17 / 100
選択科目
しおりを挟む
2日後。
「何やってるんですか先生」
「何がだ」
「何でAクラスの人達と一緒なんですか」
「選択科目だからだ。書いてあったろう」
「……私のことは名前で呼ばないでください。
オイとか、お前とかでいいですから」
「お前の友達にも言っておくんだな。
ソレ、外さないつもりか」
「目にゴミが入ったら危険ですからね」
「ゴミが危険なら乗馬は崖っぷちで逆立ちするくらい危険だ」
「先生、私にだけ容赦ない気がします」
「親身といえ」
「やっぱり求婚、」
「違う!」
初回は馬を撫でたり手入れをしたり厩舎の掃除をすることになった。
私はAクラスが行きそうにない厩舎掃除にした。
「リヴィア、ゴーグルずっとつけてるな」
「ティエリー、私は存在しないの。名前で呼ばないで」
「ハニー」
「怒られる」
「ボス」
「何で」
「何がいいんだ?」
「“ねえ”とか“オイ”とか“お前”とか“君”とか」
「リヴィアにそんな呼び方したら私の印象が悪くなる」
「うっ、そうよね。ごめんなさい」
「あ~、隠れているつもりなんだな?」
「そうなの」
「それで人気のない厩舎掃除か。でもな。時間の問題だと思うぞ?」
「ティエリぃー」
「分かった、分かった。あだ名はみんなで考えよう」
「ありがとう。
いっそ、このゴーグルずっとつけようかしら」
「その形で日焼けしたら最悪だぞ」
「うっ…」
「早めに外さないとゴーグルの痕が付いて笑われるぞ」
「眼鏡がいるわね」
乗馬クラスはヘンリー王子だけだった。
クラスメイトの情報ではカシャ公爵令息と大臣の子息はダンス、団長の子息は剣術、コーネリア様は詩歌らしい。
「よーし、集まれー!」
後ろの方でティエリーの影に隠れながら集まった。
「一人ずつ馬を引いて歩いてもらうから、呼んだら来い。それまでは馬を触っていた者は厩舎の掃除、掃除をしていた者は馬に触れたり手入れをしろ。
先ずはそこのゴーグル。来い」
もしかして私!?
「早く来い」
「ゴーグルが到着しました」
「……手綱を持て」
「はい」
「ゆっくり歩いて引くぞ。絶対にそれ以上引くなよ」
「はい」
半分まで来たところで、話しかけた。
「高貴なお方達が馬糞掃除なんて大丈夫でしょうか」
「生き物を扱うということはそういうことだ。よそ見をするな」
「はい」
一周回って別の子に交代した。
「あれ?先生も交代?」
「お前が危険だからだ。ほら、馬のところに行くぞ」
「はい」
もしかして問題児扱いなのかしら。
まだ何もしていないのにな。
その後は馬に押されて転倒して怒られた。
「ちょっと押されたくらいで転ばないでくれ」
「あんなに力が強いとは」
「蹴られて死ぬ奴もいるんだ」
「お尻が痛い」
「見せてみろ」
「本気ですか」
「冗談だ。見せるな。医務室に行け」
「そこまでじゃありません」
「帰ったらメイドに見てもらえ」
「はい」
片付けの時、私を伯爵令嬢と思わず コキ使おうとしたAクラスの生徒達がいた。
「ゴーグルさん、ここ磨いてくれる?」
「その後はこれ洗ってよ」
「お前達。今日は出席の判子は捺さないぞ」
「えっ」
「何でですか」
「ゴーグルは同級生であってお前達の使用人ではない。なぜお前達に与えられた役割をゴーグルがしなくてはならない。
納得のいく説明ができたら判子を捺してやる」
「慣れているかと思いました」
「どう見たって初心者だろう。ゴーグルが逆さまだ」
ちょっと!早く言ってよ!
「慣れていると言ったらヘンリー殿下だろう。何故彼にやっておいてと言わないんだ」
「王子殿下には……」
「身分で選んだというわけか。
ゴーグルは、磨けと言ったロビンスと同じ伯爵家だ。洗えと言ったコルンより格上だ。
そもそも男として終わってる。
女にさせようだなんて恥ずかしくないのか。
ただでさえ、ゴーグルは前半に汚くて慣れない力のいる作業を率先して取り組み、腕が震えているんだ。
ゴーグル。お前は問題児だが、心意気はいい」
褒め言葉の前に余計な言葉を付けないで!
「いいか、手伝うと申し出るならともかく、この二人のように誰かにやらせようなどとしたら、その授業時間の判子は捺さない。
意欲無しという判定だ。
いくら馬に上手く乗れたとしても関係ない。お綺麗な馬乗りだけしたいなら屋敷でやれ。他の選択クラスを選ぶんだったな。
もう変えられないから退学するか従うかだ。好きにしてくれ」
「すみませんでした、ゴーグルさん」
「もうしません、ゴーグルさん」
「みんなで仲良く単位をとりましょうね。
先生、今日だけ大目に見てください。もう充分反省しましたから」
「仕方ないな」
「「ありがとうございます、ゴーグルさん、先生」」
「ちなみにゴーグル。そのゴーグルは乗馬用じゃないからな。だから逆さまでも運良く使えたんだ」
「早く言ってくださいよ!」
「知ってるかと思って」
「逆さとか違うとか、こっそり教えてくれたっていいじゃないですか」
「ゴーグルは一番素人だから人より予習が必要だったのに怠けたからだ。馬具専門店に行けば間違えることはなかった。何処で手に入れた」
「庭師のゴーグルを持ってきました」
「今頃探しているだろう」
「新しいのを買ってあげているので大丈夫です」
「用途は言わなかったのか」
「はい」
「護衛の中に馬に乗れる奴がいるだろう。もしくは御者に聞け」
「分かりました。ありがとうございます」
「何やってるんですか先生」
「何がだ」
「何でAクラスの人達と一緒なんですか」
「選択科目だからだ。書いてあったろう」
「……私のことは名前で呼ばないでください。
オイとか、お前とかでいいですから」
「お前の友達にも言っておくんだな。
ソレ、外さないつもりか」
「目にゴミが入ったら危険ですからね」
「ゴミが危険なら乗馬は崖っぷちで逆立ちするくらい危険だ」
「先生、私にだけ容赦ない気がします」
「親身といえ」
「やっぱり求婚、」
「違う!」
初回は馬を撫でたり手入れをしたり厩舎の掃除をすることになった。
私はAクラスが行きそうにない厩舎掃除にした。
「リヴィア、ゴーグルずっとつけてるな」
「ティエリー、私は存在しないの。名前で呼ばないで」
「ハニー」
「怒られる」
「ボス」
「何で」
「何がいいんだ?」
「“ねえ”とか“オイ”とか“お前”とか“君”とか」
「リヴィアにそんな呼び方したら私の印象が悪くなる」
「うっ、そうよね。ごめんなさい」
「あ~、隠れているつもりなんだな?」
「そうなの」
「それで人気のない厩舎掃除か。でもな。時間の問題だと思うぞ?」
「ティエリぃー」
「分かった、分かった。あだ名はみんなで考えよう」
「ありがとう。
いっそ、このゴーグルずっとつけようかしら」
「その形で日焼けしたら最悪だぞ」
「うっ…」
「早めに外さないとゴーグルの痕が付いて笑われるぞ」
「眼鏡がいるわね」
乗馬クラスはヘンリー王子だけだった。
クラスメイトの情報ではカシャ公爵令息と大臣の子息はダンス、団長の子息は剣術、コーネリア様は詩歌らしい。
「よーし、集まれー!」
後ろの方でティエリーの影に隠れながら集まった。
「一人ずつ馬を引いて歩いてもらうから、呼んだら来い。それまでは馬を触っていた者は厩舎の掃除、掃除をしていた者は馬に触れたり手入れをしろ。
先ずはそこのゴーグル。来い」
もしかして私!?
「早く来い」
「ゴーグルが到着しました」
「……手綱を持て」
「はい」
「ゆっくり歩いて引くぞ。絶対にそれ以上引くなよ」
「はい」
半分まで来たところで、話しかけた。
「高貴なお方達が馬糞掃除なんて大丈夫でしょうか」
「生き物を扱うということはそういうことだ。よそ見をするな」
「はい」
一周回って別の子に交代した。
「あれ?先生も交代?」
「お前が危険だからだ。ほら、馬のところに行くぞ」
「はい」
もしかして問題児扱いなのかしら。
まだ何もしていないのにな。
その後は馬に押されて転倒して怒られた。
「ちょっと押されたくらいで転ばないでくれ」
「あんなに力が強いとは」
「蹴られて死ぬ奴もいるんだ」
「お尻が痛い」
「見せてみろ」
「本気ですか」
「冗談だ。見せるな。医務室に行け」
「そこまでじゃありません」
「帰ったらメイドに見てもらえ」
「はい」
片付けの時、私を伯爵令嬢と思わず コキ使おうとしたAクラスの生徒達がいた。
「ゴーグルさん、ここ磨いてくれる?」
「その後はこれ洗ってよ」
「お前達。今日は出席の判子は捺さないぞ」
「えっ」
「何でですか」
「ゴーグルは同級生であってお前達の使用人ではない。なぜお前達に与えられた役割をゴーグルがしなくてはならない。
納得のいく説明ができたら判子を捺してやる」
「慣れているかと思いました」
「どう見たって初心者だろう。ゴーグルが逆さまだ」
ちょっと!早く言ってよ!
「慣れていると言ったらヘンリー殿下だろう。何故彼にやっておいてと言わないんだ」
「王子殿下には……」
「身分で選んだというわけか。
ゴーグルは、磨けと言ったロビンスと同じ伯爵家だ。洗えと言ったコルンより格上だ。
そもそも男として終わってる。
女にさせようだなんて恥ずかしくないのか。
ただでさえ、ゴーグルは前半に汚くて慣れない力のいる作業を率先して取り組み、腕が震えているんだ。
ゴーグル。お前は問題児だが、心意気はいい」
褒め言葉の前に余計な言葉を付けないで!
「いいか、手伝うと申し出るならともかく、この二人のように誰かにやらせようなどとしたら、その授業時間の判子は捺さない。
意欲無しという判定だ。
いくら馬に上手く乗れたとしても関係ない。お綺麗な馬乗りだけしたいなら屋敷でやれ。他の選択クラスを選ぶんだったな。
もう変えられないから退学するか従うかだ。好きにしてくれ」
「すみませんでした、ゴーグルさん」
「もうしません、ゴーグルさん」
「みんなで仲良く単位をとりましょうね。
先生、今日だけ大目に見てください。もう充分反省しましたから」
「仕方ないな」
「「ありがとうございます、ゴーグルさん、先生」」
「ちなみにゴーグル。そのゴーグルは乗馬用じゃないからな。だから逆さまでも運良く使えたんだ」
「早く言ってくださいよ!」
「知ってるかと思って」
「逆さとか違うとか、こっそり教えてくれたっていいじゃないですか」
「ゴーグルは一番素人だから人より予習が必要だったのに怠けたからだ。馬具専門店に行けば間違えることはなかった。何処で手に入れた」
「庭師のゴーグルを持ってきました」
「今頃探しているだろう」
「新しいのを買ってあげているので大丈夫です」
「用途は言わなかったのか」
「はい」
「護衛の中に馬に乗れる奴がいるだろう。もしくは御者に聞け」
「分かりました。ありがとうございます」
1,562
お気に入りに追加
1,978
あなたにおすすめの小説
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
「一晩一緒に過ごしただけで彼女面とかやめてくれないか」とあなたが言うから
キムラましゅろう
恋愛
長い間片想いをしていた相手、同期のディランが同じ部署の女性に「一晩共にすごしただけで彼女面とかやめてくれないか」と言っているのを聞いてしまったステラ。
「はいぃ勘違いしてごめんなさいぃ!」と思わず心の中で謝るステラ。
何故なら彼女も一週間前にディランと熱い夜をすごした後だったから……。
一話完結の読み切りです。
ご都合主義というか中身はありません。
軽い気持ちでサクッとお読み下さいませ。
誤字脱字、ごめんなさい!←最初に謝っておく。
小説家になろうさんにも時差投稿します。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる