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南方のフルーツをのせたタルトはとてもおいしかった。
「濃厚で美味しかったです」
「良かった」
「私も今回のタルトは初めてでしたわ」
「コーネリア様はいつもこのような貴重なデザートを?羨ましいです」
「そんなことはありませんわ。今日は特別です。いつもは国内産のフルーツを使っているはずです」
チラッと公子を見ると、少し目を泳がせた。
「知り合いに頼んだんだ」
「珍しいフルーツを食べる機会を与えてくださったのですね。ありがとうございます」
「来週の日曜なのだが、買い物に付き合ってもらいたいんだ。その後ディナーでもどうだろう」
「来週は先約がありまして」
「あの仕事か?」
「友人とディナーの約束をしております」
「再来週は?」
「再来週はお茶会に行かなくてはいけなくて」
「来週は誰?」
「カイ…アングラード伯爵です」
「…アングラード」
公子の目が鋭くなった。
「2人ではありませんよ」
「再来週は?」
「カシャ公爵家のお茶会です」
「カシャ公爵家…」
「リヴィア様はカシャ家との縁談を断ったと伺いましたが、夫人とも交流があったのですね」
「流石に毎回お断りするのは気が引けますので今回は出席させていただくことにしたのです」
「子息は出席するのか」
「さあ、分かりません」
「カシャ家は諦めていないのだな」
「……」
「兄様」
「アングラード伯爵とは…」
その後は公子からの質問攻めで、時々困った顔をしたコーネリア様が“兄様”“踏み込み過ぎです”“リヴィア様の自由です”と助け舟を出してくれた。
そして3週間後の約束をさせられ、送り届けてもらった。
「お帰りなさいませ」
「疲れたわ」
「食事はお部屋にお運びしますか?」
「大丈夫よ」
翌週の土日は国王陛下の執務室の職員と庭師から瞳孔が歪む者を探し、日曜の夕方、アングラード伯爵邸にお邪魔した。
「リヴィア、来てくれて嬉しいよ」
「お友達ですからね」
ティエリーも加わり夕食を食べながらそれぞれ近況報告をした。
ティエリーは婚約者に振り回されているらしく、嫌そうな顔をしていた。
カイルセン様は求人を出して人選中。
私はコーネリア様達と交流したことを話した。
カ「え? あのフレンデェ公子と!?」
私「コーネリア様と公子です」
テ「また凄い高位貴族と交流を始めたね」
私「私も緊張したわ」
カ「そういえば公子はあの時 どうしてリヴィアとダンスを? あの時は既に交流があったのか?」
私「無いです。よく分からないまま踊ることになりました」
カ「ダンスがきっかけか…。綺麗な顔しているからな。公子を相手にしているならリヴィアが冷たくなるわけだ」
私「何を言っているのですか。公子は素直で素敵な方でしたけど、フレンデェ公爵家の次期当主ですよ?ネルハデス家なんて相手にされませんよ」
テ「王子妃の打診が来るような家門なのに 何言っているのさ」
カ「そうだぞ。油断するなよ。
公子は毎週リヴィアと会うつもりだぞ」
私「まさか。お忙しい方ですよ?」
カ「予定が無かったら会っていたんじゃないか?」
テ「リヴィアは本当に心配だよ」
口煩い親戚のような2人に少し嬉しくなった。
カ「ほら、ニヤニヤしてる」
テ「話を聞いていた?聞いてないでしょう」
私「聞いてるわよ」
次の週の土曜1日と日曜の午前中は王都を取り締まる兵士達と会ってみたら、その数が凄かった。
「こんなにクビにするのか」
モロー隊長が溜息を吐いた。
「新たに採用しても白とは限りませんからね」
カルフォン卿が名簿を見ながら考え込んでいる。
「ん~困ったな」
「いっそ、彼女を面接官にしたら早いんですけどね」
「それだ。さすがだカルフォン卿」
「駄目です!私は学生ですよ」
「じゃあ 卒業したら直ぐに特務部に勤務するのはどうだ?」
「卒業したとしても若すぎます。卒業したての女に採用の可否を決められたら、何も無かった人でも悪意を持ちますよ」
今日 調査リストに載ってしまった兵士達の調査が終わってから相談すると言われてしまった。
翌週、カシャ公爵夫人のお茶会に出席した。
「お久しぶりですわね、リヴィア様」
「お久しぶりでございます、公爵夫人」
「今日はカシャ家と親しい方々にお越し頂きましたのよ」
つまり貴族派の集まりだ。
カシャ公爵は宰相職にあるが貴族派の筆頭。公爵は公私の区別をつけ職務に忠実な方だった。
あれ?
巻き戻り前は、いつから公爵である宰相閣下と会うことが無くなったのだろう。婚約破棄の前から会っていなかったような。
その後幽閉されたから分からないけど…でも、宰相閣下が黙っていたとは思えない。魅了されていたなら殿下の側に居たはず。その方が、陛下が毒を盛られただろう時にこそ宰相閣下の存在が貴族を纏めただろうから。
魅了にかからない者達もしくは未だ魅了をかけられていなかった者達はあの状況に異議を唱えたはず。
もしかして、公爵閣下も監禁されたか陛下のように……
「濃厚で美味しかったです」
「良かった」
「私も今回のタルトは初めてでしたわ」
「コーネリア様はいつもこのような貴重なデザートを?羨ましいです」
「そんなことはありませんわ。今日は特別です。いつもは国内産のフルーツを使っているはずです」
チラッと公子を見ると、少し目を泳がせた。
「知り合いに頼んだんだ」
「珍しいフルーツを食べる機会を与えてくださったのですね。ありがとうございます」
「来週の日曜なのだが、買い物に付き合ってもらいたいんだ。その後ディナーでもどうだろう」
「来週は先約がありまして」
「あの仕事か?」
「友人とディナーの約束をしております」
「再来週は?」
「再来週はお茶会に行かなくてはいけなくて」
「来週は誰?」
「カイ…アングラード伯爵です」
「…アングラード」
公子の目が鋭くなった。
「2人ではありませんよ」
「再来週は?」
「カシャ公爵家のお茶会です」
「カシャ公爵家…」
「リヴィア様はカシャ家との縁談を断ったと伺いましたが、夫人とも交流があったのですね」
「流石に毎回お断りするのは気が引けますので今回は出席させていただくことにしたのです」
「子息は出席するのか」
「さあ、分かりません」
「カシャ家は諦めていないのだな」
「……」
「兄様」
「アングラード伯爵とは…」
その後は公子からの質問攻めで、時々困った顔をしたコーネリア様が“兄様”“踏み込み過ぎです”“リヴィア様の自由です”と助け舟を出してくれた。
そして3週間後の約束をさせられ、送り届けてもらった。
「お帰りなさいませ」
「疲れたわ」
「食事はお部屋にお運びしますか?」
「大丈夫よ」
翌週の土日は国王陛下の執務室の職員と庭師から瞳孔が歪む者を探し、日曜の夕方、アングラード伯爵邸にお邪魔した。
「リヴィア、来てくれて嬉しいよ」
「お友達ですからね」
ティエリーも加わり夕食を食べながらそれぞれ近況報告をした。
ティエリーは婚約者に振り回されているらしく、嫌そうな顔をしていた。
カイルセン様は求人を出して人選中。
私はコーネリア様達と交流したことを話した。
カ「え? あのフレンデェ公子と!?」
私「コーネリア様と公子です」
テ「また凄い高位貴族と交流を始めたね」
私「私も緊張したわ」
カ「そういえば公子はあの時 どうしてリヴィアとダンスを? あの時は既に交流があったのか?」
私「無いです。よく分からないまま踊ることになりました」
カ「ダンスがきっかけか…。綺麗な顔しているからな。公子を相手にしているならリヴィアが冷たくなるわけだ」
私「何を言っているのですか。公子は素直で素敵な方でしたけど、フレンデェ公爵家の次期当主ですよ?ネルハデス家なんて相手にされませんよ」
テ「王子妃の打診が来るような家門なのに 何言っているのさ」
カ「そうだぞ。油断するなよ。
公子は毎週リヴィアと会うつもりだぞ」
私「まさか。お忙しい方ですよ?」
カ「予定が無かったら会っていたんじゃないか?」
テ「リヴィアは本当に心配だよ」
口煩い親戚のような2人に少し嬉しくなった。
カ「ほら、ニヤニヤしてる」
テ「話を聞いていた?聞いてないでしょう」
私「聞いてるわよ」
次の週の土曜1日と日曜の午前中は王都を取り締まる兵士達と会ってみたら、その数が凄かった。
「こんなにクビにするのか」
モロー隊長が溜息を吐いた。
「新たに採用しても白とは限りませんからね」
カルフォン卿が名簿を見ながら考え込んでいる。
「ん~困ったな」
「いっそ、彼女を面接官にしたら早いんですけどね」
「それだ。さすがだカルフォン卿」
「駄目です!私は学生ですよ」
「じゃあ 卒業したら直ぐに特務部に勤務するのはどうだ?」
「卒業したとしても若すぎます。卒業したての女に採用の可否を決められたら、何も無かった人でも悪意を持ちますよ」
今日 調査リストに載ってしまった兵士達の調査が終わってから相談すると言われてしまった。
翌週、カシャ公爵夫人のお茶会に出席した。
「お久しぶりですわね、リヴィア様」
「お久しぶりでございます、公爵夫人」
「今日はカシャ家と親しい方々にお越し頂きましたのよ」
つまり貴族派の集まりだ。
カシャ公爵は宰相職にあるが貴族派の筆頭。公爵は公私の区別をつけ職務に忠実な方だった。
あれ?
巻き戻り前は、いつから公爵である宰相閣下と会うことが無くなったのだろう。婚約破棄の前から会っていなかったような。
その後幽閉されたから分からないけど…でも、宰相閣下が黙っていたとは思えない。魅了されていたなら殿下の側に居たはず。その方が、陛下が毒を盛られただろう時にこそ宰相閣下の存在が貴族を纏めただろうから。
魅了にかからない者達もしくは未だ魅了をかけられていなかった者達はあの状況に異議を唱えたはず。
もしかして、公爵閣下も監禁されたか陛下のように……
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