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第三章 新たなる展開
3-5 アリス ~メィビスにて その三(分析)
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一つの病室には12歳の女の子が寝ていた。
薬が既に効かない症状に陥っており、クレア女史の話では持って2か月の命であるという。
名前はヘンリエッタ・グレイソン。
ブルネットの髪と茶色の瞳を持つ、可愛い女の子であるがやせ細っていた。
但し、非常に顕著なオーラが見て取れた。
かなり大きいのだが、オーラの光そのものが弱々しい。
次に見せられた患者は25歳の男性であり、ちょうど投薬をする場面であった。
マイクと私はリンクして、その投薬から薬が効き始めるのを静かに見守った。
病室の外から透明な隔壁を通じて患者が見える。
クレア女史の許可を貰って、私たちは1時間ほどその場で見守っていた。
薬の効果が現れはじめたのを確認して、その場を離れたのである。
1時間後、私とマイクは、クレアラス行きのUMBに乗っていた。
『ヘンリエッタは、超能力を持っている。
何とか助けたいね。』
『やっぱり、そうなのね。
でも、ハマセドリンでは効かないって・・・。』
『そのようだけれど、効能成分が明確になれば或いはできるかもしれない。』
『じゃぁ、予定通り、サビナス大学で分析を?』
『うん、さっき、電話でサビナス大学のコールマン教授に分光質量計の使用許可を貰ったから、取り敢えずの分析はできるだろう。
先ほどの男性患者の投薬状況を見る限りは、長分子構造の前半部分がおそらくは効能成分だ。
だからあれを分離できればより効果が上がると思う。
問題は何が長分子を上手く切断してくれるかだけれど、血液中の何かが触媒を果たしているような気がする。
それにもう一つは温度かも知れないな。
体温は通常310ケルビン度前後、その温度で変化が起きるかどうかを確認し、それから血液中に含まれる金属を確認すると良いような気がする。』
『血液中の金属と言ったらヘモグロビンの鉄かしら。
でも余り鉄分が触媒になる事例は無いのよ。
他にも血液の中には微量だけれど銅と亜鉛があり、更に微量なのだけれどマンガンとマグネシウムも含まれているわ。
触媒として可能性の高いのは、銅、亜鉛、それにマンガンかも知れない。』
『ふむ、色々と試してみる価値はあるだろうね。
貰った試料を分割して、試してみよう。
分光質量計には僅かの量でいいんだろう?』
『ええ、一滴あれば十分よ。』
『じゃぁ、少し貰うよ。』
マイクはそう言って、アンプルの中の液を抜き取っていたようだ。
マイクは多分テレキネシスとテレポートで試料を分割し、試しているのだろうと思う。
やがてマイクが言った。
『うん、どうやら、銅の様だね。
銅の微量分子を混ぜて撹拌したら、ハマセドリンの液が三つに分離した。
一つは薄いピンク色、一つは黄色、もう一つは乳白色。
分子構造の長さからみると薄いピンク色が効能成分のように見える。
重量的には効能成分のピンクが一番軽いようだ。』
『便利ね。
自前の実験室を持っているみたいで・・・。』
『ああ、まぁ、アリスもその内できるようになるだろう。』
疾走するUMBの中で隣り合った二人がそんな会話を交わしているとは誰も思わないだろう。
二人ともずっと黙りこくっているのだから。
『マイク、それで家探しはどうするの?』
『うん、ホテルの支配人に不動産業者を紹介してくれるように頼んでいる。
多分、今日戻った時点で何らかの情報が貰えると思うよ。
アリスは、どんな家が欲しいのかな?』
『私は・・・・。
マイクと一緒がいいわ。
ねぇ、マイク、私を養ってくれない?』
『ん?
それは・・・。
プロポーズなのかな?』
『ええ、そうね。
出来るならば結婚してほしい。』
『出会ってからまだ50日も経ってはいないんだけれど、早すぎないかな?』
『どうして?
普通の男女が付き合い始めてどのぐらいで結婚を意識するのか知らないけれど、キティホークに乗っていたお蔭でほぼ毎日マイクと一緒だったのよ。
例えば一週間に一度デートしたとして、週に8時間ぐらいかしら。
1年で50週以上にはなるだろうけれど、それでも400時間程度よ。
マイクと私は長いときは日に12時間以上も一緒だったのよ。
45日間で500時間は優に超えていると思う。
普通の人なら丸々1年以上のお付き合いをしてきたことになる。
その間に人柄を見分けられないようなら、一体何を見て来たのかということになるわ。』
『なるほど、一理あるね。
でも、君も僕もまだ若い。
そんなに急いで結婚する必要はないだろう。
せめてアリスが20歳の誕生日を迎えるまで待ってはどうだい。』
『ええ、それは構わない。
でも、これだけ長く一緒にいると今さら別々に暮らすなんて嫌だわ。
だから、当分、居候でいいからマイクの傍において欲しい。』
『わかった。
じゃぁ、家は一つだけにして一緒に暮らそう。
それで、アリスの希望を聞いておこう。
どんな家がいい?』
『うーん、当座は便利なところがいいから市内中心部の交通に便利な所にあるコンドミニアムかなぁ。
いずれは、結婚して、子供が出来たら、一軒家がいいと思うわ。』
『わかった。
でも、もう子供の事まで考えているんだ。』
『それはそうよ。
女は子宮で物を考える生き物なの。
男女が一緒に暮らせばいずれ子供ができる。』
マイクが不意に顔を近づけ、口づけをそっとした。
初めてのキス。
互いに唇を触れ合うだけのキスだったけれど、とても嬉しかった。
マイクが離れて、互いの目を見つめ、今度は私からキスをした。
少し長いキスだったし、互いの唇を舐め合うようなキスだった。
二人が離れた時、顔が少し赤くなったのが自分で分かった。
乳房が少しうずいたような気がした。
UMBは定刻通り午後二時半にクレアラス駅に着いた。
クレアラス駅の近くで遅い昼食を食べ、フリッターでサビナス大学に向かった。
サビナス大学は、市内中心部から少し離れた場所にあった。
コールマン教授の元へ行くといきなり冷やかされた。
「ほう、初代ディラ生のマイク君は早くも嫁を貰ったか。
それにしてもえらい美人を貰ったものだな。」
「あ、いや、僕らはまだ結婚はしてません。
精々がフィアンセぐらいでしょう。」
「フィアンセだろうが何だろうが、似たようなもんじゃろう。
で、すぐに分光質量計を使うかな?」
「はい、できればお願いします。」
コールマン教授はすぐに研究室に案内してくれ、分光質量計を使えるようにしてくれた。
私が、ハーパー大学の研究室で使っていたものと同じタイプのものであり、操作方法は十分に知っていた。
私が試料を薄いパレットの上に一滴落とし、それを質量計に挿入する手つきを見て教授が言った。
「おや、これはまた、・・・。
アリス君はどう見てもうちの大学の一年か二年ぐらいの年頃にしか見えなかったが、随分と手際がいい。
どこぞで扱ったことがあるのかね?」
「はい、アルタミルのハーパー学院の修士課程で同じ質量計を扱っていました。」
「ほう、ハーパー学院の?
では飛び級じゃろうな。
それに、この質量計を持っているとなると、・・・。
担任の教授はヨハネス・ダーリンかな?」
「はい、お知り合いですか?」
「ああ、儂と奴は、同じ大学の寮で同じ釜の飯を食った仲じゃよ。
彼は今でも触媒の研究をしておるのかね。」
「はい、触媒の探求を生涯の仕事にすると言っておられます。」
そう言っている間にも質量計の分析は自動的に始まっていた。
時間は通常20分程かかる。
試料は二つあるから約40分というところだろう。
マイクはその間、コールマン教授と生化学の最新の論文について論じ合っていた。
中々に次元の高い話であり、私の専攻分野ながら、昆虫の体内に存在する特殊酵素の論文にまつわる話は半分ほどがわかるだけであった。
仮に私に振られてもコメントの仕様がないものだった。
質量計での分析が終了し、そのデータをDU型記憶素子にダウンロードして大学での分析は終わった。
マイクが小切手で使用料を支払い、領収書を受け取っていた。
一回当たりの使用料は3万ルーブもする。
元々高価な機械だから部外者が使用する場合にはその倍ほども請求されるのだが、マイクはディラ生であるため半額で済んでいるのである。
後はホテルに持ち帰って、携帯情報端末に入っている私の作ったプログラムで分子構造を解析するだけである。
コールマン教授にお礼を申し上げ、私達二人はホテルへ戻ったのである。
報道関係者がホテルの入り口に屯しているので、私たちは従業員の通用口からホテルに入れてもらった。
電話でホテルのクロークにお願いして通用口を開けてもらったのである。
ホテルに戻ると、私は早速携帯情報端末を使って解析プログラムを走らせた。
これまでの経験から、この程度の長分子の解析には丸々24時間ほどはかかると知っていた。
マイクから連絡が入り、明日の午前11時頃に不動産業者がホテルに出向いてくることが知らされた。
マイクはロビー階にあるカフェで合うことにし、不動産業者は、幾つかの物件の資料を持参してくるようである。
私も無論一緒に同席することになった。
その日の夕食は最上階のレストランで食べた。
クレアラスの摩天楼の夜景は中々に素晴らしいものがある。
アルタミルのセントラルシティにも摩天楼が無いわけではないが、こことは規模も高さもまるで違うのである。
クレアラスの空気はアルタミルと比べても澄んでいる。
メィビスの政府が大気汚染の管理を厳格に行っているためらしい。
その点、アルタミルは企業惑星であり、それなりの配慮はしているものの、会社の工場などが出す排煙には左程厳しい規制をしていなかったのである。
翌日朝食を食べて部屋に戻ると、宇宙船から託送されたトランク4つが届けられていた。
部屋は寝室に大きなウォークイン・クローゼットがあり、全部の衣類が収まるだけの容量があった。
それらを片づけて、11時少し前には部屋を出た。
マイクと二人、ロビー階のカフェに赴くと入り口付近で不動産業者の者二人が待っていた。
薬が既に効かない症状に陥っており、クレア女史の話では持って2か月の命であるという。
名前はヘンリエッタ・グレイソン。
ブルネットの髪と茶色の瞳を持つ、可愛い女の子であるがやせ細っていた。
但し、非常に顕著なオーラが見て取れた。
かなり大きいのだが、オーラの光そのものが弱々しい。
次に見せられた患者は25歳の男性であり、ちょうど投薬をする場面であった。
マイクと私はリンクして、その投薬から薬が効き始めるのを静かに見守った。
病室の外から透明な隔壁を通じて患者が見える。
クレア女史の許可を貰って、私たちは1時間ほどその場で見守っていた。
薬の効果が現れはじめたのを確認して、その場を離れたのである。
1時間後、私とマイクは、クレアラス行きのUMBに乗っていた。
『ヘンリエッタは、超能力を持っている。
何とか助けたいね。』
『やっぱり、そうなのね。
でも、ハマセドリンでは効かないって・・・。』
『そのようだけれど、効能成分が明確になれば或いはできるかもしれない。』
『じゃぁ、予定通り、サビナス大学で分析を?』
『うん、さっき、電話でサビナス大学のコールマン教授に分光質量計の使用許可を貰ったから、取り敢えずの分析はできるだろう。
先ほどの男性患者の投薬状況を見る限りは、長分子構造の前半部分がおそらくは効能成分だ。
だからあれを分離できればより効果が上がると思う。
問題は何が長分子を上手く切断してくれるかだけれど、血液中の何かが触媒を果たしているような気がする。
それにもう一つは温度かも知れないな。
体温は通常310ケルビン度前後、その温度で変化が起きるかどうかを確認し、それから血液中に含まれる金属を確認すると良いような気がする。』
『血液中の金属と言ったらヘモグロビンの鉄かしら。
でも余り鉄分が触媒になる事例は無いのよ。
他にも血液の中には微量だけれど銅と亜鉛があり、更に微量なのだけれどマンガンとマグネシウムも含まれているわ。
触媒として可能性の高いのは、銅、亜鉛、それにマンガンかも知れない。』
『ふむ、色々と試してみる価値はあるだろうね。
貰った試料を分割して、試してみよう。
分光質量計には僅かの量でいいんだろう?』
『ええ、一滴あれば十分よ。』
『じゃぁ、少し貰うよ。』
マイクはそう言って、アンプルの中の液を抜き取っていたようだ。
マイクは多分テレキネシスとテレポートで試料を分割し、試しているのだろうと思う。
やがてマイクが言った。
『うん、どうやら、銅の様だね。
銅の微量分子を混ぜて撹拌したら、ハマセドリンの液が三つに分離した。
一つは薄いピンク色、一つは黄色、もう一つは乳白色。
分子構造の長さからみると薄いピンク色が効能成分のように見える。
重量的には効能成分のピンクが一番軽いようだ。』
『便利ね。
自前の実験室を持っているみたいで・・・。』
『ああ、まぁ、アリスもその内できるようになるだろう。』
疾走するUMBの中で隣り合った二人がそんな会話を交わしているとは誰も思わないだろう。
二人ともずっと黙りこくっているのだから。
『マイク、それで家探しはどうするの?』
『うん、ホテルの支配人に不動産業者を紹介してくれるように頼んでいる。
多分、今日戻った時点で何らかの情報が貰えると思うよ。
アリスは、どんな家が欲しいのかな?』
『私は・・・・。
マイクと一緒がいいわ。
ねぇ、マイク、私を養ってくれない?』
『ん?
それは・・・。
プロポーズなのかな?』
『ええ、そうね。
出来るならば結婚してほしい。』
『出会ってからまだ50日も経ってはいないんだけれど、早すぎないかな?』
『どうして?
普通の男女が付き合い始めてどのぐらいで結婚を意識するのか知らないけれど、キティホークに乗っていたお蔭でほぼ毎日マイクと一緒だったのよ。
例えば一週間に一度デートしたとして、週に8時間ぐらいかしら。
1年で50週以上にはなるだろうけれど、それでも400時間程度よ。
マイクと私は長いときは日に12時間以上も一緒だったのよ。
45日間で500時間は優に超えていると思う。
普通の人なら丸々1年以上のお付き合いをしてきたことになる。
その間に人柄を見分けられないようなら、一体何を見て来たのかということになるわ。』
『なるほど、一理あるね。
でも、君も僕もまだ若い。
そんなに急いで結婚する必要はないだろう。
せめてアリスが20歳の誕生日を迎えるまで待ってはどうだい。』
『ええ、それは構わない。
でも、これだけ長く一緒にいると今さら別々に暮らすなんて嫌だわ。
だから、当分、居候でいいからマイクの傍において欲しい。』
『わかった。
じゃぁ、家は一つだけにして一緒に暮らそう。
それで、アリスの希望を聞いておこう。
どんな家がいい?』
『うーん、当座は便利なところがいいから市内中心部の交通に便利な所にあるコンドミニアムかなぁ。
いずれは、結婚して、子供が出来たら、一軒家がいいと思うわ。』
『わかった。
でも、もう子供の事まで考えているんだ。』
『それはそうよ。
女は子宮で物を考える生き物なの。
男女が一緒に暮らせばいずれ子供ができる。』
マイクが不意に顔を近づけ、口づけをそっとした。
初めてのキス。
互いに唇を触れ合うだけのキスだったけれど、とても嬉しかった。
マイクが離れて、互いの目を見つめ、今度は私からキスをした。
少し長いキスだったし、互いの唇を舐め合うようなキスだった。
二人が離れた時、顔が少し赤くなったのが自分で分かった。
乳房が少しうずいたような気がした。
UMBは定刻通り午後二時半にクレアラス駅に着いた。
クレアラス駅の近くで遅い昼食を食べ、フリッターでサビナス大学に向かった。
サビナス大学は、市内中心部から少し離れた場所にあった。
コールマン教授の元へ行くといきなり冷やかされた。
「ほう、初代ディラ生のマイク君は早くも嫁を貰ったか。
それにしてもえらい美人を貰ったものだな。」
「あ、いや、僕らはまだ結婚はしてません。
精々がフィアンセぐらいでしょう。」
「フィアンセだろうが何だろうが、似たようなもんじゃろう。
で、すぐに分光質量計を使うかな?」
「はい、できればお願いします。」
コールマン教授はすぐに研究室に案内してくれ、分光質量計を使えるようにしてくれた。
私が、ハーパー大学の研究室で使っていたものと同じタイプのものであり、操作方法は十分に知っていた。
私が試料を薄いパレットの上に一滴落とし、それを質量計に挿入する手つきを見て教授が言った。
「おや、これはまた、・・・。
アリス君はどう見てもうちの大学の一年か二年ぐらいの年頃にしか見えなかったが、随分と手際がいい。
どこぞで扱ったことがあるのかね?」
「はい、アルタミルのハーパー学院の修士課程で同じ質量計を扱っていました。」
「ほう、ハーパー学院の?
では飛び級じゃろうな。
それに、この質量計を持っているとなると、・・・。
担任の教授はヨハネス・ダーリンかな?」
「はい、お知り合いですか?」
「ああ、儂と奴は、同じ大学の寮で同じ釜の飯を食った仲じゃよ。
彼は今でも触媒の研究をしておるのかね。」
「はい、触媒の探求を生涯の仕事にすると言っておられます。」
そう言っている間にも質量計の分析は自動的に始まっていた。
時間は通常20分程かかる。
試料は二つあるから約40分というところだろう。
マイクはその間、コールマン教授と生化学の最新の論文について論じ合っていた。
中々に次元の高い話であり、私の専攻分野ながら、昆虫の体内に存在する特殊酵素の論文にまつわる話は半分ほどがわかるだけであった。
仮に私に振られてもコメントの仕様がないものだった。
質量計での分析が終了し、そのデータをDU型記憶素子にダウンロードして大学での分析は終わった。
マイクが小切手で使用料を支払い、領収書を受け取っていた。
一回当たりの使用料は3万ルーブもする。
元々高価な機械だから部外者が使用する場合にはその倍ほども請求されるのだが、マイクはディラ生であるため半額で済んでいるのである。
後はホテルに持ち帰って、携帯情報端末に入っている私の作ったプログラムで分子構造を解析するだけである。
コールマン教授にお礼を申し上げ、私達二人はホテルへ戻ったのである。
報道関係者がホテルの入り口に屯しているので、私たちは従業員の通用口からホテルに入れてもらった。
電話でホテルのクロークにお願いして通用口を開けてもらったのである。
ホテルに戻ると、私は早速携帯情報端末を使って解析プログラムを走らせた。
これまでの経験から、この程度の長分子の解析には丸々24時間ほどはかかると知っていた。
マイクから連絡が入り、明日の午前11時頃に不動産業者がホテルに出向いてくることが知らされた。
マイクはロビー階にあるカフェで合うことにし、不動産業者は、幾つかの物件の資料を持参してくるようである。
私も無論一緒に同席することになった。
その日の夕食は最上階のレストランで食べた。
クレアラスの摩天楼の夜景は中々に素晴らしいものがある。
アルタミルのセントラルシティにも摩天楼が無いわけではないが、こことは規模も高さもまるで違うのである。
クレアラスの空気はアルタミルと比べても澄んでいる。
メィビスの政府が大気汚染の管理を厳格に行っているためらしい。
その点、アルタミルは企業惑星であり、それなりの配慮はしているものの、会社の工場などが出す排煙には左程厳しい規制をしていなかったのである。
翌日朝食を食べて部屋に戻ると、宇宙船から託送されたトランク4つが届けられていた。
部屋は寝室に大きなウォークイン・クローゼットがあり、全部の衣類が収まるだけの容量があった。
それらを片づけて、11時少し前には部屋を出た。
マイクと二人、ロビー階のカフェに赴くと入り口付近で不動産業者の者二人が待っていた。
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