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第一章 与えられし異能
1ー17 夏休みの自由研究 その一
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今日は、7月26日、梓ちゃんとS市へ行く日だ。
夏休みの朝7時に家を出る旨伝えたらお袋や祖父母から結構驚かれたな。
だから、一応、梓ちゃんとS市の染色工房へ行くことは伝えてあるし、秋口には梓ちゃんを家に連れて来ることも昨日の夕食時にちゃんと予告している。
つまりは、秦山家では半分公認のデートになっているわけだ。
何となく、お袋や祖父母の笑顔で見送られて俺は家を出た。
駅までは信号待ちが有っても精々15分。
俺がバス停前に着くと、すぐに梓ちゃんも現れた。
今日は、ジーパンに半袖Tシャツ姿で、リュックを背負っている。
何となく胸が強調されて見えるのは俺のリビドーの所為だろうか?
リュックの荷物は、万が一染色作業で汚れた場合の着替えなんだそうだ。
俺の方は染色には手を出さないつもりだから、汚れるつもりはないのでそこまでは用意していない。
但し、俺の背負っているリュック以外に、亜空間収納には若干の衣類が入ってはいるんだ。
実は21日からの夏休みに入ってから、夕食後に色々試行錯誤した結果、属性2の範疇の『空間』要因が7に上昇したため、亜空間を新たに生み出すことに成功したんだ。
空間と空間の摩擦を少なくしてみたら、何となく亀裂が生じて、そこにモノを放り込んで出し入れができるんで保管できると気づいたわけだ。
面白いことに、方法さえ間違えなければいつでも使えるし、いつでも閉めることができる。
不要物を入れて一旦亜空間を閉じてから再度開けてみたら、容れておいたものがそのまま取り出せた。
おまけに俺が場所を移動しても同じことができたから、単純に青色のネコ型ロボットが持っている便利ポケットのようなもんだな。
こいつは何といえばいいのか・・・。
ウーン、ラノベで言うインベントリに近いかもしれない。
亜空間収納庫とでもいうのかな。
今のところ時間調整まではできていないけれど、何となく『Resistance』で時間も制御可能なような予感がしている。
時間経過に抵抗を入れて遅らせること、同時に時間経過を促進させて時間を進ませることが範囲限定ならばできるかもしれないと思うんだ。
燃焼や重力の加減ができるんなら、空間の時間の加減もできるんじゃないだろうかって思っている。
但し、生憎と属性の1にも2にも「時間」という素因も要因も無いんだけれどね。
その難しい問題の解決は別にしても、いずれにしろ、夏休みの始めの三日間で亜空間収納ができるようになったよ。
今のところ、収容量は多くない。
精々、重さで10キロ、容量で18リットル入りポリタンク2個程度ぐらいしか入らないし、そもそも亜空間収納をしているとその分だけ俺が疲れるんだ。
俺のステータスには魔力って欄が無いからな。
きっとそこらあたりが関係しているんじゃないかと思う。
目に見えないけど「魔力」的な力の源泉があるのかどうかだね。
今のところポリタンク一つ分の容積で、重量約5キロぐらいの物ならば、二日ぐらいは何とか出来るが、それ以降はめっちゃ疲れて、その場に亜空間の中に入れてあるものを放り出してしまうことになるから長時間は無理だ。
何とか一日ぐらいなら大丈夫な筈と思っての実験だ。
危険でもあるけれど、その実験も兼ねているんで、万が一の場合は外に放り出すのを覚悟で入れているし、その為にビデオカメラを入れているリュックも背負っている。
若しどうしても外に放り出す羽目になったらリュックに押し込むつもりでいるんだ。
朝7時半、定刻通りにバスは発車した。
梓ちゃんとの会話で目一杯だったから、途中の風景はあまり覚えていないな。
特段の支障も無く、定刻の8時半にはS市に到着した。
停留所から歩いて15分、目当ての工房に着いた。
梓ちゃんは体験コース、俺は単なる付き添いで見学なんだけれど、それを説明すると、工房の人が笑いながら言ってくれた。
「今日は人も少ないから良いけれど、人が多い場合は見学は無しなんだよ。」
思わず俺はラッキーと言っていた。
そうじゃなければ、梓ちゃんと一緒の体験料金を払わねばならないからね。
その日の体験希望者は、梓ちゃんを入れて3名だけ。
梓ちゃん以外の二人は、夏季休暇中の女子大生の友人同士のようだった。
俺は一応工房の人にも、女子大生の人にも一応の説明をして、撮影の許可を貰ったよ。
肖像権があるからね。
工房の人も女子大生も夏休みの自由研究と知って、すぐに許可を貰えたよ。
最近のスマホは便利だけれど、流石に撮影となれば4K画像のVTRには負ける。
俺が準備したのは、お袋さんのお弟子さんから、古い4K小型ビデオカメラを一ヵ月ほど前に安く譲ってもらったものだが、まだまだ十分使える代物だ。
何でも新型を購入したので古いものは要らないということで、お袋に要らないかと相談していたところをたまたま俺が聞きつけ、2万円という超安値で譲ってもらったものだ。
お弟子さんはタダでも良いとは言っていたんだが、タダほど高い物は無いからね。
ちゃんとメル○リ辺りを調べて2万円の値をつけたわけだ。
予備バッテリーを使っても連続撮影は精々3時間程度が限度じゃないかと思うので、念のため今日はレンタルのモバイルバッテリーも用意してある。
まぁ、今日一日は記録係に専従だな。
機織りについては、女子大生二人が本格的に機織りをやっていた。
聞くところでは、この25日から29日までS市内に宿をとって、この工房での体験実習をしているらしい。
染色した糸を使い、木製の機織り機を使って、カシャッ、バタン、シャッというような音を立てながら二人で交代しながら織り上げて行くのは中々見ごたえがあるけれど、それだけでは梓ちゃんの体験にはならないから、2台目の機織り機を使って梓ちゃんも一通りの指導を受けていた。
俺の方は、機織り機を色々な方向から撮影してその構造をしっかりと画像に残すとともに、俺の体内センサーを使って、機織り機全体の構造を把握した。
勿論、主たる映像は梓ちゃんの実体験の方だけれどね。
多分、俺の脳内では機織り機をほぼ完全に把握したから、多分素材があれば機織り機が作れると思う。
糸については混合物だから俺の能力では再生は難しいな。
セルロースの再生程度では、麻糸なんぞは再生できないよ。
特に動物性の繊維である絹なんぞはもっと難しいだろうね。
朝9時から始まった工房体験は、説明を含め機織りだけでほぼ二時間を費やした。
女子大生二人は相変わらず機織り機に専従しているけれど、梓ちゃんは染色作業の方に移動した。
染色は地面の中にある大きな甕の中にある藍に生地若しくは布を漬けて、染めるわけなんだけれど、・・・。
藍に浸すのは15分ほど、暖かい時期と寒い時期ではこの時間に差をつけるらしい。
布を空中で広げ、空気に触れさせて酸化させると、薄い緑が徐々に青くなるのが藍染めの特徴だ。
一旦、布を絞り、過酸化水素水液に10分ほどつけてから、布を水洗いして水気をとり、天日干しすると出来上がりのようだ。
何でも藍染めキットが市販されているらしく、家庭でも藍染めをすることはできるらしいぜ。
梓ちゃんは事前に五種類の布地を用意していた。
いずれもハンカチよりも小さい12センチ四方ぐらいの布地だな。
麻、コットン、羊毛、レーヨン、それにポリエステルを用意していた。
染色のお値段は一つの布地について千円が相場なのだそうだけれど、店長さんが高校生の自由研究ならばおまけするといって、五枚で五千円のところを二割引きの四千円にしてくれたようだ。
結果は、天然物の素材はしっかりと染められるけれど、ポリエステルはかなり色が薄いということが分かったようだ。
店長さんの話ではレーヨンはまだしも、ポリエステルは藍染めには向かないんだそうだ。
色がついても落ちやすいらしい。
その辺も梓ちゃんの研究対象になるそうだ。
夏休みを掛けて、できるだけ毎日五枚の布地を洗濯して色の変化を確認するのが梓ちゃんの狙いのようだ。
染色自体には左程時間はかからない。
液につけて、布を絞ってから定着液につけて、それから物干し竿に乾すだけの作業を行って丁度お昼になった。
工房の人に昼食に行く旨を告げて、最寄りの大型モール店に向かう。
モール三階にフードコートというか食堂があって、いろいろなものが食べられる。
ほかにマッ○(2階)とかモ○バーガー(1階)もあるのはネットで確認している。
工房から歩いて15分ほど、多少汗をかきながらモール施設に到着。
お昼時だから人が結構いたので、最終的には2階のマッ○に潜り込んだ。
当初お目当てだったフードコートは、夏休みの所為かお子様連れの客に占拠されていて席が無いので諦めたんだ。
まぁ、大したものは置いていないのだけどね。
ご飯ものや麺類を頼むならフードコートのキッチンが良かったのだけれど・・・。
午後からも染色の技術についての見学が待っているから、ここで余り時間はとれないんだ。
結局二人でダブル○ーズバーガーのセットを頼んでかぶりついた。
30分ほど軽食を楽しんで、工房に戻る。
うん、外はやっぱり暑いよね。
夏の日差しがじりじりと照り付けて、このままトーストされそうな感じかな。
日本の夏はやっぱり暑いんだ。
普段、家も学校も冷房が効いているから、左程に暑さを感じないが、工房は風通しはいいけれど外気そのものだから、日向を歩いてきたことと相まって汗が噴き出てしまう。
俺も梓ちゃんも噴き出る汗をタオルで拭きながら、店長さんの藍染め技法を見学する。
藍染めの柄を描くには色々な技法があるんだ。
それに色合いの異なる藍染めもあると教えてもらった。
筒巻き絞り、巻き上げ絞り、雪花絞り、むらくも染め、ろうけつ染め等々、技法により色々な柄が生まれます。
藍と同じような草木染めについても店長さん秘蔵の品やアルバムを見せていただいて見識を広めた。
午後からの見学も午後三時半過ぎで終了、乾かしていた五枚の藍染め布地を取り入れて、店長さんにお礼を言って引き上げました。
路線バスに乗れば午後5時までにはF駅前に着けそうです。
俺のカメラには、いつになく真剣な表情の梓ちゃんの顔がたくさん写っています。
機織りについている織姫の顔、藍に染まった布を一生懸命に絞っている女工さんの顔、水洗いする洗濯姫の顔、定着液に着けている不安気な表情、少し早めの真夏の日差しを浴びながら布を干して汗でキラキラ輝いている顔。
うん、しっかりと取れている。
梓ちゃんに渡すVTRは、加工して作業過程が良くわかるものにするけれど、それでも梓ちゃんの顔が出てこないと、誰の自由研究なのかわからなくなる。
体験実習ではあるけれど、梓ちゃんは、その後も藍染めに関して色々な考察を入れてレポートを出すようだ。
俺たちは、次の28日の落合場所と出発時間を確認して駅前で別れた。
夏休みの朝7時に家を出る旨伝えたらお袋や祖父母から結構驚かれたな。
だから、一応、梓ちゃんとS市の染色工房へ行くことは伝えてあるし、秋口には梓ちゃんを家に連れて来ることも昨日の夕食時にちゃんと予告している。
つまりは、秦山家では半分公認のデートになっているわけだ。
何となく、お袋や祖父母の笑顔で見送られて俺は家を出た。
駅までは信号待ちが有っても精々15分。
俺がバス停前に着くと、すぐに梓ちゃんも現れた。
今日は、ジーパンに半袖Tシャツ姿で、リュックを背負っている。
何となく胸が強調されて見えるのは俺のリビドーの所為だろうか?
リュックの荷物は、万が一染色作業で汚れた場合の着替えなんだそうだ。
俺の方は染色には手を出さないつもりだから、汚れるつもりはないのでそこまでは用意していない。
但し、俺の背負っているリュック以外に、亜空間収納には若干の衣類が入ってはいるんだ。
実は21日からの夏休みに入ってから、夕食後に色々試行錯誤した結果、属性2の範疇の『空間』要因が7に上昇したため、亜空間を新たに生み出すことに成功したんだ。
空間と空間の摩擦を少なくしてみたら、何となく亀裂が生じて、そこにモノを放り込んで出し入れができるんで保管できると気づいたわけだ。
面白いことに、方法さえ間違えなければいつでも使えるし、いつでも閉めることができる。
不要物を入れて一旦亜空間を閉じてから再度開けてみたら、容れておいたものがそのまま取り出せた。
おまけに俺が場所を移動しても同じことができたから、単純に青色のネコ型ロボットが持っている便利ポケットのようなもんだな。
こいつは何といえばいいのか・・・。
ウーン、ラノベで言うインベントリに近いかもしれない。
亜空間収納庫とでもいうのかな。
今のところ時間調整まではできていないけれど、何となく『Resistance』で時間も制御可能なような予感がしている。
時間経過に抵抗を入れて遅らせること、同時に時間経過を促進させて時間を進ませることが範囲限定ならばできるかもしれないと思うんだ。
燃焼や重力の加減ができるんなら、空間の時間の加減もできるんじゃないだろうかって思っている。
但し、生憎と属性の1にも2にも「時間」という素因も要因も無いんだけれどね。
その難しい問題の解決は別にしても、いずれにしろ、夏休みの始めの三日間で亜空間収納ができるようになったよ。
今のところ、収容量は多くない。
精々、重さで10キロ、容量で18リットル入りポリタンク2個程度ぐらいしか入らないし、そもそも亜空間収納をしているとその分だけ俺が疲れるんだ。
俺のステータスには魔力って欄が無いからな。
きっとそこらあたりが関係しているんじゃないかと思う。
目に見えないけど「魔力」的な力の源泉があるのかどうかだね。
今のところポリタンク一つ分の容積で、重量約5キロぐらいの物ならば、二日ぐらいは何とか出来るが、それ以降はめっちゃ疲れて、その場に亜空間の中に入れてあるものを放り出してしまうことになるから長時間は無理だ。
何とか一日ぐらいなら大丈夫な筈と思っての実験だ。
危険でもあるけれど、その実験も兼ねているんで、万が一の場合は外に放り出すのを覚悟で入れているし、その為にビデオカメラを入れているリュックも背負っている。
若しどうしても外に放り出す羽目になったらリュックに押し込むつもりでいるんだ。
朝7時半、定刻通りにバスは発車した。
梓ちゃんとの会話で目一杯だったから、途中の風景はあまり覚えていないな。
特段の支障も無く、定刻の8時半にはS市に到着した。
停留所から歩いて15分、目当ての工房に着いた。
梓ちゃんは体験コース、俺は単なる付き添いで見学なんだけれど、それを説明すると、工房の人が笑いながら言ってくれた。
「今日は人も少ないから良いけれど、人が多い場合は見学は無しなんだよ。」
思わず俺はラッキーと言っていた。
そうじゃなければ、梓ちゃんと一緒の体験料金を払わねばならないからね。
その日の体験希望者は、梓ちゃんを入れて3名だけ。
梓ちゃん以外の二人は、夏季休暇中の女子大生の友人同士のようだった。
俺は一応工房の人にも、女子大生の人にも一応の説明をして、撮影の許可を貰ったよ。
肖像権があるからね。
工房の人も女子大生も夏休みの自由研究と知って、すぐに許可を貰えたよ。
最近のスマホは便利だけれど、流石に撮影となれば4K画像のVTRには負ける。
俺が準備したのは、お袋さんのお弟子さんから、古い4K小型ビデオカメラを一ヵ月ほど前に安く譲ってもらったものだが、まだまだ十分使える代物だ。
何でも新型を購入したので古いものは要らないということで、お袋に要らないかと相談していたところをたまたま俺が聞きつけ、2万円という超安値で譲ってもらったものだ。
お弟子さんはタダでも良いとは言っていたんだが、タダほど高い物は無いからね。
ちゃんとメル○リ辺りを調べて2万円の値をつけたわけだ。
予備バッテリーを使っても連続撮影は精々3時間程度が限度じゃないかと思うので、念のため今日はレンタルのモバイルバッテリーも用意してある。
まぁ、今日一日は記録係に専従だな。
機織りについては、女子大生二人が本格的に機織りをやっていた。
聞くところでは、この25日から29日までS市内に宿をとって、この工房での体験実習をしているらしい。
染色した糸を使い、木製の機織り機を使って、カシャッ、バタン、シャッというような音を立てながら二人で交代しながら織り上げて行くのは中々見ごたえがあるけれど、それだけでは梓ちゃんの体験にはならないから、2台目の機織り機を使って梓ちゃんも一通りの指導を受けていた。
俺の方は、機織り機を色々な方向から撮影してその構造をしっかりと画像に残すとともに、俺の体内センサーを使って、機織り機全体の構造を把握した。
勿論、主たる映像は梓ちゃんの実体験の方だけれどね。
多分、俺の脳内では機織り機をほぼ完全に把握したから、多分素材があれば機織り機が作れると思う。
糸については混合物だから俺の能力では再生は難しいな。
セルロースの再生程度では、麻糸なんぞは再生できないよ。
特に動物性の繊維である絹なんぞはもっと難しいだろうね。
朝9時から始まった工房体験は、説明を含め機織りだけでほぼ二時間を費やした。
女子大生二人は相変わらず機織り機に専従しているけれど、梓ちゃんは染色作業の方に移動した。
染色は地面の中にある大きな甕の中にある藍に生地若しくは布を漬けて、染めるわけなんだけれど、・・・。
藍に浸すのは15分ほど、暖かい時期と寒い時期ではこの時間に差をつけるらしい。
布を空中で広げ、空気に触れさせて酸化させると、薄い緑が徐々に青くなるのが藍染めの特徴だ。
一旦、布を絞り、過酸化水素水液に10分ほどつけてから、布を水洗いして水気をとり、天日干しすると出来上がりのようだ。
何でも藍染めキットが市販されているらしく、家庭でも藍染めをすることはできるらしいぜ。
梓ちゃんは事前に五種類の布地を用意していた。
いずれもハンカチよりも小さい12センチ四方ぐらいの布地だな。
麻、コットン、羊毛、レーヨン、それにポリエステルを用意していた。
染色のお値段は一つの布地について千円が相場なのだそうだけれど、店長さんが高校生の自由研究ならばおまけするといって、五枚で五千円のところを二割引きの四千円にしてくれたようだ。
結果は、天然物の素材はしっかりと染められるけれど、ポリエステルはかなり色が薄いということが分かったようだ。
店長さんの話ではレーヨンはまだしも、ポリエステルは藍染めには向かないんだそうだ。
色がついても落ちやすいらしい。
その辺も梓ちゃんの研究対象になるそうだ。
夏休みを掛けて、できるだけ毎日五枚の布地を洗濯して色の変化を確認するのが梓ちゃんの狙いのようだ。
染色自体には左程時間はかからない。
液につけて、布を絞ってから定着液につけて、それから物干し竿に乾すだけの作業を行って丁度お昼になった。
工房の人に昼食に行く旨を告げて、最寄りの大型モール店に向かう。
モール三階にフードコートというか食堂があって、いろいろなものが食べられる。
ほかにマッ○(2階)とかモ○バーガー(1階)もあるのはネットで確認している。
工房から歩いて15分ほど、多少汗をかきながらモール施設に到着。
お昼時だから人が結構いたので、最終的には2階のマッ○に潜り込んだ。
当初お目当てだったフードコートは、夏休みの所為かお子様連れの客に占拠されていて席が無いので諦めたんだ。
まぁ、大したものは置いていないのだけどね。
ご飯ものや麺類を頼むならフードコートのキッチンが良かったのだけれど・・・。
午後からも染色の技術についての見学が待っているから、ここで余り時間はとれないんだ。
結局二人でダブル○ーズバーガーのセットを頼んでかぶりついた。
30分ほど軽食を楽しんで、工房に戻る。
うん、外はやっぱり暑いよね。
夏の日差しがじりじりと照り付けて、このままトーストされそうな感じかな。
日本の夏はやっぱり暑いんだ。
普段、家も学校も冷房が効いているから、左程に暑さを感じないが、工房は風通しはいいけれど外気そのものだから、日向を歩いてきたことと相まって汗が噴き出てしまう。
俺も梓ちゃんも噴き出る汗をタオルで拭きながら、店長さんの藍染め技法を見学する。
藍染めの柄を描くには色々な技法があるんだ。
それに色合いの異なる藍染めもあると教えてもらった。
筒巻き絞り、巻き上げ絞り、雪花絞り、むらくも染め、ろうけつ染め等々、技法により色々な柄が生まれます。
藍と同じような草木染めについても店長さん秘蔵の品やアルバムを見せていただいて見識を広めた。
午後からの見学も午後三時半過ぎで終了、乾かしていた五枚の藍染め布地を取り入れて、店長さんにお礼を言って引き上げました。
路線バスに乗れば午後5時までにはF駅前に着けそうです。
俺のカメラには、いつになく真剣な表情の梓ちゃんの顔がたくさん写っています。
機織りについている織姫の顔、藍に染まった布を一生懸命に絞っている女工さんの顔、水洗いする洗濯姫の顔、定着液に着けている不安気な表情、少し早めの真夏の日差しを浴びながら布を干して汗でキラキラ輝いている顔。
うん、しっかりと取れている。
梓ちゃんに渡すVTRは、加工して作業過程が良くわかるものにするけれど、それでも梓ちゃんの顔が出てこないと、誰の自由研究なのかわからなくなる。
体験実習ではあるけれど、梓ちゃんは、その後も藍染めに関して色々な考察を入れてレポートを出すようだ。
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