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診察
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医務室の前で、先生が大声を出すと中から人が出てきた。
「!! 怪我人ですか!?」
「そうだ。事件の被害者だ。詳細な診断報告書が欲しい」
「かしこまりました。こちらのベッドに降ろしてください」
ギシッ
「リヴィア、治療だから離してくれ」
ゆっくり腕を解いた。
「よし。ここは学校じゃないから安心していい。
治療中は部屋にいるからな」
コクン
「先生、お願いします」
「さあ、お嬢さん。傷の確認をしようね」
カーテンを閉められて、服を脱がされて傷の場所を記録していく。
バン!
「何があった!!」
カーテンの向こうで知った声が騒いでいる。
「隊長、治療中です。静かにしてください。事情を話しますから」
「中にいるのはリヴィアなのか!?」
「そうです。お願いですから静かにしてください。
この後もやるべき事があるのです」
その後はヒソヒソと話しているようだが時折誰かが壁を叩く。
ドンっ!
「止めてください。患者が怯えています!」
「す、すまない」
そして治療が終わるとカーテンが開けられた。
「リヴィア!」
「モロー隊長」
「先生、リヴィアは」
「痣の確認をしたいので今日はこのまま泊まってもらって明日再度 確認をして診断報告書を仕上げます。骨折などはありません。殴られてはいません」
モロー隊長は廊下で大声を出した。
「おい!誰か!三階の貴賓室を用意してくれ!」
メイドが駆け付けて入室した。
「ご案内させていただきます」
今度はモロー隊長に抱えられて移動した。
「歩けますから」
「患者服では駄目だ」
「先生」
「ゴーグルは壊れたな」
「買ったばかりなんです。私の顔の形に合わせた特注だったのに」
「馬具屋に行ったのか」
「はい。高かったんです」
「たくさん買ってやる」
「先生、贔屓になってしまうので自分で買います」
「言わなきゃいい」
そして部屋に通されてベッドに寝かされた。
「俺達は伯爵家に連絡を出したら学園に行ってくるから、寝てろよ。家の人が来たら会わせてもいいが帰さず待たせてくれ」
「分かりました」
モロー隊長がメイドに指示を出した。
「医者か家族以外通すな。例え王族でもな」
「え!」
「任せたぞ」
「困りますっ!」
メイドが青ざめていた。
「大丈夫です。私がこの部屋にいるとバレなければいいのですから」
「ですが、」
「すぐに戻るはずですから」
【 馬乗りになっていた侯爵家の次男
アレックス・エナードの視点 】
あの教師!私を散々蹴りやがって!
クビにしてやる!!
「早くエナード家に知らせてください!」
「知らせているので騒がないように。騒いでも事態は悪化するだけですよ」
「アレックス、静かにしようよ」
「ヤニク!こんなに酷い目に遭わされたんだぞ!」
「こんな事を知られたらどうなるか……」
「どうもなにもないだろう!」
「僕は何であんな事をしちゃったんだろう。
あんなに嫌がっていたのに」
「抵抗しなければこんな事にはならなかったんだ!」
あれから3時間近く待たされてやっと進展がありそうだ。会議室に連れてこられ、入室すると、学園長、医師、助手、馬術の教師、父上と多分ヤニクの親父と、あと知らない顔がひとりいた。
ア「父上!こいつが、」
長「座りなさい」
ア「こいつが私を、」
長「座りなさい!
エナード侯爵、こんな簡単なこともできないとは。どのような躾をなさったのですか」
父「学園長 申し訳ありません。アレックス、座れ」
ア「っ!」
長「アレックスくんとヤニクくんはいいと言うまで口を開かないように。
今回の議題は、ご子息達が1人の令嬢を納屋で襲ったことです」
ア「襲ったなどと!」
長「アレックスくん。君は犬以下だ。犬は躾ければ“待て”ができる」
ア「なっ!」
長「できないなら物理的に話せなくしても構わないのだがね」
父「申し訳ありません。アレックス、黙れ」
ア「っ!」
長「2人が女生徒を引き倒し、アレックスくんが上に乗り押さえ付け、口を塞ぎました。
ヤニクくんは令嬢の付けていた乗馬用のゴーグルを外そうとしていました。
女生徒は“嫌”、“止めて”と言いました。そして力の限り抵抗しました。アレックスくんの手の歯形はその時のものです」
父上が私を睨み付けた。
長「そこにアンドレ先生が駆け付けました」
ヤ父「何も息子達をこんなにしなくても」
先「これでもかなり手加減しました。じゃないと死んでしまうので。
私は彼らのようなクズが大嫌いなのです。
2人の男が女の子を押さえつけて暴力を振るうなど考えられません。野蛮極まりない」
ア「暴力を振るったのはアンドレ先生で私達は暴力を振るったわけじゃありません!」
長「“黙れ”という命令が理解出来ないのだな」
父「いい加減に黙れ!」
ア「っ!」
長「王宮に在中している医師が被害女生徒の手当てをして診察をしました。これが報告書です」
2人の父親がテーブルに置かれた報告書を見た。
医「人体の形をしている絵を見てください。
こちらが前面、こちらが背面です。
この斜線の部分が痣です。
もう一度明日診察しますが、これ以上増えます。
手首には爪が食い込んだ痕があります。
口の端は切れて出血をしていました。
上から強く口を押さえたので歯茎からも出血をしています。
顔や頭部や手の引っ掻き傷は10ヶ所以上です。
それでも暴力では無かったと?」
モ「私は身分や名前は明かしませんが、国王陛下直属の部隊長をしています。
これは被害女生徒が着ていた乗馬用の服です。
背面は泥だらけ。前面は破れている部分もあります。
これはブーツです。入学してから買ったもので授業の時にしか履いておりません。後ろ側がこんなに傷だらけです。かなり抵抗したことが分かります。
これはゴーグルです。買ったばかりなのに壊れました。普通は壊れないんですよ。どれだけ力任せに引っ張ったことか。これを彼女は装着していました。場合によっては失目したかもしれないのですよ。それても暴力では無かったと?」
部隊長と名乗る男は語気を強めた。
「!! 怪我人ですか!?」
「そうだ。事件の被害者だ。詳細な診断報告書が欲しい」
「かしこまりました。こちらのベッドに降ろしてください」
ギシッ
「リヴィア、治療だから離してくれ」
ゆっくり腕を解いた。
「よし。ここは学校じゃないから安心していい。
治療中は部屋にいるからな」
コクン
「先生、お願いします」
「さあ、お嬢さん。傷の確認をしようね」
カーテンを閉められて、服を脱がされて傷の場所を記録していく。
バン!
「何があった!!」
カーテンの向こうで知った声が騒いでいる。
「隊長、治療中です。静かにしてください。事情を話しますから」
「中にいるのはリヴィアなのか!?」
「そうです。お願いですから静かにしてください。
この後もやるべき事があるのです」
その後はヒソヒソと話しているようだが時折誰かが壁を叩く。
ドンっ!
「止めてください。患者が怯えています!」
「す、すまない」
そして治療が終わるとカーテンが開けられた。
「リヴィア!」
「モロー隊長」
「先生、リヴィアは」
「痣の確認をしたいので今日はこのまま泊まってもらって明日再度 確認をして診断報告書を仕上げます。骨折などはありません。殴られてはいません」
モロー隊長は廊下で大声を出した。
「おい!誰か!三階の貴賓室を用意してくれ!」
メイドが駆け付けて入室した。
「ご案内させていただきます」
今度はモロー隊長に抱えられて移動した。
「歩けますから」
「患者服では駄目だ」
「先生」
「ゴーグルは壊れたな」
「買ったばかりなんです。私の顔の形に合わせた特注だったのに」
「馬具屋に行ったのか」
「はい。高かったんです」
「たくさん買ってやる」
「先生、贔屓になってしまうので自分で買います」
「言わなきゃいい」
そして部屋に通されてベッドに寝かされた。
「俺達は伯爵家に連絡を出したら学園に行ってくるから、寝てろよ。家の人が来たら会わせてもいいが帰さず待たせてくれ」
「分かりました」
モロー隊長がメイドに指示を出した。
「医者か家族以外通すな。例え王族でもな」
「え!」
「任せたぞ」
「困りますっ!」
メイドが青ざめていた。
「大丈夫です。私がこの部屋にいるとバレなければいいのですから」
「ですが、」
「すぐに戻るはずですから」
【 馬乗りになっていた侯爵家の次男
アレックス・エナードの視点 】
あの教師!私を散々蹴りやがって!
クビにしてやる!!
「早くエナード家に知らせてください!」
「知らせているので騒がないように。騒いでも事態は悪化するだけですよ」
「アレックス、静かにしようよ」
「ヤニク!こんなに酷い目に遭わされたんだぞ!」
「こんな事を知られたらどうなるか……」
「どうもなにもないだろう!」
「僕は何であんな事をしちゃったんだろう。
あんなに嫌がっていたのに」
「抵抗しなければこんな事にはならなかったんだ!」
あれから3時間近く待たされてやっと進展がありそうだ。会議室に連れてこられ、入室すると、学園長、医師、助手、馬術の教師、父上と多分ヤニクの親父と、あと知らない顔がひとりいた。
ア「父上!こいつが、」
長「座りなさい」
ア「こいつが私を、」
長「座りなさい!
エナード侯爵、こんな簡単なこともできないとは。どのような躾をなさったのですか」
父「学園長 申し訳ありません。アレックス、座れ」
ア「っ!」
長「アレックスくんとヤニクくんはいいと言うまで口を開かないように。
今回の議題は、ご子息達が1人の令嬢を納屋で襲ったことです」
ア「襲ったなどと!」
長「アレックスくん。君は犬以下だ。犬は躾ければ“待て”ができる」
ア「なっ!」
長「できないなら物理的に話せなくしても構わないのだがね」
父「申し訳ありません。アレックス、黙れ」
ア「っ!」
長「2人が女生徒を引き倒し、アレックスくんが上に乗り押さえ付け、口を塞ぎました。
ヤニクくんは令嬢の付けていた乗馬用のゴーグルを外そうとしていました。
女生徒は“嫌”、“止めて”と言いました。そして力の限り抵抗しました。アレックスくんの手の歯形はその時のものです」
父上が私を睨み付けた。
長「そこにアンドレ先生が駆け付けました」
ヤ父「何も息子達をこんなにしなくても」
先「これでもかなり手加減しました。じゃないと死んでしまうので。
私は彼らのようなクズが大嫌いなのです。
2人の男が女の子を押さえつけて暴力を振るうなど考えられません。野蛮極まりない」
ア「暴力を振るったのはアンドレ先生で私達は暴力を振るったわけじゃありません!」
長「“黙れ”という命令が理解出来ないのだな」
父「いい加減に黙れ!」
ア「っ!」
長「王宮に在中している医師が被害女生徒の手当てをして診察をしました。これが報告書です」
2人の父親がテーブルに置かれた報告書を見た。
医「人体の形をしている絵を見てください。
こちらが前面、こちらが背面です。
この斜線の部分が痣です。
もう一度明日診察しますが、これ以上増えます。
手首には爪が食い込んだ痕があります。
口の端は切れて出血をしていました。
上から強く口を押さえたので歯茎からも出血をしています。
顔や頭部や手の引っ掻き傷は10ヶ所以上です。
それでも暴力では無かったと?」
モ「私は身分や名前は明かしませんが、国王陛下直属の部隊長をしています。
これは被害女生徒が着ていた乗馬用の服です。
背面は泥だらけ。前面は破れている部分もあります。
これはブーツです。入学してから買ったもので授業の時にしか履いておりません。後ろ側がこんなに傷だらけです。かなり抵抗したことが分かります。
これはゴーグルです。買ったばかりなのに壊れました。普通は壊れないんですよ。どれだけ力任せに引っ張ったことか。これを彼女は装着していました。場合によっては失目したかもしれないのですよ。それても暴力では無かったと?」
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