【完結】悪魔に祈るとき

ユユ

文字の大きさ
上 下
60 / 100

コーネリア 家族

しおりを挟む
【 コーネリアの視点 】


カチャカチャ

私「リヴィア様、お口に合いますか」  

リ「とても美味しいです」

兄「リヴィア、コレ好きだろう」

兄様はそう言うと、リヴィア様のお皿を取り上げて、自身分の料理を半分リヴィア様のお皿に移し、カットした。逆にリヴィア様のお皿から付け合わせの1つを取り除き、自身の皿に移した。

全「……」

兄「こっちは苦手だろうから私に任せなさい」

皿を戻し、リヴィア様が食べ始めると 兄様は機嫌良く食事を再開した。

本来のセッティングを兄様が変えて、自分の隣にリヴィア様を座らせた。しかも椅子を移動させて距離まで縮めた。

…いいのよ。リヴィア様。もう兄様のことを“パパ”と呼んでも。きっと目だけ唖然としているお父様もお母様も弟も納得なさるわ。

更に驚いたのは、自分の使っていたカトラリーで切り分けて渡したこと。兄様は当然のように振る舞うし、リヴィア様はちょっと戸惑っていたけど、受け入れた。

リヴィア様と会ってからの兄様は別人のようだ。

母「リヴィア様はお魚がお好きなの?」

リ「はい。流石フレンデェ公爵家、新鮮なお魚を使っておられて とても美味しいです」

母「それは良かったわ」

兄「貝類も大丈夫なのか?」

リ「はい。大好きです」

兄「フレンデェの領地は海を持っている。綺麗だし魚も貝もよく獲れる。次の長期休暇はフレンデェ領に行こう」

私「兄様!?」

父「オードリック。リヴィア嬢は殿下の婚約者候補だぞ」

兄「妃はコーネリアですから安心してください」

父「だからといって、」

兄「候補が他領へ観光に行ってはならないなんて決まりは無いと思います。そうだろう?コーネリア」

私「そうですけど」

リ「公子もお忙しいでしょうから私は、」

兄「オードリックと呼べと言っただろう。
余計なことを考えずに旅支度をしておけばいい。
来週日程を考えよう。途中、泊まりたい宿があれば良い部屋をおさえてやるからな」

私「リヴィア様はお仕事もありますから」

兄「長期休暇の全部とは言っていないだろう。
リヴィア、勉強は領地で教えてやるから安心しろ」

私「リヴィア様は優秀ですから」

母「確かクラスは…」

兄「わざと下のクラスになるように調したんだよな?来年もそうしなさい。カシャ公子のこともあるから、下から二番目のクラスを狙ったらどうだ?」

父「何故その様なことを?」

兄「王子殿下を避けるためですよ」

母「まあ、では本当にその気がないのね?」

リ「は、はい」

父「なのに残ってしまったのか。それは可哀想だな」

兄「そうですよ 父上。王家は何を考えているのだか。
リヴィア、今夜は泊まっていくか?」

リ「ま、まさか。帰りますっ」

兄「遠慮しなくていいんだぞ」


リヴィア様の滞在中、兄様はずっとリヴィア様の世話をして、髪や頬に触れたりしていた。
顔付きは優しく瞳には彼女への好意が滲み出ていた。

結局 帰りも兄様が馬車に同乗して屋敷に送って行った。

残された私達4人は緊急会議を開いた。

弟「びっくりしました。僕の兄様は頭を打ったのですか」

私「ある意味そうね」

母「どんな令嬢にも見向きもせず冷たくしていたのに。よりにもよって王子妃候補に想いを寄せるだなんて」

父「コーネリア。本当にリヴィア嬢はライバルではないのだな?」

私「王家との約束で詳しくはお伝えできませんが、今の段階ではその通りです。ただ、王子殿下のお気持ちはリヴィア様にあると思います」

父「つまり、殿下の片思いだが、リヴィア嬢は同じクラスになるのを避けるほど嫌がっているということだな?」

私「嫌いというわけではないと思います。ですが避けているのは間違いありません」

母「デビューの時の装飾品からすると殿下のお気持ちは間違いないようね。だけど陛下はリヴィア様を王子妃には考えていないのね。
フレンデェ家の娘を無駄に競争させる訳がないもの」

父「内々にネルハデス伯爵に申し込むか」

私「卒業まで、それは難しいようです。
王家が絡んでいますので、カシャ公爵家にもアルシュのガニアン公爵家にも お断りをしたと聞きました」

父「アルシュのガニアン!?」

私「断られても、交流をしてから断って欲しいと招待されたそうです」

父「なんでまた…普通は断れないぞ」

私「それがネルハデス伯爵夫妻とリヴィア様の関係ですわ。リヴィア様が望まぬ縁談は受けないそうです」

母「カシャ公爵家もだなんて…確かにリヴィア様は作法も王族の様に素晴らしかったわ。あそこまで仕上げるのに誰を雇ったのか聞きたいくらいよ。
彼女が本気で王子妃を狙っていたら危なかったわ」

父「だからこそオードリックがその気なら婚約を進めたいのだがな」

母「そうね。一番はリヴィア様の気持ちをオードリックが手に入れられると良いのだけど」

父「全てが初めてのことだろうからな。どうなるのか分からないが、思いが通じ合ったら膝の上に乗せてティータイムを過ごしそうだな」

母「ふふっ」

お父様とお母様と こんな砕けた会話が出来るなんて思ってもいなかった。
リヴィア様がフレンデェに暖かくて柔らかな風を簡単に吹き込んだのね。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

幼馴染を溺愛する旦那様の前から、消えてあげることにします

新野乃花(大舟)
恋愛
「旦那様、幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?

秋月一花
恋愛
 本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。  ……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。  彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?  もう我慢の限界というものです。 「離婚してください」 「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」  白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?  あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。 ※カクヨム様にも投稿しています。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

処理中です...