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歓迎され過ぎる
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一体どうなっているのか。
あれから2週間が経つのに一向に部屋を移してもらえない。
広いからと同じベッドで寝るようになってしまった。
『こんなの、大公夫人が気分を害します』
『あの女は俺が辛い時にさっさと捨てて逃げて行ったよ。もう赤の他人だ』
『すみません…』
『だから遠慮しなくていい。まだまだ顔色が悪いのだから看病が必要だ』
『もう大丈夫です。看病なら使用人の方に…閣下はご多忙のはずです。毎日椅子かソファで仮眠なんて疲れてしまいます』
『そうだな。ベッドは広いから一緒に寝よう』
『ええっ?』
昔会った時には感じなかった強引さを発揮して、世話焼きおばさんみたいになっていた。
「あの、私 そんなに顔色が悪いですか?」
「そ、そうです」
「この部屋に鏡は?」
「ご主人様の事故で外しました?」
メイドさん達に聞いても動揺を見せたり何故か疑問形で返事をしたり。お医者様にいたっては、
「先生。私 元気なんですけど」
「病後というものは安静にするものです」
「病後が長すぎませんか?」
「ミーナ様の場合は原因不明の熱で何日も昏睡していたのですから(たぶん)当然です。(閣下が)気の済むまで療養をお願いします」
「…はい」
所々小さな声で本来なら使わない単語が聞こえたような。
3週間になると閣下は流石に付きっきりとはいかず、部屋を離れた隙にトレーニングを始めた。
広い部屋で走り込みをして、スクワット、腿上げ、腹筋、背筋、その他様々な筋トレをした。ストレッチも毎日。
病人食ですと言って出される食事は前の世界よりも聖女暮らしの時よりも豪華だし、部屋内の移動もほぼ閣下の抱っこ。
このままじゃ、ゲ○ラやジャバザ○ットみたいになっちゃうので頑張っている。
ただし、タイミングを間違えると息を切らしたり、火照っていたりするので、閣下が飛んで来て医者を呼ぼうとする。
運動しているとは言えない。“まだ早い”と仁王立ちで言われたからだ。
選択した避難先を間違えたかな?
「親戚の叔父さんだと思えばいいかな」
「ま、まさかご主人様のことですか!?」
「年齢的には“お兄さん”だと思うけど、世話焼き具合がね。本当は“叔母さん”と言いたいくらいの世話焼きさんよね」
「ぜ、絶対に“叔父様”などと言ってはなりません」
「“お兄さん”より“グリフィス様”と呼んで差し上げた方が喜びます」
「いやいや。流れ者の様な私が高貴なお方をそんな風には呼べないから」
「絶対喜びます」
「間違いありません」
「賭けてもいいです」
「じゃあ、賭けようか。閣下が喜んだら私は3人が望むことを1つ叶えるから、閣下が喜んでいなかったら部屋を移させて」
「「「はい!では就寝前にでも!」」」
なんなの、このトリオは。
「閣下と共謀は無しよ?」
「勿論です」
そして就寝前。
「ちょっと!何でこんなものを着せるのよ!」
「普通のご婦人が使うナイトウェアです」
「サイズもぴったりです」
「よくお似合いです」
袖は無く、生地は透けて見えそうで見えない薄さ、少しヒラヒラしていて丈は膝上、ギャザーやレースで微妙に隠れるが気を付けないと乳首の場所が分かってしまう。
「いつもの寝巻きを持ってきて」
「洗濯中です」
「全部!?」
「繕いに出しています」
確かに寝相が悪いものね…。
コトッ コトッ
メイドさんがベッド横の引き出しに何かを入れた。
「どうしたの?」
「もしものための必需品です」
「もしも?」
「痛かったりした時のために」
「お薬ね」
私が治癒の力を持っていると知らないのね。
あんな大怪我が一瞬で治って現れた閣下を不思議に思わないのかな?
そんなことをしていると閣下が湯浴みから戻ってきた。
「それでは私達は退がります。賭け事はお忘れなく。ごゆっくりどうぞ」
へ? いつもは“おやすみなさいませ”って言うじゃない。メイド達は薄明かりにして部屋を出た。
閣下が髪を拭きながら私を凝視した。
ど、どうしよう。言わないと。言って部屋を移らせてもらわないと。
「すみません、こんな格好で」
「いや、よく似合っている」
自然に!自然に呼ぶのよ!
「グリフィス様…ひゃあっ」
チュン
温かいけど雁字搦めのような身動きの取れない状態だ。一瞬金縛りデビューかと思ったけど違った。
チュンチュン
朝のお告げが鳴いている。
これは現実なのだと熟睡する閣下の顔を見た。というか ほぼ顎しか見えない。
抱き枕の様に閣下が私を抱きしめているからだ。
どうしよう。
股の違和感と 押し当てられる閣下の早起きさんが、昨夜の事故が現実だと告げている。
抜け出して逃げたくても、少しでも動くとアナコンダの締め技みたいにキツく締め付けてくる。
タップでもしようか。
そうだ。締め返せば嫌がって離れるかも。
閣下に腕を回して力一杯締め上げた。
「誘っているんだな?嬉しいよ」
「へ? ちょ、ちょっと、あっ」
あれから2週間が経つのに一向に部屋を移してもらえない。
広いからと同じベッドで寝るようになってしまった。
『こんなの、大公夫人が気分を害します』
『あの女は俺が辛い時にさっさと捨てて逃げて行ったよ。もう赤の他人だ』
『すみません…』
『だから遠慮しなくていい。まだまだ顔色が悪いのだから看病が必要だ』
『もう大丈夫です。看病なら使用人の方に…閣下はご多忙のはずです。毎日椅子かソファで仮眠なんて疲れてしまいます』
『そうだな。ベッドは広いから一緒に寝よう』
『ええっ?』
昔会った時には感じなかった強引さを発揮して、世話焼きおばさんみたいになっていた。
「あの、私 そんなに顔色が悪いですか?」
「そ、そうです」
「この部屋に鏡は?」
「ご主人様の事故で外しました?」
メイドさん達に聞いても動揺を見せたり何故か疑問形で返事をしたり。お医者様にいたっては、
「先生。私 元気なんですけど」
「病後というものは安静にするものです」
「病後が長すぎませんか?」
「ミーナ様の場合は原因不明の熱で何日も昏睡していたのですから(たぶん)当然です。(閣下が)気の済むまで療養をお願いします」
「…はい」
所々小さな声で本来なら使わない単語が聞こえたような。
3週間になると閣下は流石に付きっきりとはいかず、部屋を離れた隙にトレーニングを始めた。
広い部屋で走り込みをして、スクワット、腿上げ、腹筋、背筋、その他様々な筋トレをした。ストレッチも毎日。
病人食ですと言って出される食事は前の世界よりも聖女暮らしの時よりも豪華だし、部屋内の移動もほぼ閣下の抱っこ。
このままじゃ、ゲ○ラやジャバザ○ットみたいになっちゃうので頑張っている。
ただし、タイミングを間違えると息を切らしたり、火照っていたりするので、閣下が飛んで来て医者を呼ぼうとする。
運動しているとは言えない。“まだ早い”と仁王立ちで言われたからだ。
選択した避難先を間違えたかな?
「親戚の叔父さんだと思えばいいかな」
「ま、まさかご主人様のことですか!?」
「年齢的には“お兄さん”だと思うけど、世話焼き具合がね。本当は“叔母さん”と言いたいくらいの世話焼きさんよね」
「ぜ、絶対に“叔父様”などと言ってはなりません」
「“お兄さん”より“グリフィス様”と呼んで差し上げた方が喜びます」
「いやいや。流れ者の様な私が高貴なお方をそんな風には呼べないから」
「絶対喜びます」
「間違いありません」
「賭けてもいいです」
「じゃあ、賭けようか。閣下が喜んだら私は3人が望むことを1つ叶えるから、閣下が喜んでいなかったら部屋を移させて」
「「「はい!では就寝前にでも!」」」
なんなの、このトリオは。
「閣下と共謀は無しよ?」
「勿論です」
そして就寝前。
「ちょっと!何でこんなものを着せるのよ!」
「普通のご婦人が使うナイトウェアです」
「サイズもぴったりです」
「よくお似合いです」
袖は無く、生地は透けて見えそうで見えない薄さ、少しヒラヒラしていて丈は膝上、ギャザーやレースで微妙に隠れるが気を付けないと乳首の場所が分かってしまう。
「いつもの寝巻きを持ってきて」
「洗濯中です」
「全部!?」
「繕いに出しています」
確かに寝相が悪いものね…。
コトッ コトッ
メイドさんがベッド横の引き出しに何かを入れた。
「どうしたの?」
「もしものための必需品です」
「もしも?」
「痛かったりした時のために」
「お薬ね」
私が治癒の力を持っていると知らないのね。
あんな大怪我が一瞬で治って現れた閣下を不思議に思わないのかな?
そんなことをしていると閣下が湯浴みから戻ってきた。
「それでは私達は退がります。賭け事はお忘れなく。ごゆっくりどうぞ」
へ? いつもは“おやすみなさいませ”って言うじゃない。メイド達は薄明かりにして部屋を出た。
閣下が髪を拭きながら私を凝視した。
ど、どうしよう。言わないと。言って部屋を移らせてもらわないと。
「すみません、こんな格好で」
「いや、よく似合っている」
自然に!自然に呼ぶのよ!
「グリフィス様…ひゃあっ」
チュン
温かいけど雁字搦めのような身動きの取れない状態だ。一瞬金縛りデビューかと思ったけど違った。
チュンチュン
朝のお告げが鳴いている。
これは現実なのだと熟睡する閣下の顔を見た。というか ほぼ顎しか見えない。
抱き枕の様に閣下が私を抱きしめているからだ。
どうしよう。
股の違和感と 押し当てられる閣下の早起きさんが、昨夜の事故が現実だと告げている。
抜け出して逃げたくても、少しでも動くとアナコンダの締め技みたいにキツく締め付けてくる。
タップでもしようか。
そうだ。締め返せば嫌がって離れるかも。
閣下に腕を回して力一杯締め上げた。
「誘っているんだな?嬉しいよ」
「へ? ちょ、ちょっと、あっ」
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