38 / 100
友人の婚約
しおりを挟む
治療をしてもらい、次は侍従のところへ向かっていた。
「ソニアだな?」
「はい。紹介前から敵意が感じ取れました」
「欠けた食器は態とだろうか」
「きっと。後1人、紹介後に敵意を感じ取ったのは侍従のセーブルです」
「そうか。彼はハリソン侯爵家の分家出身だからかもな。何もしなければいいが。
側にいるが、少し離れていることもある。リヴィアも気をつけてくれ」
「はい」
一通り国王陛下付き侍従のフェリネとセーブルの仕事を見学した。何も起こらなかったので部屋に戻ろうと階段を降りていた。
先に降りていたカルフォン卿が曲がって姿が見えなくなると、
「ネルハデス!」
振り向くとセーブルがいて私は押された。体が後ろに傾いたが、何かに当たりすぐに宙に浮いた。
「あれ?」
「グッ……」
上の段から押したセーブルの腹に剣が刺さっていた。
「この女より…ネリー様の方が…」
「目が腐ってるな」
カルフォン卿は曲がって直ぐ剣を抜いて準備をしていたようだ。お陰で後ろ向きに落ちかけてもカルフォン卿が抱き止めてくれたので無事だった。
彼は剣から手を離し、階下まで行くと私を一度降ろしてから 側にいた兵士にセーブルの始末を命じて今度は正面から抱き上げた。
「リヴィア。怖かったか?」
「先生っ」
彼の首に腕を回してギュッとしがみついた。頭や背中を優しく撫でてくれた。
「ありがとうございます、先生」
「もう大丈夫だからな」
その後、屋敷に送ってもらい、暫く側に居てくれた。
長期休暇中にアングラード伯爵家の作業は完了した。
城で私に危害を加えた者は今のところ4人。
それとは別に調査対象になったのは、11人だった。
学園が始まるので続きは週末に一度。
予定がある週はお休みできる。
そして今日から学園が始まった。
私「パトリスは日焼けしたのね」
パ「実家が海の方だからな」
ア「マリーズは髪が短くなったわね」
長い髪が、肩甲骨が隠れるくらいの長さになっていた。
マ「うっかり燃やしちゃったの」
ティ「危ないな」
私「アデール、雰囲気変わった?何だろう」
ア「実は婚約者ができたの」
マ「え~!」
ア「取引先の商人の子息だからちょうどいいわ」
マ「私は全然決まらないの」
パ「この中で婚約者持ちは俺とアデールとティエリーか?」
私「え!?ティエリー!?」
ティ「ごめん。言ってなかったね。
1週間前に決まったんだ。政略結婚になるかな」
パ「来年入学だろう?」
ティ「そうらしい」
マ「いいなぁ~、どんな子?」
ティ「子爵家の三女で、上の二人とは歳が離れていて、大事に育てられたって感じだ。婿入りだよ」
マ「そっかぁ~。うちはさ、裕福じゃないから持参金が出せなさそうだって言うと断られちゃって。
うちと縁を繋いでもメリットないから、お金がないなら貴族も平民にも嫌がられちゃう。
妾かお爺ちゃんのお人形か、もしくは結婚は諦めて働く感じになりそう」
パ「リヴィアは?」
私「私はちょっと契約があって、在学中は誰とも婚約できないの」
ア「何それ」
私「秘密保持契約を交わしてるから話せないの」
パ「そうなんだ」
マ「じゃあ、私とリヴィア以外は来年のデビューは婚約者と参加するのね。はぁ~羨ましい」
リ「私もデビューのパートナー探さないと。
本当はティエリーにお願いしようと思ってたんだけど、図々しかったわ」
ティ「一緒に出よう」
リ「婚約者がいる人とは絶対に出ないわ。相手に悪いし、不用なトラブルを生みたくないの。
お兄様は帰ってこないし、お父様に頼む感じかなぁ」
パ「まだ先だから、出会いがあるかも知れないし。
リヴィアは恋人も作れないのか」
リ「うん」
王子の偽婚約者候補に恋人がいたらとんでもないことになるわ。
しかし、ティエリーが婚約か。
今迄の様に甘えられないわね。お相手の令嬢に悪いもの。
ティ「何考えているの」
リ「しっかりしないとなって思っただけ」
昔の私が嫌な思いをしたことを他の令嬢にしてはいけない。
そして数日後の乗馬クラスでは。
「カルム、お願い」
「ブルッ」
馬が膝を曲げ地面に腹をつけた。
「うふふっ」
「ゴーグル、どうやって言うことをきかせてるんだ?」
「カルムは優しい紳士なのです。自ら困っているレディを助けてくれる素敵なお馬さんです」
アンドレ先生(カルフォン卿)が首を傾げる。
「本当に馬が乗せてくれるんだな」
そこにヘンリー王子殿下がやってきた。
今まで学園内で話しかけて来なかったのに。
先「ティエリー、念の為に反対側にまわってくれ」
私「ティエリー、大丈夫よ」
ティ「大丈夫じゃない」
へ「大丈夫じゃないな」
私「……」
結局、先生とティエリーに落馬に備えてもらい、カルムに乗った。
へ「すごいな。これなら乗るのが楽だな」
先「ゴーグル、しがみつく様に前傾になれ。前足が立ったらすぐに後ろ足が立つからな」
私「はい」
無事に落馬せずに立ち上がった。
へ「羨ましいな」
私「殿下がこの様な乗り方をしてしまえば世のご令嬢の夢を壊してしまいますわ」
へ「リヴィアも?」
私「私は世の令嬢ではありません。
カルム、お散歩に連れていって」
「ブルッ」
私「この柵の中をまーるく歩いて欲しいの」
「フンッ」
カルムがゆっくり歩き出した。
私はカルムにしがみついている。
鞍がお腹にめり込むが、高さが怖いから無理。
先生が側にいて歩いてくれているけど。
一回りする間、頬擦りしながらカルムに話しかけた。
戻って来たが、カルムが膝を付けるのは前足から?
立ち上がる時より怖い。
「先生ぇ~」
「まあ、進歩は進歩だな。カルム頼みだが」
両腕を広げて身体を傾けると先生が私の脇腹に手を添えて降ろしてくれた。
「ありがとうございます」
「次回は降りる練習だな」
「はい」
「ソニアだな?」
「はい。紹介前から敵意が感じ取れました」
「欠けた食器は態とだろうか」
「きっと。後1人、紹介後に敵意を感じ取ったのは侍従のセーブルです」
「そうか。彼はハリソン侯爵家の分家出身だからかもな。何もしなければいいが。
側にいるが、少し離れていることもある。リヴィアも気をつけてくれ」
「はい」
一通り国王陛下付き侍従のフェリネとセーブルの仕事を見学した。何も起こらなかったので部屋に戻ろうと階段を降りていた。
先に降りていたカルフォン卿が曲がって姿が見えなくなると、
「ネルハデス!」
振り向くとセーブルがいて私は押された。体が後ろに傾いたが、何かに当たりすぐに宙に浮いた。
「あれ?」
「グッ……」
上の段から押したセーブルの腹に剣が刺さっていた。
「この女より…ネリー様の方が…」
「目が腐ってるな」
カルフォン卿は曲がって直ぐ剣を抜いて準備をしていたようだ。お陰で後ろ向きに落ちかけてもカルフォン卿が抱き止めてくれたので無事だった。
彼は剣から手を離し、階下まで行くと私を一度降ろしてから 側にいた兵士にセーブルの始末を命じて今度は正面から抱き上げた。
「リヴィア。怖かったか?」
「先生っ」
彼の首に腕を回してギュッとしがみついた。頭や背中を優しく撫でてくれた。
「ありがとうございます、先生」
「もう大丈夫だからな」
その後、屋敷に送ってもらい、暫く側に居てくれた。
長期休暇中にアングラード伯爵家の作業は完了した。
城で私に危害を加えた者は今のところ4人。
それとは別に調査対象になったのは、11人だった。
学園が始まるので続きは週末に一度。
予定がある週はお休みできる。
そして今日から学園が始まった。
私「パトリスは日焼けしたのね」
パ「実家が海の方だからな」
ア「マリーズは髪が短くなったわね」
長い髪が、肩甲骨が隠れるくらいの長さになっていた。
マ「うっかり燃やしちゃったの」
ティ「危ないな」
私「アデール、雰囲気変わった?何だろう」
ア「実は婚約者ができたの」
マ「え~!」
ア「取引先の商人の子息だからちょうどいいわ」
マ「私は全然決まらないの」
パ「この中で婚約者持ちは俺とアデールとティエリーか?」
私「え!?ティエリー!?」
ティ「ごめん。言ってなかったね。
1週間前に決まったんだ。政略結婚になるかな」
パ「来年入学だろう?」
ティ「そうらしい」
マ「いいなぁ~、どんな子?」
ティ「子爵家の三女で、上の二人とは歳が離れていて、大事に育てられたって感じだ。婿入りだよ」
マ「そっかぁ~。うちはさ、裕福じゃないから持参金が出せなさそうだって言うと断られちゃって。
うちと縁を繋いでもメリットないから、お金がないなら貴族も平民にも嫌がられちゃう。
妾かお爺ちゃんのお人形か、もしくは結婚は諦めて働く感じになりそう」
パ「リヴィアは?」
私「私はちょっと契約があって、在学中は誰とも婚約できないの」
ア「何それ」
私「秘密保持契約を交わしてるから話せないの」
パ「そうなんだ」
マ「じゃあ、私とリヴィア以外は来年のデビューは婚約者と参加するのね。はぁ~羨ましい」
リ「私もデビューのパートナー探さないと。
本当はティエリーにお願いしようと思ってたんだけど、図々しかったわ」
ティ「一緒に出よう」
リ「婚約者がいる人とは絶対に出ないわ。相手に悪いし、不用なトラブルを生みたくないの。
お兄様は帰ってこないし、お父様に頼む感じかなぁ」
パ「まだ先だから、出会いがあるかも知れないし。
リヴィアは恋人も作れないのか」
リ「うん」
王子の偽婚約者候補に恋人がいたらとんでもないことになるわ。
しかし、ティエリーが婚約か。
今迄の様に甘えられないわね。お相手の令嬢に悪いもの。
ティ「何考えているの」
リ「しっかりしないとなって思っただけ」
昔の私が嫌な思いをしたことを他の令嬢にしてはいけない。
そして数日後の乗馬クラスでは。
「カルム、お願い」
「ブルッ」
馬が膝を曲げ地面に腹をつけた。
「うふふっ」
「ゴーグル、どうやって言うことをきかせてるんだ?」
「カルムは優しい紳士なのです。自ら困っているレディを助けてくれる素敵なお馬さんです」
アンドレ先生(カルフォン卿)が首を傾げる。
「本当に馬が乗せてくれるんだな」
そこにヘンリー王子殿下がやってきた。
今まで学園内で話しかけて来なかったのに。
先「ティエリー、念の為に反対側にまわってくれ」
私「ティエリー、大丈夫よ」
ティ「大丈夫じゃない」
へ「大丈夫じゃないな」
私「……」
結局、先生とティエリーに落馬に備えてもらい、カルムに乗った。
へ「すごいな。これなら乗るのが楽だな」
先「ゴーグル、しがみつく様に前傾になれ。前足が立ったらすぐに後ろ足が立つからな」
私「はい」
無事に落馬せずに立ち上がった。
へ「羨ましいな」
私「殿下がこの様な乗り方をしてしまえば世のご令嬢の夢を壊してしまいますわ」
へ「リヴィアも?」
私「私は世の令嬢ではありません。
カルム、お散歩に連れていって」
「ブルッ」
私「この柵の中をまーるく歩いて欲しいの」
「フンッ」
カルムがゆっくり歩き出した。
私はカルムにしがみついている。
鞍がお腹にめり込むが、高さが怖いから無理。
先生が側にいて歩いてくれているけど。
一回りする間、頬擦りしながらカルムに話しかけた。
戻って来たが、カルムが膝を付けるのは前足から?
立ち上がる時より怖い。
「先生ぇ~」
「まあ、進歩は進歩だな。カルム頼みだが」
両腕を広げて身体を傾けると先生が私の脇腹に手を添えて降ろしてくれた。
「ありがとうございます」
「次回は降りる練習だな」
「はい」
1,572
お気に入りに追加
1,978
あなたにおすすめの小説
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?
との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」
結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。
夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、
えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。
どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに?
ーーーーーー
完結、予約投稿済みです。
R15は、今回も念の為
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる