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1階『ヒーローショー』
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2階のフードコートで出会った不思議なエルフ【レイチェル】から、このモールに辿り着いた経緯を聞きながら…シエルとユリは1階へと降りていく。
「私は、普段通りに町の魔術学校で授業を受けた帰り道で見かけた…ツバの広い帽子を右目が隠れる位に深く被った魔女みたいな行商人さんから、装飾が綺麗な絵本を買って帰って…」
自身の魔術の一つで、周囲を照らしながら…2人の間に挟まれて移動しているレイチェルは思い出している。
「そして、夕食を食べ終えて…自分のベッドの上で、その絵本を読んでいたら急に眠気に襲われて…気が付いたら、この建物に迷い混んでいた感じですが…参考になりましたか?」
ここまでの経緯を話したレイチェルが、2人に問い掛ける。
「そう…寝てしまって気が付いたら…この世界にいたと言う点は、3人とも共通しているみたいね…」
引き続き後方を警戒するユリが答える。
「仮に夢の中の世界だとしても…3人がそれぞれの意思で動いたり話したり出来るのは可笑しいよね…」
前方を警戒しながら疑問点を口にするシエルが更に、言葉を続けようとするが…
下の階、即ち1階から何かがぶつかり合う、甲高い音が3人の耳に届く…
「また、生存者かしらね…気をつけて接触してみましょう。」
「うん、分かってる。」
ユリの発言に対して、シエルとレイチェルが頷く。
次の瞬間、先頭を行くシエルの目に、またしても不可思議な状況が映る。
「えぇ…今度は、ヒーローショー?いや、時代劇っていうやつ?」
そう疑問を漏らしたシエルの眼前には、モール内の広間に設けられた舞台上で、一人の少女が異形の化物と対峙している。
その黒髪の少女は、矢絣袴にブーツという出で立ちで、その両手には日本刀が握られている。
「全く面妖な存在ですわね!」
黒髪の少女が斬り掛かった化け物は、多数の脚を持ち素早く動く蜘蛛である。
少女よりも一回り大きな体格の蜘蛛の各脚と口には鋭利な刃が生えている。
そして、少女の日本刀と巨大な蜘蛛の刃が重なり合う音が、モール内の吹き抜けの天井に響き渡る…
「援護するよ、2人とも良いよね?」
シエルが、ユリとレイチェルから了承を得る前に飛び出す。
「ちょっと!先走らないでよね!」
ユリがその次に続く。
「ひいぇ…支援系の私に手助け出来ること何かありますかね?」
腰が引けながらもレイチェルも続く。
蜘蛛の膨れた尻から、わらわらと小柄な蜘蛛達が多数現れる。
「うわっ!きもっ!」
そう嫌悪の言葉を漏らしながらシエルが、USPの銃口から弾丸を連続で放つ。
「銃声!?どなたですか?」
銃声によって3人の存在に気付いた黒髪の少女が、蜘蛛達に戦意を向けつつも…最も近いシエルを一瞥する。
その少女の一瞥した瞬間を眼前の蜘蛛は見逃さず…尻から糸を放つ。
「ッゥ、そんな!」
放たれた糸の塊に囚われた少女は、モール内の支柱に拘束されてしまう…
そして、捕らえた少女を捕食しようと蜘蛛が、口の刃を向ける。
「ッゥ、このような所でわたくしは、終わる訳にはいきませんのよ!」
捕らえられた少女の瞳は、まだ諦めていない。
「えぇ、その通りよ。」
短く返事をしたユリが、捕食しようとする蜘蛛に向けて、ガバメントから45口径の銃弾を浴びせる。
尻を撃たれた事で出血した蜘蛛は怯み、後退する。
「レイチェル、今のうちに魔術で何とか彼女を助けてあげて!」
そう叫んだユリは、更に発砲して敵の視線を惹き付ける。
「ひぇ~役立ちそうな魔術あったかな…でも、何とかしてみます。」
レイチェルは狼狽しながらも、可能性を模索する。
「よし…吐き出された子蜘蛛は、全部始末したかな…」
引き続きシエルは、嫌悪感を抱きながらも確実に発砲していく。
「照明の魔術を応用して…それを火種にするしか…よし!」
自分に言い聞かせる様に呟いていたレイチェルの狙い通りに、少女を拘束していた糸は焼け落ちていく。
「助かりましたわ…正式なお礼は後回しでお願いいたします。先ずは…」
蜘蛛の糸から解放された黒髪の少女は、落ちていた日本刀を拾い、再び戦意を燃やす。
そして、再び親玉の蜘蛛と正面切って対峙する…
親玉の蜘蛛も並々ならぬ戦意に当てられたのか、動きが慎重になる。
子蜘蛛を討伐し終えたシエルとユリは、その一騎討ちに固唾を飲む…
次の瞬間…少女と蜘蛛は、同じタイミングで一撃を放つ。
刃を交えた少女と蜘蛛は、制止する。
そして、青い血飛沫を上げながら、蜘蛛が倒れて決戦が終わる。
戦いを終えた黒髪の少女の元に、3人が駆け寄る。
ーーー
「わたくしは、【伊達たき】と申します。改めて宜しくお願いいたしますわ。」
たきは丁寧に挨拶をすると、深くお辞儀する。
その綺麗な所作に釣られて、シエル達も思わずお辞儀してしまう。
「わたくしも、お三方と似た様な形で、この…百貨店?…でよろしいのでしょうか?此方に誘われた次第でございます。」
たきは言葉を選びながら経緯を話す。
「うーん、私とユリとたきは、日本から来たみたいだけど…レイチェルはどこからだっけ?」
シエルが戸惑いながらも問い掛ける。
「私だけ仲間外れなのですかぁ…私がいたのはブリテン帝国ですぅ。」
レイチェルは、あたふたしながらも答える。
「ブリテン…ブリテンって確か、イギリスの事よね。」
ユリが頭の片隅から知識を引っ張って来る。
「イギリスかどうかは知りませんが…アーサー王を討伐したモルガーナ女王が代わって帝国を治めています。」
レイチェルが補足説明した際の『イギリス』と言う単語に、たきが過敏に反応する。
「イギリスとは…エゲレスの事ですわよね?」
何故かたきの語気が強くなる。
「そうだけど…どうしたの?」
シエルが恐る恐る追及する。
「エゲレスは、わたくしの藩…今では県と言いますが…故郷を内と外の双方から弱体させた憎き相手なのです。」
たきは両肩を震わせながら、僅かにうつ向く。
「まぁまぁ…とにかく、今は元の世界に戻る事を、第一に考えるべきでしょう?」
ユリが話題を戻す。
「そうですわね…失礼致しましたわ。」
冷静さを欠いた事に対してたきが謝罪する。
「とりあえずさ、1階に辿り着いた訳だし…外に出てみない?」
わざとらしく手を叩いたシエルが提案する。
「えぇ…シエルの言う通りね。」
ユリが賛同したに続いて、レイチェルとたきも迎合する。
ーーー
シエル達は、外に繋がる出入り口の付近まで足を進めるが…
出入り口の目の前に、一つの桃が置かれている。
「どうして…こんな所に桃が?」
周囲を警戒しながら、シエルが最初に近付く。
「この桃…見覚えがありますわ…」
たきが次に歩み寄り、何かを思い出す。
「たき、何か知っているの?」
最後に追い付いたユリが質問する。
「ここは、時間が無限にあり…時間が存在しない場所…楽園であり絶望の地でもある、桃源郷だと思いますわ…」
たきが更に続ける。
「異なる時代…異なる場所から同年代の人が誘われる世界…わたくしが幼い頃、祖父から聞かされたおとぎ話に出てくる場所ですわね。」
たきが一つの可能性を告げる。
「それで、ここから元の世界に戻れる方法は知っているんですか…?」
状況にびくびくしているレイチェルが質問する。
「確か…3つの鍵を集める必要があると聞いた覚えがありますわ…その一つが、この白桃に似ていますの。」
たきが記憶を辿りながら答える。
「残る2つはどのような形かしら?」
ユリが問い掛ける。
「確か…亀と葉巻の形をした鍵だと聞いたと思いますわ。」
たきが白桃を手にしながら思い出す。
「そっか…その鍵を探す為にも、外にでるしかないね。」
シエルが先陣を切って、モールの外へ歩を進める。
そして、その視線の先には、灰色に染まり廃れた町が広がっている…
人の気配がしない廃線の駅…潰れた個人商店…斜めに傾いた複数の電柱…それらが見渡せる小高い場所に、シエル達が誘われたモールは建っていた…
「あっ…あれは、何ですか!?」
レイチェルが指差した方角には、山の上に鎮座する大きな灰色の城が見える。
「あれは…鬼ヶ城…あそこに、この桃源郷を統べる存在がいるはず…」
たきの言葉を機に…シエル、ユリ、レイチェルは、元の世界へ戻る為の長い道のりが始まることを決意する。
「私は、普段通りに町の魔術学校で授業を受けた帰り道で見かけた…ツバの広い帽子を右目が隠れる位に深く被った魔女みたいな行商人さんから、装飾が綺麗な絵本を買って帰って…」
自身の魔術の一つで、周囲を照らしながら…2人の間に挟まれて移動しているレイチェルは思い出している。
「そして、夕食を食べ終えて…自分のベッドの上で、その絵本を読んでいたら急に眠気に襲われて…気が付いたら、この建物に迷い混んでいた感じですが…参考になりましたか?」
ここまでの経緯を話したレイチェルが、2人に問い掛ける。
「そう…寝てしまって気が付いたら…この世界にいたと言う点は、3人とも共通しているみたいね…」
引き続き後方を警戒するユリが答える。
「仮に夢の中の世界だとしても…3人がそれぞれの意思で動いたり話したり出来るのは可笑しいよね…」
前方を警戒しながら疑問点を口にするシエルが更に、言葉を続けようとするが…
下の階、即ち1階から何かがぶつかり合う、甲高い音が3人の耳に届く…
「また、生存者かしらね…気をつけて接触してみましょう。」
「うん、分かってる。」
ユリの発言に対して、シエルとレイチェルが頷く。
次の瞬間、先頭を行くシエルの目に、またしても不可思議な状況が映る。
「えぇ…今度は、ヒーローショー?いや、時代劇っていうやつ?」
そう疑問を漏らしたシエルの眼前には、モール内の広間に設けられた舞台上で、一人の少女が異形の化物と対峙している。
その黒髪の少女は、矢絣袴にブーツという出で立ちで、その両手には日本刀が握られている。
「全く面妖な存在ですわね!」
黒髪の少女が斬り掛かった化け物は、多数の脚を持ち素早く動く蜘蛛である。
少女よりも一回り大きな体格の蜘蛛の各脚と口には鋭利な刃が生えている。
そして、少女の日本刀と巨大な蜘蛛の刃が重なり合う音が、モール内の吹き抜けの天井に響き渡る…
「援護するよ、2人とも良いよね?」
シエルが、ユリとレイチェルから了承を得る前に飛び出す。
「ちょっと!先走らないでよね!」
ユリがその次に続く。
「ひいぇ…支援系の私に手助け出来ること何かありますかね?」
腰が引けながらもレイチェルも続く。
蜘蛛の膨れた尻から、わらわらと小柄な蜘蛛達が多数現れる。
「うわっ!きもっ!」
そう嫌悪の言葉を漏らしながらシエルが、USPの銃口から弾丸を連続で放つ。
「銃声!?どなたですか?」
銃声によって3人の存在に気付いた黒髪の少女が、蜘蛛達に戦意を向けつつも…最も近いシエルを一瞥する。
その少女の一瞥した瞬間を眼前の蜘蛛は見逃さず…尻から糸を放つ。
「ッゥ、そんな!」
放たれた糸の塊に囚われた少女は、モール内の支柱に拘束されてしまう…
そして、捕らえた少女を捕食しようと蜘蛛が、口の刃を向ける。
「ッゥ、このような所でわたくしは、終わる訳にはいきませんのよ!」
捕らえられた少女の瞳は、まだ諦めていない。
「えぇ、その通りよ。」
短く返事をしたユリが、捕食しようとする蜘蛛に向けて、ガバメントから45口径の銃弾を浴びせる。
尻を撃たれた事で出血した蜘蛛は怯み、後退する。
「レイチェル、今のうちに魔術で何とか彼女を助けてあげて!」
そう叫んだユリは、更に発砲して敵の視線を惹き付ける。
「ひぇ~役立ちそうな魔術あったかな…でも、何とかしてみます。」
レイチェルは狼狽しながらも、可能性を模索する。
「よし…吐き出された子蜘蛛は、全部始末したかな…」
引き続きシエルは、嫌悪感を抱きながらも確実に発砲していく。
「照明の魔術を応用して…それを火種にするしか…よし!」
自分に言い聞かせる様に呟いていたレイチェルの狙い通りに、少女を拘束していた糸は焼け落ちていく。
「助かりましたわ…正式なお礼は後回しでお願いいたします。先ずは…」
蜘蛛の糸から解放された黒髪の少女は、落ちていた日本刀を拾い、再び戦意を燃やす。
そして、再び親玉の蜘蛛と正面切って対峙する…
親玉の蜘蛛も並々ならぬ戦意に当てられたのか、動きが慎重になる。
子蜘蛛を討伐し終えたシエルとユリは、その一騎討ちに固唾を飲む…
次の瞬間…少女と蜘蛛は、同じタイミングで一撃を放つ。
刃を交えた少女と蜘蛛は、制止する。
そして、青い血飛沫を上げながら、蜘蛛が倒れて決戦が終わる。
戦いを終えた黒髪の少女の元に、3人が駆け寄る。
ーーー
「わたくしは、【伊達たき】と申します。改めて宜しくお願いいたしますわ。」
たきは丁寧に挨拶をすると、深くお辞儀する。
その綺麗な所作に釣られて、シエル達も思わずお辞儀してしまう。
「わたくしも、お三方と似た様な形で、この…百貨店?…でよろしいのでしょうか?此方に誘われた次第でございます。」
たきは言葉を選びながら経緯を話す。
「うーん、私とユリとたきは、日本から来たみたいだけど…レイチェルはどこからだっけ?」
シエルが戸惑いながらも問い掛ける。
「私だけ仲間外れなのですかぁ…私がいたのはブリテン帝国ですぅ。」
レイチェルは、あたふたしながらも答える。
「ブリテン…ブリテンって確か、イギリスの事よね。」
ユリが頭の片隅から知識を引っ張って来る。
「イギリスかどうかは知りませんが…アーサー王を討伐したモルガーナ女王が代わって帝国を治めています。」
レイチェルが補足説明した際の『イギリス』と言う単語に、たきが過敏に反応する。
「イギリスとは…エゲレスの事ですわよね?」
何故かたきの語気が強くなる。
「そうだけど…どうしたの?」
シエルが恐る恐る追及する。
「エゲレスは、わたくしの藩…今では県と言いますが…故郷を内と外の双方から弱体させた憎き相手なのです。」
たきは両肩を震わせながら、僅かにうつ向く。
「まぁまぁ…とにかく、今は元の世界に戻る事を、第一に考えるべきでしょう?」
ユリが話題を戻す。
「そうですわね…失礼致しましたわ。」
冷静さを欠いた事に対してたきが謝罪する。
「とりあえずさ、1階に辿り着いた訳だし…外に出てみない?」
わざとらしく手を叩いたシエルが提案する。
「えぇ…シエルの言う通りね。」
ユリが賛同したに続いて、レイチェルとたきも迎合する。
ーーー
シエル達は、外に繋がる出入り口の付近まで足を進めるが…
出入り口の目の前に、一つの桃が置かれている。
「どうして…こんな所に桃が?」
周囲を警戒しながら、シエルが最初に近付く。
「この桃…見覚えがありますわ…」
たきが次に歩み寄り、何かを思い出す。
「たき、何か知っているの?」
最後に追い付いたユリが質問する。
「ここは、時間が無限にあり…時間が存在しない場所…楽園であり絶望の地でもある、桃源郷だと思いますわ…」
たきが更に続ける。
「異なる時代…異なる場所から同年代の人が誘われる世界…わたくしが幼い頃、祖父から聞かされたおとぎ話に出てくる場所ですわね。」
たきが一つの可能性を告げる。
「それで、ここから元の世界に戻れる方法は知っているんですか…?」
状況にびくびくしているレイチェルが質問する。
「確か…3つの鍵を集める必要があると聞いた覚えがありますわ…その一つが、この白桃に似ていますの。」
たきが記憶を辿りながら答える。
「残る2つはどのような形かしら?」
ユリが問い掛ける。
「確か…亀と葉巻の形をした鍵だと聞いたと思いますわ。」
たきが白桃を手にしながら思い出す。
「そっか…その鍵を探す為にも、外にでるしかないね。」
シエルが先陣を切って、モールの外へ歩を進める。
そして、その視線の先には、灰色に染まり廃れた町が広がっている…
人の気配がしない廃線の駅…潰れた個人商店…斜めに傾いた複数の電柱…それらが見渡せる小高い場所に、シエル達が誘われたモールは建っていた…
「あっ…あれは、何ですか!?」
レイチェルが指差した方角には、山の上に鎮座する大きな灰色の城が見える。
「あれは…鬼ヶ城…あそこに、この桃源郷を統べる存在がいるはず…」
たきの言葉を機に…シエル、ユリ、レイチェルは、元の世界へ戻る為の長い道のりが始まることを決意する。
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