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終章.バビロニア・オブ・リビルド
55『東の科学者と錬金術師』
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東圏側B区のレンガ倉庫前にいる南花達の頭上を、瑠璃色のドラゴン【ウシュムガル】が飛び去った直後…
突然の出来事に対して、茫然自失になっている一同を、更なる予想外の存在が驚愕させる。
曇天で小雨が降る川の水面に、モルガーナと契約を交わし、黒鉄の両翼を生やした白いワンピース姿のアリサが現れる。
「嘘…あれは…アリサなの!?」
南花が真っ先に驚きを漏らす。
「ふむ…アリサ君がどうして…うん?あの翼は…確か…」
エンキは好奇心を擽られつつ、記憶の断片を手繰り寄せる。
アリサは水面から羽ばたき…南花達とエンキ達の間に割って入る。
そして、南花とヨハンナを拘束している足元のエンキの術式を、瞬時に破壊する。
「アリサ…その翼は?…それにどこに居たの?」
サクラが立て続けに問い掛ける。
「サクラ…そして、皆も心配をさせてしまったわね…私は、【地下養成管理棟】に捕らわれていて…背中の火傷跡に潜んでいた【モルガーナ】の意志と対話して、この錬金術の力を得たのよ。」
そう応えたアリサは…南花、サクラ、コマチ、アオイ、ヨハンナ、ハンムラビの順番で視線を合わせて僅かに微笑む。
「モルガーナ…錬金術…」
その二つの単語を耳にしたエンキの面持ちが、逆鱗を触れられたかの様に、いつもの気の抜けた表情から一変する。
そして、エンキはこっそりと白衣のポケットから、菱形の術式を取り出すと…右手の上で魔力を込めて高速回転させていく…
次の瞬間…アリサへ向けて閃光の一撃を加える。
しかし…アリサ自身が気付くよりも先に、黒鉄の右の翼が自動的に、その一撃を弾き、軌道を反らす。
そして、反れたエンキの一撃によって、レンガ倉庫の内の一棟が炎と黒煙を上げる。
「いやぁ…久しぶりの挨拶にしては、随分と物騒じゃないかな…」
エンキの方を見た、アリサの表情が変わり…口調とトーンがいつもよりも軽くなる。
「ふぅん、相変わらずのその口調…ムカつくね…またしても、帝国をかき回しに来た誑かしの【モルガーナ君】」
そう応えたエンキの目元は笑っていない。
「誑かし?失礼だな…今の帝国によって虐げられている私の末裔達に、手を差し伸べる為に来ただけなんだけどね。」
モルガーナの意識に合わせて、アリサが長い銀髪をポリポリと掻く。
「ふっ、ふふ…手を差し伸べる?その昔…君が見つけて、自分達の一族だけで独占していた…難解な錬金術を解読した上に、科学として体系化した私の方が、多くの者を豊かにし、よほど手助けしたと思うけれどね…」
エンキが科学者としての見解を述べる。
「確かに科学は多くの者を豊かにしたかもしれない…でも、科学と言うものは、人々を賢くもするが…怠惰で強欲な者にもさせる側面がある…だからこそ、錬金術として私の目の届く範囲で管理したかったんだけどなぁ…」
それに対して、モルガーナの意識を宿したアリサが、賢者としての見解を言い返す。
「管理だって?それは、技術の独占による支配に繋がる…エゴじゃないのかい?」
エンキが持論で返すが…
「あはは…エンキ君が科学を普及させた結果、魔術は時代遅れの品物になりつつある上に…経済的な格差が広がった事によって、帝国は更に混沌として…この南花君とアリサ君達が【再構築計画】を行使する現状に繋がったんじゃないのかな?」
そう応えたモルガーナの意志が、不敵な笑みを浮かべる。
「それは、君やエレシュキガルが唆したからだろう?」
溜め息を漏らしたエンキが続ける。
「何にせよ…今度こそ、屁理屈な錬金術師を黙らせる為にも…悪いが南花君達は、ここで拘束させて貰うよ。」
エンキの一言を機に…帝国憲兵である、六型憲兵、九型憲兵、そして八型憲兵が戦意を向ける。
「このアリサ君には、私が見てきた世界の一部を与えているし…そう上手く行くかな?」
そのモルガーナの一言を最後に、身体の主導権がアリサ自身に戻される。
そして、南花達の一同も戦闘体勢を整える。
突然の出来事に対して、茫然自失になっている一同を、更なる予想外の存在が驚愕させる。
曇天で小雨が降る川の水面に、モルガーナと契約を交わし、黒鉄の両翼を生やした白いワンピース姿のアリサが現れる。
「嘘…あれは…アリサなの!?」
南花が真っ先に驚きを漏らす。
「ふむ…アリサ君がどうして…うん?あの翼は…確か…」
エンキは好奇心を擽られつつ、記憶の断片を手繰り寄せる。
アリサは水面から羽ばたき…南花達とエンキ達の間に割って入る。
そして、南花とヨハンナを拘束している足元のエンキの術式を、瞬時に破壊する。
「アリサ…その翼は?…それにどこに居たの?」
サクラが立て続けに問い掛ける。
「サクラ…そして、皆も心配をさせてしまったわね…私は、【地下養成管理棟】に捕らわれていて…背中の火傷跡に潜んでいた【モルガーナ】の意志と対話して、この錬金術の力を得たのよ。」
そう応えたアリサは…南花、サクラ、コマチ、アオイ、ヨハンナ、ハンムラビの順番で視線を合わせて僅かに微笑む。
「モルガーナ…錬金術…」
その二つの単語を耳にしたエンキの面持ちが、逆鱗を触れられたかの様に、いつもの気の抜けた表情から一変する。
そして、エンキはこっそりと白衣のポケットから、菱形の術式を取り出すと…右手の上で魔力を込めて高速回転させていく…
次の瞬間…アリサへ向けて閃光の一撃を加える。
しかし…アリサ自身が気付くよりも先に、黒鉄の右の翼が自動的に、その一撃を弾き、軌道を反らす。
そして、反れたエンキの一撃によって、レンガ倉庫の内の一棟が炎と黒煙を上げる。
「いやぁ…久しぶりの挨拶にしては、随分と物騒じゃないかな…」
エンキの方を見た、アリサの表情が変わり…口調とトーンがいつもよりも軽くなる。
「ふぅん、相変わらずのその口調…ムカつくね…またしても、帝国をかき回しに来た誑かしの【モルガーナ君】」
そう応えたエンキの目元は笑っていない。
「誑かし?失礼だな…今の帝国によって虐げられている私の末裔達に、手を差し伸べる為に来ただけなんだけどね。」
モルガーナの意識に合わせて、アリサが長い銀髪をポリポリと掻く。
「ふっ、ふふ…手を差し伸べる?その昔…君が見つけて、自分達の一族だけで独占していた…難解な錬金術を解読した上に、科学として体系化した私の方が、多くの者を豊かにし、よほど手助けしたと思うけれどね…」
エンキが科学者としての見解を述べる。
「確かに科学は多くの者を豊かにしたかもしれない…でも、科学と言うものは、人々を賢くもするが…怠惰で強欲な者にもさせる側面がある…だからこそ、錬金術として私の目の届く範囲で管理したかったんだけどなぁ…」
それに対して、モルガーナの意識を宿したアリサが、賢者としての見解を言い返す。
「管理だって?それは、技術の独占による支配に繋がる…エゴじゃないのかい?」
エンキが持論で返すが…
「あはは…エンキ君が科学を普及させた結果、魔術は時代遅れの品物になりつつある上に…経済的な格差が広がった事によって、帝国は更に混沌として…この南花君とアリサ君達が【再構築計画】を行使する現状に繋がったんじゃないのかな?」
そう応えたモルガーナの意志が、不敵な笑みを浮かべる。
「それは、君やエレシュキガルが唆したからだろう?」
溜め息を漏らしたエンキが続ける。
「何にせよ…今度こそ、屁理屈な錬金術師を黙らせる為にも…悪いが南花君達は、ここで拘束させて貰うよ。」
エンキの一言を機に…帝国憲兵である、六型憲兵、九型憲兵、そして八型憲兵が戦意を向ける。
「このアリサ君には、私が見てきた世界の一部を与えているし…そう上手く行くかな?」
そのモルガーナの一言を最後に、身体の主導権がアリサ自身に戻される。
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