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夜会
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【 シャルルの視点 】
今夜はアマルト子爵家の夜会だ。
長男ジョセフとは幼馴染で学園も同じクラスだった。
彼の婚約者はジュリエット・ホイット伯爵令嬢。2人は親戚で相思相愛の婚約なのだが、それでもジョセフは女遊びをする。令嬢相手に一夜の関係を結ぶのでなく、平民に手を出してしばらく関係を持つ。
王都の花屋の娘との交際は2年に及ぶ。父親が他界し、店を継ぐかたたむか悩んでいたときにジョセフと知り合った。ジョセフはよく歩いて王都を散策していた。彼女がカフェで友人に相談していたときに隣の席に座っていた。ジョセフは声をかけて契約を持ち掛けた。いわゆる愛人契約だ。毎月小遣いを渡す代わりに求められたら体を許すというものだ。
貴族だと婚約者にバレるかもしれないし、娼婦は不特定多数を相手にしているから嫌らしい。それに頻繁に通うなら娼館のまともな娼婦を指名し続けるよりも平民に毎月小遣いを渡す方が安上がりだと言っていた。それまでは特定のメイドと関係を持っては手切金を渡していたらしい。
恋愛婚約でもこれなんだ。
父上だって浮気していたじゃないか。母上だって私兵と関係を持っていたこともあった。永遠の愛なんてあるわけがないと早くに悟って順応しただけだ。僕が悪いわけじゃない。寧ろ隠さずにいるのだから誠実じゃないか。
今夜はクリスティーナを連れて行くと知って父上は機嫌が良かった。
セルヴィー邸に到着しエントランスに入ると奥で変な動きをしているクリスティーナがいた。
近付くと鏡の前で不気味な動きをしていた。
「何をやっているんだい?」
私が側まで来ていることに気が付くとものすごく驚いて赤面した。
クリスティーナは薄化粧だから赤くなるとよく分かる。
本当かどうかは分からないが ダンスが久しぶりだからと言い訳をしていた。
エスコートをしようと腕を出したがクリスティーナは気が付かずに執事とメイドに指示を出しながら外まで出た。そして私兵の手を借りて馬車に乗った。
「……」
クリスティーナは僕を見ることもなく車窓から外を眺めている。
彼女を見るとドレスは緑色で、青色のものや銀色のものは一切身に付けていない。彼女にしては珍しく主張のあるネックレスをしていた。
アマルト子爵邸に到着すると子爵夫妻が挨拶に来た。
「まあ、本当に来てくださるなんて嬉しいですわ」
「ロバート・アマルトと申します。セルヴィー伯爵令嬢にご挨拶を申し上げます」
「妻のエリザベスです。さあどうぞ中へお入りください」
「……」
夫妻は僕が見えていないのか、クリスティーナに夢中だ。しばらく話し込んだ後、さすがに呼ばれて他の客の元へ向かった。
入れ替わるようにジョセフとホイット嬢がやってきた。
「セルヴィー嬢、お久しぶりです。お話はほぼしたことはありませんが何度か挨拶はさせていただいておりました。ジョセフ・アマルトです」
「改めまして、クリスティーナ・セルヴィーと申します。素敵な夜会にお邪魔できて光栄です」
「今回はシャルルにセルヴィー嬢を誘うように頼んだのです。在学中に交流できたら良かったのですが、学年も違いましたし。今夜を機に少しずつ知り合えたらと思っております」
「そうでしたか」
「私、ジョセフ様の婚約者でジュリエット・ホイットと申します。学園でクリスティーナ様をお見かけしておりましたが お話しする機会に恵まれませんでした。是非来週からお昼をご一緒させてはいただけませんか」
「ジュリエット!」
「ホイット嬢。申し訳ございません。最後の一年は友人と過ごす約束をしておりますので ご希望にそうことはできません」
「いいではありませんか」
「ジュリエット、初めて挨拶したばかりなのに失礼だぞ」
「ではパーティに招待してくださいますか」
「うちは滅多にパーティはしません」
「ではウィロウ侯爵家かゼオロエン侯爵家のパーティに混ぜてくださいませ。クリスティーナ様の口添えがあれば、」
「お引き受けできません」
「何故ですか」
「高位貴族は…特に今名前の上がった家門は、知り合いの伝手程度で関わり合いになれる相手ではないのです。私の場合もお二方からお声がけをいただいて仲良くさせていただいております。
私にはホイット嬢がどんな方で、高位貴族との交流ができる方なのか存じ上げません。それなのに安易にそのようなことをしては私の信用は一瞬で消え失せてしまいます。
ウィロウ嬢やゼオロエン嬢だけではありません。他の高位貴族も同じです。信用を得るのは簡単ではありません。親友とはいえ未だに私なりに細心の注意を払っているつもりです。
あなたも伯爵家のご令嬢なのですから、初めての挨拶をして1、2分の相手ではなく、親戚や元々のご友人の伝手をお使いください」
「私が信用できない人間だと仰るの!?」
「ジュリエット!止めないか!」
「だって!」
「こんなことまで言いたくはありませんが、私、ホイット嬢のようなことはしたことはございません。
私の説明にご理解いただけないようですので これ以上は申し上げません。
結論はやはり、私とホイット嬢にご縁はなかったとはっきり申し上げます」
「何よ!同じ伯爵家じゃない!」
「はぁ…」
バシャッ
「あ…シャルル様…ごめんなさい!」
クリスティーナの溜息がホイット嬢を更に刺激して、ホイット嬢は近くのグラスを手に取るとクリスティーナに向けて中身をぶちまけたのだが…
「シャルル、すまない!ジュリエット!何て事をしてくれたんだ!」
「シャルル様にかけるつもりじゃ…」
「セルヴィー嬢はもっと駄目だろう!」
体が勝手にクリスティーナの前に出て、ワインを被ってしまった。僕らしくない。
僕はどうしてしまったんだ?
今夜はアマルト子爵家の夜会だ。
長男ジョセフとは幼馴染で学園も同じクラスだった。
彼の婚約者はジュリエット・ホイット伯爵令嬢。2人は親戚で相思相愛の婚約なのだが、それでもジョセフは女遊びをする。令嬢相手に一夜の関係を結ぶのでなく、平民に手を出してしばらく関係を持つ。
王都の花屋の娘との交際は2年に及ぶ。父親が他界し、店を継ぐかたたむか悩んでいたときにジョセフと知り合った。ジョセフはよく歩いて王都を散策していた。彼女がカフェで友人に相談していたときに隣の席に座っていた。ジョセフは声をかけて契約を持ち掛けた。いわゆる愛人契約だ。毎月小遣いを渡す代わりに求められたら体を許すというものだ。
貴族だと婚約者にバレるかもしれないし、娼婦は不特定多数を相手にしているから嫌らしい。それに頻繁に通うなら娼館のまともな娼婦を指名し続けるよりも平民に毎月小遣いを渡す方が安上がりだと言っていた。それまでは特定のメイドと関係を持っては手切金を渡していたらしい。
恋愛婚約でもこれなんだ。
父上だって浮気していたじゃないか。母上だって私兵と関係を持っていたこともあった。永遠の愛なんてあるわけがないと早くに悟って順応しただけだ。僕が悪いわけじゃない。寧ろ隠さずにいるのだから誠実じゃないか。
今夜はクリスティーナを連れて行くと知って父上は機嫌が良かった。
セルヴィー邸に到着しエントランスに入ると奥で変な動きをしているクリスティーナがいた。
近付くと鏡の前で不気味な動きをしていた。
「何をやっているんだい?」
私が側まで来ていることに気が付くとものすごく驚いて赤面した。
クリスティーナは薄化粧だから赤くなるとよく分かる。
本当かどうかは分からないが ダンスが久しぶりだからと言い訳をしていた。
エスコートをしようと腕を出したがクリスティーナは気が付かずに執事とメイドに指示を出しながら外まで出た。そして私兵の手を借りて馬車に乗った。
「……」
クリスティーナは僕を見ることもなく車窓から外を眺めている。
彼女を見るとドレスは緑色で、青色のものや銀色のものは一切身に付けていない。彼女にしては珍しく主張のあるネックレスをしていた。
アマルト子爵邸に到着すると子爵夫妻が挨拶に来た。
「まあ、本当に来てくださるなんて嬉しいですわ」
「ロバート・アマルトと申します。セルヴィー伯爵令嬢にご挨拶を申し上げます」
「妻のエリザベスです。さあどうぞ中へお入りください」
「……」
夫妻は僕が見えていないのか、クリスティーナに夢中だ。しばらく話し込んだ後、さすがに呼ばれて他の客の元へ向かった。
入れ替わるようにジョセフとホイット嬢がやってきた。
「セルヴィー嬢、お久しぶりです。お話はほぼしたことはありませんが何度か挨拶はさせていただいておりました。ジョセフ・アマルトです」
「改めまして、クリスティーナ・セルヴィーと申します。素敵な夜会にお邪魔できて光栄です」
「今回はシャルルにセルヴィー嬢を誘うように頼んだのです。在学中に交流できたら良かったのですが、学年も違いましたし。今夜を機に少しずつ知り合えたらと思っております」
「そうでしたか」
「私、ジョセフ様の婚約者でジュリエット・ホイットと申します。学園でクリスティーナ様をお見かけしておりましたが お話しする機会に恵まれませんでした。是非来週からお昼をご一緒させてはいただけませんか」
「ジュリエット!」
「ホイット嬢。申し訳ございません。最後の一年は友人と過ごす約束をしておりますので ご希望にそうことはできません」
「いいではありませんか」
「ジュリエット、初めて挨拶したばかりなのに失礼だぞ」
「ではパーティに招待してくださいますか」
「うちは滅多にパーティはしません」
「ではウィロウ侯爵家かゼオロエン侯爵家のパーティに混ぜてくださいませ。クリスティーナ様の口添えがあれば、」
「お引き受けできません」
「何故ですか」
「高位貴族は…特に今名前の上がった家門は、知り合いの伝手程度で関わり合いになれる相手ではないのです。私の場合もお二方からお声がけをいただいて仲良くさせていただいております。
私にはホイット嬢がどんな方で、高位貴族との交流ができる方なのか存じ上げません。それなのに安易にそのようなことをしては私の信用は一瞬で消え失せてしまいます。
ウィロウ嬢やゼオロエン嬢だけではありません。他の高位貴族も同じです。信用を得るのは簡単ではありません。親友とはいえ未だに私なりに細心の注意を払っているつもりです。
あなたも伯爵家のご令嬢なのですから、初めての挨拶をして1、2分の相手ではなく、親戚や元々のご友人の伝手をお使いください」
「私が信用できない人間だと仰るの!?」
「ジュリエット!止めないか!」
「だって!」
「こんなことまで言いたくはありませんが、私、ホイット嬢のようなことはしたことはございません。
私の説明にご理解いただけないようですので これ以上は申し上げません。
結論はやはり、私とホイット嬢にご縁はなかったとはっきり申し上げます」
「何よ!同じ伯爵家じゃない!」
「はぁ…」
バシャッ
「あ…シャルル様…ごめんなさい!」
クリスティーナの溜息がホイット嬢を更に刺激して、ホイット嬢は近くのグラスを手に取るとクリスティーナに向けて中身をぶちまけたのだが…
「シャルル、すまない!ジュリエット!何て事をしてくれたんだ!」
「シャルル様にかけるつもりじゃ…」
「セルヴィー嬢はもっと駄目だろう!」
体が勝手にクリスティーナの前に出て、ワインを被ってしまった。僕らしくない。
僕はどうしてしまったんだ?
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