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お忍び馬車の襲来
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うちのお父様とお母様は愛し合っている。
見て分かる。
お父様の方が思いが強そうだ。
頭では理解しているのだけど私の心では理解が難しい。異性への好きだとか愛だとか いまいち良く分からない。
父ディオンはウィルソン侯爵家の長男として生まれ、最近侯爵位を継いだ。
母レティシアはキャロン伯爵家の長女として生まれ、タウンハウスが隣で幼馴染の父と婚姻した。
父は平凡に見えてしまう。顔は整っているし普通はカッコいいと言われるはずだと思うけど、周りが普通じゃない。
母と母の兄アレクサンドル・キャロン伯爵は美しさが群を抜いている。伯父様の息子レオナルドとロランも父親似でかなりの美形。
自分で言うのもなんだけど、ディオンとレティシアの娘である私シャルロットも母似でかなりの美しさ。
つまり、伯父様、母、レオナルド、ロラン、私は ほぼ同じ顔をしている。
父ディオンは霞んで見える状態だ。私の弟ケインと一緒に。
5歳のとき。
王宮でエリオット王太子殿下の息子セドリックとの顔合わせがあった。
年齢順で言うと、セドリック、レオナルド、私シャルロット、ロラン。
この日初めてお城に入った。
エリオット王太子殿下とアレクサンドル伯父様が親友ということで、子供達にも交流をと王太子殿下の発案らしい。
対面するなり、
「僕のお姫様です、父上!」
と、セドリック殿下が口にした。
殿下と大人達が話している間にお母様が腹痛を訴えた。お父様じゃなく、伯父様を頼るお母様。
後で聞いたら、私を産んでいる最中のお母様の横でお父様は倒れ、伯父様が付き添ってくれたらしい。
1年後。
「まだまだケインは小さくて可愛いね」
「そうですね」
「シャルは欲しいものは無いの?」
「1人の時間」
「……」
あれから、セドリック殿下は頻繁にウィルソン侯爵邸に来るようになった。もちろん先触れ無し。
しかも私を呼ぶ。
アレクサンドル伯父様が私の父だったら、こうはならないはず。伯父様達はキャロン領に戻ってしまった。
「お母様、私達も領地に行きましょう。ケインも大きくなったから馬車に乗れると思います」
「まだ早いわね」
「じゃあ、私だけでも」
「貴女もまだ小さいから駄目よ」
ウィルソン領に出発できたのは、ケインが産まれて1年半後だった。
ここならセドリックも簡単には訪れることはできない。のんびりと暮らしていた。
時々王家からお誘いの手紙が届いたり、セドリックから誕生日のお祝いをするからパーティに出席して欲しいと招待状が届いたが、全て欠席した。
伯父様がそうしていいと言ったから。
15歳。
ついに学園が始まるため、王都に行かなくてはいけない。
「行きたくない」
「行かなくてはダメよ」
「行かなくてもいいぞ」
「ディオン!」
「…ごめんな シャルロット」
お父様はお母様に弱い。
「だけど滞在先はキャロン邸にしたから大丈夫よ。レオナルドとロランがいるわ」
「いいの!?」
「その方が安心だしね」
数日後、お父様と一緒に王都に向かった。お父様は1週間経てば領地に戻るらしい。
タウンハウスに到着した翌日、隣のウィルソン邸に挨拶に行った。
「待っていたよ、シャルロット」
「伯父様っ」
伯父様に抱き付くとしっかりと抱きしめてくれた。伯父様は我が子よりも私を可愛がってくれる。
「アレク義兄上、シャルロットをよろしくお願いします」
「領地に戻るのか?」
「はい。義兄上はどうなさるのですか?」
「領地と此処を行き来するよ」
「シャル」
「ロラン」
「元気だった?」
「うん。また背が伸びたのね」
「男だからね」
「レオ兄様は学園?」
「そうだよ。夜に会えるよ」
私とロランはこれから入学。レオ兄様は今1年生、セドリック殿下は2年生だ。レオ兄様も本当はギリギリ、殿下と同学年で入学できたのに、それでは1年間しか私と一緒に通えないからと入学を見送ってくれたのだ。
「シャル。入学までひっそり過ごそうね。気付かれると押しかけて来るかもしれないから」
殿下のことね。
「はい」
夕方には帰って来たレオナルド兄様がウィルソン邸に迎えに来てくれた。
「シャル」
「レオ兄様」
力強く抱きしめられた。
「兄様、どんどん大人になってしまって」
「シャルだって 心配なくらい成長してるじゃないか」
「そうかな」
レオ兄様は逞しくなっていた。体に筋肉の厚みがある。
「ん?」
「いつまでこうしていられるのかな」
「シャルが望んでくれたら ずっとだよ」
「レオナルド、食事に呼びにきてくれたんだろう?早く行こう」
こんな生活を8日間過ごした後、お父様は私をキャロン邸に預けて領地へ戻った。
入学まであと2週間、みんなにはいつも通りにしてもらった。私のために何かを買ったりしないでもらった。
入学まであと1週間になると、ウィルソン邸にお忍び馬車が止まるようになった。この頃になると私は窓にも近寄らなかった。
レ「またセドリックが、シャルが来ていないかウィルソン邸に行ったみたいだ。その後にうちに来て探って帰ったよ」
ロ「執着がすごいな。王子じゃなきゃ始末するのに」
伯父「仕方ない。エリオットに会って来るか」
伯父様がエリオット王太子殿下に会いに行くと、セドリック殿下のお忍び馬車は来なくなった。
見て分かる。
お父様の方が思いが強そうだ。
頭では理解しているのだけど私の心では理解が難しい。異性への好きだとか愛だとか いまいち良く分からない。
父ディオンはウィルソン侯爵家の長男として生まれ、最近侯爵位を継いだ。
母レティシアはキャロン伯爵家の長女として生まれ、タウンハウスが隣で幼馴染の父と婚姻した。
父は平凡に見えてしまう。顔は整っているし普通はカッコいいと言われるはずだと思うけど、周りが普通じゃない。
母と母の兄アレクサンドル・キャロン伯爵は美しさが群を抜いている。伯父様の息子レオナルドとロランも父親似でかなりの美形。
自分で言うのもなんだけど、ディオンとレティシアの娘である私シャルロットも母似でかなりの美しさ。
つまり、伯父様、母、レオナルド、ロラン、私は ほぼ同じ顔をしている。
父ディオンは霞んで見える状態だ。私の弟ケインと一緒に。
5歳のとき。
王宮でエリオット王太子殿下の息子セドリックとの顔合わせがあった。
年齢順で言うと、セドリック、レオナルド、私シャルロット、ロラン。
この日初めてお城に入った。
エリオット王太子殿下とアレクサンドル伯父様が親友ということで、子供達にも交流をと王太子殿下の発案らしい。
対面するなり、
「僕のお姫様です、父上!」
と、セドリック殿下が口にした。
殿下と大人達が話している間にお母様が腹痛を訴えた。お父様じゃなく、伯父様を頼るお母様。
後で聞いたら、私を産んでいる最中のお母様の横でお父様は倒れ、伯父様が付き添ってくれたらしい。
1年後。
「まだまだケインは小さくて可愛いね」
「そうですね」
「シャルは欲しいものは無いの?」
「1人の時間」
「……」
あれから、セドリック殿下は頻繁にウィルソン侯爵邸に来るようになった。もちろん先触れ無し。
しかも私を呼ぶ。
アレクサンドル伯父様が私の父だったら、こうはならないはず。伯父様達はキャロン領に戻ってしまった。
「お母様、私達も領地に行きましょう。ケインも大きくなったから馬車に乗れると思います」
「まだ早いわね」
「じゃあ、私だけでも」
「貴女もまだ小さいから駄目よ」
ウィルソン領に出発できたのは、ケインが産まれて1年半後だった。
ここならセドリックも簡単には訪れることはできない。のんびりと暮らしていた。
時々王家からお誘いの手紙が届いたり、セドリックから誕生日のお祝いをするからパーティに出席して欲しいと招待状が届いたが、全て欠席した。
伯父様がそうしていいと言ったから。
15歳。
ついに学園が始まるため、王都に行かなくてはいけない。
「行きたくない」
「行かなくてはダメよ」
「行かなくてもいいぞ」
「ディオン!」
「…ごめんな シャルロット」
お父様はお母様に弱い。
「だけど滞在先はキャロン邸にしたから大丈夫よ。レオナルドとロランがいるわ」
「いいの!?」
「その方が安心だしね」
数日後、お父様と一緒に王都に向かった。お父様は1週間経てば領地に戻るらしい。
タウンハウスに到着した翌日、隣のウィルソン邸に挨拶に行った。
「待っていたよ、シャルロット」
「伯父様っ」
伯父様に抱き付くとしっかりと抱きしめてくれた。伯父様は我が子よりも私を可愛がってくれる。
「アレク義兄上、シャルロットをよろしくお願いします」
「領地に戻るのか?」
「はい。義兄上はどうなさるのですか?」
「領地と此処を行き来するよ」
「シャル」
「ロラン」
「元気だった?」
「うん。また背が伸びたのね」
「男だからね」
「レオ兄様は学園?」
「そうだよ。夜に会えるよ」
私とロランはこれから入学。レオ兄様は今1年生、セドリック殿下は2年生だ。レオ兄様も本当はギリギリ、殿下と同学年で入学できたのに、それでは1年間しか私と一緒に通えないからと入学を見送ってくれたのだ。
「シャル。入学までひっそり過ごそうね。気付かれると押しかけて来るかもしれないから」
殿下のことね。
「はい」
夕方には帰って来たレオナルド兄様がウィルソン邸に迎えに来てくれた。
「シャル」
「レオ兄様」
力強く抱きしめられた。
「兄様、どんどん大人になってしまって」
「シャルだって 心配なくらい成長してるじゃないか」
「そうかな」
レオ兄様は逞しくなっていた。体に筋肉の厚みがある。
「ん?」
「いつまでこうしていられるのかな」
「シャルが望んでくれたら ずっとだよ」
「レオナルド、食事に呼びにきてくれたんだろう?早く行こう」
こんな生活を8日間過ごした後、お父様は私をキャロン邸に預けて領地へ戻った。
入学まであと2週間、みんなにはいつも通りにしてもらった。私のために何かを買ったりしないでもらった。
入学まであと1週間になると、ウィルソン邸にお忍び馬車が止まるようになった。この頃になると私は窓にも近寄らなかった。
レ「またセドリックが、シャルが来ていないかウィルソン邸に行ったみたいだ。その後にうちに来て探って帰ったよ」
ロ「執着がすごいな。王子じゃなきゃ始末するのに」
伯父「仕方ない。エリオットに会って来るか」
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