71 / 215
集結
しおりを挟む支度が終わるとジオ公爵とヒューゴ様が迎えにいらした。
私とヒューゴ様の衣装はお揃い。公爵夫妻もお揃いだった。
「クリスティーナ、綺麗だよ」
「ヒューゴ様も素敵です」
「本当に?」
「本当です」
「そ、そうか」
「ふふっ 可愛い」
「っ!」
自信たっぷりのヒューゴ様が照れて赤くなってる。
随分と些細なことでこんな風になってしまうのだなと思ったら可愛く思えてしまった。
「まあまあヒューゴったら。初心なのね」
「意外なものを見てしまったな」
「っ!!」
公爵夫妻の言葉に 更に赤くなってしまった。これ以上は可哀想ね。
「ヒューゴ様、エスコートしてください」
「行こうか」
「はい」
ヒューゴ様の腕に手を通して添えた。
普通は額の裂傷を見て令嬢としての価値が損なわれたと身を引く男性が多いだろう。
シャルル様は包帯を巻いた上で私と会ったけれど、ヒューゴ様の場合は、血の滲む包帯を解いて縫いたての額を見せても変わらないし慈愛を感じる。割れやすい卵を大事に温める母鳥みたいに優しい。
大広間で次々と出席者と挨拶を交わした。
やはり中には不満そうな夫人や令嬢もいた。
公爵家に娘を嫁がせたい夫人、嫁ぎたい令嬢だろう。
ヒューゴ様が“大事な女性です”と紹介しても、構わず娘を勧める。令嬢も上目遣いでヒューゴ様に近寄るし様々な誘いをかける。ダンスに誘ったり翌日の食事や散歩や町へのお出かけに誘ったり。身体に自信がある人は遠回しにベッドに誘っていた。
“どうせすぐ飽きるでしょ 寧ろ女嫌いでも男色家でもなく 女と交際できると分かって望みがでたわ”くらいに思っていそうだった。
私に婚約者がいることを知っていれば、違う角度で絡む。“あら、絶世の美男子の婚約者なのに別の令息にお手付きですか?”って感じで。
何て説明していいか悩むし話も長くなりそうだし面倒だからつい、“そうです”と言った。
令嬢は言葉を繋げることが出来なくなり、ヒューゴ様は嬉しそうに“令嬢もあなたに相応しい令息にお手付きをするといい”と言って私の頭にキスをした。
「ティナ!」
「ジネット!」
ジネットは私に抱き付いて頬にキスをした。
私はチークキスを。
「元気そう。良かった」
「うん。心配かけてごめんね?」
「あらあら素敵。公子の瞳の色じゃない~」
ニタニタしながらジネットの目線は私とネックレスとヒューゴ様を巡っている。
「ヒューゴ、誕生日おめでとう。私の婚約者の分も“おめでとう”。すまないね。ジネットはクリスティーナ嬢に夢中で」
「ありがとう、ゼイン。
大丈夫だ。それよりクリスティーナの頬にゼオロエン嬢の口紅のあとが付いたのだが、なんだか所有印みたいで妬けるな。俺も口紅を塗ってティナの頬にキスをしたいくらいだ」
「…生きてきて初めて聞くセリフだな。
ジネット、クリスティーナ嬢の頬の口紅を取ってあげなさい。嫉妬深い猛獣が違う趣味に目覚めないうちに」
「??」
男性2人の話を聞いていなかったジネットは何のこと?という顔をしながらハンカチで私の頬を拭き、私も同じように何のこと?と思いながら拭かれた。
招待客全員が会場に入ると公爵とヒューゴ様が改めてお礼を述べた。
その後は令嬢がヒューゴ様に寄ろうとするも、ヒューゴ様の令息の友人達が彼と私を囲むので近寄れない。まるで要塞だった。
「いや~、元気になって良かったよ」
「しかもヒューゴと仲良くしてくれてありがとう」
「ヒューゴが一途なのは間違いない。今までどんな女にも靡かなかったからね」
「歳上のヒューゴに存分に甘えて休暇を楽しむんだよ?エステルも来たいと大騒ぎしていたが、いいよと言える距離じゃないからね。ヒューゴの誕生日だって言っているのにクリスティーナ嬢への贈り物を預かってきたよ。拗ねると面倒だから後で受け取ってくれ」
ヒューゴ様が側にいない隙にモルゾン公子と内緒話になった。
「ふふ。ありがとうございます。王都に帰ったらエステル様に会いに伺わせていただきます」
「頼むよ。本当に煩いんだ」
「私も行っていいですか?」
「エルザも?いいよ。だけどエステルに譲ってあげてくれよ」
「もちろんです」
幸せだな…。
後でヒューゴ様に何を話していたのか聞かれた。
離れていても見張っていると知って少し驚いた。
3,431
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ
Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。
理由は決まって『従妹ライラ様との用事』
誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。
「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、どうぞお好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」
二人の想いは、重なり合えるのだろうか ……
※他のサイトにも公開しています。
七年目の裏切り 〜赴任先の夫から届く愛の手紙は、愛人の代筆でした〜
恋せよ恋
恋愛
「君は僕の最愛だ。もう二度と、君を危険に晒したくない」
命懸けの出産後、涙を流して私を抱きしめた夫ジュリアン。
その言葉通り、彼は「私を大切にするため」に夜の営みを断った。
私は、女としての寂しさを「愛されている誇り」に変え、
隣国へ赴任した夫を信じて二人の子供と家を守り続けていた。
毎週届く、情熱的な愛の手紙。タイプライターで綴られた
その愛の言葉を、私は宝物のように抱きしめていた。
……しかし、その手紙は「裏切り」だった。
夫が異国の地で、愛人と肌を重ねながら綴らせていた「偽りの愛」。
身分を隠して夫の赴任先の隣国へと向かった私が見たのは……。
果たして、貞淑な妻・メラニアが選んだ結論は……。
子供たちのため結婚生活の継続か、それとも……。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
愛される日は来ないので
豆狸
恋愛
だけど体調を崩して寝込んだ途端、女主人の部屋から物置部屋へ移され、満足に食事ももらえずに死んでいったとき、私は悟ったのです。
──なにをどんなに頑張ろうと、私がラミレス様に愛される日は来ないのだと。
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
三年目の離婚から始まる二度目の人生
あい
恋愛
三年子ができなければ、無条件で離婚できる――王国の制度。
三年目の夜、オーレリアは自らその条文を使い、公爵ルートヴィッヒに離婚を告げた。
理由はただ一つ。
“飾り”として生きるのをやめ、自分の手で商いをしたいから。
女性が公の場で立てる服を作るため、彼女は屋敷を去り、仕立て屋〈オーレリア・テイラーズ〉を開く。
店は順調に軌道に乗り、ついに王女の式典衣装を任されることに。
だが、その夜――激しい雨の中、彼女は馬車事故に遭い命を落とす。
(あと少し早く始めていたら、もっと夢を叶えられたのに……)
そう思った瞬間、目を覚ますと――三年前、ルートヴィッヒと結婚する前の世界に戻っていた。
これは、“三年目の離婚”から始まる、二度目の人生。
今度こそ、自分の人生を選び取るために。
ーーー
不定期更新になります。
全45話前後で完結予定です、よろしくお願いします🙇
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる