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Intermezzo-間章-

間章-バベルの塔のギルガメッシュ-

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 バビロニア帝国全体の行政・司法を司る首都機関【バベルの塔】は、西圏側と東圏側の間に挟まれる様に、帝国の中心に位置する。

巨大なクレーターの中心部、大きな支柱の上に鎮座するレンガ造りの塔は3層で構成されており、支柱の内部の一部を地下施設として活用している。

バベルの塔、第3層のとある会議室には、広い室内に反して、四方に玉座の様な大きな座席が各一席ずつしか置かれていない。

その椅子は、帝国の各地域を統治するトップ【統括長ドミニウム】と呼ばれる4人のみが座る権利を得る。
既に3つの席は埋まっている。

「こうして4人が集まるのはいつぶりだ?」
北西の席に座る大男【マルドゥク】が室内に響き渡る程の声量で、他の2人から返答は無く、無視される。
百戦錬磨と言う単語を体現したかの様な風貌のマルドゥクの背丈は2メートル近くある。
帝国西圏側の第一騎士団と第二騎士団を束ねる。

マルドゥクは気を取り直して、南西の席に座る統括長ドミニウムに視線を向け、言葉を続ける。
「それでイシュタルは、いつ結婚して、俺の子を産んでくれるんだ?」

「なぁ!?議事録の残る公の場で、ナニをぶちかましてやがりますの!」
品の無い告白に、たじろぎ、艶やかな赤い長髪に負けじと長い耳も赤くする、品行方正な淑女【イシュタル】はエルフ一族の長である。
そして、西圏側の第三騎士団と第四騎士団を束ねる。

「なに、マジな反応をしてんだか…マルドゥクの何時もの冗談に。」
南東の座席に足を組んだ状態で座る、白衣を羽織った女性【エンキ】が気だるげに応える。

仄かに灰色がかったアンダーリムの眼鏡が特徴的なエンキは、東圏側南部B区の統括長ドミニウムであると同時に、首都機関の技術開発局にて局長を務める科学者ギークでもある。

大あくびをするエンキに対して、すかさずカウンターを入れるイシュタル。
「エンキさん。また、徹夜明けのようですわね。局長がその様な不規則な生活では、技術開発局の風紀に問題ありなのではないのでしょうか?」

「そこは、仕事熱心と言って欲しいなぁ…それに徹夜が悪しき習慣だなんて、前時代過ぎるよ、オバサン。」
「おばっ!?その発言は聞き捨てなりませんわよ!カフェイン中毒の貴方よりも、肌艶は良いですわ!」

オバサンと言いつつも、統括長ドミニウムの4人の年齢差はさほどない…

統括長ドミニウム達の実年齢は3000歳前後である。
しかし、魔術を扱える人間の大半が有する神格【四神格】の上位互換…
【半神格】を有していて、より神に近い4人のフィジカルな年齢は、実年齢の約100分の1程度である。

「お、俺はいつも、冗談のつもりでは…」
またしても相手にされず傷付いたマルドゥクが、モジモジとしながら小声で否定するが、口論を始めた2人の女性には聞こえていない。

犬猿の仲の2人の口喧嘩に介入するかの様に、会議室の扉が開かれる。
「お前達、喜劇をしている場合ではないぞ。」
まだ暑さが残るなか、統括長ドミニウムの証である軍服を着こなす男が入室し、鶴の一声で場を静める。

そして、会議室の扉から見て北東に位置する座席へドサッと座った男こそ…
事実上、バビロニア帝国のトップ【ギルガメッシュ】である。
ギルガメッシュは東圏側北部A区の統括長ドミニウムのみならず、首都機関のトップとして首都機関長も務める。

「行政の形式上、致し方ないが…会議なんぞ時間の浪費でしかない!短時間で終わらせるぞ。」
多忙な首都機関の長は、太陰暦の暦に合わせて、満ち欠けする月の装飾が施された腕時計で時間を確認する。

「俺はこの後、進捗が4.8%遅れている東圏側A区のダム建設を手伝いに行かないといけない。そして、明日は朝から…」

「あぁ~はいはい…忙しいならさ、早速、本題に入ってよ。」
本当に帝国の事を思い、公僕になるギルガメッシュの真面目さに対して…
ただ己が、知的好奇心を満たしたいが為のエンキは、暑苦しさを感じ、言葉を遮る。

「あぁ、その通りだな…今回の議案、くだんの源南花とアリサ・クロウに対する今後の対処についてだったな。」
座席の前にある机に右腕を置き、考えを巡らせるギルガメッシュ。

「そうですわね…あの二人が出会ってしまったことが、一番、憂慮すべき事案ですわ。」
長い赤い髪を耳の後ろに掛けながら、イシュタルは眉をひそめる。

「こうなる前に、あの鉄之助の遺言なんて無視して、消しておけば良かったんじゃねぇか…」
短絡的でシンプルな解決策を行使しなかったことに対して批難するマルドゥク。

「まさか、貴方がわたくしの大切な一族マリアを、暗殺者に仕立て上げた訳じゃありませんわよね?」
イシュタルの鋭い視線が、マルドゥクに突き刺さる。

「そ、そんな訳ないだろ!何で、お前に嫌われるような事をするんだよ。俺は、10年前の話し合いの結論を守っていたぞ!」
マルドゥクは、焦りながら否定する。

「まぁ、あの二人を良く思っていない勢力は、幾つかあるからねぇ~」
眠たそうに応えるエンキ。
「その犯人探しは、各所に任せておけ…」
議論を本題へと修正するギルガメッシュ。

「あっ、そうだ…こう言うのはどうかな?」
含みのある笑みを見せた、エンキが提案する。

「2人を、私の技術開発局の職員として採用すれば、帝国の利益に繋がる上に、2人同時に監視することが出来る。」
「ふむ、確かに合理的ではあるな…」
ギルガメッシュが、好感触を示す。

「エンキさん、単純にあなたの手駒が増えて嬉しいだけじゃありませんの?」
己の研究欲を満たしたいが為では、と真意を突くイシュタル。

「あくまでも、それは結果論でしかないよ…少なくとも、事前に暗殺計画を察知出来なかったポンコツエルフには言われたくないな…」
エンキは、ふふっと笑いながらイシュタルのミスをいじる。

「なっ……オホン、確かにその失態については認めざるを得ませんわね。」
直感的に座席から立ち上がるが、イシュタルは反省の意を示す。

「まぁ、俺もこの件に関しては、エンキの案に賛成だな。」
マルドゥクは、幾つもの戦から得た組織に関する経験則から迎合する。

「賛成多数か…では、源南花は本人の目標でもある銃職人として…士官学校で首席のアリサ・クロウは、飛び級で卒業扱いとして首都機関の技術開発局へ就任させる。」
ギルガメッシュが決議案を宣言し、早々に会議を閉じる。

「では、2人の監視は任せたぞエンキ。」
「オッケイ…まぁ、監視役として適任は、あの子かな…」
ギルガメッシュへ軽く返事した、エンキは既に監視役の適任者に見当が付いている。
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