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試乗
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母の馬車は2人乗り。
そのため、ピビッチ家の馬車と休憩毎に乗り換えている。
ピビッチ家の馬車も豪華で、普通よりも乗り心地は良いのだけど、やはりお母様の馬車の方が体が楽だ。
朝食のために立ち寄った町で、感想を聞いた。
侯爵「まずい。アレを知ったら元の馬車で遠出は出来ないぞ」
レ「馬車という手段は同じなのに…。
自分用のを作ればもっと快適になるのか…」
私「お母様はジクトリクス伯爵夫人とは親友なのですよね」
母「ずっとクラスが一緒で、一番の学友ね」
私「療養ということは体調が良くないのですよね」
母「出産の時に麻痺が起きたそうなの。
赤ちゃんが大きすぎたらしいわ」
私「赤ちゃんは?」
母「育って跡継ぎに指名されているようね」
男の子だったのね。
母「その後の出産は望めなかったらしいから、子供の話は避けてね」
私「はい」
また馬車に乗り数時間後にジクトリクス邸に到着した。
目元だけ隠れる長さにベールを調整したので便利になった。帽子を被りベールを下ろしたまま食事ができる。
「ようこそお越しくださいました。
当主のブリュノ・ジクトリクスと申します。
フィリシア殿下、セリーナ姫、ピビッチ侯爵、ピビッチ侯爵令息。どうぞ中へ」
案内された先には車椅子に座るご婦人がいた。
「フィリシア様!」
「マリア様!」
手を取り合い喜びにはしゃぐ2人からは当時の姿が見えてくるようだった。
私とイザベラも。そんなことを想像していた。
母「セリーナ。いいわよ」
帽子を取ると夫妻は驚いた。
夫人「こんなに美しい翡翠の瞳の持ち主に会ったことがありませんわ」
そこで母が教会で起きたことを話してくれた。
夫人「敬虔な者や神に縋りたい者ほど反応するでしょうね」
伯爵「ベールが必要なのが分かりました。
何かあってはいけませんので、どうぞ屋敷内でもご使用ください」
私「ありがとうございます」
母と夫人はすっかり昔話に夢中だ。
伯爵「すっかりお嬢さんに戻ってしまったようだ。2人はこのままにしてお部屋へご案内いたします。もうすぐ昼食ですので、お身体をお休めください」
「ありがとうございます」
部屋に案内されたってことはお泊まりは確定だろうか。
部屋に着くと窓辺に椅子を置き、鞄からスケッチブックを取り出してあれこれ考えていた。
コンコンコンコン
《セリーナ。食事の時間だって》
帽子を被り ドアを開けた。
「どうぞレディ」
「ありがとう」
差し出された腕に手を添えた。
メイドに案内されて一階へ行くと、素敵なセッティングに目を引いた。
テーブルナプキンがそれぞれ違う折り方だった。
母は冠、侯爵は花、レニーは鳥、私はウサギだった。
ウサギの耳にはナプキンリングがはめてあった。
私「可愛い!」
夫人「喜んでもらえて良かったですわ」
伯爵「どれも妻が折ったのですよ」
レ「器用でいらっしゃる。小物でも楽しませてくださるなんて夫人の優しさが伝わってきます」
私「どうしよう。崩したくないです」
メイドが別のナプキンを持ってきてくれた。
グラスの横にナプキンウサギを飾った。
レニーはとても気さくに振る舞い、人の懐に入るのが得意だ。
その彼は時々私を探るように観察することがある。
目を合わせると微笑む。
だけど彼の瞳の奥を覗くと氷の壁が見える気がする。この人は仮面を付けているのだと感じた。
そんな仮面を付けながら、態々ジクトリクス邸に着いてきたのは何故だろう。
実は食事の前に伯爵を庭に呼び出して、夫人の麻痺具合や日頃の行動について聞き取りをした後、ピビッチ侯爵家について聞いてみた。
『先代が宰相を務めていらして、今の侯爵は城勤めはなさらなかった。
ここ数年でピビッチ侯爵家は勢力を広げて、その要がレニー殿と言われています』
『勢力ですか?』
『知り合いを作って、相応しい相手に紹介しているのです。例えば、こっちの技術とあっちの材料でコレが出来る といったような契約の橋渡しとか』
『若いのにすごいですね』
『セリーナ姫も若いのに馬車を作っているではありませんか』
『伯爵、私に敬語はお止めください。
カークファルドの伯爵家の娘なのですから』
『分かった。
だが、揉め事もたまに起きている。
彼は時々令嬢達を勘違いさせるようだ』
『勘違い?』
『付き合っているとか恋人だと勘違いして令嬢達が揉めることがある』
『意外です』
『凄いよね。愛を囁いてもいないし、一緒に出かけたことさえなかったらしい。なのに刃物沙汰になる程 令嬢達は思い込んでいたんだ」
『それは恐ろしいですね』
そんな話を聞いた後、部屋に戻りスケッチブックを手に取っていたところにレニーから声が掛かったのだ。
レ「セリーナ、部屋で何していたの?」
私「仕事の仕様を考えていたの」
レ「どんな?」
私「オーダー品の内容は漏らせないわ」
レ「秘密の乗り物ってこと?」
私「相手や用途によっては第三者に知らせない方がいい場合もあるし、私の提案ではなくてお客様からの具体的な提案ならばそれはお客様のもの。
あんな高価な馬車でも再注文をしてくださるのは、信頼を裏切らないからなのよ」
レ「……」
伯爵「うちも注文したいな。6年待ちの列に並ぼうかな」
私「喜んで。後で具体的なお話をさせていただきます」
伯爵「よろしく頼むよ」
食後は男女に分かれて話をすることになった。
その隙に、私は夫人に提案した。
「マリア様。昔はよく遠出をなさったと伺いました。それでこちらを考えてみました。
こちらは車椅子ですが、少し角度がついていて、しっかり状態を起こしたい時はクッションを背中に当てます。
車椅子にしては贅沢な作りになります。
取り外しのできる屋根のような傘のようなものがついていて、ベールを付属品として、日焼けにも虫除けにも視線避けにもなります。
そしてもう一枚の絵は特注馬車です。
座席は後方の片方しかありません。片方は車椅子を乗せられるようにします。
後ろを開けて板をスロープにして人を乗せたまま車椅子ごと車内に乗せます。
中で固定してそのまま馬車の座席として使うのです。
そうすれば誰かに抱き上げてもらって乗り降りの介助をしてもらう必要はございません。
長く座るので車椅子はまるで革張りソファのような作りにしますので少し重くはなります。座る部分と背もたれに革と綿をしっかりと使う必要があります。
軽くしたければ取り外しが出来るようにすることも可能です。
興味はございませんか?」
「でも、何台も注文出来ないわ」
「少し高さのある馬車にはなります。
隣に伯爵も座ることができます。
試作協力として注文をお受けします。
話し合いの中で提案していただいたことも権利を私に持たせていただければ無償で納めさせていただきます」
「甘えられる金額ではないわ」
「どの道、このタイプの馬車を試作で作って研究しなくてはなりません。
その馬車に乗っていただけれはカークファルドにとっては宣伝になります。
怪我や病気で不自由な思いをしている方は少なくありません。老後でも体は不自由になっていきます。
マリア様が承諾してくださらなければ、他の方を探すだけなのです」
「フィリシア様、いいのかしら」
「私は馬車事業は全く分からないの。
セリーナの意見が全てよ」
「セリーナ様、よろしくお願いします」
「頑張りますわ」
そのため、ピビッチ家の馬車と休憩毎に乗り換えている。
ピビッチ家の馬車も豪華で、普通よりも乗り心地は良いのだけど、やはりお母様の馬車の方が体が楽だ。
朝食のために立ち寄った町で、感想を聞いた。
侯爵「まずい。アレを知ったら元の馬車で遠出は出来ないぞ」
レ「馬車という手段は同じなのに…。
自分用のを作ればもっと快適になるのか…」
私「お母様はジクトリクス伯爵夫人とは親友なのですよね」
母「ずっとクラスが一緒で、一番の学友ね」
私「療養ということは体調が良くないのですよね」
母「出産の時に麻痺が起きたそうなの。
赤ちゃんが大きすぎたらしいわ」
私「赤ちゃんは?」
母「育って跡継ぎに指名されているようね」
男の子だったのね。
母「その後の出産は望めなかったらしいから、子供の話は避けてね」
私「はい」
また馬車に乗り数時間後にジクトリクス邸に到着した。
目元だけ隠れる長さにベールを調整したので便利になった。帽子を被りベールを下ろしたまま食事ができる。
「ようこそお越しくださいました。
当主のブリュノ・ジクトリクスと申します。
フィリシア殿下、セリーナ姫、ピビッチ侯爵、ピビッチ侯爵令息。どうぞ中へ」
案内された先には車椅子に座るご婦人がいた。
「フィリシア様!」
「マリア様!」
手を取り合い喜びにはしゃぐ2人からは当時の姿が見えてくるようだった。
私とイザベラも。そんなことを想像していた。
母「セリーナ。いいわよ」
帽子を取ると夫妻は驚いた。
夫人「こんなに美しい翡翠の瞳の持ち主に会ったことがありませんわ」
そこで母が教会で起きたことを話してくれた。
夫人「敬虔な者や神に縋りたい者ほど反応するでしょうね」
伯爵「ベールが必要なのが分かりました。
何かあってはいけませんので、どうぞ屋敷内でもご使用ください」
私「ありがとうございます」
母と夫人はすっかり昔話に夢中だ。
伯爵「すっかりお嬢さんに戻ってしまったようだ。2人はこのままにしてお部屋へご案内いたします。もうすぐ昼食ですので、お身体をお休めください」
「ありがとうございます」
部屋に案内されたってことはお泊まりは確定だろうか。
部屋に着くと窓辺に椅子を置き、鞄からスケッチブックを取り出してあれこれ考えていた。
コンコンコンコン
《セリーナ。食事の時間だって》
帽子を被り ドアを開けた。
「どうぞレディ」
「ありがとう」
差し出された腕に手を添えた。
メイドに案内されて一階へ行くと、素敵なセッティングに目を引いた。
テーブルナプキンがそれぞれ違う折り方だった。
母は冠、侯爵は花、レニーは鳥、私はウサギだった。
ウサギの耳にはナプキンリングがはめてあった。
私「可愛い!」
夫人「喜んでもらえて良かったですわ」
伯爵「どれも妻が折ったのですよ」
レ「器用でいらっしゃる。小物でも楽しませてくださるなんて夫人の優しさが伝わってきます」
私「どうしよう。崩したくないです」
メイドが別のナプキンを持ってきてくれた。
グラスの横にナプキンウサギを飾った。
レニーはとても気さくに振る舞い、人の懐に入るのが得意だ。
その彼は時々私を探るように観察することがある。
目を合わせると微笑む。
だけど彼の瞳の奥を覗くと氷の壁が見える気がする。この人は仮面を付けているのだと感じた。
そんな仮面を付けながら、態々ジクトリクス邸に着いてきたのは何故だろう。
実は食事の前に伯爵を庭に呼び出して、夫人の麻痺具合や日頃の行動について聞き取りをした後、ピビッチ侯爵家について聞いてみた。
『先代が宰相を務めていらして、今の侯爵は城勤めはなさらなかった。
ここ数年でピビッチ侯爵家は勢力を広げて、その要がレニー殿と言われています』
『勢力ですか?』
『知り合いを作って、相応しい相手に紹介しているのです。例えば、こっちの技術とあっちの材料でコレが出来る といったような契約の橋渡しとか』
『若いのにすごいですね』
『セリーナ姫も若いのに馬車を作っているではありませんか』
『伯爵、私に敬語はお止めください。
カークファルドの伯爵家の娘なのですから』
『分かった。
だが、揉め事もたまに起きている。
彼は時々令嬢達を勘違いさせるようだ』
『勘違い?』
『付き合っているとか恋人だと勘違いして令嬢達が揉めることがある』
『意外です』
『凄いよね。愛を囁いてもいないし、一緒に出かけたことさえなかったらしい。なのに刃物沙汰になる程 令嬢達は思い込んでいたんだ」
『それは恐ろしいですね』
そんな話を聞いた後、部屋に戻りスケッチブックを手に取っていたところにレニーから声が掛かったのだ。
レ「セリーナ、部屋で何していたの?」
私「仕事の仕様を考えていたの」
レ「どんな?」
私「オーダー品の内容は漏らせないわ」
レ「秘密の乗り物ってこと?」
私「相手や用途によっては第三者に知らせない方がいい場合もあるし、私の提案ではなくてお客様からの具体的な提案ならばそれはお客様のもの。
あんな高価な馬車でも再注文をしてくださるのは、信頼を裏切らないからなのよ」
レ「……」
伯爵「うちも注文したいな。6年待ちの列に並ぼうかな」
私「喜んで。後で具体的なお話をさせていただきます」
伯爵「よろしく頼むよ」
食後は男女に分かれて話をすることになった。
その隙に、私は夫人に提案した。
「マリア様。昔はよく遠出をなさったと伺いました。それでこちらを考えてみました。
こちらは車椅子ですが、少し角度がついていて、しっかり状態を起こしたい時はクッションを背中に当てます。
車椅子にしては贅沢な作りになります。
取り外しのできる屋根のような傘のようなものがついていて、ベールを付属品として、日焼けにも虫除けにも視線避けにもなります。
そしてもう一枚の絵は特注馬車です。
座席は後方の片方しかありません。片方は車椅子を乗せられるようにします。
後ろを開けて板をスロープにして人を乗せたまま車椅子ごと車内に乗せます。
中で固定してそのまま馬車の座席として使うのです。
そうすれば誰かに抱き上げてもらって乗り降りの介助をしてもらう必要はございません。
長く座るので車椅子はまるで革張りソファのような作りにしますので少し重くはなります。座る部分と背もたれに革と綿をしっかりと使う必要があります。
軽くしたければ取り外しが出来るようにすることも可能です。
興味はございませんか?」
「でも、何台も注文出来ないわ」
「少し高さのある馬車にはなります。
隣に伯爵も座ることができます。
試作協力として注文をお受けします。
話し合いの中で提案していただいたことも権利を私に持たせていただければ無償で納めさせていただきます」
「甘えられる金額ではないわ」
「どの道、このタイプの馬車を試作で作って研究しなくてはなりません。
その馬車に乗っていただけれはカークファルドにとっては宣伝になります。
怪我や病気で不自由な思いをしている方は少なくありません。老後でも体は不自由になっていきます。
マリア様が承諾してくださらなければ、他の方を探すだけなのです」
「フィリシア様、いいのかしら」
「私は馬車事業は全く分からないの。
セリーナの意見が全てよ」
「セリーナ様、よろしくお願いします」
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