二つのR ~ 守護霊にResistanceとReactionを与えられた

サクラ近衛将監

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第一章 与えられし異能

1-11 二度目のデート

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 俺の家からK園までは約2キロ、信号もあるけれど、歩いて精々約30分だ。
 チャリンコで行くと置き場所が面倒だから、徒歩で行くことにした。

 時刻は9時半、十分に間に合う時間だ。
 10時少し前にK園入り口に到着、茶屋の前にあるベンチで待機する。

 梓ちゃん15分前には最寄のバス停で降りてくるのが見えた。
 今日の梓ちゃんの出立いでたちは、茶系の大きなチェック柄のワンピース(膝上丈)に同系色のボレロ、靴も茶系統だね。

 梓ちゃんアンヨもきれいだし、ボディラインもグー。
 メッチャ可愛いぞ。

 小首を傾げながら梓ちゃんが言った。

「待った?」

「いや全然。
 今日の服も似合ってるね。」

 俺がそう言うとポッと頬を赤らめるのがまたいい。

「ここで一休みして行く?
 それともすぐにK園に入る?」

「別に疲れていないから、このまま入りましょう。
 お昼になったらどこかに入ればいいから・・・。」

 ということで、そのままK園の入り口に向かうことになった。
 茶屋の前の歩道を渡るとすぐにK園の入り口だ。

 K園の入場料は、高校生の場合150円だから随分と安いんだ。
 この時期、園内では花菖蒲はなしょうぶ紫蘭しらんが綺麗らしい。

 園内にはレストランもあるけれど、ネットではあまり良い評判は無かったなぁ。
 だから今日の昼飯は、俺の知っている近くの洋食屋さんに行ってみようと思っている。

 但し、今日はウィークデイじゃないからランチセットは無いかもな。
 K園は大きく分けて六つのブロックに分かれている。

 それぞれのブロックごとに築地塀ついじべいがあるのでわかりやすい配置だが、案内板が無いと次のブロックの入り口が判らなくなるのが玉にきずかな?
 園内は結構広いし、四阿あずまやなんかもあって休憩する場所もあるが、基本、順路に沿って庭園を見て回るのが主だけれど、時間をかけてじっくりと見て回れば半日ぐらいはかかりそうだ。

 花菖蒲と紫蘭は確かにきれいだったし、古の武家屋敷(多分上級武士?)の風情がそれなりに楽しめた。
 但し、屋敷内のあちらこちらがガラス張りになっていて、江戸時代の屋敷ではなくって現代の和風の家と化していたのはちょっと残念かな。

 そうしてやっぱりカップルさんが多かったな。
 カップルさんだけに限定すると、俺達みたいに高校生らしき二人は左程いないようだけど、若いカップルが四割、五割以上が壮年と老年のカップルだった。

 もしかすると夫婦で来ているのかもしれない。
 そうして入場客全体の約三割は団体客で、外国人が多かったな。

 色々な言葉が聞こえ、そのほとんどが俺の言語能力で判ったので、思わずにやけてしまったよ。
 K園のような整備された庭を、一部にしても配置できるような家を建てるとなると、今ではいくら金がかかるかわからない。

 今は土地が高くてこんなに広い敷地は持てないけれど、昔は、土地も余裕があったということなのかな?
 俺たちは二時間をかけて庭園を回り、それから俺の知っている洋食屋さんに向かった。

 洋食屋WまではK園の出入り口から徒歩で7分ほど、ちょうど昼食時間ではあったけれど席は空いていた。
 そうして嬉しいことに今日もランチセットが午後二時までありました。

 ランチセットは三種類あって、俺はAランチがお勧め。
 何でこんなところを知っているかって?

 東斗高校受験の下見に来た時に、ここに寄ったから知ってるんだ。
 Aランチには、ハンバーグ、エビフライ、カニクリームコロッケにパンかライスがついて来る。

 俺は、いっぱいプレートに盛ってあるのが幼い時から好きだったんだ。
 お子様ランチかって?

 ウーン、確かにその名残なごりはあるかも・・・。
 でも、梓ちゃんにもお勧めしたらにっこり笑ってうなずいてくれた。

 お値段は1200円で、食後のソフトドリンクも230円で頼めるから、二人で三千円ぐらいかな?
 お財布に優しいメニューだよね。

 ここで昼食を食べながら一休み。
 以後の予定をご相談。

 俺の判断だけで女の子を引っ張りまわしちゃいけない。
 彼女の意向も確認しよう。

「何処か行きたいところがあるかい。」

「うん、私、秦山君とカラオケに行ってみたい。
 今まで一度も行ったことが無いから・・・。」

 カラオケねぇ、確かに俺も一度だけ行ったことはあるんだが、確か条例で規制があったはず。
 16歳未満は18時までだったと思うが、俺たちはそれに入る。

 規制されているってことは、要注意の場所でもあるということだ。
 さてさて、そんな場所に連れて行っていいものかどうか・・・。

 俺がちょっと考え込んでいると、梓ちゃんが言った。

「あれ、もしかしてカラオケはダメだった?」

「いや、ダメってわけじゃないけど。
 確かね、16歳未満は18時までって条例で決められているんだ。
 だから、今の時間なら問題は無いはずなんだけれど、町のゲーセンが校則で禁止されているでしょう?
 あれは風紀の乱れを心配してのことなんだけれど、カラオケも似たような場所でもある。
 そしてある意味ドアで仕切られた密室でもあるからね。
 廊下からののぞき窓なんかあって、変なことはできないようにしてあるけれど、・・・。
 そんなところへ梓ちゃんを連れて行ってもいいのかなぁと思って・・・。」

「私は、秦山君、いえ、英一郎さんが一緒なら大丈夫です。
 信用してますから・・・。」

 そう言ってまっすぐに目を向けて来たよ。
 梓ちゃんて一途いちずなところがあるみたいだね。

 それに初めて苗字じゃなく名前で呼んでくれた。

「うん、わかったよ。
 じゃぁ、カラオケに行ってみようか。
 僕も家族で一回行っただけだけれどね。」

 俺たちは洋食屋を出て、駅前のM通りにあるカラオケ屋を目指しました。
 アーケード街の中に、入り口があるカラオケ屋さんです。

 以前は時間制で、30分で200円ほどだったのだけれど、感染症が流行った時期にお客が激減したようで、それから値上がりしたようだ。
 今は、高校生なら二時間千円でソフトドリンクは飲み放題みたい。

 まぁ、ソフトドリンクもそんなには飲めないし、余り長居するつもりもない。
 お店に入る時点で午後二時過ぎだったので二時間を限度にすることにした。

 日没前には梓ちゃんを家まで送らないといけないから、四時半ごろまでにここを出た方がいいだろうと思う。
 ここから梓ちゃんの家までだと、駅前からバスに乗って約15分、家まではそこから5分程度のはずだ。

 俺の方はそんな心づもりでいた。
 俺がカラオケに行ったのはもう二年も前の話だ。

 夏休みでお袋の実家に行った際に、祖父母から誘われて家族みんなで行ったんだ。
 俺はもちろんだけれど、妹たちも、両親も、祖父母たちもみんなで歌いあったものだ。

 それでカラオケ屋を知ってはいるんだが、流石に同級生の女の子と二人っきりで入ることになるとはさすがに思わなかったよ。
 受付で年齢を確認された。

 そうして午後六時がリミットであることを念押しされた。
 店としても条例違反は困るんだろうね。

 案内された5号室は、左程広い部屋ではないけれど、一度に6人ほどなら入れそうだ。
 ここは最初に千円を払って、途中で軽食なんかを頼むと、出る時に清算払いすることになるようだ。

 僕らが入ったのは、結局午後2時25分だった。
 ソフトドリンクを二人で持ち寄った。

 コーラにオレンジジュースを二杯ずつ持ち込んで、次は曲の選曲。
 俺も左程上手くは無いけれど、まぁ、それなりには歌えるはず。

 若い人が知っている歌なら大体知っているし、平成当たりの歌ならかろうじて歌えるかなぁ。
 流石に昭和世代の歌は無理だ。

 昭和63年頃の歌って、俺の爺さん婆さんの若い時の歌だもんな。
 ウチの親父やお袋は平成の一桁生まれだから、同じく昭和は知らない。

 尤も、リバイバルソングとかで、ご老体の歌手が結構頑張っているけれど、それでも昭和の終わりぐらいの歌手だからねぇ。
 俺ら十代の若者が好みなのはやっぱりアニメやドラマの主題歌が多いかも。

 歌手はもちろん若手で、歳が行っていても二十代後半まで、三十代の歌手は俺らの上の二十代の若者の範疇だろうな。
 そんな中でも売れているのが、カレンとアリス、それにグループ歌手のサンボーイズかな。

 サンボーイズは特に女子高校生に大人気だ。
 カレンは男女ともに受けているスーパーアイドルだけれど、アリスの方はどちらかというと男子のファンが多い。
俺もなにを隠そうカレンの隠れファンだよ。

 別に追っかけもしてないし、CDも買ってはいないけれど、彼女の唄う歌が好きなんだ。
 そうして梓ちゃんはと言えば、そのカレンに顔と雰囲気が似てるような気がしてる。

 だからそんな梓ちゃんと仲良くなれて幸せを感じているわけだよ。
 レディーファーストで梓ちゃんの歌が最初、次いで俺の番になった。

 梓ちゃん、別に技巧を凝らした歌い方じゃないんだけれど、すごく良い歌だった。
 高音の伸びもいいし、ヴィブラートもそれなりにあった。

 そうして感情を込めて歌っているのがとても印象的だった。
 俺の中では10点満点中の10点をあげる。

 カラオケセットの点数が後で表示されて、何と89.7点の高得点でした。
 思わず「イェーイ」と言って、ハイタッチしましたよ。

 でも一番手で良い点数を出されると二番手がきついよね。
 機種は違うけれど、二年前に歌ったときは70点まで届かなかったからね。

 でも、しゃぁないよな。
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