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プロローグ
絵本『私だけの王子様』
しおりを挟むレスピナード公国は、小国ながら豊かな自然に囲まれ、繊維産業と貿易により富を得ている穏やかで平和な国。
花の綻ぶ暖かな春の日差しの中、公爵の一人娘であるシルヴィア=レスピナードの花婿となる予定の王子をもてなすパーティーが催されています。
花婿候補はラヴァンディエ王国の王子。
キラキラと輝くような金髪に深緑色の瞳。真っ白なブラウスにレースのあしらわれたクラヴァット、真紅のコートを羽織った長身はスラリとしていて見る者を惹きつけます。
シルヴィア姫は初めて会う美しい王子が自分の夫に相応しいのかを、どう見抜いたらいいのか迷ってしまいます。
きっと姫である自分には、飾り立てた言葉でしか話しかけてこないと思ったからです。
そこで、シルヴィア姫は自分の侍女であるリサと衣装を交換し、花婿候補の人柄をメイドとして離れた場所から観察しようと思い付きます。
大きなフリルにリボン、繊細なレースをふんだんに使ったピンクのドレスを侍女のリサに着せ、自分は真っ黒なメイド服に白のエプロン姿。
シルヴィア姫と侍女のリサは、入れ替わった状態で花婿をもてなすパーティーに参加します。
城の中で行われた盛大なパーティー。
豪華なシャンデリアが照らす大広間には、テーブルに乗り切らぬ程のごちそう。
ホールの奥では楽団が優雅な音楽を奏でています。
入れ替わりがバレることなく無事に挨拶を終えた大広間。
ラヴァンディエ王国の王子の様子を観察しようと隠れていると、王子の従者に出会います。
シルヴィア姫は、従者にラヴァンディエ王子のことを聞こうと話しかけますが、すっかり意気投合。
王子ではなく、従者に惹かれてしまいます。
ふたりで過ごすひとときは、とても楽しいものでした。
しかしメイド服を着ていても、自分はレスピナードの姫。従者との恋は許されません。
一方、シルヴィア姫のドレスを着たリサはラヴァンディエ王子に求愛され、2人も惹かれ合っています。
当然、ドレスを着ていてもリサは侍女。ラヴァンディエ王国の王子とは身分が違い、結ばれることのない恋です。
自分が入れ替わりを提案したせいで、自分の恋だけでなく、リサの恋までめちゃくちゃにしてしまったと嘆くシルヴィア姫。
すべては自分の巻いた種であると、メイドと入れ替わっていた事を正直に告白し、王子と従者に謝る姫。
しかし、実はラヴァンディエ王国の王子もまた、姫と同じように花嫁となる相手を観察しようと従者と入れ替わっていたのです。
シルヴィア姫が惹かれた相手は、従者の格好をした正真正銘のラヴァンディエ王国の王子様。許されない恋ではなかったのです。
お互いの嘘で嘘を赦(ゆる)し合い、これからはお互い正直にいようと愛を誓い、ふたりは末永く幸せに暮らしたのでした。
めでたしめでたし。
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