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第二章 青の氷の悲しみを
第二十五色 黒の罠、都市の裏側へ
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「本当に〈械鳥〉を倒したんですか」
都市の長の下へ行くとそう言われた。
「死体なんて見なくてもわかりますよ。外の騒がしさと貴方達の臭いで分かります。」
僕たちが言いたかったことは分かっているらしい。
ただまだ聞けていないことがある。
「ところで、街で僕が『白』ということが知れ渡っているんだが、これはどういうことだ?」
「別に私は貴方のことを『白』と言ってはいけないとは言われてないですよ。」
ッフー…ペースに飲まれるな。落ち着け。
「それはそれとして…『白壁』の外に行く準備はできているんですよね?」
「悪いね…本当に申し訳ないんだが準備に時間がかかっていてね。」
予想はできていた。そして、これで先生の言葉が本当だということも分かった。
「わかりました。ちなみにどのくらいかかりそうですか?」
「そうだな…早くて明日。遅くて3日後…かな?」
「では、また呼んでください。」
「えぇ。また、準備ができたら、ね。」
「さて、どうする?」
ある程度予想できていた内容ではあったが、大事なのはここからだ。さっさと『白壁』の外へと行かなければならないこの状況。まずはやはり情報収集からだ。
「『白壁』に行く、か?」
「そうだな。まずはそれからだろ。」
南の都市と『白壁』は間近と言っていいほど近い。他の都市であれば万が一にでも外に出て死ぬことの無いよう距離を離し、その間に関所も設置して置くべき要所。
そんな重要な場所まで一切離れておらず、関所もない。それはひとえにこの都市の『白』に対する異常なまでの神格化だろう。
「なんか暗くないか…?」
この都市の住人は一人の例外もなく『白』を信仰している。逆に『黒』は差別対象といっていいほど嫌われている。何より酷いのは生まれた子供が『黒』だった場合。
「しかも、昨日雨が降ったわけでもないのにジメジメしてる…?」
その子供は、所謂〈忌み子〉とされ、迫害される。
そして最低限生きていける年齢になると、この都市から外に置いていかれる。
「なっ…足場が沈む!?」
ただもし、それでも生き残り、『色』を偽装してでも、都市に帰ってくることができるのなら?
「『白せ』グガボッ!?」
それは、都市を内側から破滅させる『影』となるだろう…
「『黒沼』」
都市を出たらなにかに足を取られ、そのまま沈んだ…と思ったら都市にいる。
だが、何かが違う。時間が夜なのはいい。気絶していたと考えれば説明がつく。
ただ一つだけ。一つだけ説明がつかない事がある。
人がいない。
あれだけ人で賑わっていた街が。
あれだけ僕に群がってきた人が。
そして明かりもない。少しは明かりがついていてもいいはずなのに一つも明かりがついていない。
そう思っていると。
パパパパパパパパパッ
その音とともに僕の前からこちらに明かりが一気に灯り始める。
カツン、カツンと。
その方向から近づいてくる足音が一つ。
察してはいた。覚悟も決めていたつもりだった。
たしかに聞いていた時間よりは速い。
ただ、それだけのことのはずだった。
それでも、確かに辛かった。
「久しぶり、ジューク。一緒に踊りましょう?」
そんな僕には気にもくれず、ルミアは話す。
季節外れの寒風が頬を撫でる…
「なるほど。俺の相手はお前ってわけか。」
「あぁ。悪いが、ジュークんところには行かせねえぜ?ワイド。」
『銀』、シバル・ゴルム。
相性が悪い…正直無視してジュークと合流したい。ジュークの『白』があればシバルはほぼ完封できる。
だが俺とシバルの相性が絶望的に悪い。無視して行こうにも十中八九邪魔されて行けないだろう。
相手するしか無い、か。
「…あのときの借りを返させてもらおうか。」
「借り…?あぁ!先生とのときのやつか!いいね。まあ、やってみろってところか!」
「『緑突』!」
「『銀具・剣・五』!」
「んーお兄ちゃん達どこ行ったのかなあ。」
なんかこの空間は嫌な感じがするんだよね…おぼろげにしか覚えてないけどあの博士のところと同じ感じがする…
「『金弾』『赤爆』」
「わわっ」
急に何か飛んできた!?
「もう…危ないなあ…」
「…殺す。」
んー、ささっと殺してお兄ちゃん達と合流しないとね!
都市の長の下へ行くとそう言われた。
「死体なんて見なくてもわかりますよ。外の騒がしさと貴方達の臭いで分かります。」
僕たちが言いたかったことは分かっているらしい。
ただまだ聞けていないことがある。
「ところで、街で僕が『白』ということが知れ渡っているんだが、これはどういうことだ?」
「別に私は貴方のことを『白』と言ってはいけないとは言われてないですよ。」
ッフー…ペースに飲まれるな。落ち着け。
「それはそれとして…『白壁』の外に行く準備はできているんですよね?」
「悪いね…本当に申し訳ないんだが準備に時間がかかっていてね。」
予想はできていた。そして、これで先生の言葉が本当だということも分かった。
「わかりました。ちなみにどのくらいかかりそうですか?」
「そうだな…早くて明日。遅くて3日後…かな?」
「では、また呼んでください。」
「えぇ。また、準備ができたら、ね。」
「さて、どうする?」
ある程度予想できていた内容ではあったが、大事なのはここからだ。さっさと『白壁』の外へと行かなければならないこの状況。まずはやはり情報収集からだ。
「『白壁』に行く、か?」
「そうだな。まずはそれからだろ。」
南の都市と『白壁』は間近と言っていいほど近い。他の都市であれば万が一にでも外に出て死ぬことの無いよう距離を離し、その間に関所も設置して置くべき要所。
そんな重要な場所まで一切離れておらず、関所もない。それはひとえにこの都市の『白』に対する異常なまでの神格化だろう。
「なんか暗くないか…?」
この都市の住人は一人の例外もなく『白』を信仰している。逆に『黒』は差別対象といっていいほど嫌われている。何より酷いのは生まれた子供が『黒』だった場合。
「しかも、昨日雨が降ったわけでもないのにジメジメしてる…?」
その子供は、所謂〈忌み子〉とされ、迫害される。
そして最低限生きていける年齢になると、この都市から外に置いていかれる。
「なっ…足場が沈む!?」
ただもし、それでも生き残り、『色』を偽装してでも、都市に帰ってくることができるのなら?
「『白せ』グガボッ!?」
それは、都市を内側から破滅させる『影』となるだろう…
「『黒沼』」
都市を出たらなにかに足を取られ、そのまま沈んだ…と思ったら都市にいる。
だが、何かが違う。時間が夜なのはいい。気絶していたと考えれば説明がつく。
ただ一つだけ。一つだけ説明がつかない事がある。
人がいない。
あれだけ人で賑わっていた街が。
あれだけ僕に群がってきた人が。
そして明かりもない。少しは明かりがついていてもいいはずなのに一つも明かりがついていない。
そう思っていると。
パパパパパパパパパッ
その音とともに僕の前からこちらに明かりが一気に灯り始める。
カツン、カツンと。
その方向から近づいてくる足音が一つ。
察してはいた。覚悟も決めていたつもりだった。
たしかに聞いていた時間よりは速い。
ただ、それだけのことのはずだった。
それでも、確かに辛かった。
「久しぶり、ジューク。一緒に踊りましょう?」
そんな僕には気にもくれず、ルミアは話す。
季節外れの寒風が頬を撫でる…
「なるほど。俺の相手はお前ってわけか。」
「あぁ。悪いが、ジュークんところには行かせねえぜ?ワイド。」
『銀』、シバル・ゴルム。
相性が悪い…正直無視してジュークと合流したい。ジュークの『白』があればシバルはほぼ完封できる。
だが俺とシバルの相性が絶望的に悪い。無視して行こうにも十中八九邪魔されて行けないだろう。
相手するしか無い、か。
「…あのときの借りを返させてもらおうか。」
「借り…?あぁ!先生とのときのやつか!いいね。まあ、やってみろってところか!」
「『緑突』!」
「『銀具・剣・五』!」
「んーお兄ちゃん達どこ行ったのかなあ。」
なんかこの空間は嫌な感じがするんだよね…おぼろげにしか覚えてないけどあの博士のところと同じ感じがする…
「『金弾』『赤爆』」
「わわっ」
急に何か飛んできた!?
「もう…危ないなあ…」
「…殺す。」
んー、ささっと殺してお兄ちゃん達と合流しないとね!
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