65 / 181
3章
13
しおりを挟む「下ろせって言ってるだろ」
「下ろさないよ」
せめて子どもだけでも無事に宿場に届けないと罪悪感で胸が張り裂けそうだ。
「ほら、暴れないで掴まってろ」
そう言う最中から、ふいに妹のことを思い出してしまった。
もし、妹が襲われていたとしてそれを見捨てた者がいたら自分は許せるだろうか。
許せない――。
だが、どうしようもなかったのも事実だ。乱暴に及ぶような相手だ、下手にかかわったら殺されていたかもしれない。
結局その後、栄助は元の宿場までもどって子どもを保護してもらい自分の宿をとった。
三
女子を見見捨てた翌日、栄助は街道を外れて道なき道を進んだ。
猟師として生きてきたお陰で足取りは決して重くない。
そうして、宿場町についた。宿でここいらの賭場がどこなのかを聞き込み足を向けた。
すると、やはりいた。助左衛門たちの姿が賭場にあった。
栄助の表情から何か察したのか助左衛門が立ち上がってこちらに近寄ってきた。
戸口の脇で栄助は彼に声をかける。
「仲間に戻りたい」
「そりゃまた、どうしてだ? 仔細があるんだろう?」
助左衛門の問いかけに昨日の体験を語った。このために街道から外れて手籠めの下手人たちを避けてやって来たのだ。
「なるほどな、何もできないのはもう嫌、か」
助左衛門が皮肉な笑みを浮かべた。
「下ろさないよ」
せめて子どもだけでも無事に宿場に届けないと罪悪感で胸が張り裂けそうだ。
「ほら、暴れないで掴まってろ」
そう言う最中から、ふいに妹のことを思い出してしまった。
もし、妹が襲われていたとしてそれを見捨てた者がいたら自分は許せるだろうか。
許せない――。
だが、どうしようもなかったのも事実だ。乱暴に及ぶような相手だ、下手にかかわったら殺されていたかもしれない。
結局その後、栄助は元の宿場までもどって子どもを保護してもらい自分の宿をとった。
三
女子を見見捨てた翌日、栄助は街道を外れて道なき道を進んだ。
猟師として生きてきたお陰で足取りは決して重くない。
そうして、宿場町についた。宿でここいらの賭場がどこなのかを聞き込み足を向けた。
すると、やはりいた。助左衛門たちの姿が賭場にあった。
栄助の表情から何か察したのか助左衛門が立ち上がってこちらに近寄ってきた。
戸口の脇で栄助は彼に声をかける。
「仲間に戻りたい」
「そりゃまた、どうしてだ? 仔細があるんだろう?」
助左衛門の問いかけに昨日の体験を語った。このために街道から外れて手籠めの下手人たちを避けてやって来たのだ。
「なるほどな、何もできないのはもう嫌、か」
助左衛門が皮肉な笑みを浮かべた。
10
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。
彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。
……あ。
音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。
しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。
やばい、どうしよう。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

王子様から逃げられない!
白兪
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。

僕の王子様
くるむ
BL
鹿倉歩(かぐらあゆむ)は、クリスマスイブに出合った礼人のことが忘れられずに彼と同じ高校を受けることを決意。
無事に受かり礼人と同じ高校に通うことが出来たのだが、校内での礼人の人気があまりにもすさまじいことを知り、自分から近づけずにいた。
そんな中、やたらイケメンばかりがそろっている『読書同好会』の存在を知り、そこに礼人が在籍していることを聞きつけて……。
見た目が派手で性格も明るく、反面人の心の機微にも敏感で一目置かれる存在でもあるくせに、実は騒がれることが嫌いで他人が傍にいるだけで眠ることも出来ない神経質な礼人と、大人しくて素直なワンコのお話。
元々は、神経質なイケメンがただ一人のワンコに甘える話が書きたくて考えたお話です。
※『近くにいるのに君が遠い』のスピンオフになっています。未読の方は読んでいただけたらより礼人のことが分かるかと思います。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる