白の双剣士

ultimate!!

文字の大きさ
上 下
39 / 43
第三章 熱き炎の華を廃墟に咲かせて

第36色 “今”を未来へ伝える為の

しおりを挟む
 あの樹人形を打ち倒し、そこで少し休むこと数分。


 未だ鳴り止まぬ錆びた歯車の音に僕達は警戒を切らせずにいた。



 この音の警戒を切らせない理由は単純。


 聞こえては来るのに、何処から聞こえているのかがわからない、ということだ。



 普通なにかの音というのは聞こえてくる場所がある程度は分かるものだ。


 だがこの音は音を認識しているのにもかかわらず何処から聞こえてくるのかを認識できないのだ。



 ただ一つわかること。それは近づいてきていること。



 何処かからここに近づいている。


 それがわかるのならば、離れなければならない。


 だが、離れられない。



 離れようという気持ちはある。


 離れないといけないこともわかる。


 何なら、一刻も早く離れたい。


 だが、体が言うことを聞かない。



 まるでその場に固定されたかのように体が動かない。



 そしてその歯車の音が耐えられないほど大きくなった時―



 「え」



 地面が無くなった。



 「待て待て待て待て!!」



 割と角度が急になっているが滑らかなその坂をなすすべなく下っていく。


 咄嗟に剣を突き刺そうとするが剣が刺さらない。


 それからわかったのはこの坂、柔らかいのに硬い。



 その事に気づいたときには、既になにかの建物の中にいた。



 中は無人。


 人一人おらず、物音一つ無い静寂。



 かと思うと、突然光が灯る。



 先生の『白星』のような光。


 だがこの光には熱がある。『色』ではない。


 そして、流れてくるは電子音声。



 [ようこそ!最後の博物館へ!この博物館の最終入館から100年以上経過しています。劣化、倒壊などしている可能性がございますが、生き残った範囲で、2238年8月23日までの記録をお楽しみください。]



 何を言っているのかの意味は全くわからなかったが、ここに何かヒントがあればいいんだがな。



 「広いな…」

 「あぁ。とりあえず手分けしてここの出口と食料とか探さないか?」

 「「賛成」」





















 皆と離れて数十分。この施設はかなり広いらしく既に二回は階段を登っているが、一向に陽の光が見えない。



 この施設、各階どころか各部屋で置いているものがバラバラだった。幸い言葉は読めるので問題なかったが内容は僕達が望んでいるものではなかった。


 だがなぜか目を引かれる。



 その内容はかつての人たちの暮らしの内容。


 どんな建物に住んでいたのか、何を食べていたのか、はたまた何をしていたのか。



 初めて見るものから、僕達が食べたりしたりしていたものまであった。



 だが初めて見たものも何故か既視感がある。



 自分がそれをしていた、食べたことがあるような。



 まぁ、そんなわけ無いか。



 

 そろそろ帰るか?


 そう思っていた時、一つの部屋が気になり、入った。



 「広い…そしてデカい…」



 その部屋は今までの部屋とは比べ物にならないほど広い。


 だが物が多いなどということもなく、それどころかほどんどない。



 ただ一つ。



 この中心の物を除いて。



 「これは…骨?」



 僕らよりも遥かに大きい生物の骨。


 その色は白。


 羽が生えていながらも四本の足が生えていて、長い首とこれまで見た生き物の中でも一番と言っていいほど大きい頭。



 その下にある看板。



 〈竜〉



 こんな物が実在したのか。



 そう思いながら、下の解説を見る。



 〈この竜は、実際には体全体が機械でできているため、これは骨があればこうなっているだろうなと言う妄想でしか無い。〉



 〈そして、この竜…仮称、ギアドラゴンは東京に生息しており〉



 〈今後誰かが討伐するまで生き続けるとされている。〉



 僕らの目的地、東京。



 次の相手はこいつか。



 戦うと決まったわけではない。



 だが、ありもしない記憶が、自分であって自分でない何かが、こいつを殺せと叫び続けている。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)

幻田恋人
恋愛
 夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。  でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。  親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。  童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。  許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…  僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…

処理中です...