29 / 100
国王陛下の頼み事
しおりを挟む
アングラード伯爵邸から戻ると、また国王陛下から招待状が届いていた。
翌日の朝にカルフォン卿が迎えに来た。
私の長期休暇が……
そして国王陛下を待つ中でカルフォン卿に先に話した。
「貴族のプライドというか世間体を大事にするのか、醜聞を公にして没落の危機を防ぐのか、という問題に差し当たった方がおりまして」
「アングラード伯爵家がか」
「え!名前なんて出してません!」
「昨日、私と別れた後に向かった行き先はそこだろう。今日は朝から私が迎えに行ったのだから、会ったのはアングラード伯爵しか無さそうだと可能性で名前を出しただけだ」
「他言無用ですよ!絶対ですよ!」
「分かった、分かった」
「まあ、私が助言など烏滸がましいことでした」
「気になるのだな?」
「ティエリーにとっては本家で従兄弟ですからね」
「伯爵はまだ若かったな」
そんな話をしていると陛下とモロー隊長が入室した。
そして要件を聞いて天を仰ぐ。
陛「契約書だ。確認してくれ」
私「決まっているということですね?」
陛「そうとも言うな」
私「対価は通行証と……二行空きがありますが」
陛「其方の希望を聞いて記載しようと思ってな」
私「ここだけの話にしてもらえますか」
陛「何を」
私「お願いします」
陛「聞いてみないと」
私「例えば出来るのかどうか知りたいだけです」
陛「分かった。モロー隊長、カルフォン卿」
隊「口外しません」
カ「口外しません」
私「当主の妻が男性と駆け落ちした場合、駆け落ちしたその日に遡って離縁にすることは可能ですか」
陛「やれなくはないが、どの程度経過してるか、他の貴族達に気付かれているかで変わるな」
私「分かりました。ありがとうございます」
陛「それが対価の一つになるのか?」
私「余計なお世話かもしれませんので止めておきます。後、城内で私を婚約者候補として案内して回ったら城外でも私が婚約者候補だと思われますよね」
陛「そうなるな」
私「婚期、遅れそうですね」
陛「すまん」
私「対価をお金にしたら個人資産にできますか」
陛「もちろんだ」
私「学園を辞めてもいいですか」
陛「駄目だ」
隊「どうして辞めたいんだ?」
私「正確には辞めたいというよりは辞めさせられそうです」
隊「どういうことかな?カルフォン卿」
カ「そんなはずは」
私「乗馬を選択したのですが、出来が悪くて合格をもらえずに進級できず退学になる気がします」
カ「領地の男に教わったのだろう?」
私「私兵です!」
カ「それで?」
私「危ないから駄目だと領地のみんなに怒られました。そして説得している最中に陛下から王都に戻るようお手紙をいただきました」
陛「そんなに駄目か」
カ「可能性はあります」
隊「何が駄目なんだ」
カ「自分で乗れません。唯一の小柄な馬がリヴィア嬢の言うことをまるでききません」
陛「カルフォン卿、なんとかならないのか」
カ「城か伯爵邸で特訓します」
私「対価は通行証とお金と……嘘をついたり騙したりしないことを要求します」
陛「言えないことは」
私「言えないと言って下されば」
陛「決まりだな。
先ずは王妃が茶に誘う。そこで婚約者候補2人と引き会わせる。その時は其方を新たな婚約者候補と紹介する。それで2人に悪意が無ければ任務上の偽婚約者候補だとバラそう」
私「かしこまりました」
お茶会は2日後だというので帰ってきた。
「お嬢様、アングラード伯爵家からお便りです」
「ありがとう」
読む気になれなくて未開封のままテーブルの上に置いた。一緒に渡された手紙の中にカシャ家のお茶会の招待状があった。
前回は幽閉されるまで接触が無かったのに今回はどうして……。
少しずつ未来を変えている弊害?
お父様には王宮で仕事をもらえたので引き受けたこと、それが卒業まで続くことを手紙に書いて領地へ送った。
もう一度領地に行こうとしていたのに出来なくなってしまったことも書いた。
翌朝はダラダラとベッドで過ごしていた。
そこにカルフォン卿が現れた。
「具合が悪いのか?」
「自分を甘やかそうと思いまして」
「どうした」
「忙しくなりそうですから」
「そうだな」
「聞くのが怖いんですけど、ご用は?」
「馬に乗る練習をしようと思って来てみたが、勝手に来て悪かった」
「有難いのですが、今日は昼前に来客があるので今からは難しいです」
「では帰るよ」
「お茶でもいかがですか。ドレス店の方が確認に来るだけですから」
「陛下が用意すると仰っていただろう」
「デビュータントのドレスです」
「ああ、来年の秋だろう」
「そうですが、店側には順番がありますから。
私のドレスがある程度準備が整ったらまた別の令嬢や夫人のドレスを手掛けるのです。
今は刺繍をしたりしている段階です。
イメージが合っているか確認します。
通常のドレスの客と、デビューの令嬢とその家族からの注文で繁忙しますので、注文自体は早めでないとダメなのです。
何ヶ月も前から注文するのでサイズが変わることもありますから、先にサイズ変更に影響を与えない部分から手がけます」
「なるほどな。
パートナーは決まっているの?」
「お兄様の予定でしたが、放浪してしまって連絡がつきませんので、他の方をあたります。
見つからなければ父に頼みます」
「私が申し入れたいが、教師がパートナーになるとまずい」
「はい。お気持ちだけ受け取ります」
そこに執事がやって来た。
「お嬢様、アングラード伯爵がお見えです」
「え?」
執事の目線はテーブルの上の未開封の手紙へと向けられていた。
「先触れ込みの手紙だったのね。少し待っていただいて」
「かしこまりました」
「そういうわけでカルフォン卿」
「話に付き添う」
そういってメガネをポケットから取り出した。
「いや、でも」
メイドが入ってくると彼は1人を捕まえて執事の元へ案内させていた。
私は着替えをして手紙を読み、応接間に足を踏み入れると知らない使用人が立っていた。
アングラード伯爵に挨拶をしてチラッと顔を見たら、使用人の服を着たカルフォン卿だった。
翌日の朝にカルフォン卿が迎えに来た。
私の長期休暇が……
そして国王陛下を待つ中でカルフォン卿に先に話した。
「貴族のプライドというか世間体を大事にするのか、醜聞を公にして没落の危機を防ぐのか、という問題に差し当たった方がおりまして」
「アングラード伯爵家がか」
「え!名前なんて出してません!」
「昨日、私と別れた後に向かった行き先はそこだろう。今日は朝から私が迎えに行ったのだから、会ったのはアングラード伯爵しか無さそうだと可能性で名前を出しただけだ」
「他言無用ですよ!絶対ですよ!」
「分かった、分かった」
「まあ、私が助言など烏滸がましいことでした」
「気になるのだな?」
「ティエリーにとっては本家で従兄弟ですからね」
「伯爵はまだ若かったな」
そんな話をしていると陛下とモロー隊長が入室した。
そして要件を聞いて天を仰ぐ。
陛「契約書だ。確認してくれ」
私「決まっているということですね?」
陛「そうとも言うな」
私「対価は通行証と……二行空きがありますが」
陛「其方の希望を聞いて記載しようと思ってな」
私「ここだけの話にしてもらえますか」
陛「何を」
私「お願いします」
陛「聞いてみないと」
私「例えば出来るのかどうか知りたいだけです」
陛「分かった。モロー隊長、カルフォン卿」
隊「口外しません」
カ「口外しません」
私「当主の妻が男性と駆け落ちした場合、駆け落ちしたその日に遡って離縁にすることは可能ですか」
陛「やれなくはないが、どの程度経過してるか、他の貴族達に気付かれているかで変わるな」
私「分かりました。ありがとうございます」
陛「それが対価の一つになるのか?」
私「余計なお世話かもしれませんので止めておきます。後、城内で私を婚約者候補として案内して回ったら城外でも私が婚約者候補だと思われますよね」
陛「そうなるな」
私「婚期、遅れそうですね」
陛「すまん」
私「対価をお金にしたら個人資産にできますか」
陛「もちろんだ」
私「学園を辞めてもいいですか」
陛「駄目だ」
隊「どうして辞めたいんだ?」
私「正確には辞めたいというよりは辞めさせられそうです」
隊「どういうことかな?カルフォン卿」
カ「そんなはずは」
私「乗馬を選択したのですが、出来が悪くて合格をもらえずに進級できず退学になる気がします」
カ「領地の男に教わったのだろう?」
私「私兵です!」
カ「それで?」
私「危ないから駄目だと領地のみんなに怒られました。そして説得している最中に陛下から王都に戻るようお手紙をいただきました」
陛「そんなに駄目か」
カ「可能性はあります」
隊「何が駄目なんだ」
カ「自分で乗れません。唯一の小柄な馬がリヴィア嬢の言うことをまるでききません」
陛「カルフォン卿、なんとかならないのか」
カ「城か伯爵邸で特訓します」
私「対価は通行証とお金と……嘘をついたり騙したりしないことを要求します」
陛「言えないことは」
私「言えないと言って下されば」
陛「決まりだな。
先ずは王妃が茶に誘う。そこで婚約者候補2人と引き会わせる。その時は其方を新たな婚約者候補と紹介する。それで2人に悪意が無ければ任務上の偽婚約者候補だとバラそう」
私「かしこまりました」
お茶会は2日後だというので帰ってきた。
「お嬢様、アングラード伯爵家からお便りです」
「ありがとう」
読む気になれなくて未開封のままテーブルの上に置いた。一緒に渡された手紙の中にカシャ家のお茶会の招待状があった。
前回は幽閉されるまで接触が無かったのに今回はどうして……。
少しずつ未来を変えている弊害?
お父様には王宮で仕事をもらえたので引き受けたこと、それが卒業まで続くことを手紙に書いて領地へ送った。
もう一度領地に行こうとしていたのに出来なくなってしまったことも書いた。
翌朝はダラダラとベッドで過ごしていた。
そこにカルフォン卿が現れた。
「具合が悪いのか?」
「自分を甘やかそうと思いまして」
「どうした」
「忙しくなりそうですから」
「そうだな」
「聞くのが怖いんですけど、ご用は?」
「馬に乗る練習をしようと思って来てみたが、勝手に来て悪かった」
「有難いのですが、今日は昼前に来客があるので今からは難しいです」
「では帰るよ」
「お茶でもいかがですか。ドレス店の方が確認に来るだけですから」
「陛下が用意すると仰っていただろう」
「デビュータントのドレスです」
「ああ、来年の秋だろう」
「そうですが、店側には順番がありますから。
私のドレスがある程度準備が整ったらまた別の令嬢や夫人のドレスを手掛けるのです。
今は刺繍をしたりしている段階です。
イメージが合っているか確認します。
通常のドレスの客と、デビューの令嬢とその家族からの注文で繁忙しますので、注文自体は早めでないとダメなのです。
何ヶ月も前から注文するのでサイズが変わることもありますから、先にサイズ変更に影響を与えない部分から手がけます」
「なるほどな。
パートナーは決まっているの?」
「お兄様の予定でしたが、放浪してしまって連絡がつきませんので、他の方をあたります。
見つからなければ父に頼みます」
「私が申し入れたいが、教師がパートナーになるとまずい」
「はい。お気持ちだけ受け取ります」
そこに執事がやって来た。
「お嬢様、アングラード伯爵がお見えです」
「え?」
執事の目線はテーブルの上の未開封の手紙へと向けられていた。
「先触れ込みの手紙だったのね。少し待っていただいて」
「かしこまりました」
「そういうわけでカルフォン卿」
「話に付き添う」
そういってメガネをポケットから取り出した。
「いや、でも」
メイドが入ってくると彼は1人を捕まえて執事の元へ案内させていた。
私は着替えをして手紙を読み、応接間に足を踏み入れると知らない使用人が立っていた。
アングラード伯爵に挨拶をしてチラッと顔を見たら、使用人の服を着たカルフォン卿だった。
1,545
お気に入りに追加
1,978
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
「一晩一緒に過ごしただけで彼女面とかやめてくれないか」とあなたが言うから
キムラましゅろう
恋愛
長い間片想いをしていた相手、同期のディランが同じ部署の女性に「一晩共にすごしただけで彼女面とかやめてくれないか」と言っているのを聞いてしまったステラ。
「はいぃ勘違いしてごめんなさいぃ!」と思わず心の中で謝るステラ。
何故なら彼女も一週間前にディランと熱い夜をすごした後だったから……。
一話完結の読み切りです。
ご都合主義というか中身はありません。
軽い気持ちでサクッとお読み下さいませ。
誤字脱字、ごめんなさい!←最初に謝っておく。
小説家になろうさんにも時差投稿します。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる