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国王陛下付きのメイド
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ギュッ
うえっ
「リヴィア様、終わりました」
「ありがとうございます」
私には王宮に専用の客室が与えられた。
応接間、寝室。
そしてドレッシングルームには 大きな姿見と大きなドレッサー。ドレスやら靴やらをいつのまにか用意されていた。そのせいで登城すると着替えさせられる。
近いし、寝間着にガウンで来たいくらいだ。
だって屋敷でもこの作業を一通りやるのだから。
「リヴィア、よく似合ってるよ」
「ありがとうございます、モロー隊長。
もう買わないでくださいね?」
隊長は微笑むだけだった。
もう長期休暇も半分を切った。
アングラード伯爵家に行って、数字を追い、昼食か夕食にレストランに連れて行かれる。
ショトーが高値で売れて半額をもらい、残りは年末にもらうことになっているそうだ。
そのおかげで潤っているが、お金が一度空になりかけたのだから節約しましょうと言っても大勢ではないし、たまにだからと譲らない。
そして食べ過ぎる。カイルセン様は、これもこれもと食べさせる。私を肥やして非常食にでもするつもりなのかもしれない。
「今日は国王陛下付きのメイドや侍従に会ってもらおう」
「モロー隊長、私、メイド服で回っても良いのでは?」
「良くないな。王子妃を目指すはずが使用人を目指してるみたいになってしまうよね」
メイド服、楽そうなのに。
あ~。
自己紹介前から瞳孔が歪んた人がいた。
何で私にいきなり悪意?さらにもう1人も歪んだ。
まず、紹介して変異したのはメイドだ。
「モロー隊長、彼女は?)」
「(伯爵家の三女だな)」
モロー隊長がそのメイドに指示をした。
「ソニア。リヴィア様を連れて陛下にお茶を出しに行ってくれ」
「かしこまりました」
ワゴンを押して向った先は執務室だった。
陛「おお、リヴィア嬢」
へ「リヴィア、来ていたのか」
私「国王陛下、ヘンリー王子殿下にご挨拶を申し上げます」
何で居るの…。
へ「婚約者なのだからヘンリーと呼んでくれと言ったのに」
はい?
私「滅相もございません」
陛「一緒に茶を飲もう」
私「陛下、今日は職場見学ですので」
陛「妃になるためなのだから其方は茶を飲め。飲みながらメイドの仕事を見守ればよい」
私「それでは失礼いたします」
彼は豹変する前の彼だけど、忘れられるわけがない。
陛「リヴィア嬢、その後乗馬は?」
私「領地で練習しようと思っていたのですが、こちらに来てしまいましたので。
いずれにしても学園の馬で練習するしかなさそうです」
陛「城にも良い馬は沢山いるぞ?」
私「カルムは私が乗りやすいように身を低くしてくれるのです。立ち上がる際の反動に対して私がバランスを取れるようになれば一歩前進です」
陛「カルフォン卿が教えているのだろう?」
私「鐙に足が届かないのです。
小さめの馬がいるのですがキャンディスは私の言うことだけききません」
陛「確かに…。それに令嬢が足を高く上げることなどないからな。ならば学園に小型の馬をもう一頭くらいは用意せねばな」
へ「いくらでも踏み台になるのに」
私「王子殿下を踏み台にしたら石を投げ付けられてしまいますわ」
へ「リヴィア、今度遠乗りに行かないか?」
私「行きません」
「「……」」
私「あ、その……今アングラード伯爵家のお手伝いをしておりますので」
陛「その後も手伝っているのだな?」
私「はい。集中してお手伝いできるのは長期休暇の期間だけでしょうから」
へ「アングラード伯爵か……。独身になったんだよね。2人で大丈夫なのか?」
私「伯爵の親戚のティエリー様が一緒ですし、他にも補佐の方がおりますから2人ではありません」
へ「そうか」
陛「対価は貰うのか?」
私「いえ。いつも私の面倒を見てくれるティエリー様への恩返しで始めたことですから。
ですがカイルセン様がよく外食に連れて行ってくださいます。まるで成長期の子供に食べさせる親のようで、あれもこれもと注文してしまうので太りだしましたの」
へ「(カイルセン…) 名前で呼んでいるのだな」
私「カイルセン様は少しズルいところがあって、だいぶ歳上なのに甘え上手で、名前で呼ばないとしつこいのです。あの童顔は武器になりますわ。なのに使い所を間違えておりますわね」
へ「つまり?」
私「私などに無駄使いせず、奥様に使っていれば良かったのにと思っただけです。ティエリー様も呆れていますもの」
へ「屋敷で何をやっているんだ?」
私「過去10年の帳簿を確認しています。領地とタウンハウスの分で量がありますから。
計算をカルセイン様とティエリー様に任せると間違えるので、付随する書類の整理と使途の判断をお願いしています」
へ「そうか。
(やはり最下位クラスは態となんだな) はぁ……」
私「痛っ」
ソーサーに触れた時に痛みが走った。見ると血が指を伝っていた。
私「あっ」
ヘンリー王子殿下が私の手を引き寄せると傷の付いた指を口に含んだ。
私「殿下っ!?」
ハンカチを取り出して指に巻き、怒り出した。
へ「医師を呼べ!」
私「止めてください。この程度でお医者様を呼び付けないでください」
カルフォン卿がソーサーごとカップを持ち上げて確認した。
カ「何故欠けたソーサーをリヴィア様に?」
メ「気付きませんでした。申し訳ございません」
メイドは悪びれた様子を見せず堂々としていた。
カ「申し訳ないと思っている態度に見えないがな」
カルフォン卿が手を挙げると近衛2人が駆け寄った。
カ「この女を隊長の所へ案内してやってくれ。特別な聞き取り方を望んでいると伝えてくれ」
兵「かしこまりました」
カ「陛下、王子殿下。リヴィア様を連れて行きます」
陛「しっかり手当してもらってくれ」
うえっ
「リヴィア様、終わりました」
「ありがとうございます」
私には王宮に専用の客室が与えられた。
応接間、寝室。
そしてドレッシングルームには 大きな姿見と大きなドレッサー。ドレスやら靴やらをいつのまにか用意されていた。そのせいで登城すると着替えさせられる。
近いし、寝間着にガウンで来たいくらいだ。
だって屋敷でもこの作業を一通りやるのだから。
「リヴィア、よく似合ってるよ」
「ありがとうございます、モロー隊長。
もう買わないでくださいね?」
隊長は微笑むだけだった。
もう長期休暇も半分を切った。
アングラード伯爵家に行って、数字を追い、昼食か夕食にレストランに連れて行かれる。
ショトーが高値で売れて半額をもらい、残りは年末にもらうことになっているそうだ。
そのおかげで潤っているが、お金が一度空になりかけたのだから節約しましょうと言っても大勢ではないし、たまにだからと譲らない。
そして食べ過ぎる。カイルセン様は、これもこれもと食べさせる。私を肥やして非常食にでもするつもりなのかもしれない。
「今日は国王陛下付きのメイドや侍従に会ってもらおう」
「モロー隊長、私、メイド服で回っても良いのでは?」
「良くないな。王子妃を目指すはずが使用人を目指してるみたいになってしまうよね」
メイド服、楽そうなのに。
あ~。
自己紹介前から瞳孔が歪んた人がいた。
何で私にいきなり悪意?さらにもう1人も歪んだ。
まず、紹介して変異したのはメイドだ。
「モロー隊長、彼女は?)」
「(伯爵家の三女だな)」
モロー隊長がそのメイドに指示をした。
「ソニア。リヴィア様を連れて陛下にお茶を出しに行ってくれ」
「かしこまりました」
ワゴンを押して向った先は執務室だった。
陛「おお、リヴィア嬢」
へ「リヴィア、来ていたのか」
私「国王陛下、ヘンリー王子殿下にご挨拶を申し上げます」
何で居るの…。
へ「婚約者なのだからヘンリーと呼んでくれと言ったのに」
はい?
私「滅相もございません」
陛「一緒に茶を飲もう」
私「陛下、今日は職場見学ですので」
陛「妃になるためなのだから其方は茶を飲め。飲みながらメイドの仕事を見守ればよい」
私「それでは失礼いたします」
彼は豹変する前の彼だけど、忘れられるわけがない。
陛「リヴィア嬢、その後乗馬は?」
私「領地で練習しようと思っていたのですが、こちらに来てしまいましたので。
いずれにしても学園の馬で練習するしかなさそうです」
陛「城にも良い馬は沢山いるぞ?」
私「カルムは私が乗りやすいように身を低くしてくれるのです。立ち上がる際の反動に対して私がバランスを取れるようになれば一歩前進です」
陛「カルフォン卿が教えているのだろう?」
私「鐙に足が届かないのです。
小さめの馬がいるのですがキャンディスは私の言うことだけききません」
陛「確かに…。それに令嬢が足を高く上げることなどないからな。ならば学園に小型の馬をもう一頭くらいは用意せねばな」
へ「いくらでも踏み台になるのに」
私「王子殿下を踏み台にしたら石を投げ付けられてしまいますわ」
へ「リヴィア、今度遠乗りに行かないか?」
私「行きません」
「「……」」
私「あ、その……今アングラード伯爵家のお手伝いをしておりますので」
陛「その後も手伝っているのだな?」
私「はい。集中してお手伝いできるのは長期休暇の期間だけでしょうから」
へ「アングラード伯爵か……。独身になったんだよね。2人で大丈夫なのか?」
私「伯爵の親戚のティエリー様が一緒ですし、他にも補佐の方がおりますから2人ではありません」
へ「そうか」
陛「対価は貰うのか?」
私「いえ。いつも私の面倒を見てくれるティエリー様への恩返しで始めたことですから。
ですがカイルセン様がよく外食に連れて行ってくださいます。まるで成長期の子供に食べさせる親のようで、あれもこれもと注文してしまうので太りだしましたの」
へ「(カイルセン…) 名前で呼んでいるのだな」
私「カイルセン様は少しズルいところがあって、だいぶ歳上なのに甘え上手で、名前で呼ばないとしつこいのです。あの童顔は武器になりますわ。なのに使い所を間違えておりますわね」
へ「つまり?」
私「私などに無駄使いせず、奥様に使っていれば良かったのにと思っただけです。ティエリー様も呆れていますもの」
へ「屋敷で何をやっているんだ?」
私「過去10年の帳簿を確認しています。領地とタウンハウスの分で量がありますから。
計算をカルセイン様とティエリー様に任せると間違えるので、付随する書類の整理と使途の判断をお願いしています」
へ「そうか。
(やはり最下位クラスは態となんだな) はぁ……」
私「痛っ」
ソーサーに触れた時に痛みが走った。見ると血が指を伝っていた。
私「あっ」
ヘンリー王子殿下が私の手を引き寄せると傷の付いた指を口に含んだ。
私「殿下っ!?」
ハンカチを取り出して指に巻き、怒り出した。
へ「医師を呼べ!」
私「止めてください。この程度でお医者様を呼び付けないでください」
カルフォン卿がソーサーごとカップを持ち上げて確認した。
カ「何故欠けたソーサーをリヴィア様に?」
メ「気付きませんでした。申し訳ございません」
メイドは悪びれた様子を見せず堂々としていた。
カ「申し訳ないと思っている態度に見えないがな」
カルフォン卿が手を挙げると近衛2人が駆け寄った。
カ「この女を隊長の所へ案内してやってくれ。特別な聞き取り方を望んでいると伝えてくれ」
兵「かしこまりました」
カ「陛下、王子殿下。リヴィア様を連れて行きます」
陛「しっかり手当してもらってくれ」
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