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第一章 与えられし異能
1-14 抽出と融合
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『調剤』が何となく錬金術のようになってしまったけれど、これで良いノンかな?
今のところ、『調剤』のとっかかりで風邪薬の素材に入っていたセルロースを造れるかどうか試しただけなんだけれど・・・。
もう少し薬剤やらを勉強して色々なものを生み出したいとは思っている。
但し、製薬会社じゃないんだから、素材になるようなものを大量に入手するのは難しい。
従って、素材の一つ一つを入手できるかどうかの一環でセルロースを試してみたんだけれど、実は、こいつは植物を使えば簡単に入手できるはずだと思っている。
まぁ、どの素材から選ぶかが問題ではあるけれど、和紙の材料になるものなら簡単に入手できるだろうし、麻などの繊維素材もセルロースだから、それからも入手できるんじゃないかと思っている。
特に『採掘』で岩の中から元素を抽出できたように、元素ではなくって高分子素材を『採掘』?、『採取』?或いは『抽出』?できれば、問題は非常に簡単になる。
そんなことが可能かどうかはわからないんだけれど、まぁ、試してみる価値はあるよね。
そんなことを思いついて、試行を始めたのが、果物から砂糖(果糖?)を採取できないかどうかという作業だった。
『採掘』なのかあるいは『調剤』なのかが、ものすごく曖昧だけれど、物に含まれている高分子素材や化合物を特定して分離・採取できるならすごく便利だよね。
因みに果糖は、C6H12O6だけれど、砂糖(ショ糖)はC12H22O11なので化学式が異なる。
おそらくは炭素、水素、酸素の元素から合成もできると思うけれど、既にある果物から果糖だけを取り出せるかどうかだ。
実験に使った果物は、冷蔵庫にあったリンゴの紅玉だった。
昨日、家族全員が三時のおやつで食べたアップルパイの素材だったのじゃないかと思うのだが、丸いリンゴの半分だけが冷蔵庫にラップで包まれていた。
リンゴに含まれる糖類の割合は、物によっても違うらしいが、果糖が5~8%、ショ糖が2~4%、ブドウ糖が2~3%、ソルビトールが0.5~1%であるらしい。
この果糖とブドウ糖は、化学式は一緒なのに性状が若干違うみたい。
で、困ったのは、俺が頭の中で果糖とブドウ糖として認識しているのは化学式のC6H12O6なもんだから、実は両者の区別がついていない。
仕方がないから曖昧なままやってみたら、一応なんか出て来たな。
白く細かい粉状の固形物だ。
鑑定をかけてみると、果糖とブドウ糖の混合物と出た。
どうやら分子式に見合う糖類を抽出したようだ。
残りの果実はどうかというと、一応残っているんだが・・・。
毒は無いだろうと思って、小さく切ってひとかけら口にしてみたが、異様に酸っぱかったな。
ひょっとすると、甘味が全部抜けたのかもしれない。
念のため、ショ糖の化学式を念じながら同様の作業をしてみると、白い粉がわずかにできた。
鑑定をするとショ糖に間違いは無かった。
つまりリンゴからブドウ糖と果糖、それにショ糖を抽出できたことになる。
果糖とブドウ糖の混合物を10とすると、ショ糖は3ぐらいしかないように思える。
勇気を奮って残されたリンゴの残骸を味見してみることにする。
ちゃんとリンゴの形は整っているんだが、いろいろと抜いたから絶対にリンゴの味はしないはず。
ほんの少し口に入れてすぐに吐き出す羽目になった。
酸っぱいのと苦いのが一度に来て、とんでもない味になった。
うん、仮に元が食料であっても、今度から残骸を口にして味見するのは絶対に止めにしようと思う俺だった。
この実験から言えることは高分子化合物も分子式が特定できているような場合には、『採掘』か『調剤』で採取できるということだった。
残念ながら俺自身、その区別が未だにわかっていない。
もう少し頑張ってみるかな。
俺の時計はタフソーラーという某社の電波時計だ。
若者向けにできているんだが、実はこいつは10気圧までの潜水にも耐えられる。
10気圧と言えば100mの深度の筈だが、そんなところまで潜った日には身体の方がイカれることになる。
まぁ、普通にダイビングをしても時計だけは大丈夫という奴だな。
で、この時計の透明なガラスに使われているのがサファイアガラスという特別なガラスだ。
なんでも純度の高い酸化アルミニウムと微量の酸化鉄を2000℃以上の高温で熱して溶融させ、単結晶を形成するとサファイアガラスができるらしい。
普通のガラスが、ケイシャ(珪砂)、ソーダ灰、石灰石の3つから造れるのに比べて全然別物だよね。
酸化アルミナはネットでも購入できるし、酸化鉄は釘から造れるな。
ということで、酸化アルミナ1㎏を購入して、別途実験することにした。
今度は何だろうね。
『採掘』じゃないんだけれど、『調剤』かと言うと、ちょっとそれからも外れる感じかな?
そうして俺がやろうとしていることは、2000℃以上という高熱を与えずに、常温でサファイアガラスが造れるかどうかの実験だ。
酸化アルミナと微量の酸化鉄からなる単結晶が人工サファイアであり、サファイアガラスとなる。
要は単結晶を生みだせばいいわけなので、イメージとしては酸化アルミナの溶液に微量の酸化鉄を染み渡らせることなんだ。
元々ガラスというのは固体様の液体なんだって聞いたことがある。
俺にしたら、余り意味が解らないんだが・・・。
サファイアガラスも同じであれば、液状の中に微量の酸化鉄を混ぜ込む感じでできるんじゃないかと単純に考えたわけだ。
2000℃以上という温度が必要なのは、本当に液状にするために必要な温度を与えて酸化鉄を溶かしながら混入させるのだろうけれど、俺の場合、分散配置が固体の中でもできるし、高分子の連結も可能なように思えるんだ。
だから常温での融合を試みてみたいわけだ。
その前にすることは、溶かさずに分子配分ができるかどうかの実験だな。
こいつは釘でやってみる。
釘は軟鉄だ。
こいつに炭素を混ぜると硬度を増して鋼や鋳鉄になる。
鋼は、炭素含有量が0.08~2.0%なので、釘はそれ以下の炭素を含んでいるということになる。
一般的には釘の炭素0.02~0.3~0.3%程度らしく、軟鋼が使われることが多い。 注)「軟鋼」は炭素量が0.02~0.3~0.3%)、「硬鋼」は(炭素量が0.3~2.1%だ。
釘の場合、そのままでは錆びやすいから、JIS規格ではメッキ等で表面処理された鉄またはステンレス鋼を釘と言うようだ。
また、炭素を極限まで減らしたものは純鉄と呼ばれ、磁化され易い鉄になる。
純鉄の中でも高純度と呼ばれるものでさえも結構な不純物が含まれており、それらの鉄は合金としての性質を帯びて性質が変わるようだ。
多分、俺が岩の中から抽出した鉄は、純鉄の筈だ。
そうして、俺が抽出した鉄は、超高純度の鉄以上に純鉄で、100%鉄のみで出来ているのじゃないかと思う。
それがどんな性質なのかは、これまで誰も確認していないんだが、少なくとも99.9996%の純鉄であれば錆びないし、塩酸でも腐食しないらしい。
そうして合金にした場合の加工性が良くなるなどの特徴があるらしいけれど、100%の場合はどうなんだろうね?
俺は一寸五分(長さ45ミリ)の鉄丸釘を4本用意した。
2本はそのまま使うつもりだが、もう2本はこの釘から鉄を抽出して、純鉄の釘を作るつもりでいる。
別に「釘」に意味があるわけじゃないんだが、形のままに加工というか、混ぜ合わせることができるかどうかの実験でもある。
結果から言うと、釘に炭素を混ぜ合わせることに成功したようだ。
普通の釘2本については、一本は鋳鉄にまで炭素濃度を上げた。
およそ3.5%の炭素含有量は鋼を超えているだろう。
そいつを万力で固定してハンマーで叩いたら曲がらずに折れた。
もろくなったわけだ。
もう一本は、1%の炭素濃度で固定した。
こいつは固く強靭だった。
普通の釘なら曲がるんだろうけれど、少々叩いても曲がりもしなかったな。
破断実験でもできるのであれば強度がわかるんだが、現状ではそこまでは必要ない。
要は軟鉄を使って、鋼や鋳鉄を生み出せるということがわかっただけでいい。
普通に熱を加えれば割合簡単にできるのかもしれないが、加熱を一切せずに鋼や鋳鉄を作れるのがすごいと思う。
次いで、残った2本の釘から鉄のみを抽出した。
釘の格好のままわずかに数センチ移動したような感じだな。
元々釘が置かれていた場所には、何やら黒い埃のようなものがあったが、鑑定すると色々な夾雑物の化合物だった。
炭素、マンガン、硫黄、リン、酸素など混じり合ったもののようで何と表現してよいのかよくわからんが、飴細工のように物凄くか細い線でつながった釘の形をしたオブジェみたいなもんだが、俺が不用意に机に触ったために、わずかに机が揺れただけで形が崩れ、埃になったんだ。
まぁ、必要なのは純鉄で他のものが必要なわけじゃなかったけれど、埃はできるだけ吸わないようにするために、念のため防塵眼鏡と防塵マスクをかけたよ。
次いで行ったのは、純鉄に炭素だけ加える実験。
前の二本と同じように3.5%と1%の含有量にしたんだが、劇的に性質が違ったみたいだ。
1%の炭素含有量では鋼には違いないんだろうけれど、色が白銀色から少し象牙色に近い黄みを帯びたような気がするし、3.5%の方は薄紫の本当に薄い色を呈している。
3.5%の方は、鋳鉄かどうかがよくわからない。
硬いし、強度があるみたいだ。
ハンマーで殴ってもびくともせん。
1%の代物も同様で、ハンマーで叩くとガラスのように高い音を出し、当然のようにハンマーで殴ってもまるで変化がないようだ。
取り敢えず確認できるのはこれぐらいで、後は金属材料研究所にでも持ち込むぐらいしか方法が無いんだが、今の時点で外にこれを持ち出すこと自体がヤバイだろうな。
下手をすれば、いや、下手をしなくても、大騒ぎになるのが目に見えている。
そんなわけで取り敢えず金属の合金(?)もできることがわかった。
加熱が不要というのは本当に便利だと思うよ。
ネットで注文している酸化アルミナが届いたら、是非とも人工サファイアを作ってみよう。
梓ちゃんに手作りサファイアをプレゼントするのもいいかもしれない。
サファイアグラスは、硬度が9だから、硬いし、丈夫なんだ。
コンクリートの床に落としても、傷が付いたり壊れたりしないと思うよ
今のところ、『調剤』のとっかかりで風邪薬の素材に入っていたセルロースを造れるかどうか試しただけなんだけれど・・・。
もう少し薬剤やらを勉強して色々なものを生み出したいとは思っている。
但し、製薬会社じゃないんだから、素材になるようなものを大量に入手するのは難しい。
従って、素材の一つ一つを入手できるかどうかの一環でセルロースを試してみたんだけれど、実は、こいつは植物を使えば簡単に入手できるはずだと思っている。
まぁ、どの素材から選ぶかが問題ではあるけれど、和紙の材料になるものなら簡単に入手できるだろうし、麻などの繊維素材もセルロースだから、それからも入手できるんじゃないかと思っている。
特に『採掘』で岩の中から元素を抽出できたように、元素ではなくって高分子素材を『採掘』?、『採取』?或いは『抽出』?できれば、問題は非常に簡単になる。
そんなことが可能かどうかはわからないんだけれど、まぁ、試してみる価値はあるよね。
そんなことを思いついて、試行を始めたのが、果物から砂糖(果糖?)を採取できないかどうかという作業だった。
『採掘』なのかあるいは『調剤』なのかが、ものすごく曖昧だけれど、物に含まれている高分子素材や化合物を特定して分離・採取できるならすごく便利だよね。
因みに果糖は、C6H12O6だけれど、砂糖(ショ糖)はC12H22O11なので化学式が異なる。
おそらくは炭素、水素、酸素の元素から合成もできると思うけれど、既にある果物から果糖だけを取り出せるかどうかだ。
実験に使った果物は、冷蔵庫にあったリンゴの紅玉だった。
昨日、家族全員が三時のおやつで食べたアップルパイの素材だったのじゃないかと思うのだが、丸いリンゴの半分だけが冷蔵庫にラップで包まれていた。
リンゴに含まれる糖類の割合は、物によっても違うらしいが、果糖が5~8%、ショ糖が2~4%、ブドウ糖が2~3%、ソルビトールが0.5~1%であるらしい。
この果糖とブドウ糖は、化学式は一緒なのに性状が若干違うみたい。
で、困ったのは、俺が頭の中で果糖とブドウ糖として認識しているのは化学式のC6H12O6なもんだから、実は両者の区別がついていない。
仕方がないから曖昧なままやってみたら、一応なんか出て来たな。
白く細かい粉状の固形物だ。
鑑定をかけてみると、果糖とブドウ糖の混合物と出た。
どうやら分子式に見合う糖類を抽出したようだ。
残りの果実はどうかというと、一応残っているんだが・・・。
毒は無いだろうと思って、小さく切ってひとかけら口にしてみたが、異様に酸っぱかったな。
ひょっとすると、甘味が全部抜けたのかもしれない。
念のため、ショ糖の化学式を念じながら同様の作業をしてみると、白い粉がわずかにできた。
鑑定をするとショ糖に間違いは無かった。
つまりリンゴからブドウ糖と果糖、それにショ糖を抽出できたことになる。
果糖とブドウ糖の混合物を10とすると、ショ糖は3ぐらいしかないように思える。
勇気を奮って残されたリンゴの残骸を味見してみることにする。
ちゃんとリンゴの形は整っているんだが、いろいろと抜いたから絶対にリンゴの味はしないはず。
ほんの少し口に入れてすぐに吐き出す羽目になった。
酸っぱいのと苦いのが一度に来て、とんでもない味になった。
うん、仮に元が食料であっても、今度から残骸を口にして味見するのは絶対に止めにしようと思う俺だった。
この実験から言えることは高分子化合物も分子式が特定できているような場合には、『採掘』か『調剤』で採取できるということだった。
残念ながら俺自身、その区別が未だにわかっていない。
もう少し頑張ってみるかな。
俺の時計はタフソーラーという某社の電波時計だ。
若者向けにできているんだが、実はこいつは10気圧までの潜水にも耐えられる。
10気圧と言えば100mの深度の筈だが、そんなところまで潜った日には身体の方がイカれることになる。
まぁ、普通にダイビングをしても時計だけは大丈夫という奴だな。
で、この時計の透明なガラスに使われているのがサファイアガラスという特別なガラスだ。
なんでも純度の高い酸化アルミニウムと微量の酸化鉄を2000℃以上の高温で熱して溶融させ、単結晶を形成するとサファイアガラスができるらしい。
普通のガラスが、ケイシャ(珪砂)、ソーダ灰、石灰石の3つから造れるのに比べて全然別物だよね。
酸化アルミナはネットでも購入できるし、酸化鉄は釘から造れるな。
ということで、酸化アルミナ1㎏を購入して、別途実験することにした。
今度は何だろうね。
『採掘』じゃないんだけれど、『調剤』かと言うと、ちょっとそれからも外れる感じかな?
そうして俺がやろうとしていることは、2000℃以上という高熱を与えずに、常温でサファイアガラスが造れるかどうかの実験だ。
酸化アルミナと微量の酸化鉄からなる単結晶が人工サファイアであり、サファイアガラスとなる。
要は単結晶を生みだせばいいわけなので、イメージとしては酸化アルミナの溶液に微量の酸化鉄を染み渡らせることなんだ。
元々ガラスというのは固体様の液体なんだって聞いたことがある。
俺にしたら、余り意味が解らないんだが・・・。
サファイアガラスも同じであれば、液状の中に微量の酸化鉄を混ぜ込む感じでできるんじゃないかと単純に考えたわけだ。
2000℃以上という温度が必要なのは、本当に液状にするために必要な温度を与えて酸化鉄を溶かしながら混入させるのだろうけれど、俺の場合、分散配置が固体の中でもできるし、高分子の連結も可能なように思えるんだ。
だから常温での融合を試みてみたいわけだ。
その前にすることは、溶かさずに分子配分ができるかどうかの実験だな。
こいつは釘でやってみる。
釘は軟鉄だ。
こいつに炭素を混ぜると硬度を増して鋼や鋳鉄になる。
鋼は、炭素含有量が0.08~2.0%なので、釘はそれ以下の炭素を含んでいるということになる。
一般的には釘の炭素0.02~0.3~0.3%程度らしく、軟鋼が使われることが多い。 注)「軟鋼」は炭素量が0.02~0.3~0.3%)、「硬鋼」は(炭素量が0.3~2.1%だ。
釘の場合、そのままでは錆びやすいから、JIS規格ではメッキ等で表面処理された鉄またはステンレス鋼を釘と言うようだ。
また、炭素を極限まで減らしたものは純鉄と呼ばれ、磁化され易い鉄になる。
純鉄の中でも高純度と呼ばれるものでさえも結構な不純物が含まれており、それらの鉄は合金としての性質を帯びて性質が変わるようだ。
多分、俺が岩の中から抽出した鉄は、純鉄の筈だ。
そうして、俺が抽出した鉄は、超高純度の鉄以上に純鉄で、100%鉄のみで出来ているのじゃないかと思う。
それがどんな性質なのかは、これまで誰も確認していないんだが、少なくとも99.9996%の純鉄であれば錆びないし、塩酸でも腐食しないらしい。
そうして合金にした場合の加工性が良くなるなどの特徴があるらしいけれど、100%の場合はどうなんだろうね?
俺は一寸五分(長さ45ミリ)の鉄丸釘を4本用意した。
2本はそのまま使うつもりだが、もう2本はこの釘から鉄を抽出して、純鉄の釘を作るつもりでいる。
別に「釘」に意味があるわけじゃないんだが、形のままに加工というか、混ぜ合わせることができるかどうかの実験でもある。
結果から言うと、釘に炭素を混ぜ合わせることに成功したようだ。
普通の釘2本については、一本は鋳鉄にまで炭素濃度を上げた。
およそ3.5%の炭素含有量は鋼を超えているだろう。
そいつを万力で固定してハンマーで叩いたら曲がらずに折れた。
もろくなったわけだ。
もう一本は、1%の炭素濃度で固定した。
こいつは固く強靭だった。
普通の釘なら曲がるんだろうけれど、少々叩いても曲がりもしなかったな。
破断実験でもできるのであれば強度がわかるんだが、現状ではそこまでは必要ない。
要は軟鉄を使って、鋼や鋳鉄を生み出せるということがわかっただけでいい。
普通に熱を加えれば割合簡単にできるのかもしれないが、加熱を一切せずに鋼や鋳鉄を作れるのがすごいと思う。
次いで、残った2本の釘から鉄のみを抽出した。
釘の格好のままわずかに数センチ移動したような感じだな。
元々釘が置かれていた場所には、何やら黒い埃のようなものがあったが、鑑定すると色々な夾雑物の化合物だった。
炭素、マンガン、硫黄、リン、酸素など混じり合ったもののようで何と表現してよいのかよくわからんが、飴細工のように物凄くか細い線でつながった釘の形をしたオブジェみたいなもんだが、俺が不用意に机に触ったために、わずかに机が揺れただけで形が崩れ、埃になったんだ。
まぁ、必要なのは純鉄で他のものが必要なわけじゃなかったけれど、埃はできるだけ吸わないようにするために、念のため防塵眼鏡と防塵マスクをかけたよ。
次いで行ったのは、純鉄に炭素だけ加える実験。
前の二本と同じように3.5%と1%の含有量にしたんだが、劇的に性質が違ったみたいだ。
1%の炭素含有量では鋼には違いないんだろうけれど、色が白銀色から少し象牙色に近い黄みを帯びたような気がするし、3.5%の方は薄紫の本当に薄い色を呈している。
3.5%の方は、鋳鉄かどうかがよくわからない。
硬いし、強度があるみたいだ。
ハンマーで殴ってもびくともせん。
1%の代物も同様で、ハンマーで叩くとガラスのように高い音を出し、当然のようにハンマーで殴ってもまるで変化がないようだ。
取り敢えず確認できるのはこれぐらいで、後は金属材料研究所にでも持ち込むぐらいしか方法が無いんだが、今の時点で外にこれを持ち出すこと自体がヤバイだろうな。
下手をすれば、いや、下手をしなくても、大騒ぎになるのが目に見えている。
そんなわけで取り敢えず金属の合金(?)もできることがわかった。
加熱が不要というのは本当に便利だと思うよ。
ネットで注文している酸化アルミナが届いたら、是非とも人工サファイアを作ってみよう。
梓ちゃんに手作りサファイアをプレゼントするのもいいかもしれない。
サファイアグラスは、硬度が9だから、硬いし、丈夫なんだ。
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