【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~

蓮美ちま

文字の大きさ
上 下
23 / 45
躱せなかった告白

しおりを挟む

一ヶ月ぶりの同期会。

いつもはだいたい三ヶ月に一度のペースで開催されるのだが、今回は寿退社することが決まった亜美のお祝いを兼ねている。

そのため出席率も高めだ。

入社四年目の二十六歳。男性陣はともかく、女子社員はなんとなく結婚を意識し出すお年頃。

飲み会も一時間が経つ頃には、みんないい感じにお酒が入ってきて恋バナに花が咲く。

「結婚羨ましい」
「理沙は彼とそんな話出ないの?」
「出ない……」

理沙は一つ年上の彼と同棲して二年だという。このままズルズルなんて展開は一番悲惨なことになると、本人も自覚があるらしい。

「テーブルに結婚情報誌置いといてみたら?」
「莉子……あんたそれ一番やっちゃダメなやつだから!」

親切なアドバイスのつもりだったが怒られてしまった。ここは黙っておくに限る。

隣に座った亜美が私にもサラダと唐揚げを取って寄越してくれたので、大人しくそれをつまみにレモンサワーを飲む。

「亜美も結婚かぁ。旦那さん、四つ年上の商社マンだっけ?」
「エリート捕まえたよねぇ」
「どこに惚れたの?」
「仕事辞めるの悩まなかった?」

周りからの質問攻めに苦笑しながらも、やはり嬉しそうにお相手との馴れ初めを話している亜美はどこから見ても幸せそう。

「優しい人だよ。彼、転勤ばっかりだから、私が辞めるか単身赴任の二択しかなくて。それならやっぱり一緒にいたいし」

クールだと思っていた亜美の照れた表情に、同じ女ながら見とれてしまう。

そんな私の視線に気付いたのか、亜美が私に話を振ってきた。

「莉子は? 前の彼氏と別れてから何もないの?」

飲んでいたレモンサワーで溺れそうになったのをごまかしつつ「何もないよ」と小さな声で返す。

「えー? 営業の第一王子が莉子にご執心だって聞いてるけど?」

ニヤニヤしながら投げかけられた言葉に、今度こそレモンサワーを噴いてしまった。

「ちょっと! きったないな!」
「ごほっ、な、なにそのご執心って……」
「社長の息子の水瀬爽くん?ずっと莉子にベッタリらしいじゃない?」
「あー! それ私も聞いた!」

爽くんのキテレツな恋愛観はもはや社内で知らないものはおらず、隣を歩く女の子が一ヶ月サイクルで替わるのに誰も驚きはしない。

そんな彼が今は誰も隣に置かず、私にくっついているらしいと専らの噂らしい。

「仕事だよ。今、都市開発と合同のプロジェクトになって忙しくて」
「それにしても!第一王子の莉子を見つめる目がマジだって」
「いやいやいや……」

もうこの話題は勘弁して欲しい。

確かに爽くんは私が彼のマンションに行った日以来、事あるごとに本気だとアピールしてくる。

生田化成での出来事も、私のためを思ってしたはずだったけど逆に失礼な事だったかもしれないと謝ってくれたりもした。

もちろん失礼だなんて思わなかったし、私が不甲斐なかったためにしてくれたことだとわかっているから、謝罪は不要だと伝えたけど。

『でも蓮兄は……莉子先輩を一瞬で立ち直らせた』

拗ねたように呟いた爽くんは、王子ではなく年相応のオトコノコって感じが可笑しくてつい笑ってしまった。

それからというもの、プロジェクトでも私の補佐についてくれる爽くんは、本当に一日中ぴったり私にくっついている。

それこそ、打ち合わせで首都圏プロジェクト室を訪れたときには、水瀬が眉間に皺を寄せて不機嫌になるほどに。

今ここに水瀬がいなくて本当によかった。申し訳ないとは思いつつ、心の底からホッとした。

例のアミューズメントパークの運営会社であるドリームカンパニーとの話し合いが伸びているらしく【少し遅れる】というメッセージと、謝っているんだかバカにしているんだかわからないパンダのスタンプが届いていた。

相変わらず水瀬はこのパンダを使い続けている。私に似ていると宣ったこのパンダを。

「ねぇ亜美、このスタンプさ」
「あはは! 何このぶっさいくなパンダ!」
「……もういい」
「何よー。それ水瀬くんからなんでしょ?そのスタンプがどうかしたの?」

言えるわけない。水瀬がこのパンダと私が似てるから買ったらしいだなんて。

『ちんまりしててなんか可愛いし』と言われて顔から火が出るほど赤くなってしまっただなんて。

それを……嬉しいと感じてしまっているだなんて。

「合同プロジェクトといえばさぁ、それ佐倉と水瀬が主導だってマジ?」

いつものごとく神か仏のようなタイミングの良さで話に割って入ってくる橋本くんを拝みながら、私個人の話題から仕事の話に切り替える。

「主導って言うと大袈裟だけど。私が担当してた取引先を口説くのに、水瀬の部署を巻き込んでったら大きくなっちゃって」

あれから水瀬は有言実行で素早く動いてくれた。

それぞれの部署に現状と今後の展望を含めて報告して合同のプロジェクトチームを作らせ、長引いていた会議に終止符を打つようにアミューズメントパークの誘致を決めた。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

優しい愛に包まれて~イケメンとの同居生活はドキドキの連続です~

けいこ
恋愛
人生に疲れ、自暴自棄になり、私はいろんなことから逃げていた。 してはいけないことをしてしまった自分を恥ながらも、この関係を断ち切れないままでいた。 そんな私に、ひょんなことから同居生活を始めた個性的なイケメン男子達が、それぞれに甘く優しく、大人の女の恋心をくすぐるような言葉をかけてくる… ピアノが得意で大企業の御曹司、山崎祥太君、24歳。 有名大学に通い医師を目指してる、神田文都君、23歳。 美大生で画家志望の、望月颯君、21歳。 真っ直ぐで素直なみんなとの関わりの中で、ひどく冷め切った心が、ゆっくり溶けていくのがわかった。 家族、同居の女子達ともいろいろあって、大きく揺れ動く気持ちに戸惑いを隠せない。 こんな私でもやり直せるの? 幸せを願っても…いいの? 動き出す私の未来には、いったい何が待ち受けているの?

契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」  突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。  冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。  仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。 「お前を、誰にも渡すつもりはない」  冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。  これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?  割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。  不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。  これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。

ネカフェ難民してたら鬼上司に拾われました

瀬崎由美
恋愛
穂香は、付き合って一年半の彼氏である栄悟と同棲中。でも、一緒に住んでいたマンションへと帰宅すると、家の中はほぼもぬけの殻。家具や家電と共に姿を消した栄悟とは連絡が取れない。彼が持っているはずの合鍵の行方も分からないから怖いと、ビジネスホテルやネットカフェを転々とする日々。そんな穂香の事情を知ったオーナーが自宅マンションの空いている部屋に居候することを提案してくる。一緒に住むうち、怖くて仕事に厳しい完璧イケメンで近寄りがたいと思っていたオーナーがド天然なのことを知った穂香。居候しながら彼のフォローをしていくうちに、その意外性に惹かれていく。

恋に異例はつきもので ~会社一の鬼部長は初心でキュートな部下を溺愛したい~

泉南佳那
恋愛
「よっしゃー」が口癖の 元気いっぱい営業部員、辻本花梨27歳  ×  敏腕だけど冷徹と噂されている 俺様部長 木沢彰吾34歳  ある朝、花梨が出社すると  異動の辞令が張り出されていた。  異動先は木沢部長率いる 〝ブランディング戦略部〟    なんでこんな時期に……  あまりの〝異例〟の辞令に  戸惑いを隠せない花梨。  しかも、担当するように言われた会社はなんと、元カレが社長を務める玩具会社だった!  花梨の前途多難な日々が、今始まる…… *** 元気いっぱい、はりきりガール花梨と ツンデレ部長木沢の年の差超パワフル・ラブ・ストーリーです。

オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない

若松だんご
恋愛
 ――俺には、将来を誓った相手がいるんです。  お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。  ――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。  ほげええっ!?  ちょっ、ちょっと待ってください、課長!  あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?  課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。  ――俺のところに来い。  オオカミ課長に、強引に同居させられた。  ――この方が、恋人らしいだろ。  うん。そうなんだけど。そうなんですけど。  気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。  イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。  (仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???  すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。

小さな恋のトライアングル

葉月 まい
恋愛
OL × 課長 × 保育園児 わちゃわちゃ・ラブラブ・バチバチの三角関係 人づき合いが苦手な真美は ある日近所の保育園から 男の子と手を繋いで現れた課長を見かけ 親子だと勘違いする 小さな男の子、岳を中心に 三人のちょっと不思議で ほんわか温かい 恋の三角関係が始まった *✻:::✻*✻:::✻* 登場人物 *✻:::✻*✻:::✻* 望月 真美(25歳)… ITソリューション課 OL 五十嵐 潤(29歳)… ITソリューション課 課長 五十嵐 岳(4歳)… 潤の甥

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

私の婚活事情〜副社長の策に嵌まるまで〜

みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
身長172センチ。 高身長であること以外はいたって平凡なアラサーOLの佐伯花音。 婚活アプリに登録し、積極的に動いているのに中々上手く行かない。 名前からしてもっと可愛らしい人かと…ってどういうこと? そんな人こっちから願い下げ。 −−−でもだからってこんなハイスペ男子も求めてないっ!! イケメン副社長に振り回される毎日…気が付いたときには既に副社長の手の内にいた。

処理中です...