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最終話
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卒業パーティはセドリックから贈られたドレスを着て出席した。ネックレスもイヤリングも髪飾りもセドリックが作らせた物らしい。
未遂とはいえキズモノと言われることは一度も無く、セドリックの手を取って入場したけどヒソヒソされることもない。
「シャルロット、キョロキョロし過ぎだ」
「ごめんなさい」
「怒っていないよ、ほら前を向いて」
卒業生全員が会場入りし、国王陛下の祝辞の後にダンスを踊った。
「今日は主役は卒業生だから、シャルロット以外とは踊らない。後でもう一度踊ろう」
「はい」
「シャルロットは卒業したい?」
「そうですね」
「そうか」
なんだろう。成績は悪くはないと思うのだけど。
「不正は止めてくださいね」
「ん?」
「どれか点が悪かったのですか?圧力とか賄賂とか止めてくださいね。退学してキャロン領で平凡な余生を送りますから」
「そうじゃないよ。
ウィルソン領と言わないのか?侯爵夫妻が悲しむぞ」
「どうせお父様はお母様しか見ていませんし、お母様は跡継ぎにしか興味がないのです」
「単にキャロン伯爵家が溺愛しているから安心しているだけだろう」
「う~ん」
休憩を入れてもう一度セドリックと踊った後、セドリックは跪いて箱を取り出した。
「シャルロット・ウィルソン! 愛してる!俺と結婚してくれ!!」
張り上げた声は場内に響き渡った。
箱の中身は婚約指輪だった。
「……」
「俺には君しかいない!この命が尽きてもシャルロットしか愛さない!浮気もしない!悲しませない!」
「妃教育なんて私には」
「無理なカリキュラムは組ませない。シャルロットが無理だと言うならキャロン伯爵家の養子になって君を娶る」
「伯父様がいいって言ったのですか?」
「シャルロットが義娘になるのに反対するわけがない。それに条件は満たしたからな」
「条件?」
「伯爵が考える シャルロットを嫁がせてもいい男の条件だよ。
ほら、そろそろ返事をくれ。次のダンスを待っている卒業生達の機嫌を損ねるぞ」
「イエスよ」
「シャル!!」
セドリックは私を抱きしめながらクルクルと回った後、婚約指輪をはめてくれた。
会場は拍手と“やっとか” “長かったな” “粘り勝ちね”など様々な声も聞こえてきた。
屋敷にはセドリックと戻り、セドリックが伯父様とレオナルド兄様とロランに報告した。
「は?」
ロランは応接間から出て行ってしまった。
「ロラン?」
「独りにしてやってくれ」
兄様が私を引き留めて抱きしめた。
「で、シャルロットが妃教育をギブアップしたら私の息子として養子になり、シャルロットを嫁に?」
「はい。キャロン領のどこかで静かに暮らします」
「エリオットが許すはずがないだろう」
「じゃあ、養子になってシャルロットと婚姻して、弟の補佐として城に住むかキャロン家のタウンハウスに住みます」
「全く…ウィルソン家には?」
「領地に行ったときに許しはもらっています。伯爵を口説き落とせたら構わないそうです」
「ディオンの奴…私が許さないと思って」
「ウィルソン侯爵は確かに、“神に会いに行くよりもアレクサンドル義兄上を口説く方が難しいかもしれない”と笑っていましたが、それを先に成し遂げたのはウィルソン侯爵です。ならば俺に出来ないはずはありません。侯爵よりも俺の方が伯爵の条件に近いはずです」
「私はセドリックを兄などと呼びたくないな」
レオ兄様は私の肩を撫でながら溜息を吐いた。
「呼ばなくていいけど意地悪しないでくれよ」
「シャルロット、本当にいいのか?」
伯父様が私の頭を撫でながら確認した。
「だって…いろいろ考えると大変そうですけど、他の人は考えられない気がします」
「分かった。
セドリック殿下、王家との話し合いの席を設けていただきます」
「かしこまりました、キャロン伯爵」
そして2年後
私の卒業パーティの1週間後にうんざりするほど盛大な式をあげた。
レオナルド兄様の隣には婚約者がいて、ロランはまだ決めていなかった。
そして最後までロランから“おめでとう”は聞けなかった。その代わり、婚姻前夜に思いを告げられた。ずっと愛していたと。
『だからまだ おめでとうは言う気になれないし、後悔して戻って来るかもしれないだろう?』
『ごめんね。ずっと悩んでいたのを気が付かなくて』
『鈍感なシャルのせいでどれだけ理性を鍛えたことか』
『もしかして、くっつくと嫌がったのはそのせい?』
『あいつより小さな頃から好きだった。今も愛してる。だから嫌なことがあったら直ぐ帰って来い。
嫌いな野菜が出てきたとか、茶がぬるかったとか、セドリックの瞬きが気に入らないとか、ちょっとしたことでも我慢せず帰って来いよ』
『それじゃ お嫁に行けないわ』
『行かなくていいんだ』
『ロラン、ありがとう』
それを聞いていた弟ケインは
『ロラン兄様は僕が可愛いお嫁さんを探してきます』
と張り切っていた。
そして初夜、
婚約してからずっと“抱きたい”と言い続けて、私をその気にさせようと頑張ってきたセドリックが熱を出した。
「やっと…やっと結ばれる日が来たのに」
「疲れたのね。私も疲れたからゆっくり休みましょう」
「じゃあ、眠るまで側にいてくれ」
「いいわよ。
ねえ。どうしてあんなに大っぴらに求婚し続けたの?大声で求婚したのに断られて恥ずかしくなかったの?号外まで出して」
「昔、ウィルソン夫人とシャルロットを抱っこしたキャロン夫人が昔の求婚話に花を咲かせていたんだ。それで、キャロン夫人がシャルロットにこう聞いた。
“シャルロットちゃんはどんなふうに求婚されたいの?”
“私はこれでもかと大袈裟に言われたいです。誰が聞いても勘違いしないくらい。私のことだけ好きですって顔をした人がいいです”
そう答えたんだ」
「え!? 私のせい!?」
「だから皆の前で大声で求婚し続けたし、伯爵に認められるよう文武両道を達成できるよう努力した」
「何でそんなことを言っちゃったんだろう」
「母上主催の茶会でご夫人方の話を聞いたらしいよ。ある令息が3人の令嬢に求婚に近いことを言って揉めたって。
その話の流れからウィルソン夫人達が自分達の時の話をして、シャルロットの発言に辿り着いたんだ」
「そう。ありがとう、セドリック。諦めずに求婚してくれて。嬉しいわ」
「っ! やっぱり初夜を、」
「おやすみなさい」
「シャル!?」
「話していると眠れないだろうから」
「シャル!」
3日後の夜中、熱が下がっていると聞いた私はセドリックの部屋に忍び込んで、ベッドに入った。
翌朝
「何で言ってくれないんだよ!俺、湯浴みしなくちゃ」
「おはよう。部屋に戻るわね」
「初夜を、」
「今、朝です」
「だって、もう…」
「もう?」
「何でもない」
セドリックは枕を抱えて悔しそうだった。
私達夫婦は城に居住しエリオット国王陛下と第二王子を支えながら仲睦まじく過ごし、男児と女児を授かった。2人とも瞳も髪もセドリックの色だったが顔は私によく似ていた。そして2人はキャロン家によく懐いた。
ロランは35歳になってようやく妻を迎えた。他国から友好のために訪れた王女の女護衛騎士だった。薄いグリーンの瞳に赤毛の28歳で子爵家出身だった。
決め手は剣筋らしい。
「やっと気を抜けるな。もう帰って来いなんて言わないだろう」
「ロランもエリン様も“嫌なら直ぐに帰って来い”って言っていたわ」
「チッ」
終
未遂とはいえキズモノと言われることは一度も無く、セドリックの手を取って入場したけどヒソヒソされることもない。
「シャルロット、キョロキョロし過ぎだ」
「ごめんなさい」
「怒っていないよ、ほら前を向いて」
卒業生全員が会場入りし、国王陛下の祝辞の後にダンスを踊った。
「今日は主役は卒業生だから、シャルロット以外とは踊らない。後でもう一度踊ろう」
「はい」
「シャルロットは卒業したい?」
「そうですね」
「そうか」
なんだろう。成績は悪くはないと思うのだけど。
「不正は止めてくださいね」
「ん?」
「どれか点が悪かったのですか?圧力とか賄賂とか止めてくださいね。退学してキャロン領で平凡な余生を送りますから」
「そうじゃないよ。
ウィルソン領と言わないのか?侯爵夫妻が悲しむぞ」
「どうせお父様はお母様しか見ていませんし、お母様は跡継ぎにしか興味がないのです」
「単にキャロン伯爵家が溺愛しているから安心しているだけだろう」
「う~ん」
休憩を入れてもう一度セドリックと踊った後、セドリックは跪いて箱を取り出した。
「シャルロット・ウィルソン! 愛してる!俺と結婚してくれ!!」
張り上げた声は場内に響き渡った。
箱の中身は婚約指輪だった。
「……」
「俺には君しかいない!この命が尽きてもシャルロットしか愛さない!浮気もしない!悲しませない!」
「妃教育なんて私には」
「無理なカリキュラムは組ませない。シャルロットが無理だと言うならキャロン伯爵家の養子になって君を娶る」
「伯父様がいいって言ったのですか?」
「シャルロットが義娘になるのに反対するわけがない。それに条件は満たしたからな」
「条件?」
「伯爵が考える シャルロットを嫁がせてもいい男の条件だよ。
ほら、そろそろ返事をくれ。次のダンスを待っている卒業生達の機嫌を損ねるぞ」
「イエスよ」
「シャル!!」
セドリックは私を抱きしめながらクルクルと回った後、婚約指輪をはめてくれた。
会場は拍手と“やっとか” “長かったな” “粘り勝ちね”など様々な声も聞こえてきた。
屋敷にはセドリックと戻り、セドリックが伯父様とレオナルド兄様とロランに報告した。
「は?」
ロランは応接間から出て行ってしまった。
「ロラン?」
「独りにしてやってくれ」
兄様が私を引き留めて抱きしめた。
「で、シャルロットが妃教育をギブアップしたら私の息子として養子になり、シャルロットを嫁に?」
「はい。キャロン領のどこかで静かに暮らします」
「エリオットが許すはずがないだろう」
「じゃあ、養子になってシャルロットと婚姻して、弟の補佐として城に住むかキャロン家のタウンハウスに住みます」
「全く…ウィルソン家には?」
「領地に行ったときに許しはもらっています。伯爵を口説き落とせたら構わないそうです」
「ディオンの奴…私が許さないと思って」
「ウィルソン侯爵は確かに、“神に会いに行くよりもアレクサンドル義兄上を口説く方が難しいかもしれない”と笑っていましたが、それを先に成し遂げたのはウィルソン侯爵です。ならば俺に出来ないはずはありません。侯爵よりも俺の方が伯爵の条件に近いはずです」
「私はセドリックを兄などと呼びたくないな」
レオ兄様は私の肩を撫でながら溜息を吐いた。
「呼ばなくていいけど意地悪しないでくれよ」
「シャルロット、本当にいいのか?」
伯父様が私の頭を撫でながら確認した。
「だって…いろいろ考えると大変そうですけど、他の人は考えられない気がします」
「分かった。
セドリック殿下、王家との話し合いの席を設けていただきます」
「かしこまりました、キャロン伯爵」
そして2年後
私の卒業パーティの1週間後にうんざりするほど盛大な式をあげた。
レオナルド兄様の隣には婚約者がいて、ロランはまだ決めていなかった。
そして最後までロランから“おめでとう”は聞けなかった。その代わり、婚姻前夜に思いを告げられた。ずっと愛していたと。
『だからまだ おめでとうは言う気になれないし、後悔して戻って来るかもしれないだろう?』
『ごめんね。ずっと悩んでいたのを気が付かなくて』
『鈍感なシャルのせいでどれだけ理性を鍛えたことか』
『もしかして、くっつくと嫌がったのはそのせい?』
『あいつより小さな頃から好きだった。今も愛してる。だから嫌なことがあったら直ぐ帰って来い。
嫌いな野菜が出てきたとか、茶がぬるかったとか、セドリックの瞬きが気に入らないとか、ちょっとしたことでも我慢せず帰って来いよ』
『それじゃ お嫁に行けないわ』
『行かなくていいんだ』
『ロラン、ありがとう』
それを聞いていた弟ケインは
『ロラン兄様は僕が可愛いお嫁さんを探してきます』
と張り切っていた。
そして初夜、
婚約してからずっと“抱きたい”と言い続けて、私をその気にさせようと頑張ってきたセドリックが熱を出した。
「やっと…やっと結ばれる日が来たのに」
「疲れたのね。私も疲れたからゆっくり休みましょう」
「じゃあ、眠るまで側にいてくれ」
「いいわよ。
ねえ。どうしてあんなに大っぴらに求婚し続けたの?大声で求婚したのに断られて恥ずかしくなかったの?号外まで出して」
「昔、ウィルソン夫人とシャルロットを抱っこしたキャロン夫人が昔の求婚話に花を咲かせていたんだ。それで、キャロン夫人がシャルロットにこう聞いた。
“シャルロットちゃんはどんなふうに求婚されたいの?”
“私はこれでもかと大袈裟に言われたいです。誰が聞いても勘違いしないくらい。私のことだけ好きですって顔をした人がいいです”
そう答えたんだ」
「え!? 私のせい!?」
「だから皆の前で大声で求婚し続けたし、伯爵に認められるよう文武両道を達成できるよう努力した」
「何でそんなことを言っちゃったんだろう」
「母上主催の茶会でご夫人方の話を聞いたらしいよ。ある令息が3人の令嬢に求婚に近いことを言って揉めたって。
その話の流れからウィルソン夫人達が自分達の時の話をして、シャルロットの発言に辿り着いたんだ」
「そう。ありがとう、セドリック。諦めずに求婚してくれて。嬉しいわ」
「っ! やっぱり初夜を、」
「おやすみなさい」
「シャル!?」
「話していると眠れないだろうから」
「シャル!」
3日後の夜中、熱が下がっていると聞いた私はセドリックの部屋に忍び込んで、ベッドに入った。
翌朝
「何で言ってくれないんだよ!俺、湯浴みしなくちゃ」
「おはよう。部屋に戻るわね」
「初夜を、」
「今、朝です」
「だって、もう…」
「もう?」
「何でもない」
セドリックは枕を抱えて悔しそうだった。
私達夫婦は城に居住しエリオット国王陛下と第二王子を支えながら仲睦まじく過ごし、男児と女児を授かった。2人とも瞳も髪もセドリックの色だったが顔は私によく似ていた。そして2人はキャロン家によく懐いた。
ロランは35歳になってようやく妻を迎えた。他国から友好のために訪れた王女の女護衛騎士だった。薄いグリーンの瞳に赤毛の28歳で子爵家出身だった。
決め手は剣筋らしい。
「やっと気を抜けるな。もう帰って来いなんて言わないだろう」
「ロランもエリン様も“嫌なら直ぐに帰って来い”って言っていたわ」
「チッ」
終
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