでもくびれ部分に多数の金属類を確認できた。
そこまでを午前中の調査とし、梓ちゃんと最寄りの国道沿いのファミレスに行って昼食がてら休憩だ。
前回も感じたが、やっぱり夏は暑いぜ。
麦藁帽の小さい奴を被っているんだが、滝のように流れる汗は止めようもない。
冷気に包まれたファミレスに入って、二人してほっと溜息をつき、お互いに笑ったよ。
ため息のつきかたがシンクロしていたからねぇ
計測機器はそのまま置いておくわけにも行かないから、自転車に積んでそのまま持ってきている。
ファミレスでは、店長お奨めのカツカレーとドリンク、それにスィーツを頼んでみた。
男だけではちょっと頼みにくいが、梓ちゃんと一緒ならパフェでも構わないだろう。
梓ちゃんと色々な話をしつつ、時間をかけてゆっくり賞味させていただいたけれど、うん、美味しかったな。
少しカロリーオーバーかもしれないが、これからまた汗をかきながらD古墳を上り下りしながらうろつかなければならんから、この程度は余裕で大丈夫だと思う。
そうして戻ったD古墳、円墳の方にはどうやら石室がありそうだ。
石室と石室に至る石造りのトンネルが良くわかるような3D画像が取れたよ。
流石に石室の中までは詳細に描けないんだが、それでも石棺のような形状がおぼろげに浮かんではいる。
俺の脳内センサーでは間違いなく石棺だし、内部の遺留物までもがある程度分かるんだが、流石に俺の造った簡易計測装置にそこまで期待するのは無理だ。
俺が作った計測装置は、既にあるものを結構利用したからあまり金はかかってはいないし、四脚や錘は自作だしな。
その意味では、ほとんど金はかかっていないんだ。
あ、レーザーポインターと3D描画をするためのソフトだけは通販で購入したぜ。
受光センサーは、家にあった古い赤外線プローブの光感知センサーを流用して自作したものだから、俺の労力以外は、ほぼタダだな。
尤も、アナログデータをデジタル化してPCに取り込むプログラム作成に結構手間取ったけれどな。
まぁ、そんな手作りの簡易計測器に高性能を求めちゃいけないよな。
むしろ、こんな簡単な装置で、これほど明確な地中の3D画像が得られたことを褒(ほ)めてもらいたいもんだよ。
色々場所を変えて計測しなければならなかったので、結構時間がかかったが、午後4時までには無事に調査が終了した。
帰路、朝の待ち合わせ場所近くにあった喫茶店でアイスコーヒーをいただき、それから梓ちゃんと別れた。
これから俺はレポートを作成しなけりゃならん。
梓ちゃんには、俺のデジカメとVTRを預けて、適宜撮影を頼んでいたのでその編集もしなけりゃならんのだ。
ウーン、D古墳の調査は準備段階から数えるとえらい手間暇をかけたよなぁ。
まぁ、お陰様でとっても良い自由研究レポートになりそうだ。
レポートが出来上がったら、当然学校に提出するんだけれど、市役所にも提出しておかねばならないだろうな。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今日は大晦日ですね。
色々あった1年でしたが、皆さんにとっては如何だったのでしょう。
来年もどうぞよろしくお願いします。
By サクラ近衛将監
多少の疲労は残ったけれど、亜空間収納を解除しなければならないほどの疲労は無かったな。
今後とも、鋭意訓練を続けて耐性というか耐力をつけたいと思っているよ。
もしかすると、収納量の増大があるかも知れないからな。
収納量が増えれば、外に出して持つ手荷物が減って、いろいろ便利になるだろうと思っているんだ。
◇◇◇◇
7月28日、JRのF駅近傍、東北東の十字路にあるE映画館の前が今日の待ち合わせ場所だ。
飲料水だけは用意して、弁当は無し。
D古墳近くの国道沿いにファミレスがあるんで、お昼はそこで食べる予定なんだ。
D古墳から徒歩で10分圏内、自転車だと5分もかからないだろう。
待ち合わせ場所からD古墳までは、東へ直線距離でおよそ4キロ、道なりでおそらく5キロ近くはあるけれど、自転車なら20分程度で到着できる場所だ。
俺の荷物は結構な量になったよ。
実のところ、この古墳調査では穴掘りとかの発掘作業はできないから、測定用の簡易装置を色々と試行錯誤して造ってみたんだ。
単純に言うと、地中レーダーを造ってみたわけだ。
多分、俺の能力なしにはできなかったと思う。
何せ俺の能力で地中の様子がかなりわかるようになっているからね。
家の近くの道路等で排水溝やら水道管をサーチし、その上で俺の把握したデータから逆算して数値化するんだ。
次いで、それに見合う数値が得られるよう様々な方法でデータを入手してみる。
音波や振動もその一つだったんだが、一番精度が高かったのは重力変化だった。
俺の能力で重量物(例えば鉛の錘等)に対して水平方向にベクトルを与えると、地表面での重力値が微妙に変化する。
その変化を数値化すると、水道管の埋没位置や排水溝の深さや構造などが非破壊検査のように確認できるんだ。
古墳の調査というよりは「新たな非破壊検査装置の製作」と自由研究の表題を変えた方が良いかもしれないが、まぁ、初志貫徹という奴で一応はD古墳調査を名目にする。
手法としては、東西方向若しくは南北方向の弱い横向き重力波を、地上1mの高度に生み出すことで垂直方向の重力の変化を地表面で計測、距離の二乗に比例する原点値から地中の深さごとによる密度変化を数値化するんだ。
元々俺の能力でかなり詳細な地中の3Dマップが作れるので、測定値を元データに合わせるだけでパラメーターが推測できる。
このために試行錯誤の実験を50回ほども繰り返したから、概ね精度が8割程度まで上がっている。
但し、事前に俺の能力でわかっていることや、水平方向に重力異常を起こさせるようなことはレポートに書けないよね。
だから、それに代わるものとして振り子を使うんだ。
重さが10グラムの鉛の錘と、1キログラムの鉛の錘を使って脚の長さが調節可能な四脚に釣り下げた振り子二種類を造る。
この振り子を東西方向若しくは南北方向に振らすことで、振り子の重量と加速度変化による重力変化をレーザーポインターとその反射をとらえる照度計でデジタル化し、俺の知っているデータと突き合わせて数値化するわけだ。
このため地表近くの重力変化を調べる振り子装置一式と、より高い位置で振り子を動かす振り子装置一式の二組が要るんだ。
俺の小遣いで何とか出来る範囲での工作だから左程の精度は期待できないけれど、少なくとも大掛かりな装置よりは簡単な仕掛けで大枠の地中構造が見られるはずだ。
これまで行った近所での事前調査では、風なんかの外力の影響がない状態では、ほぼ俺の観測データに近い数値が得られている。
但し、地中内部に均一に金属等がばらまかれているような状態では良いデータが取れないこともわかっている。
飽くまで同じような岩とか土とかの中に異分子である金属とかが存在する場合に、比較的高い精度でその位置を特定できるだけだ。
因みにお墓を使ってやってみたら、石の墓に収まっている陶器製の骨壺が確認できたからかなりの精度があると思うよ。
ここに至るまでには、地球の自転による横ブレ変化や慣性モーメントも考慮する必要があるなど、結構数値照合に手間暇がかかった。
夏休みに入る前から少しずつ準備しておいてよかったよ。
さもなければ測定装置の作成だけで夏休みの自由研究は終わっていただろう。
そうしてノートパソコンとアナログ・デジタル変換装置を組み合わせることで、PCに粗いけれど地中の3D画像を映し出すことに成功したのは、D古墳に出かける前々日だった。
でかいリュックを背負い、自転車のフレームに二つの四脚を固縛して、荷台にもバッグ一つが括り付けられている。
重量は20キロまではいかないけれど、結構な荷物だな。
待ち合わせ場所で梓ちゃんと落ち合い、午前10時にはD古墳に到着した。
最初に俺の能力で古墳の上をあちらこちらと歩いて地中内部の概況把握をしてみる。
無論、地中に埋まっているものの探索なんだが、予め場所を確定してからじゃないと俺の簡易地中レーダーは使えない。
無駄にあちらこちらを探して、いたずらに梓ちゃんを待たせても仕方がないだろう?
歩いてみて表面は草木が沢山あるんだけれど、ちゃんと前方後円墳が知覚できるってのは凄いよな。
そうして俺の探査距離も伸びているからね。
今では俺を中心に40m程度までの範囲は分かるんだ。
で、円墳と方墳の境にあたる「くびれ」部分の西側にかなりの埋蔵物があるのが分かった。
一応市役所の資料では、D古墳は5世紀前半の頃の古墳とされているんだけれど、埋蔵物によっては年代特定が可能になる場合もあるらしい。
円墳と方墳の頂部から2m内外のところには埴輪らしきものが多数埋まっていそうだ。
中学生の時に近隣の町のG古墳に見学に行ったことがあるが、G古墳は古の古墳の姿を現代に再現したもので、方墳と円墳の斜面には無数の丸石が並べてあった。
また、円墳と方墳の頂部には埴輪が多数並べてあったことを覚えている。
そうして、D古墳も同様に斜面に無数の丸石が敷き詰められているようだ。
G古墳のようにきれいに成形されてはおらず、あちらこちらで崩れてはいるが、元の形は概ね推測できる。
そうしてその上に土砂が2mほど堆積しているような状況だ。
因みに、仁徳天皇陵と呼ばれる大仙陵古墳の場合には、周囲に結構大きな掘割があるんだが、D古墳には無い。
但し、地形的にあるいは堀があったのかもと思われる草っぱらがあるんで、そこを丹念に調べると、やはり石で築いた堀の護岸と思われる個所が地下にいくつかあった。
尤も、こっちの方は、方墳や円墳以上に形が崩れまくっている。
これも土砂が堆積して、堀ではなくなったものと推測できる。
二基の振り子の設置場所を変えて移動しながら、色々な方角からの計測をすることで俺のPCに墳墓及びその近辺の等高線を描き、地中の様子を3Dで再現させる。
当然その中に埴輪の破片だとか、よくわからん金属製の品も浮き出てくる。
単純に金属、石、土、草木は、密度の関係だろうが、3D画面上の色合いでぼんやりと区別できている。
最初に堀の跡と思われる部分の測定を行い。
次いで方墳を調査した。
方墳には特段の発見は無いんだが、簡易センサーでもくびれ部分に多数の金属類を確認できた。
そこまでを午前中の調査とし、梓ちゃんと最寄りの国道沿いのファミレスに行って昼食がてら休憩だ。
前回も感じたが、やっぱり夏は暑いぜ。
麦藁帽の小さい奴を被っているんだが、滝のように流れる汗は止めようもない。
冷気に包まれたファミレスに入って、二人してほっと溜息をつき、お互いに笑ったよ。
ため息のつきかたがシンクロしていたからねぇ
計測機器はそのまま置いておくわけにも行かないから、自転車に積んでそのまま持ってきている。
ファミレスでは、店長お奨めのカツカレーとドリンク、それにスィーツを頼んでみた。
男だけではちょっと頼みにくいが、梓ちゃんと一緒ならパフェでも構わないだろう。
梓ちゃんと色々な話をしつつ、時間をかけてゆっくり賞味させていただいたけれど、うん、美味しかったな。
少しカロリーオーバーかもしれないが、これからまた汗をかきながらD古墳を上り下りしながらうろつかなければならんから、この程度は余裕で大丈夫だと思う。
そうして戻ったD古墳、円墳の方にはどうやら石室がありそうだ。
石室と石室に至る石造りのトンネルが良くわかるような3D画像が取れたよ。
流石に石室の中までは詳細に描けないんだが、それでも石棺のような形状がおぼろげに浮かんではいる。
俺の脳内センサーでは間違いなく石棺だし、内部の遺留物までもがある程度分かるんだが、流石に俺の造った簡易計測装置にそこまで期待するのは無理だ。
俺が作った計測装置は、既にあるものを結構利用したからあまり金はかかってはいないし、四脚や錘は自作だしな。
その意味では、ほとんど金はかかっていないんだ。
あ、レーザーポインターと3D描画をするためのソフトだけは通販で購入したぜ。
受光センサーは、家にあった古い赤外線プローブの光感知センサーを流用して自作したものだから、俺の労力以外は、ほぼタダだな。
尤も、アナログデータをデジタル化してPCに取り込むプログラム作成に結構手間取ったけれどな。
まぁ、そんな手作りの簡易計測器に高性能を求めちゃいけないよな。
むしろ、こんな簡単な装置で、これほど明確な地中の3D画像が得られたことを褒(ほ)めてもらいたいもんだよ。
色々場所を変えて計測しなければならなかったので、結構時間がかかったが、午後4時までには無事に調査が終了した。
帰路、朝の待ち合わせ場所近くにあった喫茶店でアイスコーヒーをいただき、それから梓ちゃんと別れた。
これから俺はレポートを作成しなけりゃならん。
梓ちゃんには、俺のデジカメとVTRを預けて、適宜撮影を頼んでいたのでその編集もしなけりゃならんのだ。
ウーン、D古墳の調査は準備段階から数えるとえらい手間暇をかけたよなぁ。
まぁ、お陰様でとっても良い自由研究レポートになりそうだ。
レポートが出来上がったら、当然学校に提出するんだけれど、市役所にも提出しておかねばならないだろうな。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今日は大晦日ですね。
色々あった1年でしたが、皆さんにとっては如何だったのでしょう。
来年もどうぞよろしくお願いします。
By サクラ近衛将監
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