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Chapter.3
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ゆったりと風が吹く屋上。
見下ろせば、学生たちが楽しそうに校庭でサッカーをしている。
みんなの掛け声が、いかにも青春を感じさせる。
僕と祐介は屋上のフェンスに背を預け、向かい合っている。
「と、泊まったんだ、、、」
「うん」
「どうやった?」
真剣な表情で聞いてくる祐介。
「もう、ほんっとに」
僕はぐっと拳を握り締める。
「最高やった!一緒にお寺巡りして、ご飯食べて。楽しかった!」
「いや、どうだったって言ったんはさ、そういうことやなくて」
「さすが自称恋愛マスター!」
「自称は余計や!」
僕はニコニコ笑顔を浮かべながら、地面に伸ばした足をゆらゆら動かす。
「古賀さんに、かっこいいって言ったんやけどさ」
「まじか!メンタルどうなってんの」
「それでさ、古賀さんが僕に照れるとか、かわいいとか言わはってん」
「おお、脈ありな感じ?」
手をパチパチと鳴らす祐介の言葉に苦笑して、肩を上下させる。
「わからん。と言うか、まだ知り合って三日目やし」
そう言うと彼は「チッチッチ」と舌を鳴らしながら、僕の前で指を左右させる。
「実際お前も初日で惚れちまったことだし、時間は関係ない!」
僕は首をかしげる。
「いやあるでしょ。一つ聞きたいんやけどどこでそんな恋愛アドバイス見つけてくんの?」
僕が聞くと、祐介が固まる。
「いや、ほら」
「ん?」
「色々と、調べてたら知識がついて来た、みたいな?」
「ああ」
僕はニヤリと笑う。
「あのさ祐介、ウェブに彼女の作り方載せてる人は、リア充なんだから、そういうお調子者の恋愛アドバイス聞いても損するだけやで?」
「うるせえ!」
祐介は頭を膝の間に突っ込んで真っ赤な顔を隠す。
「散々僕のこと、必死必死って言ってたのに、一番必死なのはどこの誰?」
意地悪な声音で言うと彼が「うおおおおお」と声を上げる。
「俺だよ!彼女欲しいよまじで!」
「素直でよろしい」
「じゃあ次の作戦考えようや」
そう提案する祐介に、コクリと頷く。
「ここはもう、思い切って色仕かけ」
「アホ!」
僕は空を見上げる。
「でもさ」
「な、なんだよ」
祐介は、急に声のトーンを落とす僕をじっと見る。
「男同士ってさ、、、可能性あるんかな」
僕が言うと祐介が俯いた。
「それは、、、、俺はなんとも言えない。」
「うん」
「可能性あるってことも、無責任なことは言いたくない」
「、、、、うん」
冷たい風が僕たちの間を吹き抜ける。
女性が好きな男性。
男性が好きな女性。
男性が好きな男性。
女性が好きな女性。
両性が好きな女性。
両性が好きな男性。
人間はそれぞれが違う性癖を持っている。
祐介は、今この世界で最も普通と認知される異性愛者。
僕は多分、同性愛者という人種だろう。
最近はだんだん世界で受け入れられて来ているのは知っている。
周りの友達の中にも、結構たくさん同性愛者がいる。
でも、だからって、同性で恋愛することは当たり前じゃない。
普通じゃない。
初恋の僕は知らない。
でも、きっと同性の自分が、恋愛対象にすら入っていないことは、本当に苦しいことだろう。
頑張っても頑張っても、異性愛者を同性愛者に無理やりすることはできない。
世界には諦めるしかないことはたくさんある。
僕の恋もそのうちの一つかもしれない。
でも、僕は諦めたくない。
何たって出会ってたったの三日。
可能性に満ち溢れているじゃないか。
隣に座る親友もそのことは理解してくれているだろう。
だから祐介は、無責任なことは言わない。
でも、祐介は最初から僕を応援してくれた。
その気持ちに応えたい。
僕は俯いたままの親友に「ありがとう」とだけ小さく言った。
あれから数週間、僕は毎日古賀さんの家に通い、食事を作っては、勉強を教えてもらった。
帰宅すると、もう明日が待ちどうしい。
こんな気持ちになるのは初めてだった。
祐介と話してから僕は、ゆっくり焦らず、もっとたくさんの時間を共にしてから、古賀さんに僕の気持ちを伝えようと決意した。
僕は一人、小さく頷いた。
翌朝。
「古賀さん!昨日の今日でなんやねんこれ!」
「いや、どうしても必要な資料が見つかんなくて、、、」
目を泳がせながら、紙の散らばった部屋のど真ん中に座る古賀さん。
「資料整理したん、昨日やん!あれめっちゃ時間かかたのに」
「ご、ごめんなさい」
小さくなる古賀さん。
その姿に頭のどこかは可愛さで悶えていたが、ここで甘やかしてしまっていては、彼の生活力が成長しない。
僕は深いため息をつく。
「朝ごはん作るから、その間にちょっと整理してて。片付けしてる時に意外と出てくるから」
「えー」
「、、、古賀さん?」
「はい、やります」
僕が目元を細めると、かしこまった返事が返ってくる。
そんな古後さんを残し、居間から出て、走り庭のキッチンへと向かった。
段ボールの前に座って、朝食と取りながら勉強を教えてもらう。
本当に真剣な表情をして教えてくれる。
「あ、やば、これ俺もわかんね」
「え、そこが聞きたかったんに」
「ごめん」
たまに見せる照れくさそうな表情も何回も見てきたが、慣れることはない。
どんな表情の変化にも惹かれてしまう。
本当に、古賀さんが好きだ。
数日後。
朝食を作りを始めて数分。
「慎之介母さーん」
「誰が母さんや!」
居間から古賀さんのくぐもった声が聞こえてくる。
「東洋文化の資料どこ入れたっけー?」
「ああ」
僕はエプロンで濡れた手をぬぐいながら、少しボリュームを上げた声で答える。
「新しく買った棚あるやろー?あの左上んとこー」
「母さんありがとー」
僕はブハッと吹き出した。
「あんた宿題ちゃんとしたの?書類で遊ぶのは一日三十分って言ってるでしょう?」
ワントーン上げた声で言うと、隣の部屋からゲラゲラ笑う声が聞こえてくる。
僕は淡い笑顔を浮かべて鼻歌を歌いながら、野菜を切る。
すると、、、。
『テレレレッテレー、タケコプター!』
急に鳴った音に、僕までもがビクッと飛び上がった。
「ぎゃ!」
隣の部屋から聞こえた悲鳴に笑いながら、僕はスマホ画面を見る。
メールは皐月からだ。
皐月【祇園に向かってるなう】即読
僕は慌てて変身を打つ。
僕【来んの?】即読
皐月【母さんが時間あんなら挨拶して来いって】即読
僕【大学は?】既読
皐月【午前抗議なし】既読
僕【おけ】即読
皐月【てかまじ自分で行けって感じ】即読
僕【まあまあ】既読
皐月【到着】既読
そのメッセージが届いたとともに、路地の石畳に響く足音が聞こえてきた。
僕は包丁を置くと、居間にいる古賀さんに声をかける。
「古賀さん。実はうちの姉があいさつに来たんだけどー」
「おう、今行くー」
トントンと書類を整えるとが聞こえると、彼が顔を出した。
「姉?」
「うん、二つ上」
「そっか、じゃあ同い年だ」
古賀さんは楽しそうに笑う。
僕たちは二人で玄関まで行くと、扉を開いた。
路地の入口に皐月の後ろ姿が見える
いつものようにラフなジーンズと、パーカーを着ている。
挨拶だからと言って、おしゃれをする習慣はないようだ。
「皐月、タクシーで来たん?」
路地の表を走り去って行くタクシーを視線で追いながら、ため息交じりに言う。
「別にいいやん」
「あかんて。高いんやし」
彼女は路地から町屋までの道を振り返り、きょろきょろ見渡しながら、こっちに近づいてくる。
「こじゃれてまんなー」
そんなことをいう皐月に、僕は、先ほどから妙に静かな古賀さんを紹介する。
「こちらが古賀さん。なんと京大生」
「へぇ」
あたりをちらちら見まわしながら答えた彼女だったが、古賀さんの顔を見るや否や「あああああ!」と大声で叫んだ。
「ちょ、なにうるさ」
「ああああ!」
すると、古賀さんまでもが皐月を指さして叫んだ。
僕は、互いに指を指して固まる二人を交互に眺める。
「な、なにごと?」
僕がそうつぶやくと、二人の表情が急に不機嫌になる。
お互いに品定めするような、威嚇するような感じで。
もしかして、僕はお邪魔なんじゃ、、、?
「へぇ、あんた京大なのー」
感心しているような口ぶりだが、目が全く笑っていない皐月。
「そっちこそ、だいぶ美人さんになったじゃねえかぁ」
「「ははははは」」
笑顔が怖い。
なんだか一気に空気が重くなった気がする。
というか、二人の関係が理解できない。
僕は恐る恐る「あの」と口を挟む。
「二人は、その、どういったご関係で、、」
そう聞くと、二人は互いを一瞥して僕に視線を向けた。
「元カノ」
「元カレ」
同時に言う二人は本当に息ぴったりだ。
僕は茫然と二人を眺める。
喧嘩するほど仲がいいという言葉がある。
まさにこんな感じ?
でも、元恋人って、、、。
じゃあこの間、姉が言っていた元カレが、古賀さん?
僕は胸に湧き上がる、もやもやした感じをごまかすように、手のひらを握る。
そりゃ、女の人と付き合ったこと、、、あるよね。
『女の人』という言葉がずしりとのしかかる。
なんだか一気に現実を突きつけられた気がする。
「、、ここじゃなんだし、入れば?」
視線をそらし、二人に声をかける。
しかし二人とも声を合わせて「「は?」」と僕を一瞥する。
「入るわけないやろ」
「そんなの、こっちから願い下げだ!」
「ふん!」
姉ちゃんは僕たちに背中を向けると、路地を戻ってゆく。
隣で古賀さんが深いため息をつく音が聞こえた。
カチカチカチカチ。
時計の針が動く音だけが響く、静まり返った部屋。
古賀さんはバラバラに散らばった資料の上に寝っ転がったまま天井を睨んでいる。
僕は壁にかかっている時計を確認した。
「あの、僕そろそろ行く」
「、、、うん」
柄になく静かに返事を返される。
なんだか妙に家を出にくい。
僕は地面に正座したままかばんを持つ。
「あの」
声をかけると、頭だけ動かして僕を見る古賀さん。
「僕が首を突っ込んだらって分ってるけど、何があったか聞いてもいい?」
僕が遠慮がちに聞くと、古賀さんは大きなため息をついた。
上半身をむくりと起こし、足を組んだ。
「、、、高校んとき、あいつが修学旅行で福岡に来たんだよ。そんでまぁ、夜抜け出したみたいでたまたまネカフェであったんだよ」
僕は遠慮がちな相槌を打つ。
「勉強教えてやったりして、流れで連絡先とか交換した。そんであいつが京都に帰る前、告白してくれたんだよ。それで付き合うことんなった。いわゆる遠距離恋愛ってやつ?まぁ、未成年の遠距離は大体うまくいかねえよな。あいつは浮気。それからは連絡すんのもやめたな」
そこまで言った古賀さんは、深いため息をついて畳に視線を下した。
「ははっ、悲惨でしょ?」
苦しそうに言葉を紡ぐ彼の表情に、僕の胸は締め付けられる。
「、、、話させてごめん」
謝る僕に古賀さんは頭を振る。
「いやいい。俺もう気にしてないし。もう終わったことやけん」
そう言うも、なんだか表情が硬い。
僕は視線をそらした。
今は古賀さんを励ましてあげないといけないのに。
きっともっと言って上げられることがあるはずなのに。
古賀さんが皐月とのことで傷ついている、未練を持っているこの状況が、僕はもやもやして仕方がない。
本当に自分勝手だ。
「自分ならそんなことをしない」、「自分なら古賀さんにそんな悲しい思いをさせない」。
そんなことばかり考えてしまう。
でも、このことだけは古賀さんを支えることができない。
だってもし、二人が仲直りするように仕向けたら、、、。
僕はぐっとこぶしを握り締める。
「じゃあ、また明日」
僕が立ち上がろうとすると、古賀さんが急に僕の手首をつかんだ。
振り返ると、何かを訴えるような彼の表情に首をかしげる。
「し、慎太郎君。まじでもう終わったことだし」
古賀さんの言葉に表情が歪む。
「その割には未練駄々洩れやけど」
僕がそうつぶやくと、僕の手首をつかんでいた古賀さんの手が緩んだ。
彼は目を見開いて、こちらを見ている。
「いや、慎之介君、そうじゃ」
「それじゃあ」
僕は町屋から駆け出した。
バカみたいだ。
古賀さんには、なぜ僕があんな態度をとってしまったかわからないだろう。
古賀さんは悪くない。
本当に何やってるんだ僕は。
授業中も、僕はずっと窓の外を眺めたまま。
長年共に過ごしてきた祐介もこんな僕の姿を見るのは初めてだ。
たびたび話しかけてくるが、同情の色が見えて、今は話したくない。
昼休み、僕は中庭の芝生に座り込む。
いつもとは違う場所での昼食。
なんだか、祐介が隣にいないのは落ち着かない
膝の上に置いた弁当も、箸があまり進まない。
僕は大きなため息をついた。
すると、がさがさと、荒い足音が近づいてくる音がした
「慎之介!」
顔を上げると、眉根にしわを寄せ、荒い息で肩を上下させる祐介が立っている。
「お前、なんでこんなとこいんの?」
「なに?」
そっけなく答えると、祐介がいきなり僕の頭にチョップを食らわせた。
ごっ!と音が鳴った。
何が起きたのか理解するのに数秒かかる。
「ちょ!」
「お前さ!」
僕の言葉を遮った祐介がずいっと寄ってくる。
「マジでその顔やめろよ!イライラすんねん!」
「、、、は?」
混乱した表情で聞き返すと、彼が頭を抱えて叫ぶ。
「いつも偉そうに母さんみたいなこと言ってんのがお前やろ!そんなうじうじ情けない顔してんのむかつくんや!」
「う、うじうじって」
僕も湧き上がる怒りで、立ち上がる。
「うじうじしてへんし!」
「してる!絶対何かあったやろ!なんで言ってくれへんねん!」
「言いたくないわ!そんな同情駄々洩れのやつに!」
「同情すんなってのか?」
「同情で悩み聞いてほしくないって言ってんねん!」
僕がそこまで言うと、祐介の表情がいっそきつくなる。
「アホ!同情するに決まってるやろ!自分がどんな顔してのか分ってへんの!?」
「、、、、顔?」
彼が呆れたように顔に手を当てる。
「お前さ、自分がどんだけ顔に出やすいかわかってないやろ」
「、、、、」
僕は荒い息を上げながら自分の顔に手を当てる。
「ってかなんで俺らが喧嘩せなあかんねん!俺はただ慎之介が心配で!」
そこまで言うと、祐介はばつが悪そうに黙り込む。
本当に何してるんだ僕。
なんで僕と祐介がけんかしてるんだ?
八つ当たりなんて子供かよ。
僕たちは中庭の地面に肩を並べて座る。
目の前でサッカーをする生徒たちを眺める。
僕は何があったのかぽつぽつと話した。
でも、口に出してみると、どんなに幼稚なことで悩んでいたのかを実感し、頬が羞恥で染まる。
話し終えると、祐介が最初に発した言葉は、、、。
「乙女かよ」
「お、と?!」
僕は目を見開きむせ返る。
「僕男やけど?!」
そう叫ぶと、祐介が深いため息をついて僕に視線を向ける。
「そうや」
「は?」
「お前は男やん。何乙女みたいにうじうじ悩んでんの」
「だからうじうじなんて!」
そこまで言うが、僕は言葉を濁した。
これ以上墓穴を掘りたくない。
「少女漫画みたいに女がうじうじ悩んで気持ちが言えへんのはかわいい。でも男がやると、カッコ悪いし、正直言って気色悪い」
「辛辣!あ、ていうか少女漫画読んだん」
僕が聞くと、祐介は親指をぐっと立てて偉そうにふふんと笑う。
「お前のために勉強したんや」
「祐介様っ」
「でも、冒頭十ページで五人目のイケメンが出てきたところでギブした」
「、、、」
苦笑する僕を横目に、祐介が息を吐く。
「とにかく、俺が言いたいのはお前は男や。もうびしっと気持ち伝えろよ。相手が男やったら尚更やん」
祐介の言葉がずしりと胸に収まる。
「意識してもらうためには、自分が相手を友達以上っ思ってるってこと言わな、なんも始まらへんで?」
僕は彼をじっと眺める。
「というか、元カノ登場なんてラブコメのセオリーやん。結局は主人公が元の男から奪い取らはって、ハッピーエンド」
奪い取る、、、。
「さっきも言ってたけど、お前はな自分が思ってるよりもずっと感情が表に出やすいねん。もう相手の男もお前の気落ちに気づいてはるかもしれんな」
「、、、、」
僕は横に置いていた弁当を掴むと、中身をガツガツと平らげる。
「やっとお前がモテへん理由がわかったな。こないだの合コンでも、カラオケで音痴な女の子の番になったら明らかに嫌そうな顔してたし」
そんなことを言いながらゲラゲラ笑う祐介。
僕はそんな友人を横目に、そそくさと弁当箱を風呂敷に包んだ。
「祐介、ありがとな」
「ん?」
そう言って立ち上がった僕を半笑いのまま見上げる祐介は、首をかしげる。
「僕行かなきゃ」
僕は、校門に向かって駆け出しながら、弁当場を祐介に向かって頬り投げた。
祐介は慌ててキャッチする。
「ナイスキャッチ」
「あ、ちょ、おい!どこ行くねん!」
「古賀さんとこ!」
「はぁ?!授業どうすんの!」
僕はそういう祐介に振り返り、にかっと笑う。
「校則破りの金髪頭が何言ってんねん。やっぱこの高校来てよかったわ。僕もヤンキーの仲間入りやな!荷物頼んだ!」
「はぁ?!おい!」
扉を開いてだんだん遠くなる祐介の声に耳を傾けながら校舎の入口をくぐった。
なにを乙女みたいにうじうじ悩んでいたのかわからない。
古賀さんをもう少しちゃんと知ってから、自分の気持ちを伝えようなんてただの逃げだったんだ。
たしかに、古賀さんをもっと知るごとにもっともっと好きになった。
でも、本当は会った時からずっと、大好きだった。
僕は、門のフェンスを飛び越える。
自転車置き場から、自転車を引っ張り出して飛び乗ると、学校の敷地外に出る。
今もこんなに熱くなって、汗をかいて必死に自転車をこいでいる。
少女漫画かよ。
古賀さんを振り向かせたい。
皐月との過去なんて忘れさせたい。
奪い取りたい。
こんな激しい感情を持っていながら何遠慮してるんだ。
僕は男だ。
ラブコメのごとく、奪い取ってみせる!
見下ろせば、学生たちが楽しそうに校庭でサッカーをしている。
みんなの掛け声が、いかにも青春を感じさせる。
僕と祐介は屋上のフェンスに背を預け、向かい合っている。
「と、泊まったんだ、、、」
「うん」
「どうやった?」
真剣な表情で聞いてくる祐介。
「もう、ほんっとに」
僕はぐっと拳を握り締める。
「最高やった!一緒にお寺巡りして、ご飯食べて。楽しかった!」
「いや、どうだったって言ったんはさ、そういうことやなくて」
「さすが自称恋愛マスター!」
「自称は余計や!」
僕はニコニコ笑顔を浮かべながら、地面に伸ばした足をゆらゆら動かす。
「古賀さんに、かっこいいって言ったんやけどさ」
「まじか!メンタルどうなってんの」
「それでさ、古賀さんが僕に照れるとか、かわいいとか言わはってん」
「おお、脈ありな感じ?」
手をパチパチと鳴らす祐介の言葉に苦笑して、肩を上下させる。
「わからん。と言うか、まだ知り合って三日目やし」
そう言うと彼は「チッチッチ」と舌を鳴らしながら、僕の前で指を左右させる。
「実際お前も初日で惚れちまったことだし、時間は関係ない!」
僕は首をかしげる。
「いやあるでしょ。一つ聞きたいんやけどどこでそんな恋愛アドバイス見つけてくんの?」
僕が聞くと、祐介が固まる。
「いや、ほら」
「ん?」
「色々と、調べてたら知識がついて来た、みたいな?」
「ああ」
僕はニヤリと笑う。
「あのさ祐介、ウェブに彼女の作り方載せてる人は、リア充なんだから、そういうお調子者の恋愛アドバイス聞いても損するだけやで?」
「うるせえ!」
祐介は頭を膝の間に突っ込んで真っ赤な顔を隠す。
「散々僕のこと、必死必死って言ってたのに、一番必死なのはどこの誰?」
意地悪な声音で言うと彼が「うおおおおお」と声を上げる。
「俺だよ!彼女欲しいよまじで!」
「素直でよろしい」
「じゃあ次の作戦考えようや」
そう提案する祐介に、コクリと頷く。
「ここはもう、思い切って色仕かけ」
「アホ!」
僕は空を見上げる。
「でもさ」
「な、なんだよ」
祐介は、急に声のトーンを落とす僕をじっと見る。
「男同士ってさ、、、可能性あるんかな」
僕が言うと祐介が俯いた。
「それは、、、、俺はなんとも言えない。」
「うん」
「可能性あるってことも、無責任なことは言いたくない」
「、、、、うん」
冷たい風が僕たちの間を吹き抜ける。
女性が好きな男性。
男性が好きな女性。
男性が好きな男性。
女性が好きな女性。
両性が好きな女性。
両性が好きな男性。
人間はそれぞれが違う性癖を持っている。
祐介は、今この世界で最も普通と認知される異性愛者。
僕は多分、同性愛者という人種だろう。
最近はだんだん世界で受け入れられて来ているのは知っている。
周りの友達の中にも、結構たくさん同性愛者がいる。
でも、だからって、同性で恋愛することは当たり前じゃない。
普通じゃない。
初恋の僕は知らない。
でも、きっと同性の自分が、恋愛対象にすら入っていないことは、本当に苦しいことだろう。
頑張っても頑張っても、異性愛者を同性愛者に無理やりすることはできない。
世界には諦めるしかないことはたくさんある。
僕の恋もそのうちの一つかもしれない。
でも、僕は諦めたくない。
何たって出会ってたったの三日。
可能性に満ち溢れているじゃないか。
隣に座る親友もそのことは理解してくれているだろう。
だから祐介は、無責任なことは言わない。
でも、祐介は最初から僕を応援してくれた。
その気持ちに応えたい。
僕は俯いたままの親友に「ありがとう」とだけ小さく言った。
あれから数週間、僕は毎日古賀さんの家に通い、食事を作っては、勉強を教えてもらった。
帰宅すると、もう明日が待ちどうしい。
こんな気持ちになるのは初めてだった。
祐介と話してから僕は、ゆっくり焦らず、もっとたくさんの時間を共にしてから、古賀さんに僕の気持ちを伝えようと決意した。
僕は一人、小さく頷いた。
翌朝。
「古賀さん!昨日の今日でなんやねんこれ!」
「いや、どうしても必要な資料が見つかんなくて、、、」
目を泳がせながら、紙の散らばった部屋のど真ん中に座る古賀さん。
「資料整理したん、昨日やん!あれめっちゃ時間かかたのに」
「ご、ごめんなさい」
小さくなる古賀さん。
その姿に頭のどこかは可愛さで悶えていたが、ここで甘やかしてしまっていては、彼の生活力が成長しない。
僕は深いため息をつく。
「朝ごはん作るから、その間にちょっと整理してて。片付けしてる時に意外と出てくるから」
「えー」
「、、、古賀さん?」
「はい、やります」
僕が目元を細めると、かしこまった返事が返ってくる。
そんな古後さんを残し、居間から出て、走り庭のキッチンへと向かった。
段ボールの前に座って、朝食と取りながら勉強を教えてもらう。
本当に真剣な表情をして教えてくれる。
「あ、やば、これ俺もわかんね」
「え、そこが聞きたかったんに」
「ごめん」
たまに見せる照れくさそうな表情も何回も見てきたが、慣れることはない。
どんな表情の変化にも惹かれてしまう。
本当に、古賀さんが好きだ。
数日後。
朝食を作りを始めて数分。
「慎之介母さーん」
「誰が母さんや!」
居間から古賀さんのくぐもった声が聞こえてくる。
「東洋文化の資料どこ入れたっけー?」
「ああ」
僕はエプロンで濡れた手をぬぐいながら、少しボリュームを上げた声で答える。
「新しく買った棚あるやろー?あの左上んとこー」
「母さんありがとー」
僕はブハッと吹き出した。
「あんた宿題ちゃんとしたの?書類で遊ぶのは一日三十分って言ってるでしょう?」
ワントーン上げた声で言うと、隣の部屋からゲラゲラ笑う声が聞こえてくる。
僕は淡い笑顔を浮かべて鼻歌を歌いながら、野菜を切る。
すると、、、。
『テレレレッテレー、タケコプター!』
急に鳴った音に、僕までもがビクッと飛び上がった。
「ぎゃ!」
隣の部屋から聞こえた悲鳴に笑いながら、僕はスマホ画面を見る。
メールは皐月からだ。
皐月【祇園に向かってるなう】即読
僕は慌てて変身を打つ。
僕【来んの?】即読
皐月【母さんが時間あんなら挨拶して来いって】即読
僕【大学は?】既読
皐月【午前抗議なし】既読
僕【おけ】即読
皐月【てかまじ自分で行けって感じ】即読
僕【まあまあ】既読
皐月【到着】既読
そのメッセージが届いたとともに、路地の石畳に響く足音が聞こえてきた。
僕は包丁を置くと、居間にいる古賀さんに声をかける。
「古賀さん。実はうちの姉があいさつに来たんだけどー」
「おう、今行くー」
トントンと書類を整えるとが聞こえると、彼が顔を出した。
「姉?」
「うん、二つ上」
「そっか、じゃあ同い年だ」
古賀さんは楽しそうに笑う。
僕たちは二人で玄関まで行くと、扉を開いた。
路地の入口に皐月の後ろ姿が見える
いつものようにラフなジーンズと、パーカーを着ている。
挨拶だからと言って、おしゃれをする習慣はないようだ。
「皐月、タクシーで来たん?」
路地の表を走り去って行くタクシーを視線で追いながら、ため息交じりに言う。
「別にいいやん」
「あかんて。高いんやし」
彼女は路地から町屋までの道を振り返り、きょろきょろ見渡しながら、こっちに近づいてくる。
「こじゃれてまんなー」
そんなことをいう皐月に、僕は、先ほどから妙に静かな古賀さんを紹介する。
「こちらが古賀さん。なんと京大生」
「へぇ」
あたりをちらちら見まわしながら答えた彼女だったが、古賀さんの顔を見るや否や「あああああ!」と大声で叫んだ。
「ちょ、なにうるさ」
「ああああ!」
すると、古賀さんまでもが皐月を指さして叫んだ。
僕は、互いに指を指して固まる二人を交互に眺める。
「な、なにごと?」
僕がそうつぶやくと、二人の表情が急に不機嫌になる。
お互いに品定めするような、威嚇するような感じで。
もしかして、僕はお邪魔なんじゃ、、、?
「へぇ、あんた京大なのー」
感心しているような口ぶりだが、目が全く笑っていない皐月。
「そっちこそ、だいぶ美人さんになったじゃねえかぁ」
「「ははははは」」
笑顔が怖い。
なんだか一気に空気が重くなった気がする。
というか、二人の関係が理解できない。
僕は恐る恐る「あの」と口を挟む。
「二人は、その、どういったご関係で、、」
そう聞くと、二人は互いを一瞥して僕に視線を向けた。
「元カノ」
「元カレ」
同時に言う二人は本当に息ぴったりだ。
僕は茫然と二人を眺める。
喧嘩するほど仲がいいという言葉がある。
まさにこんな感じ?
でも、元恋人って、、、。
じゃあこの間、姉が言っていた元カレが、古賀さん?
僕は胸に湧き上がる、もやもやした感じをごまかすように、手のひらを握る。
そりゃ、女の人と付き合ったこと、、、あるよね。
『女の人』という言葉がずしりとのしかかる。
なんだか一気に現実を突きつけられた気がする。
「、、ここじゃなんだし、入れば?」
視線をそらし、二人に声をかける。
しかし二人とも声を合わせて「「は?」」と僕を一瞥する。
「入るわけないやろ」
「そんなの、こっちから願い下げだ!」
「ふん!」
姉ちゃんは僕たちに背中を向けると、路地を戻ってゆく。
隣で古賀さんが深いため息をつく音が聞こえた。
カチカチカチカチ。
時計の針が動く音だけが響く、静まり返った部屋。
古賀さんはバラバラに散らばった資料の上に寝っ転がったまま天井を睨んでいる。
僕は壁にかかっている時計を確認した。
「あの、僕そろそろ行く」
「、、、うん」
柄になく静かに返事を返される。
なんだか妙に家を出にくい。
僕は地面に正座したままかばんを持つ。
「あの」
声をかけると、頭だけ動かして僕を見る古賀さん。
「僕が首を突っ込んだらって分ってるけど、何があったか聞いてもいい?」
僕が遠慮がちに聞くと、古賀さんは大きなため息をついた。
上半身をむくりと起こし、足を組んだ。
「、、、高校んとき、あいつが修学旅行で福岡に来たんだよ。そんでまぁ、夜抜け出したみたいでたまたまネカフェであったんだよ」
僕は遠慮がちな相槌を打つ。
「勉強教えてやったりして、流れで連絡先とか交換した。そんであいつが京都に帰る前、告白してくれたんだよ。それで付き合うことんなった。いわゆる遠距離恋愛ってやつ?まぁ、未成年の遠距離は大体うまくいかねえよな。あいつは浮気。それからは連絡すんのもやめたな」
そこまで言った古賀さんは、深いため息をついて畳に視線を下した。
「ははっ、悲惨でしょ?」
苦しそうに言葉を紡ぐ彼の表情に、僕の胸は締め付けられる。
「、、、話させてごめん」
謝る僕に古賀さんは頭を振る。
「いやいい。俺もう気にしてないし。もう終わったことやけん」
そう言うも、なんだか表情が硬い。
僕は視線をそらした。
今は古賀さんを励ましてあげないといけないのに。
きっともっと言って上げられることがあるはずなのに。
古賀さんが皐月とのことで傷ついている、未練を持っているこの状況が、僕はもやもやして仕方がない。
本当に自分勝手だ。
「自分ならそんなことをしない」、「自分なら古賀さんにそんな悲しい思いをさせない」。
そんなことばかり考えてしまう。
でも、このことだけは古賀さんを支えることができない。
だってもし、二人が仲直りするように仕向けたら、、、。
僕はぐっとこぶしを握り締める。
「じゃあ、また明日」
僕が立ち上がろうとすると、古賀さんが急に僕の手首をつかんだ。
振り返ると、何かを訴えるような彼の表情に首をかしげる。
「し、慎太郎君。まじでもう終わったことだし」
古賀さんの言葉に表情が歪む。
「その割には未練駄々洩れやけど」
僕がそうつぶやくと、僕の手首をつかんでいた古賀さんの手が緩んだ。
彼は目を見開いて、こちらを見ている。
「いや、慎之介君、そうじゃ」
「それじゃあ」
僕は町屋から駆け出した。
バカみたいだ。
古賀さんには、なぜ僕があんな態度をとってしまったかわからないだろう。
古賀さんは悪くない。
本当に何やってるんだ僕は。
授業中も、僕はずっと窓の外を眺めたまま。
長年共に過ごしてきた祐介もこんな僕の姿を見るのは初めてだ。
たびたび話しかけてくるが、同情の色が見えて、今は話したくない。
昼休み、僕は中庭の芝生に座り込む。
いつもとは違う場所での昼食。
なんだか、祐介が隣にいないのは落ち着かない
膝の上に置いた弁当も、箸があまり進まない。
僕は大きなため息をついた。
すると、がさがさと、荒い足音が近づいてくる音がした
「慎之介!」
顔を上げると、眉根にしわを寄せ、荒い息で肩を上下させる祐介が立っている。
「お前、なんでこんなとこいんの?」
「なに?」
そっけなく答えると、祐介がいきなり僕の頭にチョップを食らわせた。
ごっ!と音が鳴った。
何が起きたのか理解するのに数秒かかる。
「ちょ!」
「お前さ!」
僕の言葉を遮った祐介がずいっと寄ってくる。
「マジでその顔やめろよ!イライラすんねん!」
「、、、は?」
混乱した表情で聞き返すと、彼が頭を抱えて叫ぶ。
「いつも偉そうに母さんみたいなこと言ってんのがお前やろ!そんなうじうじ情けない顔してんのむかつくんや!」
「う、うじうじって」
僕も湧き上がる怒りで、立ち上がる。
「うじうじしてへんし!」
「してる!絶対何かあったやろ!なんで言ってくれへんねん!」
「言いたくないわ!そんな同情駄々洩れのやつに!」
「同情すんなってのか?」
「同情で悩み聞いてほしくないって言ってんねん!」
僕がそこまで言うと、祐介の表情がいっそきつくなる。
「アホ!同情するに決まってるやろ!自分がどんな顔してのか分ってへんの!?」
「、、、、顔?」
彼が呆れたように顔に手を当てる。
「お前さ、自分がどんだけ顔に出やすいかわかってないやろ」
「、、、、」
僕は荒い息を上げながら自分の顔に手を当てる。
「ってかなんで俺らが喧嘩せなあかんねん!俺はただ慎之介が心配で!」
そこまで言うと、祐介はばつが悪そうに黙り込む。
本当に何してるんだ僕。
なんで僕と祐介がけんかしてるんだ?
八つ当たりなんて子供かよ。
僕たちは中庭の地面に肩を並べて座る。
目の前でサッカーをする生徒たちを眺める。
僕は何があったのかぽつぽつと話した。
でも、口に出してみると、どんなに幼稚なことで悩んでいたのかを実感し、頬が羞恥で染まる。
話し終えると、祐介が最初に発した言葉は、、、。
「乙女かよ」
「お、と?!」
僕は目を見開きむせ返る。
「僕男やけど?!」
そう叫ぶと、祐介が深いため息をついて僕に視線を向ける。
「そうや」
「は?」
「お前は男やん。何乙女みたいにうじうじ悩んでんの」
「だからうじうじなんて!」
そこまで言うが、僕は言葉を濁した。
これ以上墓穴を掘りたくない。
「少女漫画みたいに女がうじうじ悩んで気持ちが言えへんのはかわいい。でも男がやると、カッコ悪いし、正直言って気色悪い」
「辛辣!あ、ていうか少女漫画読んだん」
僕が聞くと、祐介は親指をぐっと立てて偉そうにふふんと笑う。
「お前のために勉強したんや」
「祐介様っ」
「でも、冒頭十ページで五人目のイケメンが出てきたところでギブした」
「、、、」
苦笑する僕を横目に、祐介が息を吐く。
「とにかく、俺が言いたいのはお前は男や。もうびしっと気持ち伝えろよ。相手が男やったら尚更やん」
祐介の言葉がずしりと胸に収まる。
「意識してもらうためには、自分が相手を友達以上っ思ってるってこと言わな、なんも始まらへんで?」
僕は彼をじっと眺める。
「というか、元カノ登場なんてラブコメのセオリーやん。結局は主人公が元の男から奪い取らはって、ハッピーエンド」
奪い取る、、、。
「さっきも言ってたけど、お前はな自分が思ってるよりもずっと感情が表に出やすいねん。もう相手の男もお前の気落ちに気づいてはるかもしれんな」
「、、、、」
僕は横に置いていた弁当を掴むと、中身をガツガツと平らげる。
「やっとお前がモテへん理由がわかったな。こないだの合コンでも、カラオケで音痴な女の子の番になったら明らかに嫌そうな顔してたし」
そんなことを言いながらゲラゲラ笑う祐介。
僕はそんな友人を横目に、そそくさと弁当箱を風呂敷に包んだ。
「祐介、ありがとな」
「ん?」
そう言って立ち上がった僕を半笑いのまま見上げる祐介は、首をかしげる。
「僕行かなきゃ」
僕は、校門に向かって駆け出しながら、弁当場を祐介に向かって頬り投げた。
祐介は慌ててキャッチする。
「ナイスキャッチ」
「あ、ちょ、おい!どこ行くねん!」
「古賀さんとこ!」
「はぁ?!授業どうすんの!」
僕はそういう祐介に振り返り、にかっと笑う。
「校則破りの金髪頭が何言ってんねん。やっぱこの高校来てよかったわ。僕もヤンキーの仲間入りやな!荷物頼んだ!」
「はぁ?!おい!」
扉を開いてだんだん遠くなる祐介の声に耳を傾けながら校舎の入口をくぐった。
なにを乙女みたいにうじうじ悩んでいたのかわからない。
古賀さんをもう少しちゃんと知ってから、自分の気持ちを伝えようなんてただの逃げだったんだ。
たしかに、古賀さんをもっと知るごとにもっともっと好きになった。
でも、本当は会った時からずっと、大好きだった。
僕は、門のフェンスを飛び越える。
自転車置き場から、自転車を引っ張り出して飛び乗ると、学校の敷地外に出る。
今もこんなに熱くなって、汗をかいて必死に自転車をこいでいる。
少女漫画かよ。
古賀さんを振り向かせたい。
皐月との過去なんて忘れさせたい。
奪い取りたい。
こんな激しい感情を持っていながら何遠慮してるんだ。
僕は男だ。
ラブコメのごとく、奪い取ってみせる!
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