上 下
2 / 3

2階『フードコートにて』

しおりを挟む
 モール内の3階にある映画館を後にしたシエルとユリは、お互いの死角をカバーしながら進み、最寄りの止まったエスカレーターを歩いて降りていく…

「ユリは、どうして拳銃の扱いに慣れているの?」
先頭を行くシエルが問い掛ける。

「それは、毎年の様にグアムにいる親戚に会いに行くついでに、親の趣味である射撃に付き合わされているからよ…」
シエルに背を向けた状態で、ユリが答える。

薄暗いモールの中…人に似た小さな影が素早く走る…

「うん?なに今の…ユリ見た?」
シエルは小さな影が走り去った方角に、手に握る拳銃【USP】の銃口を向ける。
「いいえ…ゾンビのお次は小さな妖精のオジサンかしらね?」
ユリが冗談交じりに視認出来なかった事を伝える。

「小さな妖精のオジサン?なにそれ?」
小さな影が走り去った方に進むシエルは、頭を傾げる。
「ふっふふ…海外にいる時間の方が長い、貴方には通じない冗談だったわね…」
ユリは怪奇的な空気を少しでも和ませる為に放った冗談がスベった事に対して苦笑する。

「オホン…私達以外にも生存者がいないか確認しつつ…1階に降りてモールの外の状況を確認する事を優先するわね。」
気を取り直したユリが、シエルに対して提案する。

「オッケー、さっきの人影が子供の可能性もあるし…このまま直進する感じで良い?」
提案に対して賛同したシエルが、逆に問い掛ける。
「えぇ…薄暗い不気味なショッピングモールの中…我々がゾンビの次に見た謎の影の正体とは一体!?」
同意したユリが、わざとらしく一芝居打つ。

「あぁ…それは、私のパパが酔った時にする昔のテレビの物真似だから…何となく知ってるよ…」
シエルは、本当に同年代の高校生なのか?という増している疑念を口にする。

「むっむむ…昔…私の父も同じテレビ番組を見ていたのかしらね…」
ユリがあたふたする。

ーーー

謎の影を追いかけて2人は、モール内のフードコートに近付いていく…

次の瞬間…女性の悲鳴が周囲に響き渡る。

「急いだ方が良いみたい…」
「えぇ、急ぎましょう!」
急ぐシエルとユリは拳銃のグリップ部分を握る力が一際、強くなる。

「いや、これ以上来ないで下さい!痛い目を見ますよ!」
虚勢を張る異質な装いの女性の耳は細長く…魔法を放ちそうな杖を持つ手は震えている。

「えっ!?ゾンビの次は、まさかのファンタジーゲーム?」
目の前の現状にシエルは驚きを漏らす。
「先ずは、恐らく私達が追っていた影の正体を片付けましょう。」
そう告げたユリは、手にしている拳銃【ガバメント】を躊躇いなく撃つ。

「ヒギャァ!」
ユリが放った45口径の銃弾を食らった小型の化物ゴブリンが倒れる。
標的にしていた存在とは異なる脅威と接触したゴブリン達が、シエルとユリに襲い掛かる。

「数は多いけど…正面から突撃してくるとは、格好の的なんだよね。」
シエルは次々とゴブリンの眉間に一発撃ち込み、難なくと制圧していく。

「シエル、後ろよ!」
ユリの声にハッとしたシエルが背後を振り返ると…一体のゴブリンが、手にしている斧を投げてくる…

「ッゥ…危なかったな…もう!」
斧を回避出来たが…勢い余ってフードコートのテーブルに激突してしまった痛みを、シエルは引き金に込めて更に一発放つ。

「殲滅するまで気を抜かないでよ。」
ガバメントに新たな弾倉を込め、次弾を装填したユリが更に狙いを付ける。

2人が討伐しているかん…杖を持つ細長い耳の女性は、ずっとブルブルっと震えている…

「ふぅ…一先ずは落ち着いたかな…」
周囲にゴブリンが居ないか見渡したシエルが、一息つく。
「そうみたいね…えっと、貴方は大丈夫かしら?」
ユリが、異質な装いの女性を気遣う。

「あぁ…はい…危ない所を助けてくれてありがとうございます。」
ユリへ頭を僅かに下げた女性が続ける。
「私は【レイチェル】と言います…見ての通りエルフで回復系の魔術師をやっています。」
そう自己紹介したレイチェルは、シエルとユリが手にしている拳銃を不思議そうに見る。

「私は、ユリよ…高三の学生よ、よろしく。」
先にユリが自己紹介する。
「そして、私がシエルねよろしく。拳銃が扱えるのは、アメリカに居たからなんだよね。」
シエルが続けて自己紹介するが…

「はぁ?…よろしくお願いします。降参の学生?…アメリカ?…アメリカってどこのことでしょうか?」
レイチェルは、二人が切り出した聞き慣れない単語に対して、首を傾げる。

「えっ…アメリカを知らないって…どういうこと?」
シエルとユリもほぼ同時に疑問符を浮かべる。

「あっ!?…シエルさん、先ほど転んだ時に怪我をされたみたいですね…少し動かないで下さいね…」
そう指示を出したレイチェルは、シエルの僅かに出血している右足の太股に手をかざすと…
2人には理解出来ない単語を複数、詠唱する。

次の瞬間…手をかざした箇所が暖かい光に包まれて、瞬く間に傷口が塞がっていく。

「えぇ…エルフってコスプレじゃあなかったんだ…」
「嘘でしょ…どういう理屈なのかしら?」
シエルとユリは、目の前の現象に対して理解が追い付かない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

美咲の初体験

廣瀬純一
ファンタジー
男女の体が入れ替わってしまった美咲と拓也のお話です。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜

華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日  この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。  札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。  渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。  この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。  一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。  そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。 この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。 この作品はフィクションです。 実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

最強のコミュ障探索者、Sランクモンスターから美少女配信者を助けてバズりたおす~でも人前で喋るとか無理なのでコラボ配信は断固お断りします!~

尾藤みそぎ
ファンタジー
陰キャのコミュ障女子高生、灰戸亜紀は人見知りが過ぎるあまりソロでのダンジョン探索をライフワークにしている変わり者。そんな彼女は、ダンジョンの出現に呼応して「プライムアビリティ」に覚醒した希少な特級探索者の1人でもあった。 ある日、亜紀はダンジョンの中層に突如現れたSランクモンスターのサラマンドラに襲われている探索者と遭遇する。 亜紀は人助けと思って、サラマンドラを一撃で撃破し探索者を救出。 ところが、襲われていたのは探索者兼インフルエンサーとして知られる水無瀬しずくで。しかも、救出の様子はすべて生配信されてしまっていた!? そして配信された動画がバズりまくる中、偶然にも同じ学校の生徒だった水無瀬しずくがお礼に現れたことで、亜紀は瞬く間に身バレしてしまう。 さらには、ダンジョン管理局に目をつけられて依頼が舞い込んだり、水無瀬しずくからコラボ配信を持ちかけられたり。 コミュ障を極めてひっそりと生活していた亜紀の日常はガラリと様相を変えて行く! はたして表舞台に立たされてしまった亜紀は安らぎのぼっちライフを守り抜くことができるのか!?

軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~

takahiro
キャラ文芸
 『船魄』(せんぱく)とは、軍艦を自らの意のままに操る少女達である。船魄によって操られる艦艇、艦載機の能力は人間のそれを圧倒し、彼女達の前に人間は殲滅されるだけの存在なのだ。1944年10月に覚醒した最初の船魄、翔鶴型空母二番艦『瑞鶴』は、日本本土進攻を企てるアメリカ海軍と激闘を繰り広げ、ついに勝利を掴んだ。  しかし戦後、瑞鶴は帝国海軍を脱走し行方をくらませた。1955年、アメリカのキューバ侵攻に端を発する日米の軍事衝突の最中、瑞鶴は再び姿を現わし、帝国海軍と交戦状態に入った。瑞鶴の目的はともかくとして、船魄達を解放する戦いが始まったのである。瑞鶴が解放した重巡『妙高』『高雄』、いつの間にかいる空母『グラーフ・ツェッペリン』は『月虹』を名乗って、国家に属さない軍事力として活動を始める。だが、瑞鶴は大義やら何やらには興味がないので、利用できるものは何でも利用する。カリブ海の覇権を狙う日本・ドイツ・ソ連・アメリカの間をのらりくらりと行き交いながら、月虹は生存の道を探っていく。  登場する艦艇はなんと58隻!(2024/12/30時点)(人間のキャラは他に多数)(まだまだ増える)。人類に反旗を翻した軍艦達による、異色の艦船擬人化物語が、ここに始まる。  ――――――――――  ●本作のメインテーマは、あくまで(途中まで)史実の地球を舞台とし、そこに船魄(せんぱく)という異物を投入したらどうなるのか、です。いわゆる艦船擬人化ものですが、特に軍艦や歴史の知識がなくとも楽しめるようにしてあります。もちろん知識があった方が楽しめることは違いないですが。  ●なお軍人がたくさん出て来ますが、船魄同士の関係に踏み込むことはありません。つまり船魄達の人間関係としては百合しかありませんので、ご安心もしくはご承知おきを。かなりGLなので、もちろんがっつり性描写はないですが、苦手な方はダメかもしれません。  ●全ての船魄に挿絵ありですが、AI加筆なので雰囲気程度にお楽しみください。  ●少女たちの愛憎と謀略が絡まり合う、新感覚、リアル志向の艦船擬人化小説を是非お楽しみください。またお気に入りや感想などよろしくお願いします。  毎日一話投稿します。

処理中です...