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2章.ギルタブリル討伐
16『エンキの深淵』
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帝国東圏側B区内にある、探求心の深淵…
その室内には、無造作に積まれホコリを被った書物、十数匹の小魚と小型のエビが同居する球体水槽、一度切断され縫合の跡がある蛹が数匹入っている虫籠が混在している。
複数のランタンによる暖色系の照明が、帝国憲兵の一人アハトとアビスの主であるエンキを照す…
「今回の件に関する報告は以上です。」
「そっか、お疲れさま。」
コルネッティの一件について、アハトから経緯を聞いたエンキは、徹夜明けに甘いカフェラテを飲み、一息ついている。
「本当に処理をして宜しかったのでしょうか?」
「うん?コルネッティは、他の支配人に比べても、地下道化師に対して高圧的な態度が目立っていて、B区内の各所からクレームが来てたし…」
アハトからの懸念に応えながらエンキは席を立つ。
「たかが一個人のプライドの為に、帝国全体にとっての科学反応に成りうる新たな芽を勝手に摘み取ろうとしたしね。」
そう続けたエンキは、作業机の隣に設置している、100匹程度のネズミが住まう飼育ゲージ内に、命を落とした小魚とエビを餌として入れる。
餌に群がる無数のネズミの様に、フッ…と短く笑う飼い主。
「左様ですか。」
笑みを浮かべるエンキに反して、仮面で目元が隠れたアハトの返事には僅かながら悲しみが乗る。
「あっ、そう言えば…頼んでいたギルタブリル討伐作戦の概要は、立ててくれた?」
アハトの方に振り返ったエンキが、南花達も参加する作戦概要の進捗について問い掛ける。
「はい、こちらになります。」
アハトは、スーツの上着の内ポケットから、書類を取り出し広げる。
「ふ~ん…前回とは違って少数精鋭の盾兵によるファランクス陣形に対して、私の魔術で防御力を底上げする形か…」
計画書に書かれた戦闘陣形の簡略図に目を通すエンキ。
「はい…盾兵にギルタブリルの攻撃を集中させている間に、南花さん達が開発中の銃弾による狙撃で、対象の外皮に対して着々とダメージを与えていく計画です。」
アハトは簡略図を指差しながら説明をする。
「そして、最後方から部隊を支援していた私が、最後に止めの一撃を放つと…」
エンキの言葉に、左様ですと応えたアハトが続ける。
「盾兵役の兵士候補のリストアップが此方になります。」
渡された別紙の書類に視線を落とすエンキ。
「うん、良いじゃない?アハトの方から、候補の人達に声を掛けといてくれる?」
更なる仕事を任せたエンキは、書類をアハトに返す。
「はい、お任せ下さい。」
「あとさ、この作戦概要を、南花君たちの狙撃小隊の方にも共有しといて。」
「…はい、そちらも畏まりました。」
一瞬の間の後に、エンキからの追加注文を受けたアハトは退室する。
ガチャンと自室の扉が閉まると、大きなアクビの後に、白衣を脱ぎ、眼鏡を外したエンキは背伸びをする。
「シャワー浴びると目が覚めるしな…仮眠の後でいっか…」
そう呟いたエンキは、ソファーに横になり、朝を告げるキジバトの鳴き声を聞きつつ眠りにつく。
その室内には、無造作に積まれホコリを被った書物、十数匹の小魚と小型のエビが同居する球体水槽、一度切断され縫合の跡がある蛹が数匹入っている虫籠が混在している。
複数のランタンによる暖色系の照明が、帝国憲兵の一人アハトとアビスの主であるエンキを照す…
「今回の件に関する報告は以上です。」
「そっか、お疲れさま。」
コルネッティの一件について、アハトから経緯を聞いたエンキは、徹夜明けに甘いカフェラテを飲み、一息ついている。
「本当に処理をして宜しかったのでしょうか?」
「うん?コルネッティは、他の支配人に比べても、地下道化師に対して高圧的な態度が目立っていて、B区内の各所からクレームが来てたし…」
アハトからの懸念に応えながらエンキは席を立つ。
「たかが一個人のプライドの為に、帝国全体にとっての科学反応に成りうる新たな芽を勝手に摘み取ろうとしたしね。」
そう続けたエンキは、作業机の隣に設置している、100匹程度のネズミが住まう飼育ゲージ内に、命を落とした小魚とエビを餌として入れる。
餌に群がる無数のネズミの様に、フッ…と短く笑う飼い主。
「左様ですか。」
笑みを浮かべるエンキに反して、仮面で目元が隠れたアハトの返事には僅かながら悲しみが乗る。
「あっ、そう言えば…頼んでいたギルタブリル討伐作戦の概要は、立ててくれた?」
アハトの方に振り返ったエンキが、南花達も参加する作戦概要の進捗について問い掛ける。
「はい、こちらになります。」
アハトは、スーツの上着の内ポケットから、書類を取り出し広げる。
「ふ~ん…前回とは違って少数精鋭の盾兵によるファランクス陣形に対して、私の魔術で防御力を底上げする形か…」
計画書に書かれた戦闘陣形の簡略図に目を通すエンキ。
「はい…盾兵にギルタブリルの攻撃を集中させている間に、南花さん達が開発中の銃弾による狙撃で、対象の外皮に対して着々とダメージを与えていく計画です。」
アハトは簡略図を指差しながら説明をする。
「そして、最後方から部隊を支援していた私が、最後に止めの一撃を放つと…」
エンキの言葉に、左様ですと応えたアハトが続ける。
「盾兵役の兵士候補のリストアップが此方になります。」
渡された別紙の書類に視線を落とすエンキ。
「うん、良いじゃない?アハトの方から、候補の人達に声を掛けといてくれる?」
更なる仕事を任せたエンキは、書類をアハトに返す。
「はい、お任せ下さい。」
「あとさ、この作戦概要を、南花君たちの狙撃小隊の方にも共有しといて。」
「…はい、そちらも畏まりました。」
一瞬の間の後に、エンキからの追加注文を受けたアハトは退室する。
ガチャンと自室の扉が閉まると、大きなアクビの後に、白衣を脱ぎ、眼鏡を外したエンキは背伸びをする。
「シャワー浴びると目が覚めるしな…仮眠の後でいっか…」
そう呟いたエンキは、ソファーに横になり、朝を告げるキジバトの鳴き声を聞きつつ眠りにつく。
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