【完結】悪魔に祈るとき

ユユ

文字の大きさ
上 下
40 / 100

隊長の妻

しおりを挟む
ある疑問を口にした。

「モロー隊長、国王陛下は魅了にかからなかったと思うのです」

「理由は?」

「亡くなったからです。
学園に調査を入れた途端に伏してしまわれました。
そして王子殿下は心配どころか厄介払いをして自分が王になるという態度でした」

「陛下は魔女と王子殿下に暗殺されたということか」

「日数を要したので、頑張っても魅力にかからなかったから、殺すことにしたのかもしれません」

「王子殿下に異変を感じたら教えてもらえるか。
危機レベルを引き上げて陛下に近付かせないようにする」

「分かりました」

「君の血を私とカルフォンが飲み、学園の教職員や警備にも飲ませる。そこで様子を見よう。血をもらってもいいか」

「はい」



医務室に行って採血をした。
途中で目眩を起こしてしまったが目覚めたら終わっていた。

「すみません」

「休んでいなさい」

モロー隊長が優しく頭を撫でながら話してくれた。
葡萄ジュースに混ぜて飲ませたらしい。

「量的には1人一滴だから味に違和感は無い。
君の血を飲めば同じ様に悪意ある者の瞳孔が変化して見えたらと期待したが駄目だった」

「単にモロー隊長に危害を加えようと企む人がいないだけかもしれませんよ」

「だといいな」


コンコンコンコン

「誰だ」

「私よ」

モロー隊長が立ち上がってドアを少し開け対応しているが聞こえて来たのは…

「紹介してくださいな」

「仕事中だ。君の来る所ではない」

「そんな若い子と仕事?もっとマシな言い訳をなさったら?」

「ルイーズ、部屋に戻れ」

「今更 愛人? まさか側妃?」

「いい加減にしないか!仕事だと言っただろう」

「お嬢さんと何度も親密に会う必要があるの?」

私は立ち上がって側に寄った。

「ご挨拶をさせてください、隊長」

「……」

モロー隊長はドアを開けて女性を通した。
とても身分の高そうな女性だった。

「妻のルイーズだ。彼女はネルハデス伯爵令嬢だ。王命を受けて後2年弱、王城内で活動をしてもらう」

「リヴィア・ネルハデスと申します」

「ネルハデス……ヘンリー王子殿下の……。
王族の二股だなんてたいしたものね」

「ルイーズ、口にしていいことではないし、そんな関係では無い」

「王族の二股?」

「…あら、知らなかったの。成程。
召し上げるのではなくて遊びなのね」

「ルイーズ!」

「私と隊長は仕事上の関係です。
高貴な方なのは分かりましたが、ご自身のためにその悪意をしまったままになさってください」

「ちょっと!私は元王女で王弟殿下の妻なのよ!
不敬だわ!」

「そのあたりは国王陛下とご相談ください。
私はいつでも任務から退きますとお伝えください。
それに私にも守るべきものがございます。これ以上、事実でないことに騒ぎ立てるようであれば訴え出ますので、よくお考えになってからになさってください」

「生意気だわ!
殿下!何とか言ってください」

「ルイーズ。君が言った通り、王族2人を手玉にとっているとなれば極刑も有り得る大罪だ。それなのに事実ではないことに騒ぎ立てるのだから、この子が訴え出るのは当然だろう。

そもそも私の身分は極秘だというのに……お前はそれでも元王女なのか?口が軽すぎる」

「なっ!
では、不貞をしていない証拠を示してくださいな」

「騒いだのはお前なのだから不貞の証拠を出してくれ。話はそれからだ」

「今、密室に2人きりだったではありませんか!」

「彼女が怪我をして気を失ったので運んだだけだ」

私は採血をした傷口に巻いた包帯を見せた。
薄く血が滲んでいた。

「っ! 今日はそうでも、」

「いい加減にしろ」

モロー隊長が廊下の警備兵を呼んだ。

「彼女を自室に閉じ込めてくれ」

「かしこまりました」

「どういうこと!」

「ルイーズ。私の身分を明かしたらどうなるか教えておいたのに破ったのだから罰をうけないとな。
処罰が決まるまで部屋から出るな。誰ひとり面会させない。会っていいのは専属メイドだけだ」

「横暴よ!」

「早く連れていってくれ」



静かになった部屋でモロー隊長が謝罪をした。

「すまなかった」

「ルイーズ殿下の気に障ったのであれば気を付けねばなりませんね」

「バラされたので、きちんと説明したい」

「はい」

「私は先代の国王陛下と雑用メイドの母との間に産まれた。お手付きだった。

母は若い生娘だったし、貧しい平民の家庭で育ったために閨教育で習う様なことを知らなかった。
ショックと痛みとで月のモノが止まったと思い込んでいたようで、腹が目立ち始めて発覚した。

親切な上級メイドが王妃殿下の怒りを教えてくれたので母は姿を消した。数年後に私だけ連れ戻されたがな。

公にしていない王族の私でも、政略結婚を求められた。それが隣国の王女ルイーズだ。
ルイーズ1人しか娘がいなかったから育てられた。
王妃が亡くなると王は新しい王妃を娶った。新王妃はすぐに懐妊し王子を産んだ。続いて王女も産んだ。すると国王の寵愛は新王妃に移った。
新王妃の産んだ子はルイーズのように我儘に育つことなく、問題も起こさなかった。そうしつけられたからだ。ルイーズだって教育は受けたが、我儘を諭すことのなかった幼少期で人格が出来上がってしまった。

ある日、新王妃について失言をして国王の不興を買った。そして離宮に移された。
を探していた国王から打診を受けて父王は私に押し付けた。

王女を受け入れる条件は影の存在である私の伴侶なので王女もそうなること。つまり公にならない存在だ。式も無く予算も低い。それを承知で嫁がせた。
その後、私の異母兄が婚姻して、数年後に父王が亡くなった。
異母兄が国王になると私と面会し、私と生みの母の待遇改善をしてくださった」

モロー隊長はソファの背もたれに身を預けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

幼馴染を溺愛する旦那様の前から、消えてあげることにします

新野乃花(大舟)
恋愛
「旦那様、幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?

秋月一花
恋愛
 本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。  ……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。  彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?  もう我慢の限界というものです。 「離婚してください」 「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」  白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?  あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。 ※カクヨム様にも投稿しています。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

処理中です...