【完結】悪魔に祈るとき

ユユ

文字の大きさ
上 下
37 / 100

国王陛下付きのメイド

しおりを挟む
ギュッ

うえっ 

「リヴィア様、終わりました」

「ありがとうございます」

私には王宮に専用の客室が与えられた。
応接間、寝室。
そしてドレッシングルームには 大きな姿見と大きなドレッサー。ドレスやら靴やらをいつのまにか用意されていた。そのせいで登城すると着替えさせられる。

近いし、寝間着にガウンで来たいくらいだ。
だって屋敷でもこの作業を一通りやるのだから。


「リヴィア、よく似合ってるよ」

「ありがとうございます、モロー隊長。
もう買わないでくださいね?」

隊長は微笑むだけだった。


もう長期休暇も半分を切った。

アングラード伯爵家に行って、数字を追い、昼食か夕食にレストランに連れて行かれる。
ショトーが高値で売れて半額をもらい、残りは年末にもらうことになっているそうだ。
そのおかげで潤っているが、お金が一度空になりかけたのだから節約しましょうと言っても大勢ではないし、たまにだからと譲らない。

そして食べ過ぎる。カイルセン様は、これもこれもと食べさせる。私を肥やして非常食にでもするつもりなのかもしれない。


「今日は国王陛下付きのメイドや侍従に会ってもらおう」

「モロー隊長、私、メイド服で回っても良いのでは?」

「良くないな。王子妃を目指すはずが使用人を目指してるみたいになってしまうよね」

メイド服、楽そうなのに。


あ~。

自己紹介前から瞳孔が歪んた人がいた。
何で私にいきなり悪意?さらにもう1人も歪んだ。


まず、紹介して変異したのはメイドだ。

「モロー隊長、彼女は?)」

「(伯爵家の三女だな)」

モロー隊長がそのメイドに指示をした。

「ソニア。リヴィア様を連れて陛下にお茶を出しに行ってくれ」

「かしこまりました」


ワゴンを押して向った先は執務室だった。

陛「おお、リヴィア嬢」

へ「リヴィア、来ていたのか」

私「国王陛下、ヘンリー王子殿下にご挨拶を申し上げます」

何で居るの…。

へ「婚約者なのだからヘンリーと呼んでくれと言ったのに」

はい?

私「滅相もございません」

陛「一緒に茶を飲もう」

私「陛下、今日は職場見学ですので」

陛「妃になるためなのだから其方は茶を飲め。飲みながらメイドの仕事を見守ればよい」

私「それでは失礼いたします」

彼は豹変する前の彼だけど、忘れられるわけがない。

陛「リヴィア嬢、その後乗馬は?」

私「領地で練習しようと思っていたのですが、こちらに来てしまいましたので。
いずれにしても学園の馬で練習するしかなさそうです」

陛「城にも良い馬は沢山いるぞ?」

私「カルムは私が乗りやすいように身を低くしてくれるのです。立ち上がる際の反動に対して私がバランスを取れるようになれば一歩前進です」

陛「カルフォン卿が教えているのだろう?」

私「鐙に足が届かないのです。
小さめの馬がいるのですがキャンディスは私の言うことだけききません」

陛「確かに…。それに令嬢が足を高く上げることなどないからな。ならば学園に小型の馬をもう一頭くらいは用意せねばな」

へ「いくらでも踏み台になるのに」

私「王子殿下を踏み台にしたら石を投げ付けられてしまいますわ」

へ「リヴィア、今度遠乗りに行かないか?」

私「行きません」

「「……」」

私「あ、その……今アングラード伯爵家のお手伝いをしておりますので」

陛「その後も手伝っているのだな?」

私「はい。集中してお手伝いできるのは長期休暇の期間だけでしょうから」

へ「アングラード伯爵か……。独身になったんだよね。2人で大丈夫なのか?」

私「伯爵の親戚のティエリー様が一緒ですし、他にも補佐の方がおりますから2人ではありません」

へ「そうか」

陛「対価は貰うのか?」

私「いえ。いつも私の面倒を見てくれるティエリー様への恩返しで始めたことですから。

ですがカイルセン様がよく外食に連れて行ってくださいます。まるで成長期の子供に食べさせる親のようで、あれもこれもと注文してしまうので太りだしましたの」

へ「(カイルセン…) 名前で呼んでいるのだな」

私「カイルセン様は少しズルいところがあって、だいぶ歳上なのに甘え上手で、名前で呼ばないとしつこいのです。あの童顔は武器になりますわ。なのに使い所を間違えておりますわね」

へ「つまり?」

私「私などに無駄使いせず、奥様に使っていれば良かったのにと思っただけです。ティエリー様も呆れていますもの」

へ「屋敷で何をやっているんだ?」

私「過去10年の帳簿を確認しています。領地とタウンハウスの分で量がありますから。
計算をカルセイン様とティエリー様に任せると間違えるので、付随する書類の整理と使途の判断をお願いしています」

へ「そうか。
(やはり最下位クラスは態となんだな) はぁ……」

私「痛っ」

ソーサーに触れた時に痛みが走った。見ると血が指を伝っていた。

私「あっ」

ヘンリー王子殿下が私の手を引き寄せると傷の付いた指を口に含んだ。

私「殿下っ!?」

ハンカチを取り出して指に巻き、怒り出した。

へ「医師を呼べ!」

私「止めてください。この程度でお医者様を呼び付けないでください」

カルフォン卿がソーサーごとカップを持ち上げて確認した。

カ「何故欠けたソーサーをリヴィア様に?」

メ「気付きませんでした。申し訳ございません」

メイドは悪びれた様子を見せず堂々としていた。

カ「申し訳ないと思っている態度に見えないがな」

カルフォン卿が手を挙げると近衛2人が駆け寄った。

カ「この女をの所へ案内してやってくれ。特別な聞き取り方を望んでいると伝えてくれ」

兵「かしこまりました」

カ「陛下、王子殿下。リヴィア様を連れて行きます」

陛「しっかり手当してもらってくれ」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

結婚しましたが、愛されていません

うみか
恋愛
愛する人との結婚は最悪な結末を迎えた。 彼は私を毎日のように侮辱し、挙句の果てには不倫をして離婚を叫ぶ。 為す術なく離婚に応じた私だが、その後国王に呼び出され……

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...