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ガニアン
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平穏な日々を送ることができていた。
学園で勉強し、王城で仕事をして、時々友人との時間を過ごした。
次の長期休暇から新たな仕事が追加される。
変装して面接官として紛れ込み、選別すること。
「リヴィア、こっちにおいで」
「でも」
「リヴィアにフラれて可哀想だと思わないのか?」
上はシャツ1枚ですっかりうちでリラックスするのはオードリック様だ。
彼の隣に座ると肩に腕を回されて抱き寄せられた。
シャツ1枚だから体温が頬に伝わる。
「オードリック様は行くのですよね?」
「今年はリヴィアが一緒じゃなければ行かないと返事をしたよ」
「公爵様達は怒っていらっしゃるのではありませんか?」
「昔なら“来い”の一言だろうな。まあ、私も行かないなんて返事をしたのは昨年からだけどな」
「私のせいにしないで領地に行ってください」
「嫌だよ。リヴィアを残して何日も離れたら絶対に後悔しそうだからな。寧ろうちの屋敷で生活させるか 私がネルハデス邸で暮らそうか悩んでいるほどだ。学園にだって付き添って隣で授業を聞いているフリをしてリヴィアを観察したいよ」
「笑われますよ」
「リヴィアが私だけのものになるなら、指をさされて笑われても構わないよ」
「本当に指を刺して笑ったら怒るくせに」
「キスしていい?」
「駄目に決まっているじゃないですか」
オードリック様は私にはっきりとした愛情表現をするようになった。態度でも言葉でも。
巻き戻り前も今までも、そんなことは無かったから戸惑ったけど安心する。
瞳孔も歪まないし、他の女性には冷たいくらいだし。
「好きなんだからキスがしたいのは当然だろう」
チュッ
唇ではなく頭にキスをされた。
「もう!」
「ハハッ」
コンコンコンコン
「どうしたの?」
「カルフォン卿がいらしております」
「え!?」
エントランスに行くと本当にいた。
「どうしましたか?」
「リヴィア嬢とフレンデェ公爵令息に登場命令書をお持ちしました」
2枚の封筒を渡された。
1枚はオードリック様宛てなので彼に渡した。
“至急 登城して欲しい”
「カルフォン卿、リヴィアを連れて1時間半後に登城する。さすがに屋敷に戻って着替えないと」
カルフォン卿がチラッと私を見た。
「公子と一緒に参ります」
「かしこまりました。それでは1時間半後に」
カルフォン卿が帰ると 急いで支度してフレンデェ家の馬車に乗った。フレンデェ邸に着いてオードリック様が急いで着替えて登城した。
応接間に通されまっていると、入室なさった陛下に続いたのはカシャ公爵だった。
「あ、」
思わず漏れた声に公爵はニッコリと微笑んだ。
オ「国王陛下にご挨拶を申し上げます」
私も続いて挨拶をして、カシャ公爵にも挨拶をした。
どうして?想像していたメンバーじゃないんだけど。
陛「彼は宰相として同席しているんだ。そんなに不思議そうな顔をするな」
私「失礼いたしました」
陛「実は、アルシュのガニアン公爵から書簡が届いて、1ヶ月後に来るそうだ」
私「ガニアン公爵がですか…」
宰「ガニアンは妻の実家にあたる。
今回は当主のアデラール・ガニアン公爵と、次男エルヴェ・ガニアン公子が来国する。王城で受け入れて滞在してもらう。彼らに何かあっては大事になってしまうからな」
私「いらっしゃるのは次男なのですね」
宰「どうも跡継ぎが交代したらしい。何故かは知らないが聞かない方がいいだろう」
私「そうします。
あの、やっぱり私が関係するのですよね?」
宰「その通り。ガニアン公爵家は2つの目的があるようで、一つは宗教絡みだとだけ。もう一つはリヴィア嬢と会うことだとはっきり書いてあった」
私「……」
陛「顔に出過ぎだぞ、リヴィア嬢」
私「嫌な予感がします」
陛「新しい跡継ぎからの求婚かもしれないな」
私「陛下」
オ「だとしたら、婚約者候補のままなんて危険です」
陛「その通り。婚約者候補にはなったけど、恋に落ちてしまったということにしたい」
オ「私はとっくに落ちていますけどね」
陛「オードリックはだいぶ変わったな」
オ「良い方にですよね?」
陛「勿論だ。小さな頃から見てきたが、今が一番良い」
オ「ありがとうございます」
私「小さなオードリック様は天使でしょうね」
陛「絵画から抜け出た天使と言われたものだ」
オードリック様をじっと見て幼い頃の想像をしてみた。
私「確かに天使ですね」
オードリック様の顔が赤くなり、顔を逸らした。
陛下に大声で笑われたオードリック様は帰りの馬車で私を膝の上に乗せた。
「伯爵達を呼び寄せるのか」
「どうでしょう。とにかく近況報告として手紙を出さないとまた叱られますので出します。そうなると来ると思います」
「楽しみにしていると伝えてくれ」
「分かりました」
学園で勉強し、王城で仕事をして、時々友人との時間を過ごした。
次の長期休暇から新たな仕事が追加される。
変装して面接官として紛れ込み、選別すること。
「リヴィア、こっちにおいで」
「でも」
「リヴィアにフラれて可哀想だと思わないのか?」
上はシャツ1枚ですっかりうちでリラックスするのはオードリック様だ。
彼の隣に座ると肩に腕を回されて抱き寄せられた。
シャツ1枚だから体温が頬に伝わる。
「オードリック様は行くのですよね?」
「今年はリヴィアが一緒じゃなければ行かないと返事をしたよ」
「公爵様達は怒っていらっしゃるのではありませんか?」
「昔なら“来い”の一言だろうな。まあ、私も行かないなんて返事をしたのは昨年からだけどな」
「私のせいにしないで領地に行ってください」
「嫌だよ。リヴィアを残して何日も離れたら絶対に後悔しそうだからな。寧ろうちの屋敷で生活させるか 私がネルハデス邸で暮らそうか悩んでいるほどだ。学園にだって付き添って隣で授業を聞いているフリをしてリヴィアを観察したいよ」
「笑われますよ」
「リヴィアが私だけのものになるなら、指をさされて笑われても構わないよ」
「本当に指を刺して笑ったら怒るくせに」
「キスしていい?」
「駄目に決まっているじゃないですか」
オードリック様は私にはっきりとした愛情表現をするようになった。態度でも言葉でも。
巻き戻り前も今までも、そんなことは無かったから戸惑ったけど安心する。
瞳孔も歪まないし、他の女性には冷たいくらいだし。
「好きなんだからキスがしたいのは当然だろう」
チュッ
唇ではなく頭にキスをされた。
「もう!」
「ハハッ」
コンコンコンコン
「どうしたの?」
「カルフォン卿がいらしております」
「え!?」
エントランスに行くと本当にいた。
「どうしましたか?」
「リヴィア嬢とフレンデェ公爵令息に登場命令書をお持ちしました」
2枚の封筒を渡された。
1枚はオードリック様宛てなので彼に渡した。
“至急 登城して欲しい”
「カルフォン卿、リヴィアを連れて1時間半後に登城する。さすがに屋敷に戻って着替えないと」
カルフォン卿がチラッと私を見た。
「公子と一緒に参ります」
「かしこまりました。それでは1時間半後に」
カルフォン卿が帰ると 急いで支度してフレンデェ家の馬車に乗った。フレンデェ邸に着いてオードリック様が急いで着替えて登城した。
応接間に通されまっていると、入室なさった陛下に続いたのはカシャ公爵だった。
「あ、」
思わず漏れた声に公爵はニッコリと微笑んだ。
オ「国王陛下にご挨拶を申し上げます」
私も続いて挨拶をして、カシャ公爵にも挨拶をした。
どうして?想像していたメンバーじゃないんだけど。
陛「彼は宰相として同席しているんだ。そんなに不思議そうな顔をするな」
私「失礼いたしました」
陛「実は、アルシュのガニアン公爵から書簡が届いて、1ヶ月後に来るそうだ」
私「ガニアン公爵がですか…」
宰「ガニアンは妻の実家にあたる。
今回は当主のアデラール・ガニアン公爵と、次男エルヴェ・ガニアン公子が来国する。王城で受け入れて滞在してもらう。彼らに何かあっては大事になってしまうからな」
私「いらっしゃるのは次男なのですね」
宰「どうも跡継ぎが交代したらしい。何故かは知らないが聞かない方がいいだろう」
私「そうします。
あの、やっぱり私が関係するのですよね?」
宰「その通り。ガニアン公爵家は2つの目的があるようで、一つは宗教絡みだとだけ。もう一つはリヴィア嬢と会うことだとはっきり書いてあった」
私「……」
陛「顔に出過ぎだぞ、リヴィア嬢」
私「嫌な予感がします」
陛「新しい跡継ぎからの求婚かもしれないな」
私「陛下」
オ「だとしたら、婚約者候補のままなんて危険です」
陛「その通り。婚約者候補にはなったけど、恋に落ちてしまったということにしたい」
オ「私はとっくに落ちていますけどね」
陛「オードリックはだいぶ変わったな」
オ「良い方にですよね?」
陛「勿論だ。小さな頃から見てきたが、今が一番良い」
オ「ありがとうございます」
私「小さなオードリック様は天使でしょうね」
陛「絵画から抜け出た天使と言われたものだ」
オードリック様をじっと見て幼い頃の想像をしてみた。
私「確かに天使ですね」
オードリック様の顔が赤くなり、顔を逸らした。
陛下に大声で笑われたオードリック様は帰りの馬車で私を膝の上に乗せた。
「伯爵達を呼び寄せるのか」
「どうでしょう。とにかく近況報告として手紙を出さないとまた叱られますので出します。そうなると来ると思います」
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