【完結】悪魔に祈るとき

ユユ

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失われた力

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【 サラ・セグウェルの視点 】


授業が終わって王都の街に寄ってもらった。
男性店主の店に入り 目を見つめて腕を絡めようとしても さりげなくかわされた。

「お嬢様と誤解が生じると良くありませんので、お触れにならないようお願いいたします」

別の店でも同じで、串肉売りの露店のおじさんに腕を絡めてお強請りしたが、拒絶された。

「貴族のお嬢様ですよね。平民の物売りに物乞いする気ですか?露店はツケもききませんよ。ちゃんと家でお金をもらって出直してください。私達平民からこれ以上搾取するのは止めてください」

「っ!!」

「あの子、串肉をタダで寄越せって言っていたみたいだよ」

「シッ。お貴族様でも裕福とは限らないの!」

「でも、あの制服」

「借金してでも貴族は学園に通うものなのよ」

「だからといって貴族なのにプライドがないんだねぇ」

「ああ、あのお嬢様はセグウェル男爵家に迎えられた庶子だよ。納品に行った時に綺麗なお嬢様が増えたからメイドに聞いたんだ」

「セグウェル家って困っているのかい?」

「継母に虐待されているのよ きっと」

これ以上 聞いていられなくて屋敷に戻った。
だけど、その日の夜、お父様に呼ばれた。

部屋に入るなり男爵夫人に頬を打たれた。

「いつ私が貴女を虐待したのよ!!
目障りだと思っても、待遇は実子と同等に扱って来たわ!寧ろそれ以上よ!
ちゃんとした部屋も与えて服も買い与えて、教師もつけて、メイドに世話もさせて食事だって同じテーブルで同じものを食べさせたじゃない!!」

「私は何も…」

「学園の帰りに露店で串肉を奢れと物乞いをしたそうだな」

「それは誤解で…」

「何人の人間が見ていたと思っているんだ!あんなに人目のある場所でセグウェル家の名を汚しやがって!」

「っ!」

「お前は学園以外 外に出るな!登下校の最中も一歩たりとも馬車から降りるな!いいな!」

「…はい」


部屋に戻り、鏡台の椅子に座って鏡を見た。

「力を失った?」


そのまま孤独な日常が続いた。

家では無視。

「平民だったのだから、自分でできるでしょう?
もうメイドはつけないから、洗濯も掃除も自分でしなさい。外出予定がないんだから時間はたくさんあるでしょう?食事は部屋に運んであげる」

「お母様!」

「私は虐待する継母なんでしょう?」

「私が言ったんじゃないんです!」

「朝も自分で起きて身支度なさい」

そう言って部屋から出て行った。
本当にそのままの待遇になった。


こうなると長くなった髪が邪魔だ。洗うのも大変だけど乾かすのはもっと大変だった。ちゃんと乾かさずに寝ると酷い寝癖で、三つ編みをして前髪を髪留めでとめるしかなかった。

「何 あの髪型」

「ほら、庶子はあんなものなのよ」

学園では基本は無視。だけど敵意を剥き出しにして悪口を言う生徒は少なくない。

教室移動も独り。学食も独り。

そして帰ると洗濯や掃除が待っている。
洗濯物は寝る前に済ませて朝 早起きして干さなきゃいけない。平民の服の洗濯と貴族令嬢のドレスやワンピースなどの洗濯物では全く違う。手間のかかる重労働だった。

疲れ果てて眠るのに何故早起きできるのか。
それは長男サリオンが犯しに来るから。

そんな日々は更に悪化した。
次男で歳下のマークスも加わったからだ。弟の方は夜中に来る。歳下でも男。力が強かった。

遅くまで洗濯して髪をある程度乾かして、やっと寝たのに夜中にマークスがやってきて何度も犯す。そしてまた眠ると早朝にサリオンが犯しにやってくる。
マークスは サリオンとは違って一度では終わらないし、さっさと出せばいいのにそうしない。サリオンは5分未満 長くて10分未満。マークスは1時間以上かかる。

だから授業中に居眠りをしてしまう。疲れているからかイビキをかいたらしい。

「セグウェルさん。出て行きなさい」

ゆすって起こした先生は私に出て行けと言った。

「出て行けって…どこへ行けばいいんですか?」

「家に帰ってもいいですし、外のベンチにいてもかまいません。とにかく、勉強の邪魔です」

「私も勉強を、」

「貴女がしたのは勉強ではなく、クラスメイトの勉強の妨害です。とても不快です。早く出て行ってください。どんどんクラスメイトの時間を奪っていますよ」

クラスの生徒達から白い目で見られ、仕方なく教室を出て外のベンチに座っていたが眠ってしまった。


騒がしくなって目が覚めた。ベンチに横たわっていた。
リボンやタイの色を見ると3年生の下校時間になっていたと知った。

体を起こそうとしたときに話が聞こえた。

「もうあの女は何もできなさそうだな」

「そうですね。どうやら力を失っていそうです」

「生徒全員の魅了も解けたからリヴィアも安心して学園生活を送れるな」

「隊長もかなり心配していましたので、いい報告ができてホッとしました」

「カルフォン卿は先に戻って報告をあげてくれ。私は学園長と話をしてから帰るよ」

「それでは殿下、失礼します」


下校が終わるまで起き上がらずに待った。人の気配がなくなって身を起こした。

「そういうことなの」

私の力のことを知っていたのね。
だから校則を厳しくして接触を防止した。
それにどう調べたのか対策もしていた。
何故か殿下や有力貴族と富豪の息子や教職員や警備兵に力がきかなかった。それは予防手段があったんだわ。
きっと あの葡萄ジュースは私の力を奪うものだったのよ。

“魅了も解けたからリヴィアも安心して学園生活を送れるな”

つまり、リヴィア・ネルハデスのために、私は力を奪われてこんな目に遭っているわけ?

「許せない」

必ず報いを受けさせるわ。
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