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疑惑
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事件の発覚の発端について詳しく教えて欲しいと言われ、溜息が出そうになった。
私「ただ、私のことが嫌いなのでないかと思った使用人の調査を頼んだだけでございます、陛下」
陛「7人も?」
私「ショックでしたが、そう見えました」
陛「今までは気が付かなかったのか、それとも黙っていただけか?」
私「そういう目で見ようとしていなかっただけでございます」
陛「的中率がすごいな」
私「それは分かりません。漏れている可能性もございます」
陛「そうか。
ホロン隊長から説明があったと思うが、遺憾に思う」
私「まさか自分達にこのようなことがふり掛かるとは思ってもおりませでした」
陛「実はハリソン侯爵から謝罪の機会を作ってもらいたいと言われていてな」
私「調査が終わらないと何とも…」
陛「終わったのではないのか」
父「追加調査が生じまして、まだ解決とは言い難い状態です」
あ~、特務部の人が反応したわ。
特「失礼、伯爵。それはどういうことかご存知であれば教えていただけますか」
お父様が説明すると、視線がこっちに向いた。
特「何故そう思うのですか」
私「自分に置き換えただけですわ。
私や母に領地での事業の細かな進捗報告がありませんもの」
特「なるほど」
私「ただ、私は侯爵夫人や令嬢と会話をしておりません。ハリソン家では夫人や令嬢が積極的にハリソン家の事業について把握なさっていた可能性もございます」
特「君は侯爵を疑っていますか?」
私「実際に侯爵家の毒を盛られたのです。可能性がある懸念を追いかけないのはよろしくありませんわ」
陛「話は変わるが、王子妃に立候補しなかったのは何故だか教えてもらえるか」
私「私が王子妃に相応しくないからです」
陛「そうは思わないがな」
私「私を除外していただくために、正直な気持ちをお伝えいたします。
私は王子殿下を異性としてお慕いしておりませんし、王子妃となりお支えしようという高い志も持っておりません。後ろ盾にするには平凡な家門です。
私を選ぶことは最善とは思えません」
陛「もし王命を出したらどうなると思う?」
私「王命ならば嫁がねばならないでしょう。ですがお望みの未来にはならないと思います」
陛「そう仕向けるということか」
私「申し上げました通り、愛も志も力も持っていません。仕向ける訳ではございません。必然的にそうなると思えてしまうだけです」
陛「ヘンリーにも勘がはたらいたと?」
私「王子妃に相応しくないとお感じになるでしょう」
陛「ヘンリーが其方を嫌いだと感じたのか」
私「無理を通せば そうなっていくと思いました」
陛「仲の悪い夫婦でも政略結婚だと割り切って役目を果たす者もいる」
私「私にはできそうにもございません」
陛「伯爵はどう思う」
父「伯爵家としてはリヴィアに政略結婚を望んでおりません。娘の勘を信じます」
陛「そうか。残念だ。とても素敵なレディだと思ったのだがな」
陛下が立ち上がったので全員が立ち上がった。
陛「侯爵家が接触してきたら私の指示で会えないと返事をすればよい」
父「ありがとうございます、陛下」
陛下と団長が去ったのに特務部の隊長が残った。
特「少し聞きたいことがあるのですがよろしいですか、リディア嬢」
私「はい」
特「リヴィア嬢は私が何者かご存知なのですね」
私「いえ。存じ上げません」
特「……どちらか分からないな。本心か?」
私「はい?」
特「質問の仕方を変えます。
リヴィア嬢は私の職が何なのかご存知ですね」
私「詳しくは分かりかねますが」
特「知っている部分を教えてください」
私「過剰に摂らせれば自害したくなる薬を使うのは殺人です。タイミング次第では王子妃暗殺になったかもしれません。そのような事件について話す場に現れた方であり、初対面の父や私に名乗らないことを国王陛下が許容する方です。
ホロン隊長は公、貴方は秘密の隊の隊長です」
特「隊長だと思ったのは?」
私「座ったからです。国王陛下が座れと命じなくとも一緒にソファにおかけになりました。普通の隊員はしません」
特「リヴィア嬢は不思議な子だ。
素直で分かりやすいのに謎が残りますね」
私「単純で平凡な娘ですわ」
特「それは難しいですね。国王陛下の御前でも動じることもなく、しっかりと意見を述べ意思を曲げない。そして王族と引けを取らない完璧なカーテシー。興味深い」
私「もし尋ねていたら答えてくださったのですか?」
特「何をでしょう」
私「お名前です」
特「……」
私「教えない決まりでしたか?」
特「私の本名を知る方法はあります。王子妃になればいいのです」
私「それは嫌です。他にもあるのですか」
特「私の妻には教えます」
私「ああ、奥様はご存知なのですね。お子さんもご存知ですか」
特「子はおりません」
私「……お会いできて光栄でしたわ。そろそろ失礼いたします」
特「良かった。明日も来てください。コレをどうぞ」
特務部発行のパスカード!
私「来ませんから結構です」
特「おや、コレが何かお分かりですね?」
私「し、……招待状?」
特「似たようなものです」
私「聞きたいことがあるなら今済ませてください」
特「準備ができてないので無理です」
私「私に予定があったらどうするのですか」
特「強制連行するだけです」
父「あの、どういうことでしょう」
特「伯爵。ご令嬢は知りすぎているようですので確認したいだけです。従っていただければ無傷でお帰しします」
父「断れば?」
特「それはご令嬢がご存知です。
馬車の中でご令嬢にお尋ねください。
返答できること自体が問題なのですがね。
それでは失礼します」
カードを置いて出て行ってしまった。
私「ただ、私のことが嫌いなのでないかと思った使用人の調査を頼んだだけでございます、陛下」
陛「7人も?」
私「ショックでしたが、そう見えました」
陛「今までは気が付かなかったのか、それとも黙っていただけか?」
私「そういう目で見ようとしていなかっただけでございます」
陛「的中率がすごいな」
私「それは分かりません。漏れている可能性もございます」
陛「そうか。
ホロン隊長から説明があったと思うが、遺憾に思う」
私「まさか自分達にこのようなことがふり掛かるとは思ってもおりませでした」
陛「実はハリソン侯爵から謝罪の機会を作ってもらいたいと言われていてな」
私「調査が終わらないと何とも…」
陛「終わったのではないのか」
父「追加調査が生じまして、まだ解決とは言い難い状態です」
あ~、特務部の人が反応したわ。
特「失礼、伯爵。それはどういうことかご存知であれば教えていただけますか」
お父様が説明すると、視線がこっちに向いた。
特「何故そう思うのですか」
私「自分に置き換えただけですわ。
私や母に領地での事業の細かな進捗報告がありませんもの」
特「なるほど」
私「ただ、私は侯爵夫人や令嬢と会話をしておりません。ハリソン家では夫人や令嬢が積極的にハリソン家の事業について把握なさっていた可能性もございます」
特「君は侯爵を疑っていますか?」
私「実際に侯爵家の毒を盛られたのです。可能性がある懸念を追いかけないのはよろしくありませんわ」
陛「話は変わるが、王子妃に立候補しなかったのは何故だか教えてもらえるか」
私「私が王子妃に相応しくないからです」
陛「そうは思わないがな」
私「私を除外していただくために、正直な気持ちをお伝えいたします。
私は王子殿下を異性としてお慕いしておりませんし、王子妃となりお支えしようという高い志も持っておりません。後ろ盾にするには平凡な家門です。
私を選ぶことは最善とは思えません」
陛「もし王命を出したらどうなると思う?」
私「王命ならば嫁がねばならないでしょう。ですがお望みの未来にはならないと思います」
陛「そう仕向けるということか」
私「申し上げました通り、愛も志も力も持っていません。仕向ける訳ではございません。必然的にそうなると思えてしまうだけです」
陛「ヘンリーにも勘がはたらいたと?」
私「王子妃に相応しくないとお感じになるでしょう」
陛「ヘンリーが其方を嫌いだと感じたのか」
私「無理を通せば そうなっていくと思いました」
陛「仲の悪い夫婦でも政略結婚だと割り切って役目を果たす者もいる」
私「私にはできそうにもございません」
陛「伯爵はどう思う」
父「伯爵家としてはリヴィアに政略結婚を望んでおりません。娘の勘を信じます」
陛「そうか。残念だ。とても素敵なレディだと思ったのだがな」
陛下が立ち上がったので全員が立ち上がった。
陛「侯爵家が接触してきたら私の指示で会えないと返事をすればよい」
父「ありがとうございます、陛下」
陛下と団長が去ったのに特務部の隊長が残った。
特「少し聞きたいことがあるのですがよろしいですか、リディア嬢」
私「はい」
特「リヴィア嬢は私が何者かご存知なのですね」
私「いえ。存じ上げません」
特「……どちらか分からないな。本心か?」
私「はい?」
特「質問の仕方を変えます。
リヴィア嬢は私の職が何なのかご存知ですね」
私「詳しくは分かりかねますが」
特「知っている部分を教えてください」
私「過剰に摂らせれば自害したくなる薬を使うのは殺人です。タイミング次第では王子妃暗殺になったかもしれません。そのような事件について話す場に現れた方であり、初対面の父や私に名乗らないことを国王陛下が許容する方です。
ホロン隊長は公、貴方は秘密の隊の隊長です」
特「隊長だと思ったのは?」
私「座ったからです。国王陛下が座れと命じなくとも一緒にソファにおかけになりました。普通の隊員はしません」
特「リヴィア嬢は不思議な子だ。
素直で分かりやすいのに謎が残りますね」
私「単純で平凡な娘ですわ」
特「それは難しいですね。国王陛下の御前でも動じることもなく、しっかりと意見を述べ意思を曲げない。そして王族と引けを取らない完璧なカーテシー。興味深い」
私「もし尋ねていたら答えてくださったのですか?」
特「何をでしょう」
私「お名前です」
特「……」
私「教えない決まりでしたか?」
特「私の本名を知る方法はあります。王子妃になればいいのです」
私「それは嫌です。他にもあるのですか」
特「私の妻には教えます」
私「ああ、奥様はご存知なのですね。お子さんもご存知ですか」
特「子はおりません」
私「……お会いできて光栄でしたわ。そろそろ失礼いたします」
特「良かった。明日も来てください。コレをどうぞ」
特務部発行のパスカード!
私「来ませんから結構です」
特「おや、コレが何かお分かりですね?」
私「し、……招待状?」
特「似たようなものです」
私「聞きたいことがあるなら今済ませてください」
特「準備ができてないので無理です」
私「私に予定があったらどうするのですか」
特「強制連行するだけです」
父「あの、どういうことでしょう」
特「伯爵。ご令嬢は知りすぎているようですので確認したいだけです。従っていただければ無傷でお帰しします」
父「断れば?」
特「それはご令嬢がご存知です。
馬車の中でご令嬢にお尋ねください。
返答できること自体が問題なのですがね。
それでは失礼します」
カードを置いて出て行ってしまった。
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