二つのR ~ 守護霊にResistanceとReactionを与えられた

サクラ近衛将監

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第一章 与えられし異能

1ー8 デート

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 知らぬは俺ばかりなりで、どうやら昨日の夕食あたりからバレバレだったみたいだ。
 まぁ、朝8時の朝食を頼んだのはその時だったしな。

 多分、俺の表情や行動でそれとなく察したようだ。
 普段なら使い古したジーンズを履くのに、今日は一度洗ったとはいえおろしたてのジーンズと新品のTシャツだ。

 何となく昨日からうきうきとした感じだったので何事かあると感づくし、髪までくしでなでつけていれば、これはもう女の子とデートだと断定したようだ。
 俺としては、ここで下手へたに口を出すと墓穴を掘りそうだから、何も言わず素直にうなずくだけにしておいた。

 そうこうして家を出たのは9時10分、F駅の北側にあるシネマ・コンプレックスの**シアターまでは、徒歩で20分もあれば着けるはず。
 時間はあるので、俺はゆっくりと街並みを見ながらF駅への道を辿たどった。

 歩いている途中で色々『鑑定』を掛けるのが実に面白い。
 人が着ている服装なんかは購入値段まで出るし、自動車なんぞは時価で値段が出る。

 鑑定能力が上がった所為せいで、自動車なんか不具合箇所まで表示されるようになったぜ。
 それと歩道周りに植えてある草花のたぐいについては、『鑑定』を掛けると、しっかりと花の名前が出るので、識別が簡単なのと知識としての情報が入る。

 情報が頭に定着すると鑑定を掛けずとも花の名前がわかるんだ。
 何となく俺の脳も進化してそうな感じかな?

 のんびり歩いていたから目的のシアターに着いたのは9時35分頃、勿論、梓ちゃんはまだ来ていない。
 10時待ち合わせだから到着は早くても10分前ぐらいだろうと思っていた。

 豈図あにはからんや、彼女は9時40分にはロビーに姿を現した。
 彼女はピンクに近い若紫色の長袖で膝丈のワンピースに、白いベスト、ワンピースの色と同系統の赤いパンプスで、髪はベージュ色のカチューシャで肩までかかる髪をまとめており、背には小さな薄桃色のリュックを背負っている。

 俺の手を振る姿を見ると、嬉しそうな表情を見せながら小走りに寄ってきた。
 うん、可愛いな。

「待った?
 これでも早めに出て来たんだけど。」

 彼女、俺より背が低いからな、どうしても俺の顔を見るときは上目遣いになる。
 それがとてもいい感じなんだ。

「いや、待っていないし、逆に来るのが早すぎるよ。
 まだ約束の時間まで二十分近くもある。」

「えへへ、そうだよね。
 私も、秦山君が先に来てるとは思っていなかったもん。」

 お、『もん』が出た。
 もしかして『もん』が語尾に着くのが梓ちゃんの口癖か?

 いずれにせよ親しい人でなければ使わない言葉遣いに聞こえるな。
 そんな時に、ほとんど無意識に、梓ちゃんに『鑑定』を掛けちゃった。

小林梓
 ヒト族
 15歳
 女(処女)
 無職
 無覚醒

身長:162cm
体重:49kg
BWH:85(C)-62-89 

STR(筋力)―4
DEX(器用さ)―5
VIT(丈夫さ、持久力)―3
INT(知性)―126
MND(精神力)―7
LUK(運)―8
AGI(敏捷性)―6
CHA(カリスマ、魅力)―5
言語理解―1
スキル:
 無し
ユニークスキル:
 無し
称号:
 無し

 おーい、ステータス情報がほぼ丸裸じゃないの?
 これっていいのかなぁ?

 普通の人のステータスとしては、これぐらいの数値なんだろうけどね。
 但し、「女(処女)」というのはちょっとなぁ、・・・。

 高一なんだから、普通はそうなんだろうけれど、もしこれが「女(非処女)」とか表示されていたら、俺、絶対退いちゃうし、それによってその人の尊厳を傷つけてしまうかもしれない。
 それに『BWH』を簡単に公表しちゃまずいでしょう。

 でも、梓ちゃん、結構、胸でかいよね。
 85センチは多分トップのサイズだろうし、(C)ってのは、多分ブラのサイズだろうね。

 洋服や制服着ている時は良くわからなかったけれど、着やせするタイプなのかな?
 Cカップって、確かアンダーとトップの差が15センチぐらいじゃなかったっけ?

 まぁ、知っていても黙っていりゃ良いんだろうけれど・・・。
 今後、人に鑑定を掛けるのはできるだけ遠慮しよう。

 さもなければ、秘密を知った後の処理が何となく大変になりそうな気がする。
 知らなけりゃ、バラす心配はないけれど、知っているとうっかり口にしてしまうことだってあり得るからね。

 こと人に関する鑑定については、必要な場合に限って使用することにしよう。
 映画の上演時間は、10時15分からなので、まだ30分以上もある。

 座席は指定席になるようだから、別に急いで席取りをする必要もない。
 ロビーの売店で飲み物とちょっとしたおやつを二人で相談しながら購入した。

 それから、窓口に行き、スマホの前売り券を提示し、梓ちゃんと俺の生徒手帳を見せて、中に入った。
 目的のシアターは、三つあるうちのB館で、映画の演題は「時を旅する恋人たち」。

 俺は知らなかったが、高校生の男女が主役で出演する映画で、女の子たちの間では前評判が高い映画らしい。
 この際なので記念にパンフレット二部も購入した。

 映画の出演者の写真と共にプロフィールなどが記載されている代物だ。
 俺としては別になくても構わないけれど、二人で映画を見に行った想い出の品にはなるだろう。

 少なくとも俺の人生初めてのデートだからな。
 9時50分になって指定されたB館の劇場に入った。

 まだ早いけれど三割ぐらいの席が埋まっていた。
 カップルで来ているのは意外に少なく、女性同士が多いような気がする。

 高校生は、割引が効くのでおそらくは高校生が多いんだろうと思う。
 指定席に座って、二人あれこれと止め処とめどもない話をする。

 梓ちゃんが意外とおしゃべりで、俺は質問に対する受け応えをしているだけで会話が成立する。
 まぁ、振ってきた質問は、振り返すこともあるけどな。

 例えば好きな食べ物とか趣味とか・・・。
 そういや、ステータスの数値なんかは別として、俺は梓ちゃんのことはほとんど知らないんだった。

 彼女は、俺の家から3キロほど離れた、F市立琴◇中学校を卒業して東斗高校に来ているが、俺の中学は家に近い市立◇陽中学校だった。
 彼女の家は、琴◇中学校の西側にある◇埼二丁目だ。

 俺の家からなら、歩いて小一時間はかかるかもしれないな。
 お父さんは市役所勤め、お母さんは専業主婦、兄弟姉妹は、お兄さんが一人とお姉さんが一人。

 お姉さんは城南高校三年生、お兄さんはH大工学部の二回生らしい。
 従って、お兄さんはH市にある大学に通っているので、一緒には住んでいないようだ。

 うん、大学に入ると確かに県外に出て行く確率も多くなるわけだ。
 有名大学は、国立を除けば、ほとんど県外だもんね。

 俺は進学するのかって聞かれて、一応は進学を目指しているよと答えておいた。
 実のところ、とりあえず進学校入学が目標だったので、その先はこれからなんだ。

 まぁ、猫も杓子しゃくしも大学という風潮だから、高卒で終わる将来は多分考えられないだろうな。
 じゃぁ、お前の適性や将来の職業は何だと言われると、今のところ五里霧中ごりむちゅうだな。

 何となく理数系かなという気はしているんだが、自分でもよくわからない。
 一方の梓ちゃんは、薬科大学を目指しているんだそうだ。

 将来、薬局経営でもするのかと思っていたら、どちらかというと研究職にきたいんだそうだ。
 俺と違ってしっかりと将来を見据えてるねぇ。

 尊敬しちゃうぜ。
 そんな今後の色々を話しているうちに上映時間になった。

 テレビの映画館と異なり(いやテレビでも似たようなものか?)、まずは予告編のオンパレードから始まった。
 この後15分後にようやく始まったお目当ての恋愛ものの映画だが、実はこの予告編のオンパレードで俺は重大なことに気づいてしまった。

 俺の『言語理解』が、俺の知らないうちに仕事を始めたんだ。
 予告編の半分以上が外国映画なんだが、字幕で日本語訳が付いていても、音声は原語のまま。

 勿論ネィティブの発音だし、凄く速いよね。
 でも俺の頭脳が半分追いついて訳し始めていた。

 それも、英語だけじゃないんだぜ。
 フランス映画もあったんだけど、知らないはずのフランス語がおよそ三分間の予告編が終わるころには半分ぐらい内容がわかってしまったんだ。

 こいつは凄いことだぜ。
 だが俺の内心の興奮を抑えつつ、隣に座る梓ちゃんとのきずなを深めるために、恋愛もの日本映画に集中した。

 映画は、時を超えて追い求める二人の男女の恋物語。
 平安時代の古から何度も何度も悲運にいながら、それでも追い求める二人の男女の恋心はついに現代で結ばれる。

 最後はハッピーエンドを思わせるエンディングで終了した。
 配役は、ヒロインに高校生タレントの河合のぞみ、相手役にやはり高校生で新人の牧野洋平。

 この二人の織りなす恋愛事情が、戦乱の世に散って散って、散りまくるのがメインになる。
 近代では太平洋戦争で特攻まですることになる。

 必ずどちらかが死ぬことになる悲恋であり、梓ちゃんも周囲のおそらく女子高生もみんな涙をぬぐっていた。
 俺も何度も胸につまされたが、『俺は男だ‼』と頑張ったよ。

 ストーリーが良かったのか、役者が上手かったのか、まぁまぁ泣ける映画だし、最後がハッピーエンド風に終わるのは良かったね。
 余韻よいんを残して終わったのがちょうどよかったよ。

 二人で席を立ってB館の劇場から出るときには、何となく手をつないでた。
 俺も梓ちゃんも周囲の目を気にしながらだけどね。

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