10 / 35
入れ替わったメイドと姫
1
しおりを挟む
寝起きは良い方ではない。いつもスマホのアラームなしで起きれた事がない。
無音の中、梨沙は珍しくスッキリと目が覚めた。いつもの朝と違うのは、それだけではない。
木製の固い狭いベッド。着慣れないワンピースのパジャマ。昨日夢の中で過ごしたはずの絵本の世界が、目を覚ましてもまだ続いていた。
――――もしかして、夢じゃない?
ベッドに座ったままもたもたと足を床に下ろし、ぎゅっと頬をつねってみる。
「痛っ! え、痛い……」
右手を頬に当てたまま呆然と呟く。
(どうしよう。本当に絵本の中に入ってしまったっていうこと……?)
昨日は完全に夢だと思ってたから何の疑問にも思っていなかったが、侍女のリサとしてこの世界で生きているということだろうか。
今自分は"日比谷梨沙"という意識ではあるものの、頭の奥の片隅に"リサ=レスピリア"としての記憶があることも確かだ。
その証拠に昨日は夢だと思っていたこの世界が現実なのではと思い至ってから、昨日あの場所で倒れていた理由も思い出されてきた。
『早く、このお城を離れないと……』
そう、あれはこの世界のリサの声。リサはこの城から出ていこうとしていたのだ。花婿候補がここに着いてしまう前に。
しかし、なんの因果か梨沙がこのタイミングで絵本の世界にリサとして転生してきたことで、結局城に戻ってきてしまった。
もしこれが現実だとしたら、今日のお昼にはシルヴィアの花婿候補の王子をもてなすパーティーが始まってしまう。
昨日入れ替わりを承諾してしまったということは、絵本の通りシルヴィアとして王子のお相手をしなくてはいけないのではと考え至り、梨沙はベッドの端に腰掛けたまま慄いた。
混乱した頭を抱えながらも部屋に置いてある洗顔ボウルに水差しの水を入れて顔を洗うと、部屋の隅に畳んで置いておいたメイド服に着替えた。
部屋を出て、廊下の端にある階段を1階まで降りると、使用人専用の食堂らしき場所に辿り着いた。
「リサ、おはよう」
ぽんと肩を叩かれて振り向くと、同じメイド服を着たふくよかな女性に声を掛けられた。
「あ、おはようございます」
年は50代前半の岩田と同じくらいだろうか。人の良さそうな笑みを浮かべている。絵本の中に彼女らしき女性が出てきたことはなく、親しげにされて一瞬戸惑ってしまう。
「旦那様から聞いたよ。面白そうなことするねぇ」
梨沙の戸惑いに気が付かないのか、可笑しそうに笑いながら自分のぶんのついでといって梨沙の朝食も一緒に準備してくれる。
頭の奥の片隅の記憶を引っ張り出し、彼女がエマという名前で、ハウスメイドを束ねるメイド頭だということが思い出された。
裏表のなさそうな笑顔に大きな笑い声。話して30分も経っていないのに、梨沙はエマが大好きになってしまった。もう成人した息子が3人もいるという彼女から溢れる母性がそうさせるのかもしれない。
そこからはあれよあれよという間に事は進んでいく。
食事を済ませて簡易的な風呂に入り、姫と入れ替わるためにシルヴィアとともに衣装部屋へ行った。
メイド服を脱ぎコルセットを付け、エマに背中から締め上げられる。押し出された内臓が口から出そうなほどキツく紐を締められ、お姫様はあの美しい微笑みの裏でこんな苦しい思いをしているのかと初めて知った。
スカート部分を膨らませるために何枚もペチコートを重ね、ようやくドレスを着る。そのドレスがまた重い。
桜の花びらのような薄いピンク色をしたドレスに銀色の糸で刺繍が施してあり、一見して分かりにくいが近くで見ると物凄く豪華な造りだ。
さらに首と耳、手首や指にまで豪華できらびやかな装飾品が付けられ、ドレスとアクセサリーの重さで身動きが取りづらい。
エマに化粧をしてもらい、仕上げに1度も染めたことのない真っ黒で艶のある髪を隠すようにブロンドのウィッグを被れば、偽物の姫の出来上がり。
ドレッサーの鏡の中の自分を見て、思わず感嘆のため息が漏れる。
こんなに着飾ったことは生まれて初めてで、恥ずかしいと思いながらちょっとワクワクしている自分がいるのを梨沙は自覚していた。
絵本が大好きだった梨沙は、自分が今まさにそのお姫様になっているのだと心が躍った。
隣で着替えていたシルヴィアをちらりと横目で見ると、そこにはメイド服に身を包んでいても隠しきれない美貌と品の良さを湛えた正真正銘のお姫様の姿。
「まぁリサ! とても似合うわ!」
梨沙を見て花が綻ぶように笑うシルヴィアは、あっと何かと思いついた表情をすると、可愛らしくわざとらしい咳払いをした。
「じゃなくて。とてもお綺麗です、シルヴィア様」
片足を下げて腰を落としてそう言う彼女は、イタズラが楽しくてしょうがない子供のように無邪気な顔をしている。
(なんて可愛い人なんだろう)
シルヴィアは公爵家の姫だというのに、偉ぶったところがひとつもない。
それどころか自らメイド服に袖を通し、このドレスにはこっちのネックレスの方がと梨沙の世話を焼く真似をしだす。
そんなシルヴィアのことをリサは自分のこと以上に大切に思っていて、彼女の笑顔のためならば何でもする。そんな侍女だった。梨沙はおぼろげな記憶を頼りにそんなことを思った。
「お嬢様、リサ、そろそろお時間ですよ」
エマの一言で、梨沙の緊張は否が応にも高まっていく。
「シ、シルヴィア様。私、どうしたら……」
「大丈夫よ! 堂々としてればバレっこないんだから!」
自信満々に言い放つシルヴィアとは対照的に、梨沙は不安で仕方ない。
昨日はどうせ夢だからとあまり真剣に考えていなかったが、自分が侍女のリサとしてこの絵本の世界に転生したと考えると、この入れ替わりの作戦は失敗するわけにいかないというプレッシャーがあった。
この入れ替わりが成功するかで、絵本の通りのハッピーエンドが待っているかどうかが決まる。
早々にバレるわけにはいかない。この世界はハッピーエンドでなくてはならないのだ。
ドレスの胸の前でぎゅっと拳を握りしめ、梨沙は1人気合いを入れた。
無音の中、梨沙は珍しくスッキリと目が覚めた。いつもの朝と違うのは、それだけではない。
木製の固い狭いベッド。着慣れないワンピースのパジャマ。昨日夢の中で過ごしたはずの絵本の世界が、目を覚ましてもまだ続いていた。
――――もしかして、夢じゃない?
ベッドに座ったままもたもたと足を床に下ろし、ぎゅっと頬をつねってみる。
「痛っ! え、痛い……」
右手を頬に当てたまま呆然と呟く。
(どうしよう。本当に絵本の中に入ってしまったっていうこと……?)
昨日は完全に夢だと思ってたから何の疑問にも思っていなかったが、侍女のリサとしてこの世界で生きているということだろうか。
今自分は"日比谷梨沙"という意識ではあるものの、頭の奥の片隅に"リサ=レスピリア"としての記憶があることも確かだ。
その証拠に昨日は夢だと思っていたこの世界が現実なのではと思い至ってから、昨日あの場所で倒れていた理由も思い出されてきた。
『早く、このお城を離れないと……』
そう、あれはこの世界のリサの声。リサはこの城から出ていこうとしていたのだ。花婿候補がここに着いてしまう前に。
しかし、なんの因果か梨沙がこのタイミングで絵本の世界にリサとして転生してきたことで、結局城に戻ってきてしまった。
もしこれが現実だとしたら、今日のお昼にはシルヴィアの花婿候補の王子をもてなすパーティーが始まってしまう。
昨日入れ替わりを承諾してしまったということは、絵本の通りシルヴィアとして王子のお相手をしなくてはいけないのではと考え至り、梨沙はベッドの端に腰掛けたまま慄いた。
混乱した頭を抱えながらも部屋に置いてある洗顔ボウルに水差しの水を入れて顔を洗うと、部屋の隅に畳んで置いておいたメイド服に着替えた。
部屋を出て、廊下の端にある階段を1階まで降りると、使用人専用の食堂らしき場所に辿り着いた。
「リサ、おはよう」
ぽんと肩を叩かれて振り向くと、同じメイド服を着たふくよかな女性に声を掛けられた。
「あ、おはようございます」
年は50代前半の岩田と同じくらいだろうか。人の良さそうな笑みを浮かべている。絵本の中に彼女らしき女性が出てきたことはなく、親しげにされて一瞬戸惑ってしまう。
「旦那様から聞いたよ。面白そうなことするねぇ」
梨沙の戸惑いに気が付かないのか、可笑しそうに笑いながら自分のぶんのついでといって梨沙の朝食も一緒に準備してくれる。
頭の奥の片隅の記憶を引っ張り出し、彼女がエマという名前で、ハウスメイドを束ねるメイド頭だということが思い出された。
裏表のなさそうな笑顔に大きな笑い声。話して30分も経っていないのに、梨沙はエマが大好きになってしまった。もう成人した息子が3人もいるという彼女から溢れる母性がそうさせるのかもしれない。
そこからはあれよあれよという間に事は進んでいく。
食事を済ませて簡易的な風呂に入り、姫と入れ替わるためにシルヴィアとともに衣装部屋へ行った。
メイド服を脱ぎコルセットを付け、エマに背中から締め上げられる。押し出された内臓が口から出そうなほどキツく紐を締められ、お姫様はあの美しい微笑みの裏でこんな苦しい思いをしているのかと初めて知った。
スカート部分を膨らませるために何枚もペチコートを重ね、ようやくドレスを着る。そのドレスがまた重い。
桜の花びらのような薄いピンク色をしたドレスに銀色の糸で刺繍が施してあり、一見して分かりにくいが近くで見ると物凄く豪華な造りだ。
さらに首と耳、手首や指にまで豪華できらびやかな装飾品が付けられ、ドレスとアクセサリーの重さで身動きが取りづらい。
エマに化粧をしてもらい、仕上げに1度も染めたことのない真っ黒で艶のある髪を隠すようにブロンドのウィッグを被れば、偽物の姫の出来上がり。
ドレッサーの鏡の中の自分を見て、思わず感嘆のため息が漏れる。
こんなに着飾ったことは生まれて初めてで、恥ずかしいと思いながらちょっとワクワクしている自分がいるのを梨沙は自覚していた。
絵本が大好きだった梨沙は、自分が今まさにそのお姫様になっているのだと心が躍った。
隣で着替えていたシルヴィアをちらりと横目で見ると、そこにはメイド服に身を包んでいても隠しきれない美貌と品の良さを湛えた正真正銘のお姫様の姿。
「まぁリサ! とても似合うわ!」
梨沙を見て花が綻ぶように笑うシルヴィアは、あっと何かと思いついた表情をすると、可愛らしくわざとらしい咳払いをした。
「じゃなくて。とてもお綺麗です、シルヴィア様」
片足を下げて腰を落としてそう言う彼女は、イタズラが楽しくてしょうがない子供のように無邪気な顔をしている。
(なんて可愛い人なんだろう)
シルヴィアは公爵家の姫だというのに、偉ぶったところがひとつもない。
それどころか自らメイド服に袖を通し、このドレスにはこっちのネックレスの方がと梨沙の世話を焼く真似をしだす。
そんなシルヴィアのことをリサは自分のこと以上に大切に思っていて、彼女の笑顔のためならば何でもする。そんな侍女だった。梨沙はおぼろげな記憶を頼りにそんなことを思った。
「お嬢様、リサ、そろそろお時間ですよ」
エマの一言で、梨沙の緊張は否が応にも高まっていく。
「シ、シルヴィア様。私、どうしたら……」
「大丈夫よ! 堂々としてればバレっこないんだから!」
自信満々に言い放つシルヴィアとは対照的に、梨沙は不安で仕方ない。
昨日はどうせ夢だからとあまり真剣に考えていなかったが、自分が侍女のリサとしてこの絵本の世界に転生したと考えると、この入れ替わりの作戦は失敗するわけにいかないというプレッシャーがあった。
この入れ替わりが成功するかで、絵本の通りのハッピーエンドが待っているかどうかが決まる。
早々にバレるわけにはいかない。この世界はハッピーエンドでなくてはならないのだ。
ドレスの胸の前でぎゅっと拳を握りしめ、梨沙は1人気合いを入れた。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■
捨てた騎士と拾った魔術師
吉野屋
恋愛
貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
あなたはだあれ?~Second season~
織本 紗綾
恋愛
“もう遅いよ……だって、好きになっちゃったもん”
今より少し先の未来のこと。人々は様々な原因で減ってしまった人口を補う為、IT、科学、医療などの技術を結集した特殊なアンドロイドを開発し、共に暮らしていました。
最初は、専業ロイドと言って仕事を補助する能力だけを持つロイドが一般的でしたが、人々はロイドに労働力ではなく共にいてくれることを望み、国家公認パートナーロイドという存在が産まれたのです。
一般人でもロイドをパートナーに選び、自分の理想を簡単に叶えられる時代。
そんな時代のとある街で出逢った遥と海斗、惹かれ合う二人は恋に落ちます。でも海斗のある秘密のせいで結ばれることは叶わず、二人は離れ離れに。
今回は、遥のその後のお話です。
「もう、終わったことだから」
海斗と出逢ってから二回目の春が来た。遥は前に進もうと毎日、一生懸命。
彼女を取り巻く環境も変化した。意思に反する昇進で忙しさとプレッシャーにのまれ、休みを取ることもままならない。
さらに友人の一人、夢瑠が引っ越してしまったことも寂しさに追い打ちをかけた。唯一の救いは新しく出来た趣味の射撃。
「遥さんもパートナーロイドにしてはいかがです? 忙しいなら尚更、心の支えが必要でしょう」
パートナーロイドを勧める水野。
「それも……いいかもしれないですね」
警戒していたはずなのに、まんざらでもなさそうな雰囲気の遥。
「笹山……さん? 」
そんな中、遥に微笑みかける男性の影。その笑顔に企みや嘘がないのか……自信を失ってしまった遥には、もうわかりません。

RD令嬢のまかないごはん
雨愁軒経
ファンタジー
辺境都市ケレスの片隅で食堂を営む少女・エリカ――またの名を、小日向絵梨花。
都市を治める伯爵家の令嬢として転生していた彼女だったが、性に合わないという理由で家を飛び出し、野望のために突き進んでいた。
そんなある日、家が勝手に決めた婚約の報せが届く。
相手は、最近ケレスに移住してきてシアリーズ家の預かりとなった子爵・ヒース。
彼は呪われているために追放されたという噂で有名だった。
礼儀として一度は会っておこうとヒースの下を訪れたエリカは、そこで彼の『呪い』の正体に気が付いた。
「――たとえ天が見放しても、私は絶対に見放さないわ」
元管理栄養士の伯爵令嬢は、今日も誰かの笑顔のためにフライパンを握る。
大さじの願いに、夢と希望をひとつまみ。お悩み解決異世界ごはんファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる