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登校の再開
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事件から6週間後、登校を再開した。
「リヴィア!」
クラスメイドのみんなが歓迎してくれた。
「心配したわ」
「傷は全部治ったの?」
「怖かったろう」
「リヴィア」
「大丈夫よ。暇すぎてお父様が小鳥を飼ってくださったの。餌をあげすぎて太らせちゃったわ」
名前を口にすることしかできないティエリーは何度かお見舞いに来てくれた。
最初は事件から直ぐだ。
会うかどうか悩んだが、会った方がいい気がした。
彼は泣きながら謝っていた。
『ごめん…ごめん。目を離したから…』
『大したことはないの。ゴーグルを取られまいと私もムキになって抵抗しちゃって。
そもそもティエリーが気に病むことはないわ。貴方は子守りじゃないのよ?』
『ごめん…』
『本当に大したことはないの。殴られてもいないし。
ティエリーは本当に優しくて素敵な人だわ。友人になってくれてありがとう。
気を取り直して一緒におやつ食べよう?
食べたらお散歩付き合って』
『歩けるのか?』
『痣と引っ掻き傷だけなの。
なのにしばらく大人しくして3食おやつ付きで過ごしていたら判別できないくらい肥えちゃうわ。だから運動しないと。ダメ?』
『分かった。エスコートさせてもらうよ』
『ありがとう』
こうやって毎週末や放課後、お見舞いに来ては散歩に連れ出してくれた。庭だけど。
「勉強追いつける?」
「みんなで教えるから」
「大丈夫。家で勉強していたから」
そう。私は一度習ったし、もっと詳しく教わっている。
だからティエリーがお見舞いの際に勉強道具を持ってきて私に教えようとしたけど、
『ここもスペルミスしてるわよ』
『本当だ』
『あ~、これはこっちを先に計算するの』
『なるほど』
『この年は干魃に遭って…』
『これじゃ、私が教えてもらいに来ているみたいだ』
『いいじゃない』
その後も時々一緒に勉強をした。
そして中間テストでティエリーはBクラスにギリギリ入るくらいの順位にのし上がった。
そして乗馬クラスでは。
「ゴーグル。これじゃいつまで経っても手綱を任せられないじゃないか」
「でもキャンディスちゃん、人を見るんですもの」
少し小さめの馬の名はキャンディス。
私が普通サイズの馬に自力で乗れないからだ。
そしてこのキャンディスちゃんは私を玩具認定したようで言うことを聞かない。
補助手綱を握った先生が一緒に乗っている。
「このままじゃ進級できないぞ」
「先生ぇ~」
「甘えた声を出してもダメだ。
だから他の選択科目にすればよかったのに」
「剣術?」
「しばくぞ」
「縛る?」
「し・ば・く!」
「びっくりしました。先生、ついに本性出したかと、キャア!」
私のお腹に腕を回しガッチリ抱えながら襲歩に切り替えた。
「この速さで走れないとダメだし、止まれ曲がれも自在にできないと合格をもらえない」
数分後、常足に戻った。
「じゃあ、他の馬に乗ります。持ち込みはダメですか」
「持ち込みなんて聞いたことがないな」
「うちの馬の方が言うことを聞きます」
「でも他の生徒も持ち込みと言い出したら収集がつかない。多分許可はおりないだろう」
「仕方ない。大きな馬にも乗れる練習をしてきます」
「何処で」
「屋敷です」
「見れる人がいるのか?」
「領地にいます。
兄様のような人が私兵にいるのです。
彼なら安心して身を任せられます」
「そうか。気を付けろよ。
次!」
先生は私を下ろして他の子を乗せて走らせていた。
「ティエリー、その馬に近寄っていい?」
「いいよ。キャンディスはダメか」
「うん。全然言うことをきかないの」
「こっちにおいで」
「カルム、よしよし。……カルム、お座り」
「リヴィア?」
「お利口さんだからやるかなって」
「やらないだろう」
「あのね、カルム」
私はカルムの耳元で内緒話をした。
するとカルムが座った。座ったというか伏せだろうか。
「やった!」
「ウソだろう!?」
カルムが座った隙に乗った。
そして首元を撫でると立ち上がった。
「ひゃあっ!」
「リヴィア!」
馬が立ち上がる勢いでバランスを崩して落ちてしまった…が、ティエリーが抱き止めてくれた。
「ありがとう、ティエリー」
「寿命が縮まる!」
「ごめん。こんなに勢いがつくとは」
そこに生徒を乗せたまま先生がやってきた。
「大丈夫か!」
「大丈夫です。ティエリーが守ってくれました」
「怪我は」
「ありません」
「お前は先生の立ち会い無しに乗るな」
「……はい」
先生が戻って生徒へ指導を再開した。
「怒られちゃった」
「落ち込むことはないよ。乗馬ならこんなこともある。生き物だからな。
それに先生は心配してるんだ。ああやって教えている間もリヴィアを視界に入れて見守っているんだ」
「そう?」
「バランスを崩しだしたところでこっちに向かってきた。間違いないよ。先生のいう通りにしよう」
「うん」
翌日、カルムに角砂糖を一つあげた。
「リヴィア!」
クラスメイドのみんなが歓迎してくれた。
「心配したわ」
「傷は全部治ったの?」
「怖かったろう」
「リヴィア」
「大丈夫よ。暇すぎてお父様が小鳥を飼ってくださったの。餌をあげすぎて太らせちゃったわ」
名前を口にすることしかできないティエリーは何度かお見舞いに来てくれた。
最初は事件から直ぐだ。
会うかどうか悩んだが、会った方がいい気がした。
彼は泣きながら謝っていた。
『ごめん…ごめん。目を離したから…』
『大したことはないの。ゴーグルを取られまいと私もムキになって抵抗しちゃって。
そもそもティエリーが気に病むことはないわ。貴方は子守りじゃないのよ?』
『ごめん…』
『本当に大したことはないの。殴られてもいないし。
ティエリーは本当に優しくて素敵な人だわ。友人になってくれてありがとう。
気を取り直して一緒におやつ食べよう?
食べたらお散歩付き合って』
『歩けるのか?』
『痣と引っ掻き傷だけなの。
なのにしばらく大人しくして3食おやつ付きで過ごしていたら判別できないくらい肥えちゃうわ。だから運動しないと。ダメ?』
『分かった。エスコートさせてもらうよ』
『ありがとう』
こうやって毎週末や放課後、お見舞いに来ては散歩に連れ出してくれた。庭だけど。
「勉強追いつける?」
「みんなで教えるから」
「大丈夫。家で勉強していたから」
そう。私は一度習ったし、もっと詳しく教わっている。
だからティエリーがお見舞いの際に勉強道具を持ってきて私に教えようとしたけど、
『ここもスペルミスしてるわよ』
『本当だ』
『あ~、これはこっちを先に計算するの』
『なるほど』
『この年は干魃に遭って…』
『これじゃ、私が教えてもらいに来ているみたいだ』
『いいじゃない』
その後も時々一緒に勉強をした。
そして中間テストでティエリーはBクラスにギリギリ入るくらいの順位にのし上がった。
そして乗馬クラスでは。
「ゴーグル。これじゃいつまで経っても手綱を任せられないじゃないか」
「でもキャンディスちゃん、人を見るんですもの」
少し小さめの馬の名はキャンディス。
私が普通サイズの馬に自力で乗れないからだ。
そしてこのキャンディスちゃんは私を玩具認定したようで言うことを聞かない。
補助手綱を握った先生が一緒に乗っている。
「このままじゃ進級できないぞ」
「先生ぇ~」
「甘えた声を出してもダメだ。
だから他の選択科目にすればよかったのに」
「剣術?」
「しばくぞ」
「縛る?」
「し・ば・く!」
「びっくりしました。先生、ついに本性出したかと、キャア!」
私のお腹に腕を回しガッチリ抱えながら襲歩に切り替えた。
「この速さで走れないとダメだし、止まれ曲がれも自在にできないと合格をもらえない」
数分後、常足に戻った。
「じゃあ、他の馬に乗ります。持ち込みはダメですか」
「持ち込みなんて聞いたことがないな」
「うちの馬の方が言うことを聞きます」
「でも他の生徒も持ち込みと言い出したら収集がつかない。多分許可はおりないだろう」
「仕方ない。大きな馬にも乗れる練習をしてきます」
「何処で」
「屋敷です」
「見れる人がいるのか?」
「領地にいます。
兄様のような人が私兵にいるのです。
彼なら安心して身を任せられます」
「そうか。気を付けろよ。
次!」
先生は私を下ろして他の子を乗せて走らせていた。
「ティエリー、その馬に近寄っていい?」
「いいよ。キャンディスはダメか」
「うん。全然言うことをきかないの」
「こっちにおいで」
「カルム、よしよし。……カルム、お座り」
「リヴィア?」
「お利口さんだからやるかなって」
「やらないだろう」
「あのね、カルム」
私はカルムの耳元で内緒話をした。
するとカルムが座った。座ったというか伏せだろうか。
「やった!」
「ウソだろう!?」
カルムが座った隙に乗った。
そして首元を撫でると立ち上がった。
「ひゃあっ!」
「リヴィア!」
馬が立ち上がる勢いでバランスを崩して落ちてしまった…が、ティエリーが抱き止めてくれた。
「ありがとう、ティエリー」
「寿命が縮まる!」
「ごめん。こんなに勢いがつくとは」
そこに生徒を乗せたまま先生がやってきた。
「大丈夫か!」
「大丈夫です。ティエリーが守ってくれました」
「怪我は」
「ありません」
「お前は先生の立ち会い無しに乗るな」
「……はい」
先生が戻って生徒へ指導を再開した。
「怒られちゃった」
「落ち込むことはないよ。乗馬ならこんなこともある。生き物だからな。
それに先生は心配してるんだ。ああやって教えている間もリヴィアを視界に入れて見守っているんだ」
「そう?」
「バランスを崩しだしたところでこっちに向かってきた。間違いないよ。先生のいう通りにしよう」
「うん」
翌日、カルムに角砂糖を一つあげた。
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