二つのR ~ 守護霊にResistanceとReactionを与えられた

サクラ近衛将監

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第一章 与えられし異能

1-5 GW中の検証 その一

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 今年のゴールデンウィークは、2033年4月29日~5月1日、5月3日~5月5日、5月7日及び8日が飛び石連休だ。
 5月2日と5月6日が休みならば十連休になるんだが、学校は休みにはしてくれんし、おやじやおふくろも当然にずる休みなんぞは認めてくれん。

 それでも楽しい連休だぜ。
 一応、進学校ではあるんだが、夏休みと違って宿題も無い。

 例によって俺のチートスキルの検証を色々するつもりではある。
 但し、街中は河川敷を含めて人目を避けるのが結構面倒なんだ。

 仕方がないんで、納屋からマウンテンバイクを引っ張り出して、ハイキングコースがある最寄りのT山に行くことにした。
 ここは幼稚園児も登れるぐらいのハイキングコースであり、ハイカーも多いんだけれど、逆に余りに簡単すぎて、わざわざゴールデンウィークに訪れるような場所じゃない。

 T山の麓で邪魔にならない道端の電信柱にでもマウンテンバイクをくくり付けてカギをかけておき、そこから木立の中の未舗装の自然道を歩いて頂上へ至ると市内を見渡せる場所があるんだ。
 更に尾根伝いに北側のM山へ向かう山道もあるので、その周辺で人気のないところも探せるだろうと考えている。

 マウンテンバイクで片道20分弱、山登りで精々40分程度なので、途中のコンビニで昼飯を買っておいた。
 小さなリュックを背に、午前10時前には頂上に着いたが、思っていた通り、ハイカーは非常に少ない。

 ゴールデンウィークであればこそ、家族連れでもっと良いところに行くはずなんだ。
 新緑の山は清々すがすがしいし、気温も上がらないので左程汗もかかずに登頂できたよ。

 この山に登るのは、小学校の遠足で来て以来じゃないかと思う。
 山頂部から尾根伝いに少し降りたところに、ゆる勾配こうばいの傾斜地に岩が露出している部分があり、ちょうど木立で隠れる場所で目立たないと思われるので、そこへ行き、周囲に人が居ないのを確認して、予定していた俺のスキルの検証を始めることにした。

 『Reaction』には、「物理の反作用」という意味合いもあるので、力がかかった時の反作用を強化する方法が無いかと考えた。
 闘気をまとうということは、身体の周囲にバリアー若しくはシールドを張るということじゃないかと思うんだ。

 先日、例のいじめっ子どもが襲い掛かってきた時に、闘気を纏い、俺の身体の剛性と抵抗を増やして不動にしてから相手の足元の抵抗を奪ったのだけれど、逆に相手がなぐってきた反動をそのまま相手に返すことができないかどうかを確認したかったのだ。
 検証のやり方は、至って原始的で簡単な方法だ。

 小石を拾って上に投げて俺の身体に当たるようにする。
 その際に俺の纏う闘気に触れた落下エネルギーを、一旦は吸収して、そのまま返すことができれば大成功だ。

 単に盾で受け流したり、物理的に止めるだけでなく、シールドバッシュの様に反射をさせたいのだ。
 こいつは抵抗の問題ではないような気がするけれど、一方で抵抗値の加減ができるのであれば、闘気が受ける衝撃の加減調整も可能ではないかと思うのだ。

 それができるのであれば、その運動エネルギーを変化させることもできると思っている。
 何となれば、俺のスキルに『ベクトル』があるからだ。

 ベクトルとは、方向と大きさを示すもののはず。
 ならば右に向かっている運動エネルギーのベクトルを変更して、左向きに変えることもできるのじゃないかと思ったのだ。

 その際に運動エネルギーをゼロにせず、元の大きさのままで方向を変えることができれば、自らは何の被害も受けずに相手の襲撃エネルギーをそのまま敵対する相手に返すことができる。
 ぶん殴られたら、相手の手が不動・不壊の岩を殴ったようなものになるだろう。

 相手が強い力を出せば出すほど、相手のこぶしが自らの力で損傷することになる。
 この方法は手や足での攻撃を返すだけではなく、例えば相手が銃器なんかを使用してきたときに大きな攻撃力になる。

 相手がまともに撃ってくれば来るほど、そのまま相手に銃弾などを跳ね返せることになる。
 やっぱりシールドができるならば、シールドバッシュまでできなければ嘘だよね。

 概ね昼までかかって何とか小石を跳ね返せるようになった。
 この結果、闘気のレベルが1上がって3になり、ベクトルのレベルが0から1になった。

 恐らくは傍観者ぼうかんしゃが居たなら、何を阿呆なことをしている奴だと思ったことだろう。
 何せ二時間近くも、小石を拾っては五十センチほど頭上に投げ上げ、顔で受けることを続けているんだから・・・。

 俺だって、もしそんな奴を見かけたら絶対におかしな奴だと思うはずだもん。
 コンビニで買ったスナック系の昼飯を食べて、少し休憩だ。

 次の検証は、重力を使えるかどうかの確認だな。
 一応、ステータス上のスキルには在るんだから、多分、重力制御ができるんだろうと思う。

 だが、どうすればいいのか。
 実は、昨日の夜、結構遅くまでかかって考え抜いた問題なんだ。

 ネットでも色々と調べてみて、結局は、空間の中における歪みを重力と仮定することにし、スキルで空間の中での歪みをイメージすることにしてみた。
 空間と言っても三次元では無理だから、頭で描いた高次空間の中に歪みをイメージするんだ。

 そう、ちょうど地面にある小さなアリジゴクの巣のように、漏斗状に空いた穴の空間を作るんだ。
 その穴の傾斜部分にボールが入ると、自然にカーブを描きながら中心部に引き込まれて行く。

 それが高次空間で見える重力の働きなのだが、これを三次元空間に置き換えると、単に一定方向へ作用する引力に見えるはず。
 先ほど覚えたばかりのベクトルを使って、その引力の方向(高次空間における穴の開いている方向)を変えてやる(例えば横向きにしたり、真逆にしたりする)と、重力の向きが変化するはず。

 重力が作用する質量は変えないのだけれど、恐らく位置エネルギーは変更され、穴の方向が任意に傾斜することになるために引力の向き(ベクトル)を変えることになる。
 今度は先ほど使った小石を拾い、足元に落とすことを繰り返した。

 今回は1時間ほどで小石が落ちる方向を変えることに成功した。
 落ちる向きの重力ベクトルを変えただけで、横向きの力を加えたわけではないのに、小石は斜めに落ちた。

 しかも放物線を描かずにまっすぐ斜めに落ちたのだ。
 仮に、下向きの重力と俺が生み出した仮想重力の力が合成されると、放物線か曲線を描くはずなんだが、斜め方向にまっすぐ進んだということは、本来の重力を打ち消して、俺の仮想重力だけが作用しているんだと思う。

 であれば、重力を打ち消すだけの無重力状態も生み出すことができるかも知れない。
 まぁ、無重力については別の機会に試すとして、それから更に小一時間かけて、今度は逆方向に重力ベクトルを変えてみた。

 手のひらに置いた小石は、一旦真上に上って行き、ある程度のところで制御を離れて下向きに落ちて来た。
 勿論、俺は小石を物理的に投げ上げたりせずに、思念だけで重力の制御を行っているんだが、小石は20mほども上空に上り、それから下降してきた。

 可燃性物質の爆破実験でもそうだったが、おそらくは10m前後が現時点での制御の限界なんだろうと思う。
 10mほど上空までは引力が逆向きに働いて加速度的に上昇するんだが、一定範囲を超えると逆向きの引力が働いて加速度的に減速する。

 やがて、対地速度がゼロになった時点で今度は下向きに重力がかかり、加速されつつ落下するわけだ。
 重力に関するLv値を上げることで、この制御範囲が広がることを期待している。

 一日目は、これで一応の成果が得られたことになるんだろうな。
 明日も雨が降らなければ、また、ここに来るつもりなんだが、天気予報では小雨になるかも知れないようだ。

 雨天の場合は自室での検証に切り替えるしかない。
 その場合は何をするかも決めておく必要があるな。

 ◇◇◇◇

 天気予報が当たって、翌日は朝から雨だった。
 仕方がないので今日は自分の部屋で色々と試してみることにした。

 まずは『鑑定』スキルのLvを引き上げるために、部屋の中の物を何でもかんでも鑑定してみることにした。
 特に普段見慣れていないようなものを試すために、押し入れに放り込んでいた大量のガラクタを引っ張り出して、次々に鑑定をかけて行く。

 最初はわかり切った結果しか返ってこなかった。
 小学生の時に作った粘土細工は、【稚拙な粘土細工、価格ゼロ】と出た。

 フーン、価格が出るのは面白いよな。
 色々なものを順次鑑定にかけて整理のためにメモ帳に記載して行く。

 段ボール箱四つに収納されていたものを、一通り取り出して全部確認してみた。
 ついでだから、要る物、要らない物、要らないと思うけれど記念にもう少し残しておく物に分けてみた。

 日がな一日、日中は、そうやってガラクタ整理をやっていた。
 夕食後、再度要らない物として廃棄予定の物を確認した。

 すると鑑定結果に奥行きが出たぜ。
 小学生の時に作った粘土細工は、【稚拙な粘土細工、作成年月日2028年6月18日、作成者秦山英一郎、価格ゼロ】と出た。

 なるほど5年前、俺の小学五年生の時の作品だったか。
 対して思い入れも無いからやっぱり捨てるんだが、製作年月日や作者の名前まで出て来るんだな。

 メモを確認して、先ほどは作成年月日と作成者名が出ていなかったことに気づいた。
 うん、多分、鑑定能力のレベルが上がったんだ。

 これは骨とう品なんかの鑑定ではものすごく役に立つんじゃなかろうか。
 少なくとも贋作の場合なんかはすぐに分かりそうな気がするよ。

 ステータスを確認すると、『鑑定』がLv2に上がっていたよ。
 うん、これは『鑑定』についてもよりLvを上げてみたいし、そのほかのスキルも色々と使うことでLvアップを狙った方が良いよな。

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