棺の狙撃手

ultimate!!

文字の大きさ
上 下
7 / 7

第六話 過去から目を逸らさない

しおりを挟む
 あのゴーレムを倒したあと出てきたあの階段。


 いつの間にか戻る道も消えている。



 「行くしか無い、か。」



 そう覚悟を決め、全ての武器の手入れを済ませる。



 特に、〈棺〉は入念に。



 「よし、行こう。」



 階段を降る…













 その部屋は、これまでとは完全に雰囲気が違っていた。


 それも当然。あたりの壁にはこれまでのような歯車と時計ではなく。



 「うっ…」



 おびただしいほどの数の写真。


 それも私と妹が二人で写真を撮っているものだ。


 ただそれは何もかもおかしかった。



 私は下手な作り笑いをしているのに対し、妹は笑っていない。


 いや、笑ってはいる。だがそれは口元だけで、目元が完全に笑っていない。


 しかもその目は白目が無く、完全な黒。



 しかもその目は何処を向いているかわからないにも関わらずこちらを向いていると確信させるほどのなにかがあった。



 吐き気がする。


 私が一番愛して、そして私の一番のトラウマでもある妹。


 私は妹から逃げ続けていた。


 それとこんな形で向き合わなければならないとは思っていなかった。



 逃げたい、帰りたい、死にたい。



 逃げられない、帰れない、



 どれだけ逃げたくても、帰りたくても。



 死ぬわけにはいかない。これから先何があろうとも、全力で生き抜くことをあの日妹と誓った。



 だから、ここで逃げるわけにも死ぬわけにもいかない。



 こんなクソみたいなことを思い出させてくれたクソ野郎の顔面に一発風穴ブチ開けてやるまでは。





















 「あー気分悪ぃ。ここのボスフロアはまだか?」



 かれこれ三十分は歩いている。


 だが一向に道の先が見えない。


 相変わらず壁には目のない妹と私の写真が所狭しと並んでいるし、その全てがこちらを向いている。



 「これ、何かのギミックがあるのか?」



 足を、止める。



 そもそも誰が道をただ進めばボスフロアに着くと言った?



 勝手な思い込みに過ぎない。



 だが人との関わりがあまり無かった私に、他人が作ったギミックの想像なんてなぁ…



 唯一参考にできるものは…



 「妹との会話…かぁ。」



 思えばあいつは歯車とか機械とかの仕掛けが大好きだった。



 今まではあの顔を、あの笑った顔を思い出したくなくて無理やり忘れていたが、そろそろ向き合う時が来たのかもしれない。



 「思い出す、か。」



 そう口にした瞬間、自分で抑えられないほどの妹との記憶が頭に流れ込む。



 「ここまでしろとは、言って、ねえよ…」



 その言葉とともに、私はその場に倒れ込む。



 その時写真の目が戻っていた気がした。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

入れ替わった恋人

廣瀬純一
ファンタジー
大学生の恋人同士の入れ替わりの話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...