【完結】求婚はほどほどに

ユユ

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令嬢達の気持ち

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立ち去ろうとする令嬢の腕を掴んだ。

「待ちなさい。誰か立ち去って良いと言ったの?」

「え?」

「これ、どうしてくれるの」

「あ、謝ったじゃない」

「あの“ごめんなさーい”が謝罪?何処のバカか知らないけど、謝罪にもなっていないし許す気もないの」

「え…だって」

「何故 私に近寄ったの?挨拶も無くジュースを掛けただけで立ち去ろうなんておかしいでしょう」

「偶然」

「偶然、話したこともない私に寄ってきた理由は何?立ち去ろうとした時点で私に用があったなんて言い訳は通用しないわよ」

「こんなことは、騒ぎ立てないのが常識で、」

「貴女と一緒にいた黄色のドレスの令嬢が言っていたじゃない。私は我儘だって。だからその通りにするわ。
ねえ。まだ名乗らないの?」

「…メアリー・カドウィック」

「カドウィック侯爵家の次女ね。貴女のお姉様は何処に嫁ごうとしているのか思い出せる?」

「ポル家…」

「私の遠縁になろうとしているのよね。シオナ様は貴女の愚かな行動を容認しているのかしら」

「っ!」

「たかがドレスくらいでメアリー様のお姉様の事を持ち出さなくてもいいではありませんか」

「そうですわ。お帰りになればよろしいではありませんか」

「メアリー様は侯爵令嬢なのですよ。その様な口の利き方は無礼ですわ」

「連帯責任を負う気が無ければ、さっきのように話しかけずに そこで私の悪口を続けてはどうです?
それに同じ侯爵家で被害者は私。何故逃げようとした加害者に敬意をはらう必要があるの?」

「どうしたんだ」

ユリス公子が騒ぎに気が付き戻ってきた。

「まあ!せっかくのドレスが台無しですわ」

ユリス公子の婚約者エリザベス様がハンカチを取り出した。

「エリザベス様、ハンカチが汚れてしまいます」

要らないと断った。

「サイズの合うドレスがあるといいんだけど」

「ユリス様、着替えはこちらのカドウィック嬢が着ているドレスを貸してもらいます」

「は?彼女のドレスを…ですか」

「私にはブカブカかもしれませんが、入らないよりはいいですわ。
令嬢。今すぐ脱いで渡して」

「そんな!」

「この場で脱いで」

仲間の令嬢は“あり得ない”と騒ぎ立てた。

「シャル」

「レオ兄様」

レオ兄様とロランが到着した。だけど私のドレスを見て顔つきが変わった。

ロ「その顔色の悪い女が?」

私「そこにいる令嬢達と私の悪口を言っていたかと思ったら、急に近寄ってジュースを掛けて立ち去ろうとしたから、許さないって言ったの。
伯父様がプレゼントしてくださったドレスを駄目にしておきながら、自分は“ごめんなさーい”って笑って済まそうとするの。
それで、代わりにドレスを脱いで渡せって言っていたところよ」

ロ「誰だコイツ」

レ「カドウィック侯爵家だ。長女シオナ嬢が2ヶ月後にポル伯爵家に嫁ぐはずだろう? 本家ウィルソン家の長女シャルロットに愚行だな」

私「彼女達は私のことを、見かけだけで取り柄のない厚かましい我儘女だって言っていたから、彼女にとっては愚行じゃなくて躾のつもりなんじゃない?」

ロ「は?コイツこそ何様だよ」

レ「脱げ」

メ「お、お許しを…」

レ「許すかどうかはシャルロットが決める。シャルロットは結論を出しただろう?
反省して今ドレスを寄越すか、屋敷に戻ってシオナ嬢から殴られるか好きにしたらいい」

メ「ううっ」

私「何で加害者が泣いてるの?」

ロ「馬鹿なんだよ。馬鹿じゃないとジュースをかけようだなんて思わないからね」

私「この方達が言うには、レオ兄様とロランは、私の我儘で婚約者がいないらしいの。私なんかに手玉に取られる間抜けだと笑っていたの」

ロ「へぇ」

レ「ユリス。この女達の名前を書いて来てくれないか」

ユ「レオ、」

レ「今すぐだ」

ユ「書いて来る」

ユリス公子とレオ兄様のやり取りを聞いた後、4人のうち2人は夫人が同席していたようで慌てて間に入った。

「ソルソーノ伯爵家のソフィアと申します。シャルロット様、うちの馬鹿娘が酷い言いがかりをつけました。きつく躾直しますのでどうかお許しください」

「ビドー伯爵家のテレーズと申します。シャルロット様、身の程知らずのジャニーヌに更正の機会を与えてください。二度とこのようなことがないようにいたします」

夫人2人に頭を下げられたので、その娘達は解放することにした。

私「ソルソーノ伯爵夫人、ビドー伯爵夫人。謝罪を受けますわ」

「「ありがとうございます」」

夫人達は娘を連れて 足早にこの場を離れた。


私「カドウィック侯爵令嬢、泣いていても解決しないわよ?早く脱いで渡して」

今度はブロシェン公爵夫人が顔色を変えて側に来た。
そして事情を聞いた公爵夫人が真顔になった。

ブ「キルスタン嬢。お帰りになって」

キ「こ、公爵夫人っ」

ブ「私のお茶会を軽視してくれてありがとう。キルスタン子爵によろしくお伝えしてね」

キ「っ!!」

ブ「カドウィック嬢、泣くのはお止めなさい。ご自分のなさったことでしょう」

メ「夫人、」

ブ「妃選抜から漏れる訳ね」

メ「っ!!」

ブ「ドレスを渡す気が無いのなら帰ってちょうだい」

メ「酷いですわ!母と夫人は友人ではありませんか」

ブ「そうよ。でも、貴女とではないし、友人の娘の立場を持ち出すのなら、尚更私の茶会を台無しにして欲しくはなかったわ」

メ「ですが、」

プ「はぁ、みっともないわね。強制的に追い出さなくてはならないかしら」

メ「どうしてこの女ばかり、キャア!」

レオ兄様が彼女の髪を掴んで出口へ向かった。

私「ブロシェン公爵夫人、お騒がせしました。
残念ですが帰りますわ」

ブ「ごめんなさいね、懲りずにまたいらしてね」

ロ「僕達も、」

私「私はまた戻らなくてはならないからレオ兄様とお茶会に参加して。また私の我儘に2人がって言われちゃうわ」

ロ「しっかりおくよ」



馬車に乗り、城へ着いたので着替えてから殿下の部屋へ行こうとしたが、着替える前に会ってしまった。

「ブロシェン公爵夫人の茶会のはずだよな」

「はい」

「そのドレスは誰が?」

「私が殿下の側に居ることに不満を持つ令嬢達です。ですから早く治してください」

「シャルロットは何か言われる度に引き下がるのか?」

「引き下がるも何もありません。私と殿下は友人でさえありませんから」

「今日はもう帰っていい」

「かしこまりました。失礼いたします」

着替えてキャロン邸に帰った。



翌日、殿下はいつも通り接した後、付き人の終了を伝えてきた。

もしかしたら気分を害したのかもしれないなんて思いながら、荷物を纏めて挨拶をした。
あれだけ反感があるのだから、私に拘らない方が殿下のためだと思う。

「どうかお大事に」

「気を付けて帰ってくれ」


少し寂しく感じるのは気のせいだろうか。
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