【完結】悪魔に祈るとき

ユユ

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国王陛下の頼み事

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アングラード伯爵邸から戻ると、また国王陛下からが届いていた。

翌日の朝にカルフォン卿が迎えに来た。

私の長期休暇が……


そして国王陛下を待つ中でカルフォン卿に先に話した。

「貴族のプライドというか世間体を大事にするのか、醜聞を公にして没落の危機を防ぐのか、という問題に差し当たった方がおりまして」

「アングラード伯爵家がか」

「え!名前なんて出してません!」

「昨日、私と別れた後に向かった行き先はそこだろう。今日は朝から私が迎えに行ったのだから、会ったのはアングラード伯爵しか無さそうだと可能性で名前を出しただけだ」

「他言無用ですよ!絶対ですよ!」

「分かった、分かった」

「まあ、私が助言など烏滸がましいことでした」

「気になるのだな?」

「ティエリーにとっては本家で従兄弟ですからね」

「伯爵はまだ若かったな」


そんな話をしていると陛下とモロー隊長が入室した。
そして要件を聞いて天を仰ぐ。

陛「契約書だ。確認してくれ」

私「決まっているということですね?」

陛「そうとも言うな」

私「対価は通行証と……二行空きがありますが」

陛「其方の希望を聞いて記載しようと思ってな」

私「ここだけの話にしてもらえますか」

陛「何を」

私「お願いします」

陛「聞いてみないと」

私「例えば出来るのかどうか知りたいだけです」

陛「分かった。モロー隊長、カルフォン卿」

隊「口外しません」

カ「口外しません」

私「当主の妻が男性と駆け落ちした場合、駆け落ちしたその日に遡って離縁にすることは可能ですか」

陛「やれなくはないが、どの程度経過してるか、他の貴族達に気付かれているかで変わるな」

私「分かりました。ありがとうございます」

陛「それが対価の一つになるのか?」

私「余計なお世話かもしれませんので止めておきます。後、城内で私を婚約者候補として案内して回ったら城外でも私が婚約者候補だと思われますよね」

陛「そうなるな」

私「婚期、遅れそうですね」

陛「すまん」

私「対価をお金にしたら個人資産にできますか」

陛「もちろんだ」

私「学園を辞めてもいいですか」

陛「駄目だ」

隊「どうして辞めたいんだ?」

私「正確には辞めたいというよりは辞めさせられそうです」

隊「どういうことかな?カルフォン卿」

カ「そんなはずは」

私「乗馬を選択したのですが、出来が悪くて合格をもらえずに進級できず退学になる気がします」

カ「領地の男に教わったのだろう?」

私「私兵です!」

カ「それで?」

私「危ないから駄目だと領地のみんなに怒られました。そして説得している最中に陛下から王都に戻るようお手紙をいただきました」

陛「そんなに駄目か」

カ「可能性はあります」

隊「何が駄目なんだ」

カ「自分で乗れません。唯一の小柄な馬がリヴィア嬢の言うことをまるでききません」

陛「カルフォン卿、なんとかならないのか」

カ「ここか伯爵邸で特訓します」

私「対価は通行証とお金と……嘘をついたり騙したりしないことを要求します」

陛「言えないことは」

私「言えないと言って下されば」

陛「決まりだな。
先ずは王妃が茶に誘う。そこで婚約者候補2人と引き会わせる。その時は其方を新たな婚約者候補と紹介する。それで2人に悪意が無ければ任務上の偽婚約者候補だとバラそう」

私「かしこまりました」


お茶会は2日後だというので帰ってきた。

「お嬢様、アングラード伯爵家からお便りです」

「ありがとう」

読む気になれなくて未開封のままテーブルの上に置いた。一緒に渡された手紙の中にカシャ家のお茶会の招待状があった。

前回は幽閉されるまで接触が無かったのに今回はどうして……。
少しずつ未来を変えている弊害?


お父様には王宮で仕事をもらえたので引き受けたこと、それが卒業まで続くことを手紙に書いて領地へ送った。
もう一度領地に行こうとしていたのに出来なくなってしまったことも書いた。


翌朝はダラダラとベッドで過ごしていた。
そこにカルフォン卿が現れた。

「具合が悪いのか?」

「自分を甘やかそうと思いまして」

「どうした」

「忙しくなりそうですから」

「そうだな」

「聞くのが怖いんですけど、ご用は?」

「馬に乗る練習をしようと思って来てみたが、勝手に来て悪かった」

「有難いのですが、今日は昼前に来客があるので今からは難しいです」

「では帰るよ」

「お茶でもいかがですか。ドレス店の方が確認に来るだけですから」

「陛下が用意すると仰っていただろう」

「デビュータントのドレスです」

「ああ、来年の秋だろう」

「そうですが、店側には順番がありますから。
私のドレスがある程度準備が整ったらまた別の令嬢や夫人のドレスを手掛けるのです。

今は刺繍をしたりしている段階です。
イメージが合っているか確認します。

通常のドレスの客と、デビューの令嬢とその家族からの注文で繁忙しますので、注文自体は早めでないとダメなのです。
何ヶ月も前から注文するのでサイズが変わることもありますから、先にサイズ変更に影響を与えない部分から手がけます」

「なるほどな。
パートナーは決まっているの?」

「お兄様の予定でしたが、放浪してしまって連絡がつきませんので、他の方をあたります。
見つからなければ父に頼みます」

「私が申し入れたいが、教師がパートナーになるとまずい」

「はい。お気持ちだけ受け取ります」

そこに執事がやって来た。

「お嬢様、アングラード伯爵がお見えです」

「え?」

執事の目線はテーブルの上の未開封の手紙へと向けられていた。

「先触れ込みの手紙だったのね。少し待っていただいて」

「かしこまりました」


「そういうわけでカルフォン卿」

「話に付き添う」

そういってメガネをポケットから取り出した。

「いや、でも」

メイドが入ってくると彼は1人を捕まえて執事の元へ案内させていた。

私は着替えをして手紙を読み、応接間に足を踏み入れると知らない使用人が立っていた。
アングラード伯爵に挨拶をしてチラッと顔を見たら、使用人の服を着たカルフォン卿だった。
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