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頼み事
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ローテーブルに並べられた3冊の小説についてミリアが説明した。
「薔薇の絵の表紙は王子様と身分の低い令嬢の恋物語です。王子様が必死に愛を囁きます。
指輪の絵の表紙は高貴な令嬢と見習騎士の恋物語です。結局上手くいかずに別れてしまいます。
鎖の絵の表紙は、束縛の激しい婚約者を持つ令嬢が他の既婚者に惹かれてしまう、ドロドロにこじれる話です。これはこっそりお読みください」
「こっそり?」
「刺激的な内容になっております」
「分かったわ。ありがとう。
ということですカイルセン様。急いで3冊を読んで勉強してください。返事を待っている間が勿体無いので今読み始めてください。王子様のお話からどうぞ」
「読ませてもらうよ」
30分後。
「なあ、リヴィア。この王子、クソだな」
「ミリアの前では止めてくださいね?」
「悪い、悪い。
だってな、幼少の頃から婚約者として王子のために厳しい教育を受けて、妃教育が終わってやっとと思ったら、王子が他の女に現を抜かしてるんだぞ?
相手の女は無邪気と可愛さを武器に好きにやって、咎められれば泣くから、咎めた者が悪者扱いだ。こんな女のどこがいいんだ」
「同意しますが、女性の胸が高まる要素だけ勉強なさってください」
さらに15分後。
「こんな台詞を言うのか?」
「愛ですよ愛!お勉強するのは愛!」
「そういうリヴィアは人を愛したことはあるのか?」
「ありますよ。過去の話ですけどね」
「過去か。上手くいかなかったのか?」
「最初に読まれた本寄りでしたね。彼の心変わりなのか、最初から私に対して気持ちがなかったのかは分かりません。お相手がとても魅力的だったようで私ではどうにもなりませんでした」
「お嬢様、カルフォン卿が戻られました」
「通してちょうだい」
戻って来た彼は、私の飲みかけのお茶を一気に飲み干した。
「明日の予定の前に時間を空けていただけたので2時半迄に遅れずに登城してください」
「ありがとうございます」
「さあ、伯爵。お引き取りを。彼女は今日予定がございますので」
「そうなのか?悪かったな、リヴィア。明日迎えに来る」
「伯爵は直接登城願います。彼女は私が迎えに参ります」
「何故君に断られなくちゃならないんだ?」
「カイルセン様」
「分かった、分かった」
本を抱えて帰って行った。
その後、刺繍などの確認を終えて約束していた来客はもうない。
「ドレス、もう少し肌を隠すデザインにしたらどうだ」
「誰も興味など示しませんわ」
「(これでは目が離せない)」
翌日、王妃ともお会いするのでしっかりとめかし込んだ。
「リヴィア、あの男が気に入ったのか?」
「誰ですか、あの男とは」
「昨日の伯爵だ」
「何故そう思うのですか」
「そんなにめかし込んで」
「王妃様や王子殿下の婚約者達とのお茶会ですよ? 失礼の無いように当然めかし込むでしょう」
「そうか」
そんな話をしているうちに王城へ到着すると既に伯爵が待っていた。
「リヴィア」
「ごきげんよう、カイルセン様」
「王宮の庭師も驚くほどの美しく可憐な花の君を 私にエスコートさせてくれないか」
「どれを読んだのですか」
「全部読んだよ」
「目的が違いますよ。女ったらしを製造したかったわけではありませんからね」
「冷たくしないで欲しいな」
「近い」
カルフォン卿が私と伯爵の間に腕を差し入れた。
「君は近衛騎士だったのだなカルフォン卿。
リヴィア…まさか、王子妃に!?」
「少し違います」
「良かった。じゃあ、訳アリなんだな?」
「黙秘します」
そして謁見の間に通された。
多分伯爵が一緒だから応接間じゃないのね。
「久しいなアングラード伯爵」
「国王陛下にご挨拶を申し上げます」
「それでリヴィア嬢。何用かな」
「あの、先日の例え話が現実になりまして」
「あ~」
「伯爵と私は特に関係性はないのですが、伯爵の分家の従弟が私のクラスメイトで友人なのです。
彼にはいつも助けてもらっておりまして、恩がございます。伯爵家が没落すれば分家の男爵家はますます大変なことになるかと心配で、例のお手伝いに身が入らなそうで」
「リヴィア嬢、脅しか?」
「とんでもないことでございます」
「其方の嘘は分かりやすい。
では、事情を最初から簡潔に話してくれ」
「薔薇の絵の表紙は王子様と身分の低い令嬢の恋物語です。王子様が必死に愛を囁きます。
指輪の絵の表紙は高貴な令嬢と見習騎士の恋物語です。結局上手くいかずに別れてしまいます。
鎖の絵の表紙は、束縛の激しい婚約者を持つ令嬢が他の既婚者に惹かれてしまう、ドロドロにこじれる話です。これはこっそりお読みください」
「こっそり?」
「刺激的な内容になっております」
「分かったわ。ありがとう。
ということですカイルセン様。急いで3冊を読んで勉強してください。返事を待っている間が勿体無いので今読み始めてください。王子様のお話からどうぞ」
「読ませてもらうよ」
30分後。
「なあ、リヴィア。この王子、クソだな」
「ミリアの前では止めてくださいね?」
「悪い、悪い。
だってな、幼少の頃から婚約者として王子のために厳しい教育を受けて、妃教育が終わってやっとと思ったら、王子が他の女に現を抜かしてるんだぞ?
相手の女は無邪気と可愛さを武器に好きにやって、咎められれば泣くから、咎めた者が悪者扱いだ。こんな女のどこがいいんだ」
「同意しますが、女性の胸が高まる要素だけ勉強なさってください」
さらに15分後。
「こんな台詞を言うのか?」
「愛ですよ愛!お勉強するのは愛!」
「そういうリヴィアは人を愛したことはあるのか?」
「ありますよ。過去の話ですけどね」
「過去か。上手くいかなかったのか?」
「最初に読まれた本寄りでしたね。彼の心変わりなのか、最初から私に対して気持ちがなかったのかは分かりません。お相手がとても魅力的だったようで私ではどうにもなりませんでした」
「お嬢様、カルフォン卿が戻られました」
「通してちょうだい」
戻って来た彼は、私の飲みかけのお茶を一気に飲み干した。
「明日の予定の前に時間を空けていただけたので2時半迄に遅れずに登城してください」
「ありがとうございます」
「さあ、伯爵。お引き取りを。彼女は今日予定がございますので」
「そうなのか?悪かったな、リヴィア。明日迎えに来る」
「伯爵は直接登城願います。彼女は私が迎えに参ります」
「何故君に断られなくちゃならないんだ?」
「カイルセン様」
「分かった、分かった」
本を抱えて帰って行った。
その後、刺繍などの確認を終えて約束していた来客はもうない。
「ドレス、もう少し肌を隠すデザインにしたらどうだ」
「誰も興味など示しませんわ」
「(これでは目が離せない)」
翌日、王妃ともお会いするのでしっかりとめかし込んだ。
「リヴィア、あの男が気に入ったのか?」
「誰ですか、あの男とは」
「昨日の伯爵だ」
「何故そう思うのですか」
「そんなにめかし込んで」
「王妃様や王子殿下の婚約者達とのお茶会ですよ? 失礼の無いように当然めかし込むでしょう」
「そうか」
そんな話をしているうちに王城へ到着すると既に伯爵が待っていた。
「リヴィア」
「ごきげんよう、カイルセン様」
「王宮の庭師も驚くほどの美しく可憐な花の君を 私にエスコートさせてくれないか」
「どれを読んだのですか」
「全部読んだよ」
「目的が違いますよ。女ったらしを製造したかったわけではありませんからね」
「冷たくしないで欲しいな」
「近い」
カルフォン卿が私と伯爵の間に腕を差し入れた。
「君は近衛騎士だったのだなカルフォン卿。
リヴィア…まさか、王子妃に!?」
「少し違います」
「良かった。じゃあ、訳アリなんだな?」
「黙秘します」
そして謁見の間に通された。
多分伯爵が一緒だから応接間じゃないのね。
「久しいなアングラード伯爵」
「国王陛下にご挨拶を申し上げます」
「それでリヴィア嬢。何用かな」
「あの、先日の例え話が現実になりまして」
「あ~」
「伯爵と私は特に関係性はないのですが、伯爵の分家の従弟が私のクラスメイトで友人なのです。
彼にはいつも助けてもらっておりまして、恩がございます。伯爵家が没落すれば分家の男爵家はますます大変なことになるかと心配で、例のお手伝いに身が入らなそうで」
「リヴィア嬢、脅しか?」
「とんでもないことでございます」
「其方の嘘は分かりやすい。
では、事情を最初から簡潔に話してくれ」
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