【完結】悪魔に祈るとき

ユユ

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隊長の妻

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ある疑問を口にした。

「モロー隊長、国王陛下は魅了にかからなかったと思うのです」

「理由は?」

「亡くなったからです。
学園に調査を入れた途端に伏してしまわれました。
そして王子殿下は心配どころか厄介払いをして自分が王になるという態度でした」

「陛下は魔女と王子殿下に暗殺されたということか」

「日数を要したので、頑張っても魅力にかからなかったから、殺すことにしたのかもしれません」

「王子殿下に異変を感じたら教えてもらえるか。
危機レベルを引き上げて陛下に近付かせないようにする」

「分かりました」

「君の血を私とカルフォンが飲み、学園の教職員や警備にも飲ませる。そこで様子を見よう。血をもらってもいいか」

「はい」



医務室に行って採血をした。
途中で目眩を起こしてしまったが目覚めたら終わっていた。

「すみません」

「休んでいなさい」

モロー隊長が優しく頭を撫でながら話してくれた。
葡萄ジュースに混ぜて飲ませたらしい。

「量的には1人一滴だから味に違和感は無い。
君の血を飲めば同じ様に悪意ある者の瞳孔が変化して見えたらと期待したが駄目だった」

「単にモロー隊長に危害を加えようと企む人がいないだけかもしれませんよ」

「だといいな」


コンコンコンコン

「誰だ」

「私よ」

モロー隊長が立ち上がってドアを少し開け対応しているが聞こえて来たのは…

「紹介してくださいな」

「仕事中だ。君の来る所ではない」

「そんな若い子と仕事?もっとマシな言い訳をなさったら?」

「ルイーズ、部屋に戻れ」

「今更 愛人? まさか側妃?」

「いい加減にしないか!仕事だと言っただろう」

「お嬢さんと何度も親密に会う必要があるの?」

私は立ち上がって側に寄った。

「ご挨拶をさせてください、隊長」

「……」

モロー隊長はドアを開けて女性を通した。
とても身分の高そうな女性だった。

「妻のルイーズだ。彼女はネルハデス伯爵令嬢だ。王命を受けて後2年弱、王城内で活動をしてもらう」

「リヴィア・ネルハデスと申します」

「ネルハデス……ヘンリー王子殿下の……。
王族の二股だなんてたいしたものね」

「ルイーズ、口にしていいことではないし、そんな関係では無い」

「王族の二股?」

「…あら、知らなかったの。成程。
召し上げるのではなくて遊びなのね」

「ルイーズ!」

「私と隊長は仕事上の関係です。
高貴な方なのは分かりましたが、ご自身のためにその悪意をしまったままになさってください」

「ちょっと!私は元王女で王弟殿下の妻なのよ!
不敬だわ!」

「そのあたりは国王陛下とご相談ください。
私はいつでも任務から退きますとお伝えください。
それに私にも守るべきものがございます。これ以上、事実でないことに騒ぎ立てるようであれば訴え出ますので、よくお考えになってからになさってください」

「生意気だわ!
殿下!何とか言ってください」

「ルイーズ。君が言った通り、王族2人を手玉にとっているとなれば極刑も有り得る大罪だ。それなのに事実ではないことに騒ぎ立てるのだから、この子が訴え出るのは当然だろう。

そもそも私の身分は極秘だというのに……お前はそれでも元王女なのか?口が軽すぎる」

「なっ!
では、不貞をしていない証拠を示してくださいな」

「騒いだのはお前なのだから不貞の証拠を出してくれ。話はそれからだ」

「今、密室に2人きりだったではありませんか!」

「彼女が怪我をして気を失ったので運んだだけだ」

私は採血をした傷口に巻いた包帯を見せた。
薄く血が滲んでいた。

「っ! 今日はそうでも、」

「いい加減にしろ」

モロー隊長が廊下の警備兵を呼んだ。

「彼女を自室に閉じ込めてくれ」

「かしこまりました」

「どういうこと!」

「ルイーズ。私の身分を明かしたらどうなるか教えておいたのに破ったのだから罰をうけないとな。
処罰が決まるまで部屋から出るな。誰ひとり面会させない。会っていいのは専属メイドだけだ」

「横暴よ!」

「早く連れていってくれ」



静かになった部屋でモロー隊長が謝罪をした。

「すまなかった」

「ルイーズ殿下の気に障ったのであれば気を付けねばなりませんね」

「バラされたので、きちんと説明したい」

「はい」

「私は先代の国王陛下と雑用メイドの母との間に産まれた。お手付きだった。

母は若い生娘だったし、貧しい平民の家庭で育ったために閨教育で習う様なことを知らなかった。
ショックと痛みとで月のモノが止まったと思い込んでいたようで、腹が目立ち始めて発覚した。

親切な上級メイドが王妃殿下の怒りを教えてくれたので母は姿を消した。数年後に私だけ連れ戻されたがな。

公にしていない王族の私でも、政略結婚を求められた。それが隣国の王女ルイーズだ。
ルイーズ1人しか娘がいなかったから育てられた。
王妃が亡くなると王は新しい王妃を娶った。新王妃はすぐに懐妊し王子を産んだ。続いて王女も産んだ。すると国王の寵愛は新王妃に移った。
新王妃の産んだ子はルイーズのように我儘に育つことなく、問題も起こさなかった。そうしつけられたからだ。ルイーズだって教育は受けたが、我儘を諭すことのなかった幼少期で人格が出来上がってしまった。

ある日、新王妃について失言をして国王の不興を買った。そして離宮に移された。
を探していた国王から打診を受けて父王は私に押し付けた。

王女を受け入れる条件は影の存在である私の伴侶なので王女もそうなること。つまり公にならない存在だ。式も無く予算も低い。それを承知で嫁がせた。
その後、私の異母兄が婚姻して、数年後に父王が亡くなった。
異母兄が国王になると私と面会し、私と生みの母の待遇改善をしてくださった」

モロー隊長はソファの背もたれに身を預けた。
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