3 / 100
疑惑
しおりを挟む
事件の発覚の発端について詳しく教えて欲しいと言われ、溜息が出そうになった。
私「ただ、私のことが嫌いなのでないかと思った使用人の調査を頼んだだけでございます、陛下」
陛「7人も?」
私「ショックでしたが、そう見えました」
陛「今までは気が付かなかったのか、それとも黙っていただけか?」
私「そういう目で見ようとしていなかっただけでございます」
陛「的中率がすごいな」
私「それは分かりません。漏れている可能性もございます」
陛「そうか。
ホロン隊長から説明があったと思うが、遺憾に思う」
私「まさか自分達にこのようなことがふり掛かるとは思ってもおりませでした」
陛「実はハリソン侯爵から謝罪の機会を作ってもらいたいと言われていてな」
私「調査が終わらないと何とも…」
陛「終わったのではないのか」
父「追加調査が生じまして、まだ解決とは言い難い状態です」
あ~、特務部の人が反応したわ。
特「失礼、伯爵。それはどういうことかご存知であれば教えていただけますか」
お父様が説明すると、視線がこっちに向いた。
特「何故そう思うのですか」
私「自分に置き換えただけですわ。
私や母に領地での事業の細かな進捗報告がありませんもの」
特「なるほど」
私「ただ、私は侯爵夫人や令嬢と会話をしておりません。ハリソン家では夫人や令嬢が積極的にハリソン家の事業について把握なさっていた可能性もございます」
特「君は侯爵を疑っていますか?」
私「実際に侯爵家の毒を盛られたのです。可能性がある懸念を追いかけないのはよろしくありませんわ」
陛「話は変わるが、王子妃に立候補しなかったのは何故だか教えてもらえるか」
私「私が王子妃に相応しくないからです」
陛「そうは思わないがな」
私「私を除外していただくために、正直な気持ちをお伝えいたします。
私は王子殿下を異性としてお慕いしておりませんし、王子妃となりお支えしようという高い志も持っておりません。後ろ盾にするには平凡な家門です。
私を選ぶことは最善とは思えません」
陛「もし王命を出したらどうなると思う?」
私「王命ならば嫁がねばならないでしょう。ですがお望みの未来にはならないと思います」
陛「そう仕向けるということか」
私「申し上げました通り、愛も志も力も持っていません。仕向ける訳ではございません。必然的にそうなると思えてしまうだけです」
陛「ヘンリーにも勘がはたらいたと?」
私「王子妃に相応しくないとお感じになるでしょう」
陛「ヘンリーが其方を嫌いだと感じたのか」
私「無理を通せば そうなっていくと思いました」
陛「仲の悪い夫婦でも政略結婚だと割り切って役目を果たす者もいる」
私「私にはできそうにもございません」
陛「伯爵はどう思う」
父「伯爵家としてはリヴィアに政略結婚を望んでおりません。娘の勘を信じます」
陛「そうか。残念だ。とても素敵なレディだと思ったのだがな」
陛下が立ち上がったので全員が立ち上がった。
陛「侯爵家が接触してきたら私の指示で会えないと返事をすればよい」
父「ありがとうございます、陛下」
陛下と団長が去ったのに特務部の隊長が残った。
特「少し聞きたいことがあるのですがよろしいですか、リディア嬢」
私「はい」
特「リヴィア嬢は私が何者かご存知なのですね」
私「いえ。存じ上げません」
特「……どちらか分からないな。本心か?」
私「はい?」
特「質問の仕方を変えます。
リヴィア嬢は私の職が何なのかご存知ですね」
私「詳しくは分かりかねますが」
特「知っている部分を教えてください」
私「過剰に摂らせれば自害したくなる薬を使うのは殺人です。タイミング次第では王子妃暗殺になったかもしれません。そのような事件について話す場に現れた方であり、初対面の父や私に名乗らないことを国王陛下が許容する方です。
ホロン隊長は公、貴方は秘密の隊の隊長です」
特「隊長だと思ったのは?」
私「座ったからです。国王陛下が座れと命じなくとも一緒にソファにおかけになりました。普通の隊員はしません」
特「リヴィア嬢は不思議な子だ。
素直で分かりやすいのに謎が残りますね」
私「単純で平凡な娘ですわ」
特「それは難しいですね。国王陛下の御前でも動じることもなく、しっかりと意見を述べ意思を曲げない。そして王族と引けを取らない完璧なカーテシー。興味深い」
私「もし尋ねていたら答えてくださったのですか?」
特「何をでしょう」
私「お名前です」
特「……」
私「教えない決まりでしたか?」
特「私の本名を知る方法はあります。王子妃になればいいのです」
私「それは嫌です。他にもあるのですか」
特「私の妻には教えます」
私「ああ、奥様はご存知なのですね。お子さんもご存知ですか」
特「子はおりません」
私「……お会いできて光栄でしたわ。そろそろ失礼いたします」
特「良かった。明日も来てください。コレをどうぞ」
特務部発行のパスカード!
私「来ませんから結構です」
特「おや、コレが何かお分かりですね?」
私「し、……招待状?」
特「似たようなものです」
私「聞きたいことがあるなら今済ませてください」
特「準備ができてないので無理です」
私「私に予定があったらどうするのですか」
特「強制連行するだけです」
父「あの、どういうことでしょう」
特「伯爵。ご令嬢は知りすぎているようですので確認したいだけです。従っていただければ無傷でお帰しします」
父「断れば?」
特「それはご令嬢がご存知です。
馬車の中でご令嬢にお尋ねください。
返答できること自体が問題なのですがね。
それでは失礼します」
カードを置いて出て行ってしまった。
私「ただ、私のことが嫌いなのでないかと思った使用人の調査を頼んだだけでございます、陛下」
陛「7人も?」
私「ショックでしたが、そう見えました」
陛「今までは気が付かなかったのか、それとも黙っていただけか?」
私「そういう目で見ようとしていなかっただけでございます」
陛「的中率がすごいな」
私「それは分かりません。漏れている可能性もございます」
陛「そうか。
ホロン隊長から説明があったと思うが、遺憾に思う」
私「まさか自分達にこのようなことがふり掛かるとは思ってもおりませでした」
陛「実はハリソン侯爵から謝罪の機会を作ってもらいたいと言われていてな」
私「調査が終わらないと何とも…」
陛「終わったのではないのか」
父「追加調査が生じまして、まだ解決とは言い難い状態です」
あ~、特務部の人が反応したわ。
特「失礼、伯爵。それはどういうことかご存知であれば教えていただけますか」
お父様が説明すると、視線がこっちに向いた。
特「何故そう思うのですか」
私「自分に置き換えただけですわ。
私や母に領地での事業の細かな進捗報告がありませんもの」
特「なるほど」
私「ただ、私は侯爵夫人や令嬢と会話をしておりません。ハリソン家では夫人や令嬢が積極的にハリソン家の事業について把握なさっていた可能性もございます」
特「君は侯爵を疑っていますか?」
私「実際に侯爵家の毒を盛られたのです。可能性がある懸念を追いかけないのはよろしくありませんわ」
陛「話は変わるが、王子妃に立候補しなかったのは何故だか教えてもらえるか」
私「私が王子妃に相応しくないからです」
陛「そうは思わないがな」
私「私を除外していただくために、正直な気持ちをお伝えいたします。
私は王子殿下を異性としてお慕いしておりませんし、王子妃となりお支えしようという高い志も持っておりません。後ろ盾にするには平凡な家門です。
私を選ぶことは最善とは思えません」
陛「もし王命を出したらどうなると思う?」
私「王命ならば嫁がねばならないでしょう。ですがお望みの未来にはならないと思います」
陛「そう仕向けるということか」
私「申し上げました通り、愛も志も力も持っていません。仕向ける訳ではございません。必然的にそうなると思えてしまうだけです」
陛「ヘンリーにも勘がはたらいたと?」
私「王子妃に相応しくないとお感じになるでしょう」
陛「ヘンリーが其方を嫌いだと感じたのか」
私「無理を通せば そうなっていくと思いました」
陛「仲の悪い夫婦でも政略結婚だと割り切って役目を果たす者もいる」
私「私にはできそうにもございません」
陛「伯爵はどう思う」
父「伯爵家としてはリヴィアに政略結婚を望んでおりません。娘の勘を信じます」
陛「そうか。残念だ。とても素敵なレディだと思ったのだがな」
陛下が立ち上がったので全員が立ち上がった。
陛「侯爵家が接触してきたら私の指示で会えないと返事をすればよい」
父「ありがとうございます、陛下」
陛下と団長が去ったのに特務部の隊長が残った。
特「少し聞きたいことがあるのですがよろしいですか、リディア嬢」
私「はい」
特「リヴィア嬢は私が何者かご存知なのですね」
私「いえ。存じ上げません」
特「……どちらか分からないな。本心か?」
私「はい?」
特「質問の仕方を変えます。
リヴィア嬢は私の職が何なのかご存知ですね」
私「詳しくは分かりかねますが」
特「知っている部分を教えてください」
私「過剰に摂らせれば自害したくなる薬を使うのは殺人です。タイミング次第では王子妃暗殺になったかもしれません。そのような事件について話す場に現れた方であり、初対面の父や私に名乗らないことを国王陛下が許容する方です。
ホロン隊長は公、貴方は秘密の隊の隊長です」
特「隊長だと思ったのは?」
私「座ったからです。国王陛下が座れと命じなくとも一緒にソファにおかけになりました。普通の隊員はしません」
特「リヴィア嬢は不思議な子だ。
素直で分かりやすいのに謎が残りますね」
私「単純で平凡な娘ですわ」
特「それは難しいですね。国王陛下の御前でも動じることもなく、しっかりと意見を述べ意思を曲げない。そして王族と引けを取らない完璧なカーテシー。興味深い」
私「もし尋ねていたら答えてくださったのですか?」
特「何をでしょう」
私「お名前です」
特「……」
私「教えない決まりでしたか?」
特「私の本名を知る方法はあります。王子妃になればいいのです」
私「それは嫌です。他にもあるのですか」
特「私の妻には教えます」
私「ああ、奥様はご存知なのですね。お子さんもご存知ですか」
特「子はおりません」
私「……お会いできて光栄でしたわ。そろそろ失礼いたします」
特「良かった。明日も来てください。コレをどうぞ」
特務部発行のパスカード!
私「来ませんから結構です」
特「おや、コレが何かお分かりですね?」
私「し、……招待状?」
特「似たようなものです」
私「聞きたいことがあるなら今済ませてください」
特「準備ができてないので無理です」
私「私に予定があったらどうするのですか」
特「強制連行するだけです」
父「あの、どういうことでしょう」
特「伯爵。ご令嬢は知りすぎているようですので確認したいだけです。従っていただければ無傷でお帰しします」
父「断れば?」
特「それはご令嬢がご存知です。
馬車の中でご令嬢にお尋ねください。
返答できること自体が問題なのですがね。
それでは失礼します」
カードを置いて出て行ってしまった。
1,576
お気に入りに追加
1,978
あなたにおすすめの小説
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
「一晩一緒に過ごしただけで彼女面とかやめてくれないか」とあなたが言うから
キムラましゅろう
恋愛
長い間片想いをしていた相手、同期のディランが同じ部署の女性に「一晩共にすごしただけで彼女面とかやめてくれないか」と言っているのを聞いてしまったステラ。
「はいぃ勘違いしてごめんなさいぃ!」と思わず心の中で謝るステラ。
何故なら彼女も一週間前にディランと熱い夜をすごした後だったから……。
一話完結の読み切りです。
ご都合主義というか中身はありません。
軽い気持ちでサクッとお読み下さいませ。
誤字脱字、ごめんなさい!←最初に謝っておく。
小説家になろうさんにも時差投稿します。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる