【完結】悪魔に祈るとき

ユユ

文字の大きさ
上 下
70 / 100

進級

しおりを挟む
3年生になった。

また私は最下位クラスを選んだ。ルネ様はきっと最終学年は手を抜かないと思ったから真ん中のクラスになるよう調整する必要はないと思った。
予想通り、ルネ様とヘンリー王子殿下はトップクラスに名を連ねた。

「パトリス、アデール。また同じクラスね。よろしく」

「こちらこそ」

「ティエリーもこのクラスに名前があったな」

「おはよう、みんな」

「ティエリー、おはよう」

「またこっち来ちゃったの?」

「寂しかったから?」

「寂しいのは当然だけど、リヴィア先生に教えてもらわずに自力だったからだと思う」

「まあ、ティエリーは忙しいものね」

アングラード伯爵家の手伝いと婚約者ので忙しいらしい。

「ルネ様は戻っちゃったね」

「もうタメ口きいちゃ駄目かな」

「お昼は一緒ににって言っていたぞ」

「そうなんだ」

お昼だけなら大丈夫かな。


今日は2、3年生を集めた始業式とクラスでの説明会で終わり。
たいして疲れるはずはないのに もの凄く疲れた。
始業式が終わり、教室へ移動するとき、ヘンリー殿下とコーネリア様が話しかけてきた。

「リヴィア」

「ヘンリー王子殿下にご挨拶を申し上げます」

「学園なんだから“おはよう”にしてくれとお願いしたよね」

「おはようございます、ヘンリー殿下」

「おはよう リヴィア。頼みがある。
パトリスくん、アデールさん、ティエリーくん、ルネも聞いてくれ。明日から1年間、私とコーネリア嬢も君達と昼食を一緒に食べたい。お願い出来ないか」

「7人ですか」

「もう1人、コーネリアの友人を誘おうと思う。試してみてくれないか」

「あの、テーブルは8人だと…」

「それは対策をしてあるから安心してくれ」

4人で話し合った結果、了承した。
そこに会いたくない人が現れた。

「ヘンリー様~ お久しぶりですぅ」

「また君か」

「サラ、頑張って1つクラスが上がったんですよ。お祝いしてくれませんか?」

「良かったな。だが私には関係ない」

「一緒に昼食を食べるって聞こえたんですけどぉ。サラも混ぜて欲しいなぁ」

サラ・セグウェルがティエリーに触れて見つめた。

「……」

「先輩も賛成ですよね?」

「その手を放してくれないか」

「え?」

「残念だけど、このグループの決定権はティエリーにはないの」

アデールが彼女を迷惑そうに見た。

「じゃあ、誰に聞けばいいんですかぁ?」

今度はパトリスの腕に絡み付いて見つめた。

「……」

「先輩、誰に決定権があるんですかぁ?」

「セグウェルさん、我々にかまわないでくれないか」

殿下がそう言っても引き下がろうとしない。

「どうして仲間に入れてくれないんですかぁ?」

「それは誰一人としてこのグループに君の友人がいないからだ」

間に入ったのはルネ様だった。

「あっ、ルネ様だぁ!」

今度はルネ様の腕に絡み付こうとしたが大きく避けた。

「このグループには君のような礼儀知らずを迎える者はいない」

「礼儀知らずじゃないからこうやってお願いしているんじゃないですかぁ」

「君をグループに入れることは絶対にない」

「リヴィア、入れてあげたらどうだ?」

魅了が徐々にかかっているらしいパトリスが私に話しかけてしまった。

「わぁ~女性がボスだったんですねぇ。こわ~い。
後輩を虐めて楽しいですか?リヴィアさん」

「虐めてなんて」

「じゃあ、混ぜてください。ね!」

「サラ・セグウェル。リヴィアに近寄るのも話しかけるのも止めろ」

ルネ様が厳しい口調で言っても彼女は止めない。

「え~何でですかぁ?私の自由ですよぉ?」

「彼女は私の婚約者候補だ。発言に気をつけてもらおう」

殿下が私を背に隠した。

「候補ってことは まだ違うってことじゃないですかぁ。

でも、コーネリアさんだけだと思っていたのに…2人いたんですね」

急に口調が変わり鋭い視線を向けられた。
私は殿下の制服の袖を掴んでしまった。

「リヴィア、大丈夫だからな」

「ふ~ん。そういう感じなんですね」

彼女はそう言いながら 殿下の後ろにいる私に近寄ろうとした。

「あっちに行って!!」

「サラ、何もしていないのに怒鳴られたぁ!酷~い」

「何をしているのです!教室に移動しなさい」

そこにいつまでも講堂に残っていた私達を見つけて先生が注意しに来た。

「リヴィアさん。また会いましょうね」

彼女は私の顔を覗き込んでニタリと笑って去っていった。

「みんなは先に教室へ向かってくれ。
リヴィア、大丈夫だ。もう居ない」

殿下が私の肩に手を置いた。

「すみません、ご迷惑をお掛けしました」

「あの女はまともじゃない。ああも簡単に魅了されるのだな」

「魅了にかかる過程を初めて見ました」

「血を飲ませたいから城に連れて行く。リヴィアも来てくれないか」

「はい」

「そろそろ行こう。教室まで送るよ」



その後、クラスでの説明会が終わると、パトリスが“あの令嬢も入れてやれ”と私に迫ってきた。

「何言ってるの!パトリスったらどうしちゃったの!?」

アデールが怒り出した。

「可哀想じゃないか。後輩虐めは良くない」

「どこが後輩虐めよ」


そこに今回も最下位クラスの担任アンドレ先生(カルフォン卿)が近付いた。

「パトリス、一緒に来てくれないか」

「あ、はい」

「分かりました」

「アデール、私は帰るわね。また明日」

「うん、また明日」

アデールを先に返して私は城に向かった。
殿下も城へ、パトリスは先生と城へ向かった。

到着し、私の血を採って ぶどうジュースに混ぜて飲ませるとパトリスは正常に戻った。

「飲んだな。帰っていいぞ。馬車乗り場まで案内させよう」

「ありがとうございました…あれ?」

不思議そうな顔をしながら帰っていった。


ティエリーはかなり前に摂取している。
乗馬クラスで面倒をみてくれていたから必要だ。
魅了されてしまったら 落馬事故を装えるからだ。


よく考えると、パトリスはすぐかかった。たった1時間後にはサラの味方をしていた。
だとしたら、巻き戻る前のヘンリー殿下はかなり抗ったのではないかと思えてきた。ゆっくり態度が変わっていったし、日数もかかっていたから。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

結婚しましたが、愛されていません

うみか
恋愛
愛する人との結婚は最悪な結末を迎えた。 彼は私を毎日のように侮辱し、挙句の果てには不倫をして離婚を叫ぶ。 為す術なく離婚に応じた私だが、その後国王に呼び出され……

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

婚約破棄されるのらしいで、今まで黙っていた事を伝えてあげたら、婚約破棄をやめたいと言われました

新野乃花(大舟)
恋愛
ロベルト第一王子は、婚約者であるルミアに対して婚約破棄を告げた。しかしその時、ルミアはそれまで黙っていた事をロベルトに告げることとした。それを聞いたロベルトは慌てふためき、婚約破棄をやめたいと言い始めるのだったが…。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...