棺の狙撃手

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第六話 過去から目を逸らさない

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 あのゴーレムを倒したあと出てきたあの階段。


 いつの間にか戻る道も消えている。



 「行くしか無い、か。」



 そう覚悟を決め、全ての武器の手入れを済ませる。



 特に、〈棺〉は入念に。



 「よし、行こう。」



 階段を降る…













 その部屋は、これまでとは完全に雰囲気が違っていた。


 それも当然。あたりの壁にはこれまでのような歯車と時計ではなく。



 「うっ…」



 おびただしいほどの数の写真。


 それも私と妹が二人で写真を撮っているものだ。


 ただそれは何もかもおかしかった。



 私は下手な作り笑いをしているのに対し、妹は笑っていない。


 いや、笑ってはいる。だがそれは口元だけで、目元が完全に笑っていない。


 しかもその目は白目が無く、完全な黒。



 しかもその目は何処を向いているかわからないにも関わらずこちらを向いていると確信させるほどのなにかがあった。



 吐き気がする。


 私が一番愛して、そして私の一番のトラウマでもある妹。


 私は妹から逃げ続けていた。


 それとこんな形で向き合わなければならないとは思っていなかった。



 逃げたい、帰りたい、死にたい。



 逃げられない、帰れない、



 どれだけ逃げたくても、帰りたくても。



 死ぬわけにはいかない。これから先何があろうとも、全力で生き抜くことをあの日妹と誓った。



 だから、ここで逃げるわけにも死ぬわけにもいかない。



 こんなクソみたいなことを思い出させてくれたクソ野郎の顔面に一発風穴ブチ開けてやるまでは。





















 「あー気分悪ぃ。ここのボスフロアはまだか?」



 かれこれ三十分は歩いている。


 だが一向に道の先が見えない。


 相変わらず壁には目のない妹と私の写真が所狭しと並んでいるし、その全てがこちらを向いている。



 「これ、何かのギミックがあるのか?」



 足を、止める。



 そもそも誰が道をただ進めばボスフロアに着くと言った?



 勝手な思い込みに過ぎない。



 だが人との関わりがあまり無かった私に、他人が作ったギミックの想像なんてなぁ…



 唯一参考にできるものは…



 「妹との会話…かぁ。」



 思えばあいつは歯車とか機械とかの仕掛けが大好きだった。



 今まではあの顔を、あの笑った顔を思い出したくなくて無理やり忘れていたが、そろそろ向き合う時が来たのかもしれない。



 「思い出す、か。」



 そう口にした瞬間、自分で抑えられないほどの妹との記憶が頭に流れ込む。



 「ここまでしろとは、言って、ねえよ…」



 その言葉とともに、私はその場に倒れ込む。



 その時写真の目が戻っていた気がした。
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