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痣
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ロランの部屋でルフレ先生が服を捲った。
「少し腫れているな」
先生が右肩の動きを確認した。
「先生。何で団長さんはロラン達を止めたんですか?」
「怪我をしそうだと察知なさったんだろう。実力差があれば、強い方が加減をしたり最小限に早く終わらせたりできるが、ロラン達は最初の一撃で相打ちになり、殿下に火がついたのだろうな。
団長が止めたということは差を感じなかったのだろう。その2人が手加減無しに戦えば大怪我もあり得る。優勝は決まったのだから あの場でそこまでする必要はない」
「ロラン」
「大丈夫だよ。向こうも痛がっているかもしれないし」
「引き分けだから膝枕ができないし、怪我してるからしてもらえないし」
「してどうするんだよ。首が痛くならないか?」
「そういう問題じゃないの。愛情表現なの」
「甘えん坊め」
「甘えん坊でいいってレオ兄様が言っていたもの」
「兄上は甘やかし過ぎなんだよ」
「伯父様だって いつまでも甘えてくれって」
「じゃあ尚更僕は甘やかしたりしない。シャルが駄目人間になっちゃうからね」
「ロランは…何でもない。お大事にね」
「シャル?」
部屋に戻ってカードに記入した。
一階に降りて使用人に渡した。
「届けて欲しいの」
「…かしこまりました」
居間に行って伯父様にくっつくことにした。
「可愛いシャルロット。剣闘会はどうだった?」
「みんな頑張っていました」
伯父様に抱きついた。
「何かあったのか?」
「ちょっと寂しいだけです」
「よしよし。うちのシャルロットは可愛いな」
3時間後の夕食後。
「お嬢様、返信です」
「ありがとう」
「誰からだ?」
レオ兄様が覗き込んだ。
「何でセドリック殿下が?」
「ちょっとお見舞いとクレームをね」
「私は明日は行けないからロランを連れて行け」
「ロランは怪我をしているし、一人で行くわ」
「駄目だ」
「では、私が行こう」
「伯父様、いいんですか?」
「たまには城に顔を出しておいてもいいだろう?」
「やった。寄り道してもいいですか?お店に寄りたいです」
「いいよ」
ロランはレオ兄様とヒソヒソ話していた。
翌日。
「お嬢様、それになさるのですか?」
「そうよ」
「もう少し華やかな方が、」
「殿下に会うのに着飾ったら何言われるか分からないから、地味目にするの」
一見貧乏令嬢風にしてもらった。でもドレスは落ち着いた高級品。
本当はメイドにワンピースを貸してと言ったのだけど、“叱られます”と皆 嫌がった。
王都のお店で買い物をして伯父様と王城へ向かった。
王城へ到着するとセドリックが外で待っていた。馬車に気が付くと停車場ギリギリまで近寄って来た。
馬車が停まりドアが開くとセドリックが手を差し伸べたが、手を取ったのは伯父様だった。
「キ、キャロン伯爵っ」
「殿下は紳士ですね。私にも手を差し伸べてくださるなんて」
「あ、まあ」
「ふふっ」
「どうせ私のことなど視界に入らなかったのでしょう?殿下とシャルロットの間に居るというのに」
「ようこそキャロン伯爵」
伯父様が馬車を降りると今度こそと手を差し伸べようとしたセドリックの前に立ちはだかるように、伯父様が手を差し伸べた。
「ありがとうございます、伯父様」
「応接間まで抱っこしようか?」
「嬉しいですけど、もう流石に此処では恥ずかしいですわ」
「そうか。では屋敷に帰ってからにしようね」
「はい」
「伯爵…俺もキャロン邸で暮らしてもいいか?」
「殿下も私に抱っこして欲しいのですか?流石に腰を痛めてしまいます」
「シャルロットより少し大きくなっただけなのに酷いな」
「シャルロットのドレスを着ることができたら検討しましょう」
私は伯父様と腕を組んで歩いた。
そして応接間に着くと先程購入した物を渡した。
「これ、俺に?」
「優勝おめでとうございます」
「シャル!嬉しいよ!」
「誰が“シャル”と呼んでいいといったのですか。
これは形式上のお祝いですので深い意味はありません」
宝剣のような作りのペーパーナイフで、セドリックの瞳の色の宝石を嵌め込んだ物だ。
本当はロランの誕生日に向けて作らせた物だった。これからロランの瞳の色の宝石を嵌め込むところだったので、変更して持って来た。
ロランには別の物を考えないと。
「凄いな。本当にペーパーナイフだ」
セドリックは手が切れないことを確認しながら嬉しそうに微笑んだ。
「本題は別です」
「話があると書いてあったな」
「ちょっと。私のロランに怪我をさせるなんて有り得ないんですけど!」
「怪我?」
「肩が腫れていたのです!」
セドリックはスッと立ち上がりジャケットを脱ぎシャツを脱ぎ始めた。
「ちょっと!」
「殿下、レディの前ですよ」
脱いだ彼の脇腹には青紫色の痣が出来ていた。
「俺だってこんなだぞ?防具付けてたのに。
あいつ、俺を殺す気だったんじゃないか?」
「ロランが申し訳ございません」
「いや、ちゃんと防具の上に攻撃したのだから仕方ない。伯爵は謝らなくていい。
シャルロット、“引き分け”だろう?」
「……痛いですか?」
「そりゃ、痛いさ。何をするにしても痛い。寝返りはうてないし、服の脱ぎ着も痛い。下に落ちた物は拾いたくないし、当面安静だ」
「……」
「そんな顔は見たくない。シャルロットは気にしなくていい」
「殿下、骨に異常はないのでしょうか」
「ポキッとは折れていない。切り開いて確認する訳にはいかないから、念のため ヒビが入っている前提での安静だ。
父上には、キャロン伯爵に標的にされるよりマシだと笑われたよ」
流石に王子殿下相手にこの怪我はまずいような…
そこに遣いの人が来た。
「キャロン伯爵、陛下がお呼びです」
「シャルロットが、」
「大丈夫だ 伯爵。シャルロットにいかがわしいことはまだしないよ」
「シャルロット、変なことをされたら分かってるね?」
「はい。握り潰すか蹴り潰すか 踏み潰します」
「じゃあ行ってくる」
伯父様が部屋を出たので サッと近寄って服を着るのを手伝った。
「こういうの いいな」
「……」
「学園も1週間休んで様子見るんだけどな」
「……」
「朝起きるときなんか結構痛いんだけどな」
「……」
「弟の後始末は姉の役目では?」
「…要求は何ですか」
「そうだなぁ。付き人でもやってもらおうかな」
「はあ?」
「最低1週間の安静だ。その後延びるかもしれないし、安静命令が解けても当然治るのには時間がかかる」
「無理ですよ。学園がありますし、私に出来ることはほとんどありません」
「じゃあ ロランを呼んで、」
「分かりました。ですが、午後の授業の無い水曜日と土日だけです。夕食までには帰ります。
あと、来週の土曜日は予定がありますので来ません」
「何の予定だ」
「ブロシェン家のお茶会です」
「俺がこんななのに行くのか?」
格上の方のお茶会に出席しますと返事をしたのに。
「じゃあ、途中で外して出席して戻って来るということでいかがですか?」
「……その日は早朝から登城して、抜けるのは3時間だけだ」
「え~」
セドリックは自分の付けていたネックレスを私の首につけた。
「少し腫れているな」
先生が右肩の動きを確認した。
「先生。何で団長さんはロラン達を止めたんですか?」
「怪我をしそうだと察知なさったんだろう。実力差があれば、強い方が加減をしたり最小限に早く終わらせたりできるが、ロラン達は最初の一撃で相打ちになり、殿下に火がついたのだろうな。
団長が止めたということは差を感じなかったのだろう。その2人が手加減無しに戦えば大怪我もあり得る。優勝は決まったのだから あの場でそこまでする必要はない」
「ロラン」
「大丈夫だよ。向こうも痛がっているかもしれないし」
「引き分けだから膝枕ができないし、怪我してるからしてもらえないし」
「してどうするんだよ。首が痛くならないか?」
「そういう問題じゃないの。愛情表現なの」
「甘えん坊め」
「甘えん坊でいいってレオ兄様が言っていたもの」
「兄上は甘やかし過ぎなんだよ」
「伯父様だって いつまでも甘えてくれって」
「じゃあ尚更僕は甘やかしたりしない。シャルが駄目人間になっちゃうからね」
「ロランは…何でもない。お大事にね」
「シャル?」
部屋に戻ってカードに記入した。
一階に降りて使用人に渡した。
「届けて欲しいの」
「…かしこまりました」
居間に行って伯父様にくっつくことにした。
「可愛いシャルロット。剣闘会はどうだった?」
「みんな頑張っていました」
伯父様に抱きついた。
「何かあったのか?」
「ちょっと寂しいだけです」
「よしよし。うちのシャルロットは可愛いな」
3時間後の夕食後。
「お嬢様、返信です」
「ありがとう」
「誰からだ?」
レオ兄様が覗き込んだ。
「何でセドリック殿下が?」
「ちょっとお見舞いとクレームをね」
「私は明日は行けないからロランを連れて行け」
「ロランは怪我をしているし、一人で行くわ」
「駄目だ」
「では、私が行こう」
「伯父様、いいんですか?」
「たまには城に顔を出しておいてもいいだろう?」
「やった。寄り道してもいいですか?お店に寄りたいです」
「いいよ」
ロランはレオ兄様とヒソヒソ話していた。
翌日。
「お嬢様、それになさるのですか?」
「そうよ」
「もう少し華やかな方が、」
「殿下に会うのに着飾ったら何言われるか分からないから、地味目にするの」
一見貧乏令嬢風にしてもらった。でもドレスは落ち着いた高級品。
本当はメイドにワンピースを貸してと言ったのだけど、“叱られます”と皆 嫌がった。
王都のお店で買い物をして伯父様と王城へ向かった。
王城へ到着するとセドリックが外で待っていた。馬車に気が付くと停車場ギリギリまで近寄って来た。
馬車が停まりドアが開くとセドリックが手を差し伸べたが、手を取ったのは伯父様だった。
「キ、キャロン伯爵っ」
「殿下は紳士ですね。私にも手を差し伸べてくださるなんて」
「あ、まあ」
「ふふっ」
「どうせ私のことなど視界に入らなかったのでしょう?殿下とシャルロットの間に居るというのに」
「ようこそキャロン伯爵」
伯父様が馬車を降りると今度こそと手を差し伸べようとしたセドリックの前に立ちはだかるように、伯父様が手を差し伸べた。
「ありがとうございます、伯父様」
「応接間まで抱っこしようか?」
「嬉しいですけど、もう流石に此処では恥ずかしいですわ」
「そうか。では屋敷に帰ってからにしようね」
「はい」
「伯爵…俺もキャロン邸で暮らしてもいいか?」
「殿下も私に抱っこして欲しいのですか?流石に腰を痛めてしまいます」
「シャルロットより少し大きくなっただけなのに酷いな」
「シャルロットのドレスを着ることができたら検討しましょう」
私は伯父様と腕を組んで歩いた。
そして応接間に着くと先程購入した物を渡した。
「これ、俺に?」
「優勝おめでとうございます」
「シャル!嬉しいよ!」
「誰が“シャル”と呼んでいいといったのですか。
これは形式上のお祝いですので深い意味はありません」
宝剣のような作りのペーパーナイフで、セドリックの瞳の色の宝石を嵌め込んだ物だ。
本当はロランの誕生日に向けて作らせた物だった。これからロランの瞳の色の宝石を嵌め込むところだったので、変更して持って来た。
ロランには別の物を考えないと。
「凄いな。本当にペーパーナイフだ」
セドリックは手が切れないことを確認しながら嬉しそうに微笑んだ。
「本題は別です」
「話があると書いてあったな」
「ちょっと。私のロランに怪我をさせるなんて有り得ないんですけど!」
「怪我?」
「肩が腫れていたのです!」
セドリックはスッと立ち上がりジャケットを脱ぎシャツを脱ぎ始めた。
「ちょっと!」
「殿下、レディの前ですよ」
脱いだ彼の脇腹には青紫色の痣が出来ていた。
「俺だってこんなだぞ?防具付けてたのに。
あいつ、俺を殺す気だったんじゃないか?」
「ロランが申し訳ございません」
「いや、ちゃんと防具の上に攻撃したのだから仕方ない。伯爵は謝らなくていい。
シャルロット、“引き分け”だろう?」
「……痛いですか?」
「そりゃ、痛いさ。何をするにしても痛い。寝返りはうてないし、服の脱ぎ着も痛い。下に落ちた物は拾いたくないし、当面安静だ」
「……」
「そんな顔は見たくない。シャルロットは気にしなくていい」
「殿下、骨に異常はないのでしょうか」
「ポキッとは折れていない。切り開いて確認する訳にはいかないから、念のため ヒビが入っている前提での安静だ。
父上には、キャロン伯爵に標的にされるよりマシだと笑われたよ」
流石に王子殿下相手にこの怪我はまずいような…
そこに遣いの人が来た。
「キャロン伯爵、陛下がお呼びです」
「シャルロットが、」
「大丈夫だ 伯爵。シャルロットにいかがわしいことはまだしないよ」
「シャルロット、変なことをされたら分かってるね?」
「はい。握り潰すか蹴り潰すか 踏み潰します」
「じゃあ行ってくる」
伯父様が部屋を出たので サッと近寄って服を着るのを手伝った。
「こういうの いいな」
「……」
「学園も1週間休んで様子見るんだけどな」
「……」
「朝起きるときなんか結構痛いんだけどな」
「……」
「弟の後始末は姉の役目では?」
「…要求は何ですか」
「そうだなぁ。付き人でもやってもらおうかな」
「はあ?」
「最低1週間の安静だ。その後延びるかもしれないし、安静命令が解けても当然治るのには時間がかかる」
「無理ですよ。学園がありますし、私に出来ることはほとんどありません」
「じゃあ ロランを呼んで、」
「分かりました。ですが、午後の授業の無い水曜日と土日だけです。夕食までには帰ります。
あと、来週の土曜日は予定がありますので来ません」
「何の予定だ」
「ブロシェン家のお茶会です」
「俺がこんななのに行くのか?」
格上の方のお茶会に出席しますと返事をしたのに。
「じゃあ、途中で外して出席して戻って来るということでいかがですか?」
「……その日は早朝から登城して、抜けるのは3時間だけだ」
「え~」
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