【完結】悪魔に祈るとき

ユユ

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友人の婚約

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治療をしてもらい、次は侍従のところへ向かっていた。


「ソニアだな?」

「はい。紹介前から敵意が感じ取れました」

「欠けた食器は態とだろうか」

「きっと。後1人、紹介後に敵意を感じ取ったのは侍従のセーブルです」

「そうか。彼はハリソン侯爵家の分家出身だからかもな。何もしなければいいが。
側にいるが、少し離れていることもある。リヴィアも気をつけてくれ」

「はい」


一通り国王陛下付き侍従のフェリネとセーブルの仕事を見学した。何も起こらなかったので部屋に戻ろうと階段を降りていた。
先に降りていたカルフォン卿が曲がって姿が見えなくなると、

「ネルハデス!」

振り向くとセーブルがいて私は押された。体が後ろに傾いたが、何かに当たりすぐに宙に浮いた。

「あれ?」

「グッ……」

上の段から押したセーブルの腹に剣が刺さっていた。

「この女より…ネリー様の方が…」

「目が腐ってるな」

カルフォン卿は曲がって直ぐ剣を抜いて準備をしていたようだ。お陰で後ろ向きに落ちかけてもカルフォン卿が抱き止めてくれたので無事だった。

彼は剣から手を離し、階下まで行くと私を一度降ろしてから 側にいた兵士にセーブルの始末を命じて今度は正面から抱き上げた。

「リヴィア。怖かったか?」

「先生っ」

彼の首に腕を回してギュッとしがみついた。頭や背中を優しく撫でてくれた。

「ありがとうございます、先生」

「もう大丈夫だからな」

その後、屋敷に送ってもらい、暫く側に居てくれた。



長期休暇中にアングラード伯爵家の作業は完了した。

城で私に危害を加えた者は今のところ4人。
それとは別に調査対象になったのは、11人だった。

学園が始まるので続きは週末に一度。
予定がある週はお休みできる。



そして今日から学園が始まった。

私「パトリスは日焼けしたのね」

パ「実家が海の方だからな」

ア「マリーズは髪が短くなったわね」

長い髪が、肩甲骨が隠れるくらいの長さになっていた。

マ「うっかり燃やしちゃったの」

ティ「危ないな」

私「アデール、雰囲気変わった?何だろう」

ア「実は婚約者ができたの」

マ「え~!」

ア「取引先の商人の子息だからちょうどいいわ」

マ「私は全然決まらないの」

パ「この中で婚約者持ちは俺とアデールとティエリーか?」

私「え!?ティエリー!?」

ティ「ごめん。言ってなかったね。
1週間前に決まったんだ。政略結婚になるかな」

パ「来年入学だろう?」

ティ「そうらしい」

マ「いいなぁ~、どんな子?」

ティ「子爵家の三女で、上の二人とは歳が離れていて、大事に育てられたって感じだ。婿入りだよ」

マ「そっかぁ~。うちはさ、裕福じゃないから持参金が出せなさそうだって言うと断られちゃって。
うちと縁を繋いでもメリットないから、お金がないなら貴族も平民にも嫌がられちゃう。
妾かお爺ちゃんのお人形か、もしくは結婚は諦めて働く感じになりそう」

パ「リヴィアは?」

私「私はちょっと契約があって、在学中は誰とも婚約できないの」

ア「何それ」

私「秘密保持契約を交わしてるから話せないの」

パ「そうなんだ」

マ「じゃあ、私とリヴィア以外は来年のデビューは婚約者と参加するのね。はぁ~羨ましい」

リ「私もデビューのパートナー探さないと。
本当はティエリーにお願いしようと思ってたんだけど、図々しかったわ」

ティ「一緒に出よう」

リ「婚約者がいる人とは絶対に出ないわ。相手に悪いし、不用なトラブルを生みたくないの。
お兄様は帰ってこないし、お父様に頼む感じかなぁ」

パ「まだ先だから、出会いがあるかも知れないし。
リヴィアは恋人も作れないのか」

リ「うん」

王子の偽婚約者候補に恋人がいたらとんでもないことになるわ。

しかし、ティエリーが婚約か。
今迄の様に甘えられないわね。お相手の令嬢に悪いもの。

ティ「何考えているの」

リ「しっかりしないとなって思っただけ」

昔の私が嫌な思いをしたことを他の令嬢にしてはいけない。



そして数日後の乗馬クラスでは。

「カルム、お願い」

「ブルッ」

カラムが膝を曲げ地面に腹をつけた。

「うふふっ」

「ゴーグル、どうやって言うことをきかせてるんだ?」

「カルムは優しい紳士なのです。自ら困っているレディを助けてくれる素敵なお馬さんです」

アンドレ先生(カルフォン卿)が首を傾げる。

「本当に馬が乗せてくれるんだな」

そこにヘンリー王子殿下がやってきた。
今まで学園内で話しかけて来なかったのに。

先「ティエリー、念の為に反対側にまわってくれ」

私「ティエリー、大丈夫よ」

ティ「大丈夫じゃない」

へ「大丈夫じゃないな」

私「……」

結局、先生とティエリーに落馬に備えてもらい、カルムに乗った。

へ「すごいな。これなら乗るのが楽だな」

先「ゴーグル、しがみつく様に前傾になれ。前足が立ったらすぐに後ろ足が立つからな」

私「はい」

無事に落馬せずに立ち上がった。

へ「羨ましいな」

私「殿下がこの様な乗り方をしてしまえば世のご令嬢の夢を壊してしまいますわ」

へ「リヴィアゴーグルも?」

私「私は世の令嬢ではありません。
カルム、お散歩に連れていって」

「ブルッ」

私「この柵の中をまーるく歩いて欲しいの」

「フンッ」

カルムがゆっくり歩き出した。
私はカルムにしがみついている。
鞍がお腹にめり込むが、高さが怖いから無理。
先生が側にいて歩いてくれているけど。

一回りする間、頬擦りしながらカルムに話しかけた。

戻って来たが、カルムが膝を付けるのは前足から?
立ち上がる時より怖い。

「先生ぇ~」

「まあ、進歩は進歩だな。カルム頼みだが」

両腕を広げて身体を傾けると先生が私の脇腹に手を添えて降ろしてくれた。

「ありがとうございます」

「次回は降りる練習だな」

「はい」

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