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第三章 新たなる展開
3-14 アリス ~特効薬の開発 その二(雇い入れ交渉)
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午後三時ごろには届ける日時と場所を指定して発注した。
経費は無論マイクが出した。
それから二人で出かけたのである。
運転手はヘインズさんである。
地下駐車場に置いてあるバンタイプの浮上車に乗って、地上に出てもマスコミ関係者は気づいていないようだ。
最初に向かったのはクレアランスでもスラム街と呼ばれるデーニッツ街区である。
余り治安のよくないところらしく、盛んにヘインズは翻意を促したが、私とマイクが折れないので、デーニッツ街区の外れで、不安そうな表情で二人を降ろした。
デーニッツ街区の中にまで真新しい浮上車が入れば何をされるかわからないからである。
こうしてデーニッツ街区には甚だ相応しくない二人が、徒歩で歩いていた。
中にはチンピラ風の者もうろついているのだが流石に最初は寄って来なかった。
目的の5階建て安アパートに辿り着いたのは車を降りて10分後の事である。
このアパートの三階に、ルーシーが住んでいるのである。
ルーシーが部屋にいることは、テレパスで確認していた。
階段を上がり、三階に行き、ルーシーの部屋の前に立った。
インターホンは壊れているようで、押しても何の反応もない。
ドアをノックしてみた。
「どなたですか?」
ドアは開かずにドア越しに声がした。
「マイク・ペンデルトンというものです。
出来れば、就職の話をしたいのですが。」
「就職って・・・。
貴方の?
それとも私の?」
「勿論、貴方のです。」
「あの、どちらさまか知りませんが冷やかしはよしてください。」
「いいえ、冷やかしではなく、貴方を雇いたいのですが、お話を聞いていただけませんか?」
少し無言が続いたが、やがてカチャッと音がして錠が外された音がした。
ドアが開いて、30前後の女性が顔を出した。
元は美人だったかもしれないが、少しやつれているようだ。
「あの、散らかっていますけれど、中へどうぞ。
外は物騒ですから。」
二人は中へ入った。
狭い居間と隣は、寝室になっているようだ。
テーブルの上には作業着の縫いかけが置いてあった。
ソファーは無いが、折りたたみの椅子があった。
勧められるままに二人は椅子に腰を下ろした。
ルーシーも向かいの椅子に座った。
「あの、どういうことでしょうか?」
「ええ、先ほども申し上げましたが、貴方を私が雇いたいと思っております。
職種は家の料理人としてです。
如何でしょうか?」
「あの、何処で私の話を聞いてきたかは存じませんが、私は前科者、島帰りなんです。
それでも、お雇いになりますか?」
「ええ、貴方が5年の刑期を終えてきたことは承知の上です。」
「身なりを見る限り結構な御身分なのだと思いますが、島帰りを雇っているだけで貴方の信用が無くなりますよ。
私から申し上げるのもおかしな話ですがもう一度考え直されては如何でしょう。」
「無論、貴方の意思が優先しますが、できれば貴方を雇いたいと思っています。」
「でも、私は食中毒の過失致死で島に送られたんですよ。
そんな者を料理人として雇ったなら、いつ食中毒になるかわからないじゃないですか。」
「貴方にかけられた疑いは承知しておりますが、教えてください。
食中毒を起こした料理は、貴方が調理した物ですか?」
ルーシーは、マイクの目を見ていた。
やがてため息をついた。
「信じては貰えないでしょうけれど、私が関わった料理ではありません。」
「僕は、その言葉を信じます。
その上でお願いします。
私の家の料理人として来ていただけませんか?」
迷っているようだったがやがて言った。
「失礼ですが、ご一緒の綺麗な御嬢さんはどういう方でしょうか?」
「僕の恋人というべきでしょうね。
いずれ僕の妻になると思います。」
「では、御嬢さんにお聞きします。
将来嫁ぐ先に私のような前科者がいて困りませんか?」
「犯罪を犯すような方が家にいるのは好ましくないと私は思います。
でも、貴方はそうした人ではないと信じていますから問題はございません。」
再度ため息をついたルーシーが言った。
「何とも困ったお人達だ。
この地区は犯罪者の巣になっているようなところですよ。
そんなところに住んでいる者を雇いたいなどと世間知らずにも程が有ります。」
「二人とも世間知らずではないつもりではいますが、貴方も考えてはくれませんか?
司法制度の過ちとは言え、いつまでも前科者という烙印を負って生きるならば、その内本当に前科者になってしまいます。
私は、貴方の人柄も料理人としての腕も買っています。
だからここから抜け出すチャンスを貴方に与えようと思います。
私の家は二週間後に住めるようになります。
その時には貴方の力添えが欲しいのです。
ここに20万ルーブのお金が御座います。
これは貴方への支度金です。
これで身支度を整えて二週間後にこのメモに記載してある家まで来てください。
貴方に来ていただけるなら、住む処と月に4万ルーブの給与を保証します。
その意志がおありなら、明日にでもこの地区を出て別な所にお移りなさい。
ここは貴方が住むにふさわしい場所じゃない。
20万ルーブあれば、ホテルで2週間滞在することも可能でしょう。
それと、美容院に行かれて化粧をされるといい。
それだけで気分転換が図れると思います。」
「あの、こんな大金を私に預けて、私がこの金を持って逃げたら無駄になるかもしれないとはお考えにならないのですか。」
「先ほども申しましたが、私は貴方を信じています。
貴方はそんなことをする人ではない。
もしこの話を断るとするならば、あなたはこの金をそっくり持って私のところに断りに来るはずです。」
「そこまで・・・。
わかりました。
今少し考えてみます。
その上で、覚悟が出来たならば、この街を出てホテル住まいでもしてみます。」
「宜しくお願いします。
私も私の未来の妻も、貴方を待っております。」
私とマイクは、ルーシーの部屋から立ち去った。
生憎とアパートの階段出口のところでは数人のチンピラがとぐろを巻いていた。
「おう、おめぇら。
この辺じゃ、見かけない面だが、一体何の用だ。」
「ちょっと知り合いに会って来ただけですよ。
それが何か?」
「知り合い?
へっ、このアパートに住んでいるもんが、おめぇらの知り合いの訳があるか?
それによ、この界隈をうろつくにゃぁ、それなりの落とし前をつけてもらわねえとな。
おう、てめぇの財布を出せ。」
「お断りですな。
貴方に財布を渡す理由がない。」
「てめぇ、おちょくってるのかぁ。
黙って出しゃぁ、怪我もせずに済むってもんだろうがぁ。」
「怪我をしたくはないですな。
それに財布も出したくない。」
「それで済むと思っているのかぁ。」
そう言いながら胸元を掴もうとした男だったが、マイクに簡単に腕を捻じりあげられた。
「イッテテティ、野郎、こいつをやっちまえ。」
悲鳴を上げつつも、その男が喚いた。
一斉に殴りかかろうとした男達であるが、仲間の腕を掴んで楯代わりにされているので動けない。
その前に私が進み出た。
マイクが言った。
「アリス、ほどほどにな。
手加減しないと相手が怪我をする。」
「ええ、大丈夫よ。
刃物を持ち出さない限り、青あざぐらいで済ませとく。」
その言葉で怒り狂った男たちが向かってきたが、それらを躱しつつも軽く一撃ずつを食らわした。
すぐに三人の男たちが路上で呻くことになった。
もう一人が残っていたが完全に腰が引けている。
「貴方は、どうするの?」
私がそう聞くと、男は完全に戦意を失って逃げ出した。
兄貴分格の男三人が一瞬の内に路上で呻いているのである。
非力な自分に敵う相手ではないと判断したのは賢明であった。
「マイク、行きましょう。
次もあるわ。」
マイクが男を突き放した。
男はよろけて路上に倒れ込んだ。
その間に私とマイクは歩き始めていた。
「畜生、覚えてやがれ。」
男は刃物を持ち出しはしなかった。
私の脅しが利いたのだろう。
その後は馬鹿なチンピラも寄りつかず、無事にヘインズの待つ車に乗り込んだ。
その次は、同じく余り柄の良くない地域ではあるものの、デーニッツ街区よりはましなロデン街区だった。
ヘインズは、ここでは安アパートの前まで車を寄せたのである。
ここの5階というよりはほぼ屋根裏部屋に相当する天井の低い部屋にカレンが住んでいた。
カレンは、部屋に居た。
今日は仕事にあぶれていたのである。
マイクから話を聞いて、カレンは、幾分訝しく思ったのだろう。
しばし考え込んでから、メイドならしてもいいとぼそっと言った。
彼女にも20万ルーブの支度金を渡し、2週間後に家に来るよう言ったのである。
そこからほど近いマジェス地区にジェイムスは住んでいる。
だがまだ仕事から戻ってはいない。
そこでいつも立ち寄る食堂の前で待った。
ジェイムスは、仕事が終わるとここで食事をし、一杯のギースを飲んで帰るのである。
程なく、如何にも労務者然とした格好のジェイムスが現れた。
マイクは車を降りて食堂に入る前のジェイムスを捕まえて、車に連れ込んだ。
バンタイプの浮上車は、後部に4人が乗れるようになっている。
ドアを閉めて話をした。
ジェイムスも最初は怪しんだが、カレンと同じように一応同意した。
彼は、25万ルーブの現金を渡され、その金でバトラーの養成所に行くよう言われたのである。
バトラーの養成所は、最短で2か月かかり、費用も5万ルーブを要する。
彼の場合も2週間後には家に来るように言われた。
そこに住み込みながらバトラー養成所に通うことになるのである。
その日廻るべきところは終わり、私とマイクはホテルに戻った。
ヘインズは、半日の仕事だけで優に二日分の報酬を手に入れたのである。
マイクに声を掛けられた三人の男女は翌日には安アパートを引き払った。
カレンとジェイムスはビジネスホテルに移り、ルーシーはキッチン付の長期滞在型ホテルに宿泊した。
そうしてカレンはメイドとして何をすべきかを書籍とネット情報で勉強し始めた。
ジェイムスは、バトラー養成所への申し込みを済ませ、同じように書籍とネットで勉強を始めたのである。
ルーシーは色々な食材を買い込み、部屋でそれらを使って料理を作り始めた。
ここしばらくは本格的な料理などしたことも無かった彼女である。
勘を取り戻すには実際にやってみなければ始まらないと思ったのである。
経費は無論マイクが出した。
それから二人で出かけたのである。
運転手はヘインズさんである。
地下駐車場に置いてあるバンタイプの浮上車に乗って、地上に出てもマスコミ関係者は気づいていないようだ。
最初に向かったのはクレアランスでもスラム街と呼ばれるデーニッツ街区である。
余り治安のよくないところらしく、盛んにヘインズは翻意を促したが、私とマイクが折れないので、デーニッツ街区の外れで、不安そうな表情で二人を降ろした。
デーニッツ街区の中にまで真新しい浮上車が入れば何をされるかわからないからである。
こうしてデーニッツ街区には甚だ相応しくない二人が、徒歩で歩いていた。
中にはチンピラ風の者もうろついているのだが流石に最初は寄って来なかった。
目的の5階建て安アパートに辿り着いたのは車を降りて10分後の事である。
このアパートの三階に、ルーシーが住んでいるのである。
ルーシーが部屋にいることは、テレパスで確認していた。
階段を上がり、三階に行き、ルーシーの部屋の前に立った。
インターホンは壊れているようで、押しても何の反応もない。
ドアをノックしてみた。
「どなたですか?」
ドアは開かずにドア越しに声がした。
「マイク・ペンデルトンというものです。
出来れば、就職の話をしたいのですが。」
「就職って・・・。
貴方の?
それとも私の?」
「勿論、貴方のです。」
「あの、どちらさまか知りませんが冷やかしはよしてください。」
「いいえ、冷やかしではなく、貴方を雇いたいのですが、お話を聞いていただけませんか?」
少し無言が続いたが、やがてカチャッと音がして錠が外された音がした。
ドアが開いて、30前後の女性が顔を出した。
元は美人だったかもしれないが、少しやつれているようだ。
「あの、散らかっていますけれど、中へどうぞ。
外は物騒ですから。」
二人は中へ入った。
狭い居間と隣は、寝室になっているようだ。
テーブルの上には作業着の縫いかけが置いてあった。
ソファーは無いが、折りたたみの椅子があった。
勧められるままに二人は椅子に腰を下ろした。
ルーシーも向かいの椅子に座った。
「あの、どういうことでしょうか?」
「ええ、先ほども申し上げましたが、貴方を私が雇いたいと思っております。
職種は家の料理人としてです。
如何でしょうか?」
「あの、何処で私の話を聞いてきたかは存じませんが、私は前科者、島帰りなんです。
それでも、お雇いになりますか?」
「ええ、貴方が5年の刑期を終えてきたことは承知の上です。」
「身なりを見る限り結構な御身分なのだと思いますが、島帰りを雇っているだけで貴方の信用が無くなりますよ。
私から申し上げるのもおかしな話ですがもう一度考え直されては如何でしょう。」
「無論、貴方の意思が優先しますが、できれば貴方を雇いたいと思っています。」
「でも、私は食中毒の過失致死で島に送られたんですよ。
そんな者を料理人として雇ったなら、いつ食中毒になるかわからないじゃないですか。」
「貴方にかけられた疑いは承知しておりますが、教えてください。
食中毒を起こした料理は、貴方が調理した物ですか?」
ルーシーは、マイクの目を見ていた。
やがてため息をついた。
「信じては貰えないでしょうけれど、私が関わった料理ではありません。」
「僕は、その言葉を信じます。
その上でお願いします。
私の家の料理人として来ていただけませんか?」
迷っているようだったがやがて言った。
「失礼ですが、ご一緒の綺麗な御嬢さんはどういう方でしょうか?」
「僕の恋人というべきでしょうね。
いずれ僕の妻になると思います。」
「では、御嬢さんにお聞きします。
将来嫁ぐ先に私のような前科者がいて困りませんか?」
「犯罪を犯すような方が家にいるのは好ましくないと私は思います。
でも、貴方はそうした人ではないと信じていますから問題はございません。」
再度ため息をついたルーシーが言った。
「何とも困ったお人達だ。
この地区は犯罪者の巣になっているようなところですよ。
そんなところに住んでいる者を雇いたいなどと世間知らずにも程が有ります。」
「二人とも世間知らずではないつもりではいますが、貴方も考えてはくれませんか?
司法制度の過ちとは言え、いつまでも前科者という烙印を負って生きるならば、その内本当に前科者になってしまいます。
私は、貴方の人柄も料理人としての腕も買っています。
だからここから抜け出すチャンスを貴方に与えようと思います。
私の家は二週間後に住めるようになります。
その時には貴方の力添えが欲しいのです。
ここに20万ルーブのお金が御座います。
これは貴方への支度金です。
これで身支度を整えて二週間後にこのメモに記載してある家まで来てください。
貴方に来ていただけるなら、住む処と月に4万ルーブの給与を保証します。
その意志がおありなら、明日にでもこの地区を出て別な所にお移りなさい。
ここは貴方が住むにふさわしい場所じゃない。
20万ルーブあれば、ホテルで2週間滞在することも可能でしょう。
それと、美容院に行かれて化粧をされるといい。
それだけで気分転換が図れると思います。」
「あの、こんな大金を私に預けて、私がこの金を持って逃げたら無駄になるかもしれないとはお考えにならないのですか。」
「先ほども申しましたが、私は貴方を信じています。
貴方はそんなことをする人ではない。
もしこの話を断るとするならば、あなたはこの金をそっくり持って私のところに断りに来るはずです。」
「そこまで・・・。
わかりました。
今少し考えてみます。
その上で、覚悟が出来たならば、この街を出てホテル住まいでもしてみます。」
「宜しくお願いします。
私も私の未来の妻も、貴方を待っております。」
私とマイクは、ルーシーの部屋から立ち去った。
生憎とアパートの階段出口のところでは数人のチンピラがとぐろを巻いていた。
「おう、おめぇら。
この辺じゃ、見かけない面だが、一体何の用だ。」
「ちょっと知り合いに会って来ただけですよ。
それが何か?」
「知り合い?
へっ、このアパートに住んでいるもんが、おめぇらの知り合いの訳があるか?
それによ、この界隈をうろつくにゃぁ、それなりの落とし前をつけてもらわねえとな。
おう、てめぇの財布を出せ。」
「お断りですな。
貴方に財布を渡す理由がない。」
「てめぇ、おちょくってるのかぁ。
黙って出しゃぁ、怪我もせずに済むってもんだろうがぁ。」
「怪我をしたくはないですな。
それに財布も出したくない。」
「それで済むと思っているのかぁ。」
そう言いながら胸元を掴もうとした男だったが、マイクに簡単に腕を捻じりあげられた。
「イッテテティ、野郎、こいつをやっちまえ。」
悲鳴を上げつつも、その男が喚いた。
一斉に殴りかかろうとした男達であるが、仲間の腕を掴んで楯代わりにされているので動けない。
その前に私が進み出た。
マイクが言った。
「アリス、ほどほどにな。
手加減しないと相手が怪我をする。」
「ええ、大丈夫よ。
刃物を持ち出さない限り、青あざぐらいで済ませとく。」
その言葉で怒り狂った男たちが向かってきたが、それらを躱しつつも軽く一撃ずつを食らわした。
すぐに三人の男たちが路上で呻くことになった。
もう一人が残っていたが完全に腰が引けている。
「貴方は、どうするの?」
私がそう聞くと、男は完全に戦意を失って逃げ出した。
兄貴分格の男三人が一瞬の内に路上で呻いているのである。
非力な自分に敵う相手ではないと判断したのは賢明であった。
「マイク、行きましょう。
次もあるわ。」
マイクが男を突き放した。
男はよろけて路上に倒れ込んだ。
その間に私とマイクは歩き始めていた。
「畜生、覚えてやがれ。」
男は刃物を持ち出しはしなかった。
私の脅しが利いたのだろう。
その後は馬鹿なチンピラも寄りつかず、無事にヘインズの待つ車に乗り込んだ。
その次は、同じく余り柄の良くない地域ではあるものの、デーニッツ街区よりはましなロデン街区だった。
ヘインズは、ここでは安アパートの前まで車を寄せたのである。
ここの5階というよりはほぼ屋根裏部屋に相当する天井の低い部屋にカレンが住んでいた。
カレンは、部屋に居た。
今日は仕事にあぶれていたのである。
マイクから話を聞いて、カレンは、幾分訝しく思ったのだろう。
しばし考え込んでから、メイドならしてもいいとぼそっと言った。
彼女にも20万ルーブの支度金を渡し、2週間後に家に来るよう言ったのである。
そこからほど近いマジェス地区にジェイムスは住んでいる。
だがまだ仕事から戻ってはいない。
そこでいつも立ち寄る食堂の前で待った。
ジェイムスは、仕事が終わるとここで食事をし、一杯のギースを飲んで帰るのである。
程なく、如何にも労務者然とした格好のジェイムスが現れた。
マイクは車を降りて食堂に入る前のジェイムスを捕まえて、車に連れ込んだ。
バンタイプの浮上車は、後部に4人が乗れるようになっている。
ドアを閉めて話をした。
ジェイムスも最初は怪しんだが、カレンと同じように一応同意した。
彼は、25万ルーブの現金を渡され、その金でバトラーの養成所に行くよう言われたのである。
バトラーの養成所は、最短で2か月かかり、費用も5万ルーブを要する。
彼の場合も2週間後には家に来るように言われた。
そこに住み込みながらバトラー養成所に通うことになるのである。
その日廻るべきところは終わり、私とマイクはホテルに戻った。
ヘインズは、半日の仕事だけで優に二日分の報酬を手に入れたのである。
マイクに声を掛けられた三人の男女は翌日には安アパートを引き払った。
カレンとジェイムスはビジネスホテルに移り、ルーシーはキッチン付の長期滞在型ホテルに宿泊した。
そうしてカレンはメイドとして何をすべきかを書籍とネット情報で勉強し始めた。
ジェイムスは、バトラー養成所への申し込みを済ませ、同じように書籍とネットで勉強を始めたのである。
ルーシーは色々な食材を買い込み、部屋でそれらを使って料理を作り始めた。
ここしばらくは本格的な料理などしたことも無かった彼女である。
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