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終章.バビロニア・オブ・リビルド
51『ノブレス・オブリージュ』
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東圏側B区の地下に停車する、蒸気機関車のテーブル付きのボックス席の一つに、南花と14歳の少女が向き合う形で座っている。
長い髪をポニーテールにして纏めている少女【ブロッサム・スコッチ】は、南花が出したココアに手を付けることなく…南花の方を見ている。
「お姉さん…警察の人じゃないでしょ?新聞に首都機関の技術開発局の局員って載ってたし…」
通う中学校のセーラー服姿のブロッサムが疑念を、南花へ向ける。
「えっと…その…」
ブロッサムが発した新聞という単語に、南花は思わず焦りを表してしまう。
「見出しの大きな文字をちらっとしか見てないから、よく知らないけれど…お姉さん達は悪いことをしたの?」
ブロッサムは、更に問い掛ける。
「悪いことか…どうだろう…見る人によってはそうかもね。」
単純な質問に対して、僅かに自問自答した後に答えた、南花はココアを飲む。
「何それ…まぁ、私や父さんと母さんに危害が無いなら別に良いけど…」
要領を得ない答えに対して、ブロッサムは軽く溜め息を漏らす。
「父さんか…」
ブロッサムの一言を復唱した南花が、考える素振りを見せた上で、言葉を続ける。
「私の父さんから託された『権利』と『責務』を…この帝国の今を自分の目で見た上で、行使しようと思ったから間違いではないよ。」
目の前にいる少女ではなく、南花は自分自身に向けて改めて宣言する。
「ふ~ん…父さんから、外では言いふらさない様に言われているけれど…帝国の新聞は有ること無いことを混ぜて書くことがあるって聞いたことあるし…」
宣言を受け止めたブロッサムが、怪訝さを抱きつつも応える。
「それに…私を誘拐する時も丁寧に扱われたし…お姉さん達なりの正義もあるって事にしといてあげるよ。」
僅かに口角を上げたブロッサムは、ようやく手渡されたココアを飲む。
「そっか、ありがとう…って、今、誘拐って!?」
「ふっ、あはは…まだ隠すつもりですか?」
一瞬、南花はあたふたとした後に…ブロッサムと同時に、年相応の少女の笑みを見せる。
「明日の朝にはお父さんの元へ帰れるから安心してね。」
「そっか…ありがとう。」
南花とブロッサムの距離が少し近付いたタイミングで、前の車両と連結している扉が開く…
「南花さん、ただいま西圏側から戻りました。」
西圏側にて単独行動していたハンムラビが声を掛ける。
「ハンムラビさん、危険な中、お疲れ様です。」
ハンムラビへ視線を上げた、南花が応じる。
「その…各地を調査した第一騎士団の団員の報告を聞いたのですが…」
ヨハンナの指示を元に逃亡した団員達から、得られた情勢の一部を伝えようとするハンムラビの表情が、僅かに曇る。
「アリサさんの行方に関連する情報は得られ無かったとの事です…申し訳ありません。」
「いいえ、ハンムラビさんが謝る事は無いですよ。」
頭を下げようするハンムラビに対して、南花が制止する。
「おっ…ハンさんが戻って来たぞ…ズル、ズルズル!」
「ちょっと、コマチ…音を立てながら蕎麦を食べないでよ…下品でしょ。」
今度は、南花達がいる客席車両の後方に連なる、食堂車両の僅かに開いた扉の方からコマチとアオイの声が聞こえてくる。
「ううん…アオイちゃん、蕎麦はすすって食べた方が香りも感じられるから正しい食べ方なんだよ。」
「へぇ…そうなんですか。」
アオイと蕎麦を片手に持ちながらコマチが、南花の元へ近付いて来る。
「ハンムラビさんとブロッサムさんもいかがですか?」
後からやって来たサクラが、声を掛ける。
「蕎麦?食べたことがないな…でも、美味しそう…」
「私も蕎麦は初体験ですね。」
ブロッサムとハンムラビも興味を示す。
コンコン…っと南花達が座る席の窓が軽く叩かれる。
その音に、一番に気付いた南花が窓を開ける。
「おっ、蕎麦か…蕎麦はねぇ、飲み過ぎた翌朝に食べると…体に良く染み込んで来るんだよねぇ…」
東圏側の酒場から帰還したヨハンナは、出来上がっている。
「うわぁ…こんな大人には、なりたくないかも…」
突然、現れた酔っ払いシスターに対して、ブロッサムは思わず引いてしまう。
「ふっ…こんな大人かぁ…確かに、酷いかもね…」
そう吐露したヨハンナは、機関車内に入る前に力尽きて、その場で寝てしまう。
「団長…」
ハンムラビが、周囲に聞こえない程の小声で漏らした後に、わざとらしく溜め息を吐く。
「はぁ…全くこの酔っ払いシスターは、仕方ないですね。」
「ハンムラビさん、運び込むの手伝いますよ。」
南花とサクラが、ハンムラビに続いてヨハンナの元に駆け寄る。
長い髪をポニーテールにして纏めている少女【ブロッサム・スコッチ】は、南花が出したココアに手を付けることなく…南花の方を見ている。
「お姉さん…警察の人じゃないでしょ?新聞に首都機関の技術開発局の局員って載ってたし…」
通う中学校のセーラー服姿のブロッサムが疑念を、南花へ向ける。
「えっと…その…」
ブロッサムが発した新聞という単語に、南花は思わず焦りを表してしまう。
「見出しの大きな文字をちらっとしか見てないから、よく知らないけれど…お姉さん達は悪いことをしたの?」
ブロッサムは、更に問い掛ける。
「悪いことか…どうだろう…見る人によってはそうかもね。」
単純な質問に対して、僅かに自問自答した後に答えた、南花はココアを飲む。
「何それ…まぁ、私や父さんと母さんに危害が無いなら別に良いけど…」
要領を得ない答えに対して、ブロッサムは軽く溜め息を漏らす。
「父さんか…」
ブロッサムの一言を復唱した南花が、考える素振りを見せた上で、言葉を続ける。
「私の父さんから託された『権利』と『責務』を…この帝国の今を自分の目で見た上で、行使しようと思ったから間違いではないよ。」
目の前にいる少女ではなく、南花は自分自身に向けて改めて宣言する。
「ふ~ん…父さんから、外では言いふらさない様に言われているけれど…帝国の新聞は有ること無いことを混ぜて書くことがあるって聞いたことあるし…」
宣言を受け止めたブロッサムが、怪訝さを抱きつつも応える。
「それに…私を誘拐する時も丁寧に扱われたし…お姉さん達なりの正義もあるって事にしといてあげるよ。」
僅かに口角を上げたブロッサムは、ようやく手渡されたココアを飲む。
「そっか、ありがとう…って、今、誘拐って!?」
「ふっ、あはは…まだ隠すつもりですか?」
一瞬、南花はあたふたとした後に…ブロッサムと同時に、年相応の少女の笑みを見せる。
「明日の朝にはお父さんの元へ帰れるから安心してね。」
「そっか…ありがとう。」
南花とブロッサムの距離が少し近付いたタイミングで、前の車両と連結している扉が開く…
「南花さん、ただいま西圏側から戻りました。」
西圏側にて単独行動していたハンムラビが声を掛ける。
「ハンムラビさん、危険な中、お疲れ様です。」
ハンムラビへ視線を上げた、南花が応じる。
「その…各地を調査した第一騎士団の団員の報告を聞いたのですが…」
ヨハンナの指示を元に逃亡した団員達から、得られた情勢の一部を伝えようとするハンムラビの表情が、僅かに曇る。
「アリサさんの行方に関連する情報は得られ無かったとの事です…申し訳ありません。」
「いいえ、ハンムラビさんが謝る事は無いですよ。」
頭を下げようするハンムラビに対して、南花が制止する。
「おっ…ハンさんが戻って来たぞ…ズル、ズルズル!」
「ちょっと、コマチ…音を立てながら蕎麦を食べないでよ…下品でしょ。」
今度は、南花達がいる客席車両の後方に連なる、食堂車両の僅かに開いた扉の方からコマチとアオイの声が聞こえてくる。
「ううん…アオイちゃん、蕎麦はすすって食べた方が香りも感じられるから正しい食べ方なんだよ。」
「へぇ…そうなんですか。」
アオイと蕎麦を片手に持ちながらコマチが、南花の元へ近付いて来る。
「ハンムラビさんとブロッサムさんもいかがですか?」
後からやって来たサクラが、声を掛ける。
「蕎麦?食べたことがないな…でも、美味しそう…」
「私も蕎麦は初体験ですね。」
ブロッサムとハンムラビも興味を示す。
コンコン…っと南花達が座る席の窓が軽く叩かれる。
その音に、一番に気付いた南花が窓を開ける。
「おっ、蕎麦か…蕎麦はねぇ、飲み過ぎた翌朝に食べると…体に良く染み込んで来るんだよねぇ…」
東圏側の酒場から帰還したヨハンナは、出来上がっている。
「うわぁ…こんな大人には、なりたくないかも…」
突然、現れた酔っ払いシスターに対して、ブロッサムは思わず引いてしまう。
「ふっ…こんな大人かぁ…確かに、酷いかもね…」
そう吐露したヨハンナは、機関車内に入る前に力尽きて、その場で寝てしまう。
「団長…」
ハンムラビが、周囲に聞こえない程の小声で漏らした後に、わざとらしく溜め息を吐く。
「はぁ…全くこの酔っ払いシスターは、仕方ないですね。」
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