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もしかしてと思うものは手に取って見ているけど、魔女の記述がない。この書庫では今日の2、3時間では終わらなだろう。
だから、ティータイム前にアルシュの本を探してもらい読んでみた。
信仰の国で、神のお告げがあればそれに従うらしい。
元は一つの宗教だけど、解釈の違いで分裂しているようだ。
聖女と呼ばれる人が数十年から数百年に一度現れて、だいたい同じように魔女も現れる。
それが本当なら魔女モドキがいるのだから聖女モドキがいたりする?
王家……公爵家……ガニアン、あった。
詳しくは載ってないわね。
「公子。ガニアン公爵家ってご存知ですか」
「ガニアン? アルシュでは一番権力を持っているんじゃないか? その程度しか分からないが。何が知りたいんだ」
「ガニアン公子が求婚してきた理由です」
「は?」
「面識もありませんし、行ったこともありませんのに、領地の父の元へ聖騎士を寄越したらしいのです。 断わったようですが、遊びに来いと……。何も知らずに断るなって意味らしいです」
「何が目的なんだ?」
「ガニアン家はカシャ公爵夫人の実家なのです。
ご子息が求婚しているのにライバルを許すなんて」
「リヴィアは何か隠してるのか」
「何を?」
「私が聞いているんだ」
「隠してるなら言うわけないと思いませんか」
「リヴィア、真面目に聞いているんだ!」
「兄様?」
「コーネリア」
図書室の入り口にコーネリア様が立っていた。
「リヴィア様に声を荒げるなんて」
「…リヴィア。宗教は人々の救いでもあるが、時には戦争まで起こす恐ろしい面も待っている。
断ったからと軽い気持ちでいては駄目だ」
「兄様。お茶の時間ですわ。一旦忘れて気分を変えましょう。リヴィア様、ご案内します」
「コーネリア。今日は三階の私の部屋だ」
「兄様の部屋!?」
「最上階の一番景色のいいバルコニーで茶を飲みたいだろうからな」
「え?、あ、何も公子の私室じゃなくても」
「不満か?」
「…いえ」
三階に行き ドアを開けると、中は広くて豪華で綺麗に片付いた部屋だった。
「今日のために片付けを?」
「いつも通りだが?」
私なら綺麗過ぎて気が休まらないかも。
「公子」
ポケットからハンカチを取り出して、ぐちゃぐちゃにすると足元に落とした。
「リヴィア?」
「このハンカチは1週間、このままでお願いします」
「え!?」
「動かしてはいけませんよ」
「何の意味があるんだ」
「日頃が綺麗なら、違うことをしましょう」
「分かった。リヴィアは責任を持って来週、ハンカチが維持されているか確認しに来てくれ。迎えをやる」
「そこまでは、」
「リヴィアが始めたことなのだから付き合え。さあ、バルコニーへ出よう」
窓を開けると綺麗にセッティングしてあった。
メイドが給仕を始める。
「待て、何だこれは」
「私がお願いしました」
「…なんでマグカップなんだ」
「それは持ちやすいようにです。公爵家のカップは高そうなので、マグカップをお借りしました。割ってしまったら私が弁償します」
「ネルハデス様、ご希望に叶いましたでしょうか」
「満足だわ。ありがとう」
「では、失礼いたします」
「カトラリーが、」
「公子。今日のケーキは手掴みで食べます」
「……え?」
「仕方ないですね」
小さくカットしてもらったケーキを摘んで公子の口元に持っていった。
「はい、どうぞ」
「!?」
「早く食べてください」
「リヴィア むぐっ」
「さあ、コーネリア様も手掴みでどうぞ」
「どういう趣旨なのかしら」
「してはならないと言われていることをやってみようという話になりました。是非コーネリア様もお付き合い願います」
「でも…」
「これでは兄君だけの単独犯になってしまいますわ」
「コーネリア。共犯になってくれ」
「…ふふっ、変な兄様」
私達は手掴みでケーキを堪能した。
「リヴィア、これも食べろ」
お返しのように私の口元に持って来たので食べたら少し指を舐めてしまった。
「ちょっと、兄様、大丈夫ですか!?」
「っ! 何でもない」
「だって、顔が…首まで真っ赤ではありませんか」
「ちょっと暑いんだ」
「ぷっ」
「リヴィア?」
「ふふふふふっ」
「お前の指も貸せ!」
「嫌ですよ!」
「私の口は汚いというのか!」
「違います!」
「じゃあ指を貸せ!」
「お兄様!? 何ですか 子供みたいに」
「してはならないと言われていることだ!」
「本当にご両親に言われましたか?聞きますよ?
あっ!」
私の手首を掴むと公子は親指を口に含み舐めた。
「兄様!?」
「やだっ、公子!」
「嫌だと言うな」
そう言いながら舐めた親指をナプキンで拭いてくれた。
「兄様が壊れた…」
「何で赤くならないんだ。慣れているのか?誰かにさせているのか?」
「…させていません」
本当は巻き戻り前にルネ様がしていた。時々私の指を口に含み舐めていた。
「リヴィア、今後はさせるなよ」
「公子?」
「わ、分かったわ!手が汚れて滑りやすくなるからティーカップじゃなくてマグカップにしたのですね?リヴィア様」
「はい。コーネリア様」
助け舟をありがとう。
「来週いらっしゃるなら、また悪いことをしましょう。でも、都合がつくのですか?」
「土曜日に登城しますから、次の日曜日はお休みしますわ」
「何か予定があるなら再来週にしよう」
「卒業まで予定が入っています。ですが別の用事を入れることもできるのです」
「何の予定だ?」
「契約上、お答えできません」
「契約?」
だから、ティータイム前にアルシュの本を探してもらい読んでみた。
信仰の国で、神のお告げがあればそれに従うらしい。
元は一つの宗教だけど、解釈の違いで分裂しているようだ。
聖女と呼ばれる人が数十年から数百年に一度現れて、だいたい同じように魔女も現れる。
それが本当なら魔女モドキがいるのだから聖女モドキがいたりする?
王家……公爵家……ガニアン、あった。
詳しくは載ってないわね。
「公子。ガニアン公爵家ってご存知ですか」
「ガニアン? アルシュでは一番権力を持っているんじゃないか? その程度しか分からないが。何が知りたいんだ」
「ガニアン公子が求婚してきた理由です」
「は?」
「面識もありませんし、行ったこともありませんのに、領地の父の元へ聖騎士を寄越したらしいのです。 断わったようですが、遊びに来いと……。何も知らずに断るなって意味らしいです」
「何が目的なんだ?」
「ガニアン家はカシャ公爵夫人の実家なのです。
ご子息が求婚しているのにライバルを許すなんて」
「リヴィアは何か隠してるのか」
「何を?」
「私が聞いているんだ」
「隠してるなら言うわけないと思いませんか」
「リヴィア、真面目に聞いているんだ!」
「兄様?」
「コーネリア」
図書室の入り口にコーネリア様が立っていた。
「リヴィア様に声を荒げるなんて」
「…リヴィア。宗教は人々の救いでもあるが、時には戦争まで起こす恐ろしい面も待っている。
断ったからと軽い気持ちでいては駄目だ」
「兄様。お茶の時間ですわ。一旦忘れて気分を変えましょう。リヴィア様、ご案内します」
「コーネリア。今日は三階の私の部屋だ」
「兄様の部屋!?」
「最上階の一番景色のいいバルコニーで茶を飲みたいだろうからな」
「え?、あ、何も公子の私室じゃなくても」
「不満か?」
「…いえ」
三階に行き ドアを開けると、中は広くて豪華で綺麗に片付いた部屋だった。
「今日のために片付けを?」
「いつも通りだが?」
私なら綺麗過ぎて気が休まらないかも。
「公子」
ポケットからハンカチを取り出して、ぐちゃぐちゃにすると足元に落とした。
「リヴィア?」
「このハンカチは1週間、このままでお願いします」
「え!?」
「動かしてはいけませんよ」
「何の意味があるんだ」
「日頃が綺麗なら、違うことをしましょう」
「分かった。リヴィアは責任を持って来週、ハンカチが維持されているか確認しに来てくれ。迎えをやる」
「そこまでは、」
「リヴィアが始めたことなのだから付き合え。さあ、バルコニーへ出よう」
窓を開けると綺麗にセッティングしてあった。
メイドが給仕を始める。
「待て、何だこれは」
「私がお願いしました」
「…なんでマグカップなんだ」
「それは持ちやすいようにです。公爵家のカップは高そうなので、マグカップをお借りしました。割ってしまったら私が弁償します」
「ネルハデス様、ご希望に叶いましたでしょうか」
「満足だわ。ありがとう」
「では、失礼いたします」
「カトラリーが、」
「公子。今日のケーキは手掴みで食べます」
「……え?」
「仕方ないですね」
小さくカットしてもらったケーキを摘んで公子の口元に持っていった。
「はい、どうぞ」
「!?」
「早く食べてください」
「リヴィア むぐっ」
「さあ、コーネリア様も手掴みでどうぞ」
「どういう趣旨なのかしら」
「してはならないと言われていることをやってみようという話になりました。是非コーネリア様もお付き合い願います」
「でも…」
「これでは兄君だけの単独犯になってしまいますわ」
「コーネリア。共犯になってくれ」
「…ふふっ、変な兄様」
私達は手掴みでケーキを堪能した。
「リヴィア、これも食べろ」
お返しのように私の口元に持って来たので食べたら少し指を舐めてしまった。
「ちょっと、兄様、大丈夫ですか!?」
「っ! 何でもない」
「だって、顔が…首まで真っ赤ではありませんか」
「ちょっと暑いんだ」
「ぷっ」
「リヴィア?」
「ふふふふふっ」
「お前の指も貸せ!」
「嫌ですよ!」
「私の口は汚いというのか!」
「違います!」
「じゃあ指を貸せ!」
「お兄様!? 何ですか 子供みたいに」
「してはならないと言われていることだ!」
「本当にご両親に言われましたか?聞きますよ?
あっ!」
私の手首を掴むと公子は親指を口に含み舐めた。
「兄様!?」
「やだっ、公子!」
「嫌だと言うな」
そう言いながら舐めた親指をナプキンで拭いてくれた。
「兄様が壊れた…」
「何で赤くならないんだ。慣れているのか?誰かにさせているのか?」
「…させていません」
本当は巻き戻り前にルネ様がしていた。時々私の指を口に含み舐めていた。
「リヴィア、今後はさせるなよ」
「公子?」
「わ、分かったわ!手が汚れて滑りやすくなるからティーカップじゃなくてマグカップにしたのですね?リヴィア様」
「はい。コーネリア様」
助け舟をありがとう。
「来週いらっしゃるなら、また悪いことをしましょう。でも、都合がつくのですか?」
「土曜日に登城しますから、次の日曜日はお休みしますわ」
「何か予定があるなら再来週にしよう」
「卒業まで予定が入っています。ですが別の用事を入れることもできるのです」
「何の予定だ?」
「契約上、お答えできません」
「契約?」
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