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三章-長崎・ベースメント-

22『坂道での出会い』

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 長崎へと辿り着いたテフナと葵は、和洋折衷の家が建ち並ぶ閑静な坂道にある…隠れ家という言葉が相応しい純喫茶『夏乃ゆらり』にて一息ついている…

「もぅ…なんなのこの町は、坂道ばかりだよ…」
そう愚痴をこぼした葵は、メロンソーダの上にアイスクリームと共に乗っている、アールスメロンの果肉を頬張る。

「確かにねぇ、足がもうパンパンだよ…」
そう応じたテフナは、ウインナー珈琲のクリームをひとすくいし…糖分補給をする。

ディスク型の大きなオルゴールによってクラシックの一曲『新世界よりの家路』が微かに流れる店内には、テフナと葵しか客はおらず…
そのオルゴールのディスクには『神の門』と『方舟』がデザインとして彫られている。

「お待たせしました…トリコロール・ライスになります。」
どこかで役人を努めてそうなキリっとした目元が特徴的な女性の店員が、二人のテーブルへと料理を2つ置く…
その料理は…一つの皿の上に、デミグラスソースが掛かる豚カツとピラフに、ナポリタンが収まっている。

2人がご当地グルメに目を光らせていると…入店を知らせる入り口の鈴が二度、三度と軽快に鳴る。

「たぁだいま~店長が買い出しから帰って来ましたよ~っと」
昼間から陽気な声の主は、先ほどの店員に比べて僅かに年上の雰囲気とアルコールを放つ女性である。

「あの人が店長なの?…酔ってるよね?」
「うん、多分…美人なのに台無しだよ…」
顔を見合せた葵とテフナは震える小声で、確認し合う。

小声のはずが、酔っ払いにも聞こえており…その店長が、二人が座る席へと近寄って来る。

「…騒がしくしてごめんなさいね…お詫びにこれをどうぞ。」
葵の方を特に凝視した店長は、手に持つ買い出しの紙袋から、桃の缶詰を葵へと手渡す。
「あっ、えっと…」
葵は思いもしていなかった行動に対して、呆気に取られる。

「いえ、ありがとうございます…珈琲もトリコロール・ライスも美味しいです。」
雷クモの能力を引き継ぐ戦マキナとしての特性上、桃が苦手な葵のことを、テフナがフォローする。

「そうですか、ありがとうございます…さぁ、店長は、夜のバーの営業もありますし一度、休んで下さい。」
注文を持ってきた女性店員も会話に入ってきて、店長の左手を引っ張り無理やり奥へと連れて行こうとする。

「ちょっと…『ハンちゃん』は今でも行政代執行なんだから…お二人様は、ごゆっくり~」
その一言を最後に酔っ払い店長は姿を消す。

「あはは…なかなかにクセの強い店長さんと店員さんだね。」
「そうだね…食べよっか。」
テフナと葵は苦笑しながら、再び食事を進める。

食事を終えた二人が、ハンちゃんと呼ばれていた店員と会計のやり取りをする。

「ご馳走さまでした、美味しかったです。」
改めて感想を伝えたテフナがお釣を受け取る。
「また来ますね。」
短く別れの挨拶を伝えた葵が、先に店から出ようと出入り口の鈴を鳴らす…

「えっ…嘘…」
戦マキナの少女である葵の目が点になる。

「どうして…あなたが…」
ワンピース姿に、チョーカーを身に付けた女性である【御夏みなつアオイ】が驚きを隠せずに佇んでいる。

そして、アオイと年が近い私服姿の女性二人…【春川サクラ】と【秋山コマチ】の姿を見たテフナが更に驚きを露にする。
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