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3年生になった。
また私は最下位クラスを選んだ。ルネ様はきっと最終学年は手を抜かないと思ったから真ん中のクラスになるよう調整する必要はないと思った。
予想通り、ルネ様とヘンリー王子殿下はトップクラスに名を連ねた。
「パトリス、アデール。また同じクラスね。よろしく」
「こちらこそ」
「ティエリーもこのクラスに名前があったな」
「おはよう、みんな」
「ティエリー、おはよう」
「またこっち来ちゃったの?」
「寂しかったから?」
「寂しいのは当然だけど、リヴィア先生に教えてもらわずに自力だったからだと思う」
「まあ、ティエリーは忙しいものね」
アングラード伯爵家の手伝いと婚約者の世話で忙しいらしい。
「ルネ様は戻っちゃったね」
「もうタメ口きいちゃ駄目かな」
「お昼は一緒ににって言っていたぞ」
「そうなんだ」
お昼だけなら大丈夫かな。
今日は2、3年生を集めた始業式とクラスでの説明会で終わり。
たいして疲れるはずはないのに もの凄く疲れた。
始業式が終わり、教室へ移動するとき、ヘンリー殿下とコーネリア様が話しかけてきた。
「リヴィア」
「ヘンリー王子殿下にご挨拶を申し上げます」
「学園なんだから“おはよう”にしてくれとお願いしたよね」
「おはようございます、ヘンリー殿下」
「おはよう リヴィア。頼みがある。
パトリスくん、アデールさん、ティエリーくん、ルネも聞いてくれ。明日から1年間、私とコーネリア嬢も君達と昼食を一緒に食べたい。お願い出来ないか」
「7人ですか」
「もう1人、コーネリアの友人を誘おうと思う。試してみてくれないか」
「あの、テーブルは8人だと…」
「それは対策をしてあるから安心してくれ」
4人で話し合った結果、了承した。
そこに会いたくない人が現れた。
「ヘンリー様~ お久しぶりですぅ」
「また君か」
「サラ、頑張って1つクラスが上がったんですよ。お祝いしてくれませんか?」
「良かったな。だが私には関係ない」
「一緒に昼食を食べるって聞こえたんですけどぉ。サラも混ぜて欲しいなぁ」
サラ・セグウェルがティエリーに触れて見つめた。
「……」
「先輩も賛成ですよね?」
「その手を放してくれないか」
「え?」
「残念だけど、このグループの決定権はティエリーにはないの」
アデールが彼女を迷惑そうに見た。
「じゃあ、誰に聞けばいいんですかぁ?」
今度はパトリスの腕に絡み付いて見つめた。
「……」
「先輩、誰に決定権があるんですかぁ?」
「セグウェルさん、我々にかまわないでくれないか」
殿下がそう言っても引き下がろうとしない。
「どうして仲間に入れてくれないんですかぁ?」
「それは誰一人としてこのグループに君の友人がいないからだ」
間に入ったのはルネ様だった。
「あっ、ルネ様だぁ!」
今度はルネ様の腕に絡み付こうとしたが大きく避けた。
「このグループには君のような礼儀知らずを迎える者はいない」
「礼儀知らずじゃないからこうやってお願いしているんじゃないですかぁ」
「君をグループに入れることは絶対にない」
「リヴィア、入れてあげたらどうだ?」
魅了が徐々にかかっているらしいパトリスが私に話しかけてしまった。
「わぁ~女性がボスだったんですねぇ。こわ~い。
後輩を虐めて楽しいですか?リヴィアさん」
「虐めてなんて」
「じゃあ、混ぜてください。ね!」
「サラ・セグウェル。リヴィアに近寄るのも話しかけるのも止めろ」
ルネ様が厳しい口調で言っても彼女は止めない。
「え~何でですかぁ?私の自由ですよぉ?」
「彼女は私の婚約者候補だ。発言に気をつけてもらおう」
殿下が私を背に隠した。
「候補ってことは まだ違うってことじゃないですかぁ。
でも、コーネリアさんだけだと思っていたのに…2人いたんですね」
急に口調が変わり鋭い視線を向けられた。
私は殿下の制服の袖を掴んでしまった。
「リヴィア、大丈夫だからな」
「ふ~ん。そういう感じなんですね」
彼女はそう言いながら 殿下の後ろにいる私に近寄ろうとした。
「あっちに行って!!」
「サラ、何もしていないのに怒鳴られたぁ!酷~い」
「何をしているのです!教室に移動しなさい」
そこにいつまでも講堂に残っていた私達を見つけて先生が注意しに来た。
「リヴィアさん。また会いましょうね」
彼女は私の顔を覗き込んでニタリと笑って去っていった。
「みんなは先に教室へ向かってくれ。
リヴィア、大丈夫だ。もう居ない」
殿下が私の肩に手を置いた。
「すみません、ご迷惑をお掛けしました」
「あの女はまともじゃない。ああも簡単に魅了されるのだな」
「魅了にかかる過程を初めて見ました」
「血を飲ませたいから城に連れて行く。リヴィアも来てくれないか」
「はい」
「そろそろ行こう。教室まで送るよ」
その後、クラスでの説明会が終わると、パトリスが“あの令嬢も入れてやれ”と私に迫ってきた。
「何言ってるの!パトリスったらどうしちゃったの!?」
アデールが怒り出した。
「可哀想じゃないか。後輩虐めは良くない」
「どこが後輩虐めよ」
そこに今回も最下位クラスの担任アンドレ先生(カルフォン卿)が近付いた。
「パトリス、一緒に来てくれないか」
「あ、はい」
「分かりました」
「アデール、私は帰るわね。また明日」
「うん、また明日」
アデールを先に返して私は城に向かった。
殿下も城へ、パトリスは先生と城へ向かった。
到着し、私の血を採って ぶどうジュースに混ぜて飲ませるとパトリスは正常に戻った。
「飲んだな。帰っていいぞ。馬車乗り場まで案内させよう」
「ありがとうございました…あれ?」
不思議そうな顔をしながら帰っていった。
ティエリーはかなり前に摂取している。
乗馬クラスで面倒をみてくれていたから必要だ。
魅了されてしまったら 落馬事故を装えるからだ。
よく考えると、パトリスはすぐかかった。たった1時間後にはサラの味方をしていた。
だとしたら、巻き戻る前のヘンリー殿下はかなり抗ったのではないかと思えてきた。ゆっくり態度が変わっていったし、日数もかかっていたから。
また私は最下位クラスを選んだ。ルネ様はきっと最終学年は手を抜かないと思ったから真ん中のクラスになるよう調整する必要はないと思った。
予想通り、ルネ様とヘンリー王子殿下はトップクラスに名を連ねた。
「パトリス、アデール。また同じクラスね。よろしく」
「こちらこそ」
「ティエリーもこのクラスに名前があったな」
「おはよう、みんな」
「ティエリー、おはよう」
「またこっち来ちゃったの?」
「寂しかったから?」
「寂しいのは当然だけど、リヴィア先生に教えてもらわずに自力だったからだと思う」
「まあ、ティエリーは忙しいものね」
アングラード伯爵家の手伝いと婚約者の世話で忙しいらしい。
「ルネ様は戻っちゃったね」
「もうタメ口きいちゃ駄目かな」
「お昼は一緒ににって言っていたぞ」
「そうなんだ」
お昼だけなら大丈夫かな。
今日は2、3年生を集めた始業式とクラスでの説明会で終わり。
たいして疲れるはずはないのに もの凄く疲れた。
始業式が終わり、教室へ移動するとき、ヘンリー殿下とコーネリア様が話しかけてきた。
「リヴィア」
「ヘンリー王子殿下にご挨拶を申し上げます」
「学園なんだから“おはよう”にしてくれとお願いしたよね」
「おはようございます、ヘンリー殿下」
「おはよう リヴィア。頼みがある。
パトリスくん、アデールさん、ティエリーくん、ルネも聞いてくれ。明日から1年間、私とコーネリア嬢も君達と昼食を一緒に食べたい。お願い出来ないか」
「7人ですか」
「もう1人、コーネリアの友人を誘おうと思う。試してみてくれないか」
「あの、テーブルは8人だと…」
「それは対策をしてあるから安心してくれ」
4人で話し合った結果、了承した。
そこに会いたくない人が現れた。
「ヘンリー様~ お久しぶりですぅ」
「また君か」
「サラ、頑張って1つクラスが上がったんですよ。お祝いしてくれませんか?」
「良かったな。だが私には関係ない」
「一緒に昼食を食べるって聞こえたんですけどぉ。サラも混ぜて欲しいなぁ」
サラ・セグウェルがティエリーに触れて見つめた。
「……」
「先輩も賛成ですよね?」
「その手を放してくれないか」
「え?」
「残念だけど、このグループの決定権はティエリーにはないの」
アデールが彼女を迷惑そうに見た。
「じゃあ、誰に聞けばいいんですかぁ?」
今度はパトリスの腕に絡み付いて見つめた。
「……」
「先輩、誰に決定権があるんですかぁ?」
「セグウェルさん、我々にかまわないでくれないか」
殿下がそう言っても引き下がろうとしない。
「どうして仲間に入れてくれないんですかぁ?」
「それは誰一人としてこのグループに君の友人がいないからだ」
間に入ったのはルネ様だった。
「あっ、ルネ様だぁ!」
今度はルネ様の腕に絡み付こうとしたが大きく避けた。
「このグループには君のような礼儀知らずを迎える者はいない」
「礼儀知らずじゃないからこうやってお願いしているんじゃないですかぁ」
「君をグループに入れることは絶対にない」
「リヴィア、入れてあげたらどうだ?」
魅了が徐々にかかっているらしいパトリスが私に話しかけてしまった。
「わぁ~女性がボスだったんですねぇ。こわ~い。
後輩を虐めて楽しいですか?リヴィアさん」
「虐めてなんて」
「じゃあ、混ぜてください。ね!」
「サラ・セグウェル。リヴィアに近寄るのも話しかけるのも止めろ」
ルネ様が厳しい口調で言っても彼女は止めない。
「え~何でですかぁ?私の自由ですよぉ?」
「彼女は私の婚約者候補だ。発言に気をつけてもらおう」
殿下が私を背に隠した。
「候補ってことは まだ違うってことじゃないですかぁ。
でも、コーネリアさんだけだと思っていたのに…2人いたんですね」
急に口調が変わり鋭い視線を向けられた。
私は殿下の制服の袖を掴んでしまった。
「リヴィア、大丈夫だからな」
「ふ~ん。そういう感じなんですね」
彼女はそう言いながら 殿下の後ろにいる私に近寄ろうとした。
「あっちに行って!!」
「サラ、何もしていないのに怒鳴られたぁ!酷~い」
「何をしているのです!教室に移動しなさい」
そこにいつまでも講堂に残っていた私達を見つけて先生が注意しに来た。
「リヴィアさん。また会いましょうね」
彼女は私の顔を覗き込んでニタリと笑って去っていった。
「みんなは先に教室へ向かってくれ。
リヴィア、大丈夫だ。もう居ない」
殿下が私の肩に手を置いた。
「すみません、ご迷惑をお掛けしました」
「あの女はまともじゃない。ああも簡単に魅了されるのだな」
「魅了にかかる過程を初めて見ました」
「血を飲ませたいから城に連れて行く。リヴィアも来てくれないか」
「はい」
「そろそろ行こう。教室まで送るよ」
その後、クラスでの説明会が終わると、パトリスが“あの令嬢も入れてやれ”と私に迫ってきた。
「何言ってるの!パトリスったらどうしちゃったの!?」
アデールが怒り出した。
「可哀想じゃないか。後輩虐めは良くない」
「どこが後輩虐めよ」
そこに今回も最下位クラスの担任アンドレ先生(カルフォン卿)が近付いた。
「パトリス、一緒に来てくれないか」
「あ、はい」
「分かりました」
「アデール、私は帰るわね。また明日」
「うん、また明日」
アデールを先に返して私は城に向かった。
殿下も城へ、パトリスは先生と城へ向かった。
到着し、私の血を採って ぶどうジュースに混ぜて飲ませるとパトリスは正常に戻った。
「飲んだな。帰っていいぞ。馬車乗り場まで案内させよう」
「ありがとうございました…あれ?」
不思議そうな顔をしながら帰っていった。
ティエリーはかなり前に摂取している。
乗馬クラスで面倒をみてくれていたから必要だ。
魅了されてしまったら 落馬事故を装えるからだ。
よく考えると、パトリスはすぐかかった。たった1時間後にはサラの味方をしていた。
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