【完結】悪魔に祈るとき

ユユ

文字の大きさ
上 下
58 / 100

資料探し

しおりを挟む
もしかしてと思うものは手に取って見ているけど、魔女の記述がない。この書庫では今日の2、3時間では終わらなだろう。

だから、ティータイム前にアルシュの本を探してもらい読んでみた。
信仰の国で、神のお告げがあればそれに従うらしい。

元は一つの宗教だけど、解釈の違いで分裂しているようだ。
聖女と呼ばれる人が数十年から数百年に一度現れて、だいたい同じように魔女も現れる。

それが本当なら魔女モドキがいるのだから聖女モドキがいたりする?

王家……公爵家……ガニアン、あった。

詳しくは載ってないわね。

「公子。ガニアン公爵家ってご存知ですか」

「ガニアン? アルシュでは一番権力を持っているんじゃないか? その程度しか分からないが。何が知りたいんだ」

「ガニアン公子が求婚してきた理由です」

「は?」

「面識もありませんし、行ったこともありませんのに、領地の父の元へ聖騎士を寄越したらしいのです。 断わったようですが、遊びに来いと……。何も知らずに断るなって意味らしいです」

「何が目的なんだ?」

「ガニアン家はカシャ公爵夫人の実家なのです。
ご子息が求婚しているのにライバルを許すなんて」

「リヴィアは何か隠してるのか」

「何を?」

「私が聞いているんだ」

「隠してるなら言うわけないと思いませんか」

「リヴィア、真面目に聞いているんだ!」


「兄様?」

「コーネリア」

図書室の入り口にコーネリア様が立っていた。

「リヴィア様に声を荒げるなんて」

「…リヴィア。宗教は人々の救いでもあるが、時には戦争まで起こす恐ろしい面も待っている。
断ったからと軽い気持ちでいては駄目だ」

「兄様。お茶の時間ですわ。一旦忘れて気分を変えましょう。リヴィア様、ご案内します」

「コーネリア。今日は三階の私の部屋だ」

「兄様の部屋!?」

「最上階の一番景色のいいバルコニーで茶を飲みたいだろうからな」

「え?、あ、何も公子の私室じゃなくても」

「不満か?」

「…いえ」




三階に行き ドアを開けると、中は広くて豪華で綺麗に片付いた部屋だった。

「今日のために片付けを?」

「いつも通りだが?」

私なら綺麗過ぎて気が休まらないかも。

「公子」

ポケットからハンカチを取り出して、ぐちゃぐちゃにすると足元に落とした。

「リヴィア?」

「このハンカチは1週間、このままでお願いします」

「え!?」

「動かしてはいけませんよ」

「何の意味があるんだ」

「日頃が綺麗なら、違うことをしましょう」

「分かった。リヴィアは責任を持って来週、ハンカチが維持されているか確認しに来てくれ。迎えをやる」

「そこまでは、」

「リヴィアが始めたことなのだから付き合え。さあ、バルコニーへ出よう」



窓を開けると綺麗にセッティングしてあった。
メイドが給仕を始める。

「待て、何だこれは」

「私がお願いしました」

「…なんでマグカップなんだ」

「それは持ちやすいようにです。公爵家のカップは高そうなので、マグカップをお借りしました。割ってしまったら私が弁償します」

「ネルハデス様、ご希望に叶いましたでしょうか」

「満足だわ。ありがとう」

「では、失礼いたします」

「カトラリーが、」

「公子。今日のケーキは手掴みで食べます」

「……え?」

「仕方ないですね」

小さくカットしてもらったケーキを摘んで公子の口元に持っていった。

「はい、どうぞ」

「!?」

「早く食べてください」

「リヴィア むぐっ」

「さあ、コーネリア様も手掴みでどうぞ」

「どういう趣旨なのかしら」

「してはならないと言われていることをやってみようという話になりました。是非コーネリア様もお付き合い願います」

「でも…」

「これでは兄君だけの単独犯になってしまいますわ」

「コーネリア。共犯になってくれ」

「…ふふっ、変な兄様」

私達は手掴みでケーキを堪能した。

「リヴィア、これも食べろ」

お返しのように私の口元に持って来たので食べたら少し指を舐めてしまった。

「ちょっと、兄様、大丈夫ですか!?」

「っ! 何でもない」

「だって、顔が…首まで真っ赤ではありませんか」

「ちょっと暑いんだ」

「ぷっ」

「リヴィア?」

「ふふふふふっ」

「お前の指も貸せ!」

「嫌ですよ!」

「私の口は汚いというのか!」

「違います!」

「じゃあ指を貸せ!」

「お兄様!? 何ですか 子供みたいに」

「してはならないと言われていることだ!」

「本当にご両親に言われましたか?聞きますよ? 
あっ!」

私の手首を掴むと公子は親指を口に含み舐めた。

「兄様!?」

「やだっ、公子!」

「嫌だと言うな」

そう言いながら舐めた親指をナプキンで拭いてくれた。

「兄様が壊れた…」

「何で赤くならないんだ。慣れているのか?誰かにさせているのか?」

「…させていません」

本当は巻き戻り前にルネ様がしていた。時々私の指を口に含み舐めていた。

「リヴィア、今後はさせるなよ」

「公子?」

「わ、分かったわ!手が汚れて滑りやすくなるからティーカップじゃなくてマグカップにしたのですね?リヴィア様」

「はい。コーネリア様」

助け舟をありがとう。

「来週いらっしゃるなら、また悪いことをしましょう。でも、都合がつくのですか?」

「土曜日に登城しますから、次の日曜日はお休みしますわ」

「何か予定があるなら再来週にしよう」

「卒業まで予定が入っています。ですが別の用事を入れることもできるのです」

「何の予定だ?」

「契約上、お答えできません」

「契約?」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

結婚しましたが、愛されていません

うみか
恋愛
愛する人との結婚は最悪な結末を迎えた。 彼は私を毎日のように侮辱し、挙句の果てには不倫をして離婚を叫ぶ。 為す術なく離婚に応じた私だが、その後国王に呼び出され……

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...