50 / 100
見舞い
しおりを挟む
母の刺したピンク色の花の刺繍のクッションを背もたれにしてベッドで大人しくしている。
兄様の恋人セレストさんが投げたポットが私の顔に当たり眉の辺りを切ってしまった。
しっかりと血が出て全員パニックになった。投げた本人も慌てていた。
「ロック、もうあの人はいないから大丈夫よ」
「いいえ。私が側に居たらその様な怪我を負わせなかったはずです」
セレストさんにティーポットを投げつけられた場にロックは居なかった。騒ぎを聞きつけて駆け込んできたロックは剣を抜き、セレストさんを斬り殺そうとした。
『ロック!妊婦らしいから駄目よ!』
『そんなもの関係ありません!』
『ロック、そんな人のことより私を部屋に連れて行って。歩けないの。今すぐ行きたいの』
『かしこまりました』
ロックの意識を逸らすために言った言葉だった。
すぐ後にセレストさんは捕らえられた。
“歩けないの”
それ以来、歩かせてもらえない。
ロックがずっと側で見張っていて、どこに行くにも抱き上げられてしまう。ロックが私から離れる時は、入浴とトイレと食事の時だけ。
だからロックは休憩をほぼ取っていない。もちろん睡眠も僅か数十分程だった。
「腫れも引いたし、痣も自然に消えるわ。
ロックが人としての暮らしを思い出してくれないと、私も眠るのを拒否するかもしれないわよ」
「脅迫ですか」
「お願いしてるの」
「痣が消えたら考えます」
そして、
「モロー隊長、カルフォン卿」
「かわいそうに」
モロー隊長が触れようとした手を止めた。
「多分綺麗に治ります。腫れは引きましたから」
「リヴィア様、罪人は兄君の恋人と聞きましたが」
カルフォン卿が私の手にプレゼント?を渡した。
「そうです。…これは?」
「そこから離れられない時のための気晴らしです」
開けると陶器の馬だった。下は三日月型になっていて前後に揺れる。
「ありがとうございます」
ベッドサイドテーブルに置いて揺らした。
「ふふっ、嬉しいです。
サリー。一番細いリボンを持ってきて」
リボンを持ってきてもらい、手綱代わりに結びつけた。
「サリー。布で鞍と、こちらの騎士様そっくりのお人形を作って欲しいの。このお馬さんに乗せて欲しいわ」
「お任せください、お嬢様。
お茶の準備をいたします」
「ロックも席を外してもらえる?お仕事のお話しだから」
「……かしこまりました」
2人が部屋から出ると、
「もしかして、セレストさんを?」
「そうだ。しっかりと君に傷を負わせたセレストは悪夢を見ていることだろう。観察をしたい。
私は聴取したら戻るが、カルフォンが暫くここに残って夢の内容を記録する」
「お父様達には?」
「他国の者が嫡男を誘惑したことについて余罪の調査をすると言おう」
そして、夕食時に興味津々のお母様は、
「まあまあ、お二人ともとても素敵ですわ。王都でリヴィアがお世話になっているそうで」
「リヴィア嬢は可愛らしいだけではなく有能ですのでスカウトしたいくらいです」
「リヴィアは跡継ぎになると思いますから難しいですわね。ですが必要だと言われることはとても素晴らしいことですし、ありがたいですわ」
「リヴィア嬢が跡継ぎに?」
「ええ。息子のダニエルを除籍して追放しましたので。リヴィアが継ぐと言えばリヴィアとその婿に。継がないと言えば養子をとります」
「そうですか」
「リヴィアに縁談相手を探しているのですけど、どの方もリヴィアが首を横に振りますのよ」
「お母様!」
「リヴィア嬢は急がなくても」
「あら、いけませんわ。1日経つごとに、条件のいいご令息は婚約していってしまいますのよ」
「リヴィアにプレッシャーをかけるな」
「もう、あなたはリヴィアに甘過ぎますわ。
それに、素敵な令息方が取られてしまったら、泣くことになるのはリヴィアですからね?
他国に出すのは嫌なのでしたら国内で早く見つけてしまわないと」
「他国からの打診があるのですか」
「何故かありますの。しかも大国から」
「アルシュですか」
「アルシュと言えばカシャ公爵夫人の祖国ですね」
「カルフォン、調べたのか」
「はい。軽く」
「リヴィアを欲しているのはカシャ公爵家というより夫人の血筋?」
「宗教性の強い国が何故うちのような平凡な伯爵家の娘を?」
「お母様、きっと偶然ですわ。
もしかしたら夫人が親族に縁談を断られたと話して、それを聞いた親族が気まぐれに申し込まれたのかもしれませんわ」
「リヴィア。アルシュからの縁談も本気のはずだ。何しろ大貴族のガニアン公爵家の嫡男との縁談だ。気まぐれでも気の迷いでもない。
アルシュに来て親交を深めてから判断をして欲しいと仰った。リヴィアが学園に通い出したから、それを理由に断れたが、もし通っていなかったら断れなかった。ここまで遣いに聖騎士を寄こすほどだ」
知らなかった。
「ルネ様に聞いてみますわ」
「令息と親しくなったのか」
「私を追いかけて最下位クラスに来てしまったのです。無視したり、彼だけ断るわけにもいかず、仲間に加わっています」
「距離を置けばいいだろう。何かされていないか?」
「クラスメイトにそんなことをしたら虐めと思われてしまいますわ。しかも身分も見目も良くて成績も良い令息ですから。
大丈夫です。今のところ優しくしてくださるので」
「やっぱり、カシャ公爵令息との縁談を受けたらいいじゃない。身分も見目も成績も良く優しくて、貴女と交流したくて最下位クラスに来てくださるなんて素敵じゃないの」
「お母様、お客様の前で止めてください」
「まあ、今まで嫁入り先を考えたが、これからは婿に来てくれる令息も調べておかないとな」
「とにかく、在学中は決められませんから」
「何で駄目なの。普通は在学中に決めてしまうじゃないの」
「学園に通う条件が学業に集中させるということだから仕方ないだろう」
「週末と長期休暇、それぞれ半分を王宮で勉強なんて聞いたことがないわ」
「それが、王子妃候補が2人も脱落してしまって、公爵令嬢1人で可哀想だからと国王夫妻がリヴィア嬢に頼み込んだのです。
誤解をする方もおられるかもしれませんが、在学中に王子妃同様の教育が完了することで、縁談に強みになるかと。
もちろん王家から、婚約者候補としてではなく、婚約者候補を助けるための王命だったと文書でお出ししますので、良家への縁談には有利になるはずです。王家のお墨付きなのですから」
「でも、いいお相手が見つかれば、縁談を進めますわ。卒業まで待っていたら誰も残らないかもしれませんもの」
「その際には先にご連絡をいただけますか」
「はい。必ず」
困ったわ。お母様の言っていることは当然なのだけど、王子妃候補役なのに縁談を受け付けていたら不誠実になってしまう。
兄様の恋人セレストさんが投げたポットが私の顔に当たり眉の辺りを切ってしまった。
しっかりと血が出て全員パニックになった。投げた本人も慌てていた。
「ロック、もうあの人はいないから大丈夫よ」
「いいえ。私が側に居たらその様な怪我を負わせなかったはずです」
セレストさんにティーポットを投げつけられた場にロックは居なかった。騒ぎを聞きつけて駆け込んできたロックは剣を抜き、セレストさんを斬り殺そうとした。
『ロック!妊婦らしいから駄目よ!』
『そんなもの関係ありません!』
『ロック、そんな人のことより私を部屋に連れて行って。歩けないの。今すぐ行きたいの』
『かしこまりました』
ロックの意識を逸らすために言った言葉だった。
すぐ後にセレストさんは捕らえられた。
“歩けないの”
それ以来、歩かせてもらえない。
ロックがずっと側で見張っていて、どこに行くにも抱き上げられてしまう。ロックが私から離れる時は、入浴とトイレと食事の時だけ。
だからロックは休憩をほぼ取っていない。もちろん睡眠も僅か数十分程だった。
「腫れも引いたし、痣も自然に消えるわ。
ロックが人としての暮らしを思い出してくれないと、私も眠るのを拒否するかもしれないわよ」
「脅迫ですか」
「お願いしてるの」
「痣が消えたら考えます」
そして、
「モロー隊長、カルフォン卿」
「かわいそうに」
モロー隊長が触れようとした手を止めた。
「多分綺麗に治ります。腫れは引きましたから」
「リヴィア様、罪人は兄君の恋人と聞きましたが」
カルフォン卿が私の手にプレゼント?を渡した。
「そうです。…これは?」
「そこから離れられない時のための気晴らしです」
開けると陶器の馬だった。下は三日月型になっていて前後に揺れる。
「ありがとうございます」
ベッドサイドテーブルに置いて揺らした。
「ふふっ、嬉しいです。
サリー。一番細いリボンを持ってきて」
リボンを持ってきてもらい、手綱代わりに結びつけた。
「サリー。布で鞍と、こちらの騎士様そっくりのお人形を作って欲しいの。このお馬さんに乗せて欲しいわ」
「お任せください、お嬢様。
お茶の準備をいたします」
「ロックも席を外してもらえる?お仕事のお話しだから」
「……かしこまりました」
2人が部屋から出ると、
「もしかして、セレストさんを?」
「そうだ。しっかりと君に傷を負わせたセレストは悪夢を見ていることだろう。観察をしたい。
私は聴取したら戻るが、カルフォンが暫くここに残って夢の内容を記録する」
「お父様達には?」
「他国の者が嫡男を誘惑したことについて余罪の調査をすると言おう」
そして、夕食時に興味津々のお母様は、
「まあまあ、お二人ともとても素敵ですわ。王都でリヴィアがお世話になっているそうで」
「リヴィア嬢は可愛らしいだけではなく有能ですのでスカウトしたいくらいです」
「リヴィアは跡継ぎになると思いますから難しいですわね。ですが必要だと言われることはとても素晴らしいことですし、ありがたいですわ」
「リヴィア嬢が跡継ぎに?」
「ええ。息子のダニエルを除籍して追放しましたので。リヴィアが継ぐと言えばリヴィアとその婿に。継がないと言えば養子をとります」
「そうですか」
「リヴィアに縁談相手を探しているのですけど、どの方もリヴィアが首を横に振りますのよ」
「お母様!」
「リヴィア嬢は急がなくても」
「あら、いけませんわ。1日経つごとに、条件のいいご令息は婚約していってしまいますのよ」
「リヴィアにプレッシャーをかけるな」
「もう、あなたはリヴィアに甘過ぎますわ。
それに、素敵な令息方が取られてしまったら、泣くことになるのはリヴィアですからね?
他国に出すのは嫌なのでしたら国内で早く見つけてしまわないと」
「他国からの打診があるのですか」
「何故かありますの。しかも大国から」
「アルシュですか」
「アルシュと言えばカシャ公爵夫人の祖国ですね」
「カルフォン、調べたのか」
「はい。軽く」
「リヴィアを欲しているのはカシャ公爵家というより夫人の血筋?」
「宗教性の強い国が何故うちのような平凡な伯爵家の娘を?」
「お母様、きっと偶然ですわ。
もしかしたら夫人が親族に縁談を断られたと話して、それを聞いた親族が気まぐれに申し込まれたのかもしれませんわ」
「リヴィア。アルシュからの縁談も本気のはずだ。何しろ大貴族のガニアン公爵家の嫡男との縁談だ。気まぐれでも気の迷いでもない。
アルシュに来て親交を深めてから判断をして欲しいと仰った。リヴィアが学園に通い出したから、それを理由に断れたが、もし通っていなかったら断れなかった。ここまで遣いに聖騎士を寄こすほどだ」
知らなかった。
「ルネ様に聞いてみますわ」
「令息と親しくなったのか」
「私を追いかけて最下位クラスに来てしまったのです。無視したり、彼だけ断るわけにもいかず、仲間に加わっています」
「距離を置けばいいだろう。何かされていないか?」
「クラスメイトにそんなことをしたら虐めと思われてしまいますわ。しかも身分も見目も良くて成績も良い令息ですから。
大丈夫です。今のところ優しくしてくださるので」
「やっぱり、カシャ公爵令息との縁談を受けたらいいじゃない。身分も見目も成績も良く優しくて、貴女と交流したくて最下位クラスに来てくださるなんて素敵じゃないの」
「お母様、お客様の前で止めてください」
「まあ、今まで嫁入り先を考えたが、これからは婿に来てくれる令息も調べておかないとな」
「とにかく、在学中は決められませんから」
「何で駄目なの。普通は在学中に決めてしまうじゃないの」
「学園に通う条件が学業に集中させるということだから仕方ないだろう」
「週末と長期休暇、それぞれ半分を王宮で勉強なんて聞いたことがないわ」
「それが、王子妃候補が2人も脱落してしまって、公爵令嬢1人で可哀想だからと国王夫妻がリヴィア嬢に頼み込んだのです。
誤解をする方もおられるかもしれませんが、在学中に王子妃同様の教育が完了することで、縁談に強みになるかと。
もちろん王家から、婚約者候補としてではなく、婚約者候補を助けるための王命だったと文書でお出ししますので、良家への縁談には有利になるはずです。王家のお墨付きなのですから」
「でも、いいお相手が見つかれば、縁談を進めますわ。卒業まで待っていたら誰も残らないかもしれませんもの」
「その際には先にご連絡をいただけますか」
「はい。必ず」
困ったわ。お母様の言っていることは当然なのだけど、王子妃候補役なのに縁談を受け付けていたら不誠実になってしまう。
1,511
お気に入りに追加
1,978
あなたにおすすめの小説
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?
秋月一花
恋愛
本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。
……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。
彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?
もう我慢の限界というものです。
「離婚してください」
「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」
白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?
あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。
※カクヨム様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる